第105回目(3/4) 笹氣 健治 先生 心理カウンセラー 一歩ナビ

心理カウンセラーの“燃え尽き”とスランプ対策には・・・

インタビュー写真

「対人援助職で“燃え尽き”が問題となっていますが、先生はどのようにお考えですか?」

まずは、燃え尽きのことを皆がもっと知るといいと思うんですよね。ネットや本でいくらでも情報が手に入りますから。まずは、知的に理解することが必要です。

燃え尽きとは、簡単に言えば、自分がやっていることに対して、それに見合った精神的報酬が得られていない状態が長く続くことで、無力感が生じ、何もかもやる気が起きなくなる、ということです。自分が出したエネルギーに対して、それに見合った見返りや報酬が得られない状態が続くと、やがて燃え尽きてしまうのです。

「そもそも、自分は何のためにがんばっているのか?」と考えた時、たいていは人から感謝されるためではなくて、その人に喜んでもらうためにやっていると思うんですよね。

第一段階としては、「そもそも自分は何のためにこの仕事を志しているのか?」を振り返る。感謝を求めてしまう人が中にはいて、そういう人は燃え尽きになる可能性も高いと思います。

「まずは、初志を振り返るのですね?」

元々は、人のために役に立ちたいって気持ちの人が多いと思うんです。であれば、「感謝されなくても私はやるんだ!」「人の役に立てればいいんだ」というプロ意識というか、自分の初心を思い出してほしいです。自分がやったことに対して、必ずしも感謝が相手から戻ってくるとは限らないですから、それを期待していると、得られない時にガッカリしちゃうので、あくまでも、人のために、自分が好きでそれをやっているんだという意識を忘れないようにする必要があります。

でも、人間ですからどうしても何かを求めちゃう部分もあります。それを得られなくて燃え尽きそうになったときは、私の本(編注:『「やる気」のある自分に出会える本』)にも書きましたけど、自分のやった足跡を自分で「見える化」して、自分はこれだけやったんだっていうのを自己確認できるようにするといいです。「いつのまにか一週間終わって、私は何をしてたんだろう?」とならないように、手帳などに、今日は何をしたかを記録するんです。

「見える化する?」

そうです。すると、自分はいろいろやった、という実感が残ります。さらに、行動ごとに点数をつけます。電話を受けたら10点、日報を書いたら30点、といったように、仕事にかかる負荷に応じて点数を設定する。そして、例えば合計して200点いったら自分にご褒美をあげると、あらかじめ決めておいて、ご褒美に好きな服を買う。予算を1万円なら1万円以内って決めて、頑張ったことによるご褒美を自分に上げることで、それをひとつの自分の心の拠り所にしていくんです。しばらくそれをやっていると、燃え尽きた状態から回復していくので、いずれそれをやらなくてもよくなりますよ。

これは、お勧めです。

「他者評価に依存せず、自己評価のしくみを作ってしまうということですね?」

そうです、まさにそうです。自己評価、自己肯定。

「もう、本当にダウンしてしまった方というのは、どうすれば?」

いったん休むしかないですね。あとは、復帰する過程でちょっとずつ、点数化とご褒美をやっていくのがいいと思います。

「先生はそういうのを感じた時はなかったですか?」

あります。燃え尽きそうになったことがあって、それがこの本を書くキッカケになったんです。その経験がないと書けなかったですね。

「それは、執筆のときに?」

本を出版する前です。本に書こうとしていた内容についてのセミナーをやっていた時期があって、その参加者をメルマガで募集していて、最初のうちは反応は良かったんですけれど、回を重ねるごと、セミナーへの申込みの反応が落ちてきて。同じ人しか読んでなかったら、そうなりますよね。

本当は、もっと読者を増やさなきゃいけなかったんでしょうけど、そういうことをしないで、ただ、自分の中で「反応が落ちてきたな」「何のために頑張ってるんだろう」みたいな無力感が起きて、何もかもやる気が起きなくなったんです。

それを堀之内先生に相談したら、それは休めってことだと言われて。自分が出したエネルギーに対して、それに見合ったものが得られてない、というような話も聞いて、さっきの方法を教えてもらいました。ポイントをつけて、自己評価に替えていくということを2週間くらいやって、なんとか回復しましたね。

「カウンセラーにも、スランプというのはあるのでしょうか?」

私は、絶対あると思います。

「それは燃え尽きとも別なのでしょうか?」

カウンセラーになる人って、すごく繊細な人だと思うので、というか、繊細じゃないと務まらないので。だから、心が動いちゃうと思うんですよね。いろんなことに対して。

例えば、自分が関わったからには良い方に進んでほしいと思っているのに、うまく進まなかったりすると、自分のせいじゃないとはわかりながらも、もっとできたんじゃないかと自分を責めたり。こんな風に、後悔や自己嫌悪みたいな心理が働くと思うんですよね。

そうやって自己否定感が膨らんでくると、それが微妙に他の人とのカウンセリングにも影響する。

スポーツで言えば、突然調子が悪くなっちゃった、みたいなね。どこかフォームがおかしくなったみたいな。そこはやはりコーチにしっかり矯正してもらって、元の良い状態にする必要があると思うんですね。そういう意味でのスランプってあると思うんです。

「変なクセがついてしまうという感じですかね?」

そうですね。だから、そのためにもスーパーバイザーを見つけて、チェックしてもらう。もちろん、そうなる前にも、自分のことをスーパーバイザーに見てもらって、定期的に自分のスキルアップを図るべきだと思います。資格取って終わりじゃなくて。

それはどんな資格でもそうだと思いますね。医者の資格だって、医師免許取って終わりじゃなくて、むしろそこからがスタート。何人も何人も救えなかったりとか、たくさん経験しながら、それを糧にして技術が上がって行く。そのためには自己流ではやらない。先輩なり、高いレベルの人に指導してもらって、あるいは、お互いに勉強会などでチェックしあったりして高めていかなければならないでしょう。

なりたてのカウンセラーとか、まだ5年以内ぐらいの人は特に、スーパーバイザーに最低でも年に2〜3回はチェックしてもらうような機会を持たないと、今言ったスランプに陥ってしまう、抜け出せなくなってしまうということがあるんじゃないでしょうか。


インタビュー写真


「今後の活動のウエイトとしては、執筆が中心ですか? それとも講演、セミナー?」

う〜ん、今後の流れ次第ですね。本はここ2年くらい出していないんですけど、それは、出版オファーが来ないからでして。来ないなら自分から書きたいと出版社にアピールすればいいんでしょうけど、そこにモチベーションが湧かないというか。

「タイミングではない?」

疲れちゃったのかな?(笑)。やっぱり一冊書くと疲れちゃうってこともありますし、今は、書きたいテーマもいまいち浮かばないなっていうのがあって。執筆活動の方は、何かのきっかけでドドドっと再開するかもしれません。

むしろ、やりたいのは、カウンセリングだったり、セミナーなど、もっと直接的な指導・カウンセリングということを考えています。でもね、集客が苦手なので。

「そうなのですか?」

うん。苦手ですね。セールスのセンスがないんですよね、私は。そこは、カウンセラーとして食べて行こうとしている人達のほとんどがうまくいかない理由の一つだと思うんですけど。

例えば、ハウスメーカーの営業と施工って、普通は別々の人がやりますよね。1人で全部やっていたら大変だと思うんです。同じように、カウンセリングも、売る人とやる人の分業が必要。病院だって、事務をやる人と診療する人で分業していますよね。

一切売込みしなくてもお客様が来るっていう状況になれば別ですけど、なかなかそういうのってないので、カウンセリングで、しっかり食べていくっていうことを考えると、クライアントを集める人を雇うなり外注するなりしないと、やっていけないというのが、自分の結論なんです。

「集客に困っているというカウンセラーは沢山いると思うのですが、何かアドバイスはありますか?」

私が知りたいくらいです(笑)。

そもそもカウンセリング自体が、集客は難しい。カウンセリングを受けることへの抵抗だけでなく、自分の悩みのためにお金を出そうということにも抵抗がある。そういう意味では、カウンセリングを受ける人が申込んでお金を払うというスタイルを変えて、スポンサーを付けて、無料でカウンセリングを受けられるようなスタイルができるといいかなと思っています。企業がお金を払い、その従業員はタダでカウンセリングを受けられる、というのと同じようなスタイルです。

お金を払う人とサービスを受ける人との1対1の関係じゃなくて、クライアントからは直接お金をもらわないけど、別のところからもらうというような仕組みがあると、カウンセリングはうまくいくんじゃないかなと。プロ野球も入場料収入だけで選手の高額な年棒が払える訳じゃなくて、スポンサー料を沢山もらうことで払えるんですよね。

「スポンサーですか?」

一つのアイデアですよ。スポンサーとして複数の企業から金銭的支援を受ける。それができれば、極端に言えば、カウンセリングしなくてもカウンセラーは食べていけますから。医療費は国が補助してくれるのと同じように、企業が補助してくれるような、そんな感じに近いスタイルを構築するのも一つじゃないかなと思っています。

でも、難しいのは、カウンセリングでは、お金を自分で出すということも大事なポイントだということもあります。自分でお金を出すくらい本気っていうのが一つの重要なカウンセリングのポイントでもあるので。

逆に質問ですけど、実際に一人でカウンセリングで食べていくって難しくないですか?

「食べていけている人もいますし、両極端ですね」

食べていける人は、きっとマーケティングセンスがある人であり、クライアントを集める仕組みがちゃんと構築できた人ですよね。カウンセリングのスキルとクライアントを集めるスキルは別物です。家を売るスキルと建てるスキルが全く別物みたいな。いい家を建てればお客様が来るかと言うと、そうでもないですよね。ちゃんとアピールしないといけないです。

特に、なりたてのカウンセラーは、自分の技術を磨くだけで精一杯なのに、クライアントを集めるっていうのは難しいと思うんですよね。だったら、雇われるのが一番でしょうけど、民間の資格だとなかなか雇われないので、だからこそ、スポンサーをつけるとか、そういう何か別な方法で、お金がクライアント以外のところから入ってくるようにしないと、やっていけないと思います。多くの人がアルバイトとか別の仕事で収入を得ながらやっているという形じゃないですか。

「そういう方が多いですね。それで徐々にシフトしていくと・・・」

カウンセリング料を間接的にもらえるようにシフトする、というのは一つのアイデアです。誰もがそれでうまくいくかどうかはわかりませんが。

「“売り”がある人、独自性がある方はうまくいっているようですね?」

でも、本を出してもダメですね。

「そうですか?」

本を出したら宣伝になると思う人は多いかもしれませんけど、私の経験上はダメですね。本は集客にはつながらないです。よほど売れない限り、本を10冊以上出しても、ひっきりなしにお客様が来る、みたいな状況にはならないですね。


(次回につづく・・)

笹氣 健治(ささき けんじ)   心理カウンセラー
  産業カウンセラー、上級オンラインカウンセラー
  株式会社グラン・スポール代表取締役
  舞台役者(シェイクスピア・カンパニー所属)

1967年、仙台市生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。
NTTで法人営業と広告企画を経験した後、仙台に戻ってスポーツクラブ「グラン・スポール」の経営に携わる。業績アップによって黒字化に成功したが、企業経営者として人間心理を理解する必要性を痛感し、元横浜国立大学保健管理センター准教授・堀之内高久氏に師事し、心理療法・心理学の研究と実践に取り組み始める。
2010年5月、自身が経営するスポーツクラブ「グラン・スポール」にて、業界初となる心理カウンセリングを導入。
現在は、サラリーマンと企業経営を経験した数少ない心理カウンセラーとして、がんばっている人が抱える悩みの解消をテーマに、執筆、講演、セミナー、個別カウンセリングなどを行う。
2014年4月より東北学院大学非常勤講師。
頑張っている人が行き詰まる様々な心理的問題の解消をテーマに、執筆、講演、セミナーを行い、そのわかりやすさには定評がある。
仙台市在住。

<笹氣健治先生のHP>
【一歩ナビ 笹氣健治 公式サイト】

<笹氣健治先生の著書>
cover
仕事の悩みを引きずらない技術


cover
「やる気」のある自分に出会える本


cover
「クヨクヨしない」技術 (PHP文庫)


cover
なぜあなたはその仕事を先送りしてしまうのか? 行動のための自己変革トレーニング



インタビュアー:下平沙千代(しもひらさちよ)

下平沙千代

日本一やさしい女性ケアドライバーです。
タクシー車内がセラピールームになることも・・・、
アロマハンドマッサージや、ソース・ワークショップも開催しています。

ソース公認トレーナー、アロマハンドセラピスト、NLPセラピスト
レイキヒーラー、トラベルヘルパー、NPO法人東京シティガイドクラブ会員
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:比屋根章仁(ひやねあきひと)

比屋根章仁

呼吸を調え、自分を調える。毎日の生活をより豊かにしてくれる呼吸法を
お伝えしています。呼吸法を生活に取り入れると
日々のイライラから解放され、心も体もスッキリとしますよ!
アタマの中を「見える化」するメソッド、マインドマップもお伝えしています。

日本マイブレス協会ブレスプレゼンター、マインドマップ講師
HP:まなびの寺子屋
発行メルマガ:毎朝の習慣!自分道〜Making The Road〜


インタビュアー:八木橋寿美子(やぎはしすみこ)

八木橋寿美子

あなたのいる空間は、あなたにとって心地よい空間ですか?
ピカピカに片付いた部屋が心地よいと感じる人もいれば、
おもちゃ箱のようにモノがあふれた空間を心地よいと感じる人もいます。
「部屋は心の鏡」と言います。
呼吸法で心を整え、思考の癖を知ることから、
あなたにとって心地よい空間を手に入れてみませんか。

ライフオーガナイザー(思考と空間の整理)、ブレスプレゼンター(呼吸法)
HP:つながるいえ


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、精神保健福祉士、認定THP心理相談員、統合心理カウンセラー、
米国NGH&ABH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

  • 呼吸法の日本マイブレス協会
  • 毎朝1分 天才のヒント

インタビュー集

  • 毎朝1分天才のヒント メールマガジンで30日間の無料レッスン
  • さぱりメント あなたのお悩みをさっぱり解決