第103回目(3/4) 末永 蒼生 先生 アート&セラピー色彩心理協会

色を使いながら自分の心を見つめ、肯定していく

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「いろいろなアートセラピーがありますが、他との違いは?」

色彩を使ったアートセラピーのメリットは、年齢を越えて誰もが表現ができる。幼児でも高齢者でもできる。自由にできるんですね。それから、メソッドとかっていうと、こうしなきゃいけない、ああしなきゃいけないって思う人がいるけれども、僕のメソッドは極論で言うと、“メソッドなきメソッド”と言っているんです。絵を表現する範囲の中であれば、タブーがない。何をやってもいい。安全なので、何をやってもいいんです。

「被災地では?」

被災地でやった時にもいろいろ興味深いことが起きました。津波のイメージを表現したり、食べ物が足りないから食べ物を作ったりとかね。全身絵具だらけになったり、紙いっぱいにただグチャグチャをやるだけとか、いろんなことがあるわけです。

こういうのって衣服も汚れるし、「大丈夫なの?」っていう話になるんだけど、だからといって制限するんじゃなくて、心ゆくまでやってもらう。これは、人が恐怖に襲われている時というのは明らかにスキンシップが必要なので、こういうことをやるわけです。

人間の五感の中で一番原初的な感覚ってスキンシップですよね。お腹の中にいる時から感じているわけだから。その時の安心感とか、自分はここに存在してもいいんだっていうスキンシップの感覚。その安心の中で絵を描くことで苦しみが吐き出されるんですね。ショックとか悲しみとか喪失感、それがデトックスされていくのね。

「大人だと理性が制限して、なかなか自由な絵が描けなかったりしませんか?」

ええ、そういう場面でも大人は子どもが羨ましくて涎たらして見てますよ(笑)。でも、そのうちに大人も手がのびてきます。そんな時、僕達がよく使うのが粘土です。粘土だと大人がいじっていても恥ずかしくないし。それでやめられなくなっちゃう。

タッチングケアによるリラックスは大人にも必要なんです。それぐらい触感というのは脳の中でもすごく大きな領域を占めているんです。我慢していた苦しい気持ち、感情がジワーッと出せるようになる。これは今の時代、頭でっかちになっているので、日常生活でも効果があると思いますね。

「絵が苦手という方へ、先生からメッセージがありますか?」

絵に対する苦手意識は当人には何の責任もないんです。本当は絵の上手下手の基準って誰も決められないし、評価の根拠というものもないんです。義務教育の美術の時間でだまされていたと言ってもいいくらいなんですよ。時々、「美術教師の一言で自信を無くし、絵が嫌になった」っていう人がいますよ。犯罪的だと思いますよ。せっかくアートという心を解放する世界なのに、逆に芽を摘み萎縮させるようなことをやってきたってことです。

美術教育と言っても150年前の明治維新の時から、ヨーロッパの美術の考え方を輸入しているだけですから。写生によって見た物をそのままデッサンして描く練習。それが美術の基本みたいな信仰が長かったんです。その技術は写真がなかった時代のなごりなんですよ。だけどカメラやスマホが普及した時代には必要ないんです。

最近では美大の入試でもデッサンやらないところが増えているし。それより、心で感じていることを自由に表現する絵の方が人の心に響くし、自分で描いても楽しいですよね。「色彩学校」ではそのあたりのことを丁寧に説明していくので、少しずつ苦手意識の呪縛から解放されて、色や絵を楽しめるようになっていきますよ。

「少しずつ変わっていくのですね?」

そうですね。本当に変わりますね。絵に限らず、この世の中、何が正しくて何が間違っているか、誰も本当のことはわからないんですよ。社会的ないろんな考え方や常識、価値観にしても誰もわからない。わからないのにあたかも基準があるかのように人々をコントロールしてきたのが、近代の教育だと思いますね。

そういう仕組みを作ったっていうのは、目的があるのではないでしょうか。社会の中で人々をある程度コントロールしなきゃいけない。どの国でも、結局は同じことをやっている。歴史的に見ると近代の教育システムと軍隊のシステムはほぼ同時に発展してきていますよね。学校の教室で講師は壇上から指示します。そして「教鞭をとる」という言葉、「右向け右」「前へならえ」というかけ声はすべて軍隊システムと同じなんです。

そういう心を奴隷化するような文化や教育システムが、個人の“心理的問題”を作り出していると思います。個性や才能を持った子どもほど不登校になるのは当然で、彼らはむしろ健全です。大人社会でもむしろウツになったり、統合失調症になったりしている人は逆説的に健全だと思いますよ。抑圧された仕組みの中で何も感じないでいるのがおかしいわけで。

ですから、自分が病んでいるのではなくて仕組みの方が病んでいるということに気づくことで、自己肯定感につながる。このようなカラクリがわかってくると人は解放されるんです。心理学や心理療法の現場でも20世紀後半にはそういう考え方になってきている。例えば、ロジャーズのクライアント中心療法などそうですね。


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「心を病んでしまった方、そういう方へメッセージはありますか?」

「色彩学校」でも、そういう方、いらっしゃいます。クリニックに通いながら受講したりとか。私は、まず「病気になったり、うまく社会に適用できないのはあなたのせいじゃない」ということをはっきり言いますね。

ここで、そういう話を皆でディスカッションしたり、シェアするので、他の人の話も聞くし自分の話も聞いてもらう。私だけが苦しんでいたんじゃないんだということがシェアできるわけです。受講生同士、一緒に変わっていく場になっているのが大きいですね。問題を抱えている当事者同士で肯定し合うことで、一種のグループセッションみたいになり、孤立感から抜け出すことができるんです。

やがて自分に合った生活に復帰していったり、自分を活かせる仕事にチャレンジしていくケースもあります。いわば、新しい自分の人生ストーリーを生み出していく。できるだけそういう“再生の場”を提供できたらと思っています。

「その時に、先生が大事にされていることはありますか?」

どの方の発言も絵も全面肯定するってことですね。意味があって、その人はそういう絵を描いているわけだし、何か気持ちから湧き出すものがあってその色を使っているわけだから、どんな表現も受け入れるということですね。その安心感があって、初めて自己表現ができるようになると思うんです。

世の中も変わってきていると思っています。苦しいことがあればあるほど、良いことも起きると僕は思うんです。今、インターネットがあり、携帯電話があり、どこにいても一人で生活できるような社会になった。そのことによって、今までの繋がりが壊れてしまっていろんな事件が起きているのは確かですが、光の部分を見ることもできると思うんですよ。

それは、一人一人が自分を肯定できるようになれて、一人一人が自立して自分の人生を作っていくことが可能な社会、そういうインフラができてきたと思うんです。世界中どことも連絡は取れる。自由に生きようと思えば、どこにでも行ける。情報管理社会の中で監視されているという面もあるけれど、一方、個人として意思表示できるというメリットもある。

後は自由意思を表現していく力ですね。自分で自分の人生を新しく創造していいんだという心が育てば、今の道具・技術は一人ひとりを幸せにする力になると僕は思うんですね。強力なイデオロギーや権威があり、そこに皆がついて行くという時代は終わったと思うんですよ。

私達の活動に引きつけて考えると、セラピーやカウンセリングの在り方も変わっていっていると思います。その人が自分で気づいていくためのセッションというスタイルの場ですね。

「それを先生はどんなふうに?」

自分の喜怒哀楽の感情であるとか、私はこういうのが気持ちがいい、幸せなんだと思う気持ちをどれくらい肯定できるようになるかにかかっていると思うんですよ。そのためのいろんな方法があると思うんですよ。私達はたまたま色から入っているので、色を使いながら自分の心を見つめ、肯定していく。

人と違う自分っていいな、人と違うから他の人に楽しんでもらえるんだという自己肯定感。人や環境に合わせようとして自分を抑えるのではなくて、自分の個性を開花させるからこそ、その持ち味を周囲の人に楽しんでもらえるわけで、自分の幸せとより良い人間関係は矛盾がないっていうことですよね。

日本は長い間島国文化としてやってきたので、自分の幸福を第一に考えると利己的だとか、自己中心的だって批判されたんですよ。でも、本当に人といい関係を作ろうと思えば、自分が美味しい果実となって、それを味わってもらうしかないわけであって。「色彩学校」では、そのことをワークを通して実感してもらうってことかなと思うんですよね。

「ワークで感じてもらう?」

そうなんです。身体の感覚でそれを身につけていく。思い出していく。きっと生まれた時は、皆そうだったと思うんですよ。だって、赤ちゃんの時は、泣いても笑っても喜んでくれたんだからね。それをもう一回取り戻す。そのありのままの生の喜びを大事にしていくのが大人だと思うんですね。

講座の色彩ワークでそれぞれが表現したものを通して、そこにどんな気持ちを込めたのか、何が感じられるか、お互いに見てディスカッションするんです。どんなジャッジもないので、誰の表現にも他にはないその人の歴史があり独特の感性や味わいがあり、心動かされるんです。つまり誰の中にも味わい深さがあることが共有できるんですね。


(次回につづく・・)

末永 蒼生(すえなが たみお)   色彩心理学者 アート&セラピー色彩心理協会会長
  「色彩学校」&「子どものアトリエ・アートランド」主宰
  「末永メソッド色彩心理研究所」代表

1944年生まれ。色彩心理学実践の第一線で、色彩によるメンタルケアを始め様々な色彩プロジェクトに取り組んでいる。1960年代より美術活動の傍ら自由表現の場「子どものアトリエ・アートランド」を開設。表現者及び研究者という視点を総合した色彩心理の研究を始める。
この研究により自由な色彩表現が心を癒し、潜在的な能力を引き出すことを確認。15年に渡る実践から『末永ハート&カラー・メソッド』を創案し、子どもの心育て、成人のストレスケアなどに活かしている。
現在、東京ほか各地で社会人対象の講座「色彩学校」を開講。「アートランド」本部と提携した「子どものアトリエ」ネットワークは、国内はじめ韓国にも拡がっている。
多摩美術大学非常勤講師などを経て、現在「アート&セラピー色彩心理協会」会長。

<末永蒼生先生のHP>
【ハート&カラー】

<色彩学校のHP>
【色彩学校】

<末永蒼生先生の著書>
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色彩自由自在


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チャイルド・スピリット 色を通して内なる子どもに出会う


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心の病気にならない色彩セラピー


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「色彩セラピー」入門 心を元気にする色のはなし


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心を元気にする色彩セラピーぬり絵


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心と能力を育てる子どもぬり絵



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:荒川仁美(あらかわひとみ)

荒川仁美

株式会社サイドウェイズ顧問、コミュニケーションコンサルタント

ブレスプレゼンターとして、呼吸法を通じて「愛される豊かな人生」を
歩む人を育むことを使命とし、「人生を楽しむ自分になる」
「人と自分を比べない」「自分の成長を信じる」
この3点をモットーに、ココロとカラダが穏やかに健やかになる
「笑顔満杯の120分」のブレスプレゼント講座を開催している。
モットーは、人と人を笑顔でつなぐ架け橋になること!

HP:株式会社サイドウェイズ


インタビュアー:八木橋寿美子(やぎはしすみこ)

八木橋寿美子

あなたのいる空間は、あなたにとって心地よい空間ですか?
ピカピカに片付いた部屋が心地よいと感じる人もいれば、
おもちゃ箱のようにモノがあふれた空間を心地よいと感じる人もいます。
「部屋は心の鏡」と言います。
呼吸法で心を整え、思考の癖を知ることから、
あなたにとって心地よい空間を手に入れてみませんか。

ライフオーガナイザー(思考と空間の整理)、ブレスプレゼンター(呼吸法)
HP:つながるいえ


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、精神保健福祉士、認定THP心理相談員、統合心理カウンセラー、
米国NGH&ABH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

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