第103回目(2/4) 末永 蒼生 先生 アート&セラピー色彩心理協会

心は、年齢という物理的時間の制約は受けないと思っています!

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「子どもと大人とシニアで、違いはあるのでしょうか?」

まず、私自身の考え方を一言で言うと、心理的なレベルでは感情も含めて本当は子ども、大人、シニアって区別がないという考え方をしているんですよ。もちろん生物学的には年をとっていくのは仕方がないし、寿命もあると思うんです。ただ、心の問題を扱う次元に限って言うと、心は物理的時間の制約は受けないと思っているんですよ。シニアと一言で言っても十分子どもと同じ心を持っていて、一日の感情の流れ一つとっても、どこまでが子どもでどこからが老人かって誰も区切ることができないし証明もできないわけですよ。

例えば、ある程度大人になったから、「子どもみたいなことをやっているんじゃない」とか言われて制限されちゃう。子どもは、「子どもなのに屁理屈ばかり言うんじゃない、子どもらしくしなさい」って言われて制約されてしまう。つまり心って時を超えたものなのに、年代別に「らしさ」の中に閉じ込めることによって不自由になり、人間を苦しめてしまうことがある。

もっと言うと、年齢だけじゃなくて、いろんな社会的な分類や役割がありますよね。例えば、女性の役割、男性の役割が強固にありすぎるとそこでまた制約されて不自由になってしまう。そのことが、いろんな心理的問題を社会に生み出していると僕は思います。DVやセクハラ、ストーカー事件など、そのことと無縁ではないはずです。

「役割に閉じ込められてしまうことからくる心理的問題・・・」

育児の場面で言うと、虐待の問題って絶えないわけでしょう。あれは、あまりにも女性だけに子育てを押し付けてしまって背負わせすぎたために、まじめな人ほど苦しんで、最後は子どもと心中しようということになる。今は介護の場面でも悲しいことが起こっている。これは一人ひとりが個を基本に人生を生きる現代の文化やそのための技術が出来ている時代感覚とズレが起きているんです。

役割とか性別とか年齢など従来のカテゴライズに囲うことができないのが人間の心なんですね。だから、子どもは単に子どもではなくて、素晴らしい想像力を持っていたり、大人もびっくりするような知恵を持っていたりするもので、上から目線で子どもに教えなきゃいけないとか、躾けなきゃいけないということ自体が、実は全く心の性質と合っていない。

大人であれば、社会から役割分担を押し付けられてしまってロボット化しているわけですよね。あまりにロボット化され過ぎるとそれによる抑うつ感からウツであるとか統合失調症などのきっかけになりかもしれない。人は子どもの部分、男の部分、女の部分、成熟した部分、全部あって人間なんですよね。役割的な社会適応を強いるのではなく、人間としての全体性を取り戻すことこそセラピーだと思っているんですよ。

「全体性を取り戻すことが大切なのですね?」

僕も老人世代に片足突っ込んでいるんだけど、心が全体性を生きることができればシニアって最高に幸せなの。生まれてから今までの人生を、全部同時に味わえるんですから。70代だから70代のことしかわからないかというとそうではなくて、2〜3歳の頃のことから、若い時のこと、ずっと全部の心があるわけ。それは単なる過去の記憶じゃないんですよ。今感じていることなんです。一日のうちに3歳のように面白がったり、70代を楽しんだり多元的な精神生活をするわけ。

そうすると、長く生きれば生きるほど、自分の豊かな全体性を日々味わうことができるっていう状態になれる。それが人が精神的に統合された状態だと思うのですね。実はいろんな心理療法がそれを目指していたはずなんですよ。ユング心理学では、その心の統合や全体性の表現として曼陀羅を描くセラピーなどもやっていますよね。

でも、最初から全体性を生きればいいとか言っても、どこか宗教のお説教みたいになっちゃってピンとこないと思うんですよね。まずは、現在の痛みは痛みとして感じつつ、少しずつ自分で回復していくプロセスが大事だと思います。自然にその人のペースで全体性に向かっていけるようなきっかけや場を私達は提供するだけ、ということですよね。

「そこに色が入ってくるのですね?」

私達の活動で色がキーワードになっている理由があるんです。なぜならば、色には性別も年齢も善悪もない。言葉ってどうしても価値観が伴うんです。例えば、父親のことは悪口言えないとか、上司のことはコテンパンには批判できないとかつい自主規制が働きます。けれども色だったら善悪はないから、どの色を使ったって大丈夫っていうことで感情表現の制約を取り払うのに一番いいんですね。

色への反応というのは、理屈ではなく嬉しい感じとか悲しいイメージとか、美しいとか、そういう感覚じゃないですか。「好きな色」とは言うかもしれないけれど、「正しい色」とは言わないですよね。善悪とか理性的な枠がないわけです。そうすると、気持ちがいいとか楽しいとか美しいとか、そこで選ぶ。それは感情に結びついていますよね。


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「感情に結びついている?」

即、結びついていると思うんです。なぜ感情に結びつく色を重視しているかというのにも理由があるんです。それは、千年、二千年と、人間が理性的な時代を作ってきましたよね。もしかしたらそれ以前、言葉を使うようになった時からかもしれませんね。特に西洋ではキリスト教的な規範や戒律の問題があるし、さらに近代科学の発展の中で理性が上位にあって感情的なものは下位にあるとされがちです。その価値観に従って、あらゆる教育というのが行われてきているわけです。

ところが、人間の発達段階を考えると、まずは感覚や感情が育つ。そして、言葉を覚えて論理的思考をするようになって初めて、思考や理性というのが後からくっついてくる。それは感情がちゃんと育っていれば、よく耕された土に思考という種が蒔かれるってことだと思うんです。

だけど、土を耕さないでいくら良い種を蒔いても育たないんですよ。その良い土を育てるというのが、五感や感情を育てるということなんですよ。でも、その逆をやっている。知識を詰め込む知識教育が優先され、情報を知っている人が偉い人、その人が社会的に優位な立場に立つという仕組みになってしまっている。

今の子ども達も、2〜3歳で私立の幼稚園に行くために受験勉強をすることも少なくないわけですよ。私達のアトリエにも受験ストレスで疲れ果てた幼児がやってきます。心が耕される前に知識をいくら詰め込んでもだめですよ。情報だけは知っているけど心は伴っていないということで、恐ろしい少年事件が起きる。一番心が育つ時期、感情が豊かになる時期をちゃんと味わうことができないで育ったことが関係していると感じます。

その意味で色を楽しんだり絵を描きながら心を味わう体験が必要だというところから、私達の活動も続けているんですね。

「色を使って自分自身と向き合うことも可能になりますよね?」

そうなんです。「色彩学校」やアトリエ教室にいる時だけではなく、お家でもいつでも気が向いたらやってほしいと思います。

私がいつも提案しているのは、家庭の中に小さなアトリエコーナーを作りましょうということなんです。畳一畳のスペースでいいのでビニールシートを敷いて、そこに画材や粘土など置いておくだけです。落書き自由、粘土遊び自由、その中ならどんなに汚してもOKみたいな空間。それだけで子どもも自分でストレス解消をするし、ぐずらなくなります。

面白いことに、そういう散らかし自由のスペースがあると他の場所を汚さなくなるんです。結局、子育てはとても楽になるんですよ。親にとっても、そこで一緒に絵を描いたりするといいコミュニケーションコーナーにもなるんですよ。“お絵描き子育て”ですね。親の方も自分の気持ちと向き合ういい時間を持てますよ。

「家族に対してもできますよね?」

できます。それで家族関係がよくなってきた方もいらっしゃいます。今、介護の問題がありますが、親の介護が必要になった時、それまでの親子関係の歴史が凝縮して浮上するんですね。親子関係が解決していないと、頭では介護をやってあげなきゃと思いつつも、イライラしちゃうとか、心からできないとかってあるでしょう。

自分の中のことを解消していくと、親の気持ちを受け止めながら対応できる余裕が生まれる。親の方も気持ちがちょっと開いてくる。実際、認知症で暴言を吐いたり周りを困らせることってあるけれど、認知症って感情の問題が大きくて、感情が穏やかになるとそういうことをしなくなることも多いんです。それで、最近の介護の世界でも身体的なケアと同時に心のケアの重要性が言われています。

気持ちを押さえつけるんじゃなくて、気持ちを受けて止めてあげる。すると非常に心が平和になるので暴言を吐いていたような人が穏やかになるんですね。あえて言うならボケていても楽しい関係になるんです。子どもでも、大人でも、高齢者でも、心がどれくらい満たされて穏やかになるかっていうのが一番ですよね。

介護は、それまでの親子の愛情関係で思い残していたことを解消したり和解したりするいいチャンスなのかもしれません。そのためには介護に関わる子の方も、無理しないで自分の気持ちを解放しながら余裕を持てる形で寄り添うのがいいのかなと思います。「色彩学校」の受講生の方の中にも、アートセラピーでセルフケアをするようになって親との関係が和らぎ、介護が苦痛でなくなったという方もいますよ。

「認知症の方には、どのようにアプローチするのですか?」

やっぱり塗り絵がいいですね。特に男の人なんか「しばらく絵なんて描いたことがない」って嫌がる人もいたりする。でも、塗り絵だったらやってみようかなと思う。

うちは、高齢者用塗り絵を作っているんですね。高齢者の方って、昔の風景とか、若かった頃の自分の経験したイメージってやっぱり懐かしくて描きたくなる。そういうのがお好きな方もいるし、季節の塗り絵や田舎の田園風景の塗り絵など、そこから入っていって、自分の人生を振り返ることが気持ちを穏やかにするっていうことがありますね。塗り絵による回想療法ともいえます。


(次回につづく・・)

末永 蒼生(すえなが たみお)   色彩心理学者 アート&セラピー色彩心理協会会長
  「色彩学校」&「子どものアトリエ・アートランド」主宰
  「末永メソッド色彩心理研究所」代表

1944年生まれ。色彩心理学実践の第一線で、色彩によるメンタルケアを始め様々な色彩プロジェクトに取り組んでいる。1960年代より美術活動の傍ら自由表現の場「子どものアトリエ・アートランド」を開設。表現者及び研究者という視点を総合した色彩心理の研究を始める。
この研究により自由な色彩表現が心を癒し、潜在的な能力を引き出すことを確認。15年に渡る実践から『末永ハート&カラー・メソッド』を創案し、子どもの心育て、成人のストレスケアなどに活かしている。
現在、東京ほか各地で社会人対象の講座「色彩学校」を開講。「アートランド」本部と提携した「子どものアトリエ」ネットワークは、国内はじめ韓国にも拡がっている。
多摩美術大学非常勤講師などを経て、現在「アート&セラピー色彩心理協会」会長。

<末永蒼生先生のHP>
【ハート&カラー】

<色彩学校のHP>
【色彩学校】

<末永蒼生先生の著書>
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色彩自由自在


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チャイルド・スピリット 色を通して内なる子どもに出会う


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心の病気にならない色彩セラピー


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「色彩セラピー」入門 心を元気にする色のはなし


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心を元気にする色彩セラピーぬり絵


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心と能力を育てる子どもぬり絵



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:荒川仁美(あらかわひとみ)

荒川仁美

株式会社サイドウェイズ顧問、コミュニケーションコンサルタント

ブレスプレゼンターとして、呼吸法を通じて「愛される豊かな人生」を
歩む人を育むことを使命とし、「人生を楽しむ自分になる」
「人と自分を比べない」「自分の成長を信じる」
この3点をモットーに、ココロとカラダが穏やかに健やかになる
「笑顔満杯の120分」のブレスプレゼント講座を開催している。
モットーは、人と人を笑顔でつなぐ架け橋になること!

HP:株式会社サイドウェイズ


インタビュアー:八木橋寿美子(やぎはしすみこ)

八木橋寿美子

あなたのいる空間は、あなたにとって心地よい空間ですか?
ピカピカに片付いた部屋が心地よいと感じる人もいれば、
おもちゃ箱のようにモノがあふれた空間を心地よいと感じる人もいます。
「部屋は心の鏡」と言います。
呼吸法で心を整え、思考の癖を知ることから、
あなたにとって心地よい空間を手に入れてみませんか。

ライフオーガナイザー(思考と空間の整理)、ブレスプレゼンター(呼吸法)
HP:つながるいえ


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、精神保健福祉士、認定THP心理相談員、統合心理カウンセラー、
米国NGH&ABH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

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