第101回目(1/4) 天外 伺朗 先生 フローインスティチュート

深いフロー状態では、能力が飛躍的に伸び、運がよくなる?!

今回のインタビューは、フローインスティチュート代表で、
ホロトロピック・ネットワークを主宰されている
日本におけるフロー研究の第一人者、天外 伺朗(てんげ しろう)先生です。

天外先生は、42年間ソニーに勤務され、CD(コンパクトディスク)や
犬型ロボットのAIBOなどを開発、商品化し、ソニーの役員まで
務められました。

自由闊達で1人1人がイキイキと研究開発に没頭ができる「燃える集団」
だった組織が、「ソニーショック」と言われるまでになぜ凋落してしまった
のか、その原因を探求していく中で、自らの経験を元に「フロー経営」という
経営手法を体系化されました。

現在では、企業経営者向けに社員1人1人の個性ややりがいを引き出す
フロー経営を伝える「天外塾」を主催されています。

また、いわゆるブラック企業に相対する「ホワイト企業大賞」を創設し、
社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にしている企業を表彰する制度を
作られました。

「働く幸せ」とは何なのか、「生きる幸せ」とは何なのか、
どうすればそれを実現できるのか、天外先生にお話を伺いました。

インタビュー写真

「先生は日本におけるフロー研究の第一人者だと思いますが、フローについて簡単に教えていただけますか?」

フローというのは、無我夢中になって何かに取り組んでいる時に、特殊な精神状態になるということを、チクセントミハイ博士が発見し、それを学問的に研究しておられるわけです。

これは、すごく浅いフローから、至高体験と言いますが、宗教的な超越体験に至るまでのすごく深いフローまで、連続的にフローという現象があるのですけれども、一定以上の深いフローに入ると、奇跡が起きます。

技術開発プロジェクトの場合だと、エンジニアが皆スーパーエンジニア変身する。アイデアが湯水のように湧いてくる。それよりすごいのが、もうこれでダメかと思えるような状況に接しても怯まなくなり、何とか突破して行ってしまう。

それともう一つ、サイエンティフィックな説明ができないけれども「運がよくなる」というのが、僕が発見しているフロー現象ですね。スポーツの場合はゾーンと言いまして、これは練習の時よりもすごいプレーができるということがよく知られています。

「チクセントミハイとの出会い、それはいつ頃の出来事だったのでしょうか?」

2004年2月の末ですね。2003年にソニーショックというのがありましてソニーの株が暴落して、つられて日本中の株が暴落しました。それがソニーショックと言われています。

その2年ぐらい前から実はソニーがおかしくなっているのに気が付いていまして、人事部のカウンセラーが僕のところに来て「ソニー中がおかしくなってきた」と。当時、出井さんが会長をやっていたんだけれども「出井さんのカウンセリングをしないと、救えない」と言い出しましてね。

「どういうことですか?」

いろいろ聞いてみると、うつ病がものすごい勢いで増えているという状況だった。

僕自身はその頃、AIBOを商品化して、その後に二足歩行のロボットを開発していましてね。開発部隊が百何十人いましたけれど非常に燃えていて、良い状況にあったんですよね。だから、会社全体がおかしくなっていることに気が付かなかった。でも、友達なんかと話してみると、確かにおかしくなっていると。

僕が知っているソニーというのは、エンジニア達が目を輝かせて夢中になって仕事をする、という職場だったので、いったい何が起きているんだろうと、2001年頃から考えていたんですよね。

出井さんのカウンセリングというのはそんなに簡単には出来ませんので、ちょうどそのカウンセラーが河合隼雄のお弟子さんだったんです。それで、河合隼雄を呼んで、出井さんとインタビューをしてもらおうと。そのインタビューの中でカウンセリングをしてもらおうという案を出しましてね。

「カウンセリングですか?」

これは名案だと思ったんだけれど、そのカウンセラーの上には人事部長がいて、人事担当役員がいて、そういう個別インタビューみたいなのは出来ないとなって、結局、河合隼雄を呼んで講演会をやって終わりになっちゃたんだよね。

そこには出井さんも出てきましたけれど、カウンセリングみたいのは出来なくてね。結局そのままソニーショックに突入していったという事なんです。

ですから2年前には現象としては気が付いていたと。でも、何が原因なのかは僕自身もわからなかった。そのうちにチクセントミハイのフロー理論に出会って、これで全部読み解けるということがわかったんですよね。チクセントミハイの本を全部集めて、片端から読んでいった。

それで、2003年の秋頃かな。TED(テクノロジー・エンターテイメント・デザイン)カンファレンスというのがあると。今では有名になっていますけど、当時はそれほど知られてなかった。

TEDカンファレンスが始まる時に、ソニーの盛田昭夫がそれをお手伝いしていたんですよね。それでAV関係は全部ソニーがサポートしていたし、必ず役員クラスの人が出席していたと。丁度、前に出ていた人が退任したので、出井さんから電話が来まして「お前出ろ」と、言われたわけです。

僕はその時に研究所の設立準備をしていたので、「忙しいから嫌だ」って何回も何回も断っていた。そのうちにプログラムが来たら、チクセントミハイが話すという事がわかった。こういうのを共時性と言うんですけどね。


インタビュー写真


「シンクロですね?」

丁度その頃に、『運命の法則』という本を書いていて、第一章に「共時性を感じたらそれに乗っていけ」なんていうことを書きましたので、これは乗っていかなきゃという事で、すぐ出席を決めて。それから、八方手を尽くしてチクセントミハイとの昼食の約束を取り付けたんです。

講演の直前に昼食を食べた訳ですよ。場所がカリフォルニア州のモンタレーというところで海辺の大変風光明媚な場所ですけど。本人から事前に天ぷらが食べたいという希望が出ておりましてね。

モンタレーという町は、セラピストの方はご存じかもしれないけれども、エサレン研究所というのがあるんですよね。要するにニューエイジのメッカなわけです。

それから、スティーブジョブズが行ってたサンフランシスコ禅センターというのがあるんですけどね。ジョブズが行ってた道場とは違うけれどもその禅センターの道場があるわけです。

非常にニューエイジ的で東洋情緒が豊かで、日本料理屋がたくさんあるんですよね。海辺の町だから天ぷらも美味しい。ですが、そのうちに段々、その天ぷらがノドを通らなくなりまして。

「と、おっしゃいますと?」

その時にね、こちらはある企みを持ってミーティングに臨んでいたんですよ。それは、「フローに入ると運がよくなる」という事をチクセントミハイの口から言わせたかったのね。もし、彼がそれを言ったら、『運命の法則』のハイライトになる予定だった。

こっちはしたたかだったんだよね。単に会いに行ったんじゃなくて、そういう計算の下に、非常に悪い企みを持ってミーティングに臨んでいた訳。ところが、どうしても言ってくれないんですよね。

僕はコンパクトディスクやって、それからAIBOやNEWSというワークステーションをやったりして、毎回フローに入っていると。チームがフローに入る体験をしている訳です。そのたびに信じられないくらいの幸運に恵まれている訳です。だから、フローに入ると運がよくなるということが、僕の中では信念になっていると。

ところが、なかなか言ってくれない訳ですよ。「フローに入るとマインドがオープンになるから幸運になったような錯覚を起こすかもしれない」とかね。

でも、それでもしつこくいろんな事例を出して迫っていくと、最後には、「自分は学者だから、合理的な説明ができる範囲内でしかお話できない」「フローに入ったら運がよくなるなんてことを言ったら、私の学者生命が危うくなる」とまで言われちゃってね(笑)。

「せっかく行ったのに・・・」

これは天ぷら代が無駄になったかなということで、ちょっと食欲が落ちてきちゃったんだよね。

そのうちに彼が、「ここであなたと逢うのはものすごい共時性を感じる」と言い出したんですよね。

そこで僕はムカっとしましてね。共時性なんてちっとも合理的じゃない訳ですよね。彼はユング派ですから、それに抵抗がないのかもしれないですが、ちょっと前に合理性じゃなきゃ発言出来ないと言ったばかりなのに、共時性なんて言いやがってと(笑)。

ムカっとしてたんですけど、なぜ共時性を感じたかというと、彼が用意したパワーポイントの最初のスライドがソニーの設立趣意書だったんですよね。「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」というのを彼が用意していまして。

それで、講演に出ましたら、もちろん英語でしたけどそれがパッと出てきて、「これがフローに入るコツだよ」というところから講演が始まったんですよね。それでまた、ムカっときまして。

「それは?」

ソニーがおかしくなった原因はね、その頃は全部読み解けていましたけれど、基本的にアメリカ流の合理主義経営を入れたと。出井さんがジャック・ウェルチを追いかけちゃったんですよね。それで、能力給を入れて、その他にもいろいろな合理主義なやり方をあれこれ導入していました。

そうすると、例えば能力給というのは成果を上げたら給料を上げるよ、地位を上げるよと、もろに外発的動機に依存したマネジメントな訳ですよ。そうすると、内発的動機がベースになっているフローには誰も入れなくなる。

これは当たり前のことでね。そういうことがわかっておりまして。したがって、ソニーがおかしくなったのは、アメリカ流の合理主義経営を入れたからだということを思っていた訳ですよね。

であるにも関わらず、そのアメリカの地でアメリカ人がアメリカ人相手に合理主義経営と正反対のフロー経営の話をしましてね。その手本が創業期のソニーだと言ってしまった。これはムカっときますよね(笑)。結局、そこで怒ったことが僕が経営の方向に入っていく原因です。

「なるほど・・・」

『運命の法則』には、フロー経営の神髄みたいなことがちょこちょこ出てきた訳ですよね。それを見た日本経営合理化協会の人が「経営塾をやってくれ」と頼みに来たんですよね。

これもね、僕は何度も何度も断っていたのね。大体お前の所の会社の名前が気に入らない(笑)。合理化ってのは俺が一番嫌いなんだと。

そうしたら、その人が「実は中村天風を発掘したのは俺だよ」と、言ったんです。まだ誰も知られていない頃に膨大な録音テープを天風会から借り受けて、本を3冊作っていて、いずれも一万円ぐらいの本で、しかも一万部以上出たと。三億円売り上げてる訳よね。まあ、出版業界では信じられない話だと。

それから中村天風が経営の世界で非常に有名になってきて、皆が取り上げる様になってきたという話だったんで、そこまでやっている人だったらということで、経営塾を始めた。それが2005年ですね。

翌年から経営塾が“天外塾”という名前で始まりまして、それが結構評判を呼んで、神田昌典の当時の会社名でいうとアルマックとかね、日本能率協会とか、あっちこっちで呼ばれて天外塾をやるようになったんです。まだ僕はソニーの役員をやっていましたけれども、現役中からそんな事を始めていたんですよね。


(次回につづく・・)

天外 伺朗(てんげ しろう)   フローインスティチュート 代表
  天外塾 主宰、工学博士
  ホロトロピック・ネットワーク 代表

1942年兵庫県生まれ。元ソニー上席常務。工学博士(東北大学)。1964年、東京工業大学電子工学科卒。
ソニーに42年余勤務。その間、CD、ワークステーションNEWS、犬型ロボットAIBOなどの開発を主導。上席常務を経て、ソニー・インテリジェンス・ダイナミクス研究所所長兼社長などを歴任。
現在は「ホロトロピック・ネットワーク」を主宰し、医療改革や教育改革に携わり、瞑想や断食を指導している。
また、企業経営者のための「天外塾」を開いて経営改革に取り組むとともに、近年は教育改革へも手を拡げている。

<天外伺朗先生のHP>
【フローインスティチュート】

<天外塾のHP>
【天外伺朗の「フロー経営」セミナー】

<ホロトロピック・ネットワークのHP>
【ホロトロピック・ネットワーク】

<天外伺朗先生の著書>
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運命の法則 「好運の女神」と付き合うための15章


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名経営者に育った平凡な主婦の物語(フロー経営の奇跡1)


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「生きる力」の強い子を育てる 人生を切り拓く「たくましさ」を伸ばすために


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マネジメント革命 「燃える集団」をつくる日本式「徳」の経営



インタビュアー:倉橋竜哉(くらはしたつや 日本メンタルサービス研究所 代表理事)

倉橋竜哉

アイネスト株式会社、日本マイブレス協会の代表を務める。
日本マイブレス協会では、ブレスつまり息をコントロールする
「呼吸法」を通じてココロの穏やかさとカラダの健やかさを
お伝えする講師の養成を行っています。

HP:日本マイブレス協会
発行メルマガ:毎朝1分☆天才のヒント


インタビュアー:下平沙千代(しもひらさちよ)

下平沙千代

日本一やさしい女性ケアドライバーです。
タクシー車内がセラピールームになることも・・・、
アロマハンドマッサージや、ソース・ワークショップも開催しています。

ソース公認トレーナー、アロマハンドセラピスト、NLPセラピスト
レイキヒーラー、トラベルヘルパー、NPO法人東京シティガイドクラブ会員
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』


インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:岸眞美(きしまみ)

岸眞美

会社員生活を送るうちに、人が幸せになる、ってどういう事だろうという
素朴な疑問が生まれました。

社内教育に携わり、コーチングに出会い、資格を取得。
現在は、ほっとする「居心地の良い場所」を追究すべく、
自然療法フットケアサロンOPENに向け、日々研鑽中。


インタビュアー:比屋根章仁(ひやねあきひと)

比屋根章仁

呼吸を調え、自分を調える。毎日の生活をより豊かにしてくれる呼吸法を
お伝えしています。呼吸法を生活に取り入れると
日々のイライラから解放され、心も体もスッキリとしますよ!
アタマの中を「見える化」するメソッド、マインドマップもお伝えしています。

日本マイブレス協会ブレスプレゼンター、マインドマップ講師
HP:まなびの寺子屋
発行メルマガ:毎朝の習慣!自分道〜Making The Road〜


インタビュアー:荒川仁美(あらかわひとみ)

荒川仁美

株式会社サイドウェイズ顧問、コミュニケーションコンサルタント

ブレスプレゼンターとして、呼吸法を通じて「愛される豊かな人生」を
歩む人を育むことを使命とし、「人生を楽しむ自分になる」
「人と自分を比べない」「自分の成長を信じる」
この3点をモットーに、ココロとカラダが穏やかに健やかになる
「笑顔満杯の120分」のブレスプレゼント講座を開催している。
モットーは、人と人を笑顔でつなぐ架け橋になること!

HP:株式会社サイドウェイズ


インタビュアー:八木橋寿美子(やぎはしすみこ)

八木橋寿美子

あなたのいる空間は、あなたにとって心地よい空間ですか?
ピカピカに片付いた部屋が心地よいと感じる人もいれば、
おもちゃ箱のようにモノがあふれた空間を心地よいと感じる人もいます。
「部屋は心の鏡」と言います。
呼吸法で心を整え、思考の癖を知ることから、
あなたにとって心地よい空間を手に入れてみませんか。

ライフオーガナイザー(思考と空間の整理)、ブレスプレゼンター(呼吸法)
HP:つながるいえ


インタビュアー:鎌形和枝(かまがたかずえ)

鎌形和枝

ハープと、ピアノを、教えています。
トイプードルのレオンちゃん1年4ヶ月と、毎日散歩を楽しんでます。
一番好きな事は、運転をする事です。
舞浜在住


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、精神保健福祉士、認定THP心理相談員、統合心理カウンセラー、
米国NGH&ABH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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