第101回目(3/4) 天外 伺朗 先生 フローインスティチュート

教育への提言と、社員のハピネスを追求する“ホワイト企業大賞”の活動に

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「教育の分野では、今どんな活動をされているのですか?」

基本的に、教育の本は2冊しか書いていません。経営の本は7〜8冊書いておりますけれども、教育の本は2冊で、これも話は同じで、フローというのは大事だよというところから出発しています。最初は、教育に取り組もうなどとはちっとも思っていなかったんです。

結局、猿から人間になって新皮質が発達して、これはすばらしいことだ、というのが一般的だけれども、それがいろんな弊害を生んでいる。新皮質だけで考えていると物事がうまくいかない。やっぱり古い脳がちゃんと活性化していなくてはいけないということに気がついたんですね。

「古い脳の活性化が必要?」

例えばNEWSのプロジェクトなんかで、当時の通産省のものすごいビッグプロジェクトと戦って勝っているわけです。

向こうは、日本中のコンピューター企業を巻き込んで、250億円の予算を持って大々的に進めているのに対して、こちらは11人のエンジニアで始めて、ファーストロットの材料費まで含めて4億円しか使っていない。それで国家プロジェクトを粉砕してしまった、という体験を持っています。

なぜ国家プロジェクトが何百億円と使って全部失敗しているのか。僕らは研究の最先端にいたから、その失敗を全部見てきた訳です。なんでこんなに軒並み失敗するのかというのと、政府のやることも大体とんちんかんなことをやっている。それを調べてみると、古い脳が活性化しないで新皮質だけで考えている。新皮質というのは、現実から遊離しているわけです。

これはロボットをやっている時に、それが大問題であるということがわかったのですけれど、ロボットの知能の研究でシンボルグラウンディング問題というのがあるんです。シンボルというのは、「いろは」や「abc」といったシンボルで、シンボルというのは自然から離れたところで抽象化されているということが大きな問題で、だから人工知能がうまくいかない訳です。

「それはどういうことでしょう?」

例えばAIBOや二足歩行のQRIOは、ボールを見ると近づいて行ってボールを蹴るのですが、それは「ボールを見つけたら近づいて蹴れ」というプログラミングで蹴る訳です。

人間はそうじゃなくて、ボールを見た途端に、このボールの性質がわかる訳です。これは柔らかいボールであって、落としたらどれくらい弾むとか、投げたらどれくらいで落ちて行くのかなどの、ボールの性質が瞬間的にわかる。

それだけでなくて、子どもの頃、パパとキャッチボールをやった思い出とかデッドボールで痛かった思い出とか、膨大な記憶が降ってくる訳です。ボールを見た瞬間に膨大な記憶が情動を伴ってよみがえってくる。だから、丸い物体を見つけて、ボールだと判断する人工知能とは全く違う訳です。

これがシンボルグラウンディング問題で、情動を伴った記憶というのは、ある程度古い脳が活性化しないと出てこない。それによって物事の正しい判断ができる。それに対してグラウンディングしていないシンボルだけを使って理性と論理でもって判断していると、全部間違えるということがわかりまして、それを僕は「新皮質シンドローム」という名前を付けました。

「新皮質シンドロームですか?」

最初出版社に言った時は、『新皮質シンドローム』という本のタイトルだった訳です。ところが書いていくうちに、「なんで大脳新皮質シンドロームになるんだろう」と考え、教育が新皮質しか鍛えていないということで、だんだん教育問題に入っていった訳です。

『教育の完全自由化宣言! 子どもたちを救う七つの提言』というのを書いた途端に、これは新皮質シンドロームの本ではない、教育の本だ、ということで、それから教育の勉強を始めたのです。半年間で50冊ほどの本を読み、僕の生涯で一番勉強した時期だったんです。

2006年の第1次安倍内閣で教育再生会議というのができて、いろいろな提言を出してきました。それがあまりにもでたらめに僕には見えたので、それが大脳新皮質シンドロームのグッドイグザンプルだということで、その本はそこから書き出している訳です。

「どこが一番間違っていると思われますか?」

いじめ問題に関して、いじめている人を処罰すれば解決するというのが、とんでもない間違いだね。その時に朝日新聞で、「いじめている君へ、いじめられている君へ」というコラムがありまして、さかなクン(東京海洋大客員准教授)が書いていたんですね。

わずか80字ほどのコラムだったのですが、みごとにいじめの本質をつかんでいるし、いじめに対してどうしたら良いかという対応も書いていたんで、教育再生会議で頭の固いお偉いさんをたくさん雇うより、さかなクン一人雇えばいいってことから書き始めた訳です。

そうしたら、第一次安倍内閣を作った下村博文(当時副官房長官)が、一回話を聞かせてくれと言ってきて、講演をして、それから彼のブレイン集団に取り込まれたんです。ところが2009年の選挙で自民党が敗れて野党になった。野党時代の3年間、僕がブレインを務めたことで下村博文には大きな影響を与えられたと思います。

野党時代に『下村博文の教育立国論』という本が出たんですよね。その政策部分はほとんどが僕のレポートのコピペだったので、とても嬉しかったのですが、文部科学大臣になって、文部科学省で講演してくれと言ってきました。

下村博文が冒頭に「天外さんは今まで皆さんがやってこられた教育改革を全部否定しておられる。今日は過激な講演をしていただく」ということで、講演をしたんですよね。文部科学省を変えようということで、次々に講演者を読んでいたのですが、僕が二人目だったですね。

こういう講演だとか、天外教育研究会ということで、異なる教育学を信奉している教育者に来てもらって、教育論の違いを僕が掘り下げていくといった、かなり担当者にはきつい講演会もやっております。そんなことで、教育の活動が盛んになっております。

「それまでのものを全否定なさるのですよね?」

そうですね。経営も否定して、教育も否定して、全部ひっくり返しております。


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「フロー経営で、印象深いエピソードはありますか?」

一番典型的なのは、漫画になっていますけれど、『名経営者に育った平凡な主婦の物語』。今までの管理型の経営というのは、ある程度頭が良くなければやっていけないけれど、フロー経営というのは必ずしも経営学のことを知らなくてもいい。何にも知らない主婦がいきなりやって、ものすごくうまくいったという例です。

「うまくいった一番の理由はどういったところだったのですか?」

これは非常に簡単でして、主婦で子どもを4人育てて、それまでは子育てしかやってこなかったと。もう一つは熱気球の趣味でフロー体験をしていて、ご主人も熱気球で知り合った人だということ。あと一つは主婦でのほほんと育っているものだから葛藤が少ないということ。

普通の経営者ではなかなかこう簡単にはいかない、今までの管理型経営をやってきた経営者というのは、平均よりも葛藤が強いんですよね。創業者は特に葛藤が強い。葛藤が強いと、フロー経営ができない。

なんでフロー経営ができないかというと、葛藤がどこにいくかというと、心理学で言うとシャドーの投影ということになりますが、自分が先頭に立って戦っていないと精神が安定しない。従って全部任せるフロー経営に行けないんです。天外塾では主として葛藤をどうやって減らすかという、サイコセラピーと同じようなことをやっている訳です。

「管理型経営とブラック企業というのは、関連はあるのでしょうか?」

管理型企業でもホワイト企業というのはあり得ると思いますが、フロー経営をやっているブラック企業はないでしょうね。フロー経営をやっていると、全部任せられて、働きがいが出てくるので、社員さん達はハッピーになっていくでしょうね。

それをより促進するために、「ホワイト企業大賞」というものを、今年からやっておりまして、今、第2回の募集をやっております。第1回はネッツトヨタ南国、未来工業を表彰させていただいたのですが、日本中の産業界を塗り替えていくという動きをしております。

「ホワイト企業だからフローが起こるということではないのですか?」

ホワイト企業というのは、フローよりもう少し広い概念なんです。ホワイト企業の定義はしないということにしているんです。審査基準も細かく設けない。審査基準を設けてしまうと、それを目掛けていってしまうので、ホワイト企業という概念が小さくなってしまうのです。

今、言っているのは、社員の幸せ・社員の働きがい・社会貢献。

この3つを大切にしている会社をホワイト企業と呼び、その中にはいろんな形態があり得るし、これからどんどん発展していくでしょう。もう既に天外塾の塾生の中に、社員の給料は自分で決めるという会社が出てきているんです。

ホワイト企業大賞の企画委員というのを設けておりまして、どちらかというとフロー経営とかおもてなし経営とかいうことを、推進したり情報発信していた人達を10人揃えているのですが、その人達がファシリテーターを勤める合宿をやります。

そういう人達ですら、これから指導する時代じゃないだろう。これから皆で作っていく概念だということで、ホワイト企業という概念自体は、非常にボーっとした状態にしておこうと。皆でそれに向かって研鑽を深めていく。研鑽を深めていく仲間作りのためにこの合宿を計画している訳です。

「その仲間ができると、どんな社会になりそうですか?」

社会全体に波及するまでにはまだだいぶかかるでしょうけど、そういう人達がお互いに情報交換して、いろんなトライアルをしながら、社員がものすごくハッピーで、皆が働きがいをもって燃えていく、と。それで社会貢献もキッチリやる、と。

当然、そういう企業は業績もいい訳ですよね。今までも、ホワイト企業、ブラック企業を見ていますと、利益を追求して社員をいじめているブラック企業より、利益より社員のハピネスを追求しているホワイト企業の方がだいたい成績がいい訳ですよね。

ということで、全部いい方向にいくと思うんですよね。そういう企業グループがだんだんできていくと思っています。今この合宿に参加しているのはほとんど天外塾の塾生なので、天外塾が1つの母体になり得ると思います。

「賞を与える場にしよう、と考えたのはどういった経緯があったのでしょうか?」

それは、未来工業の山田昭男さんの追悼番組でエフエム東京に呼ばれたんですね。その番組が、“ブラック企業大賞”から始まったんですよね。その時初めて“ブラック企業大賞”というのを知って、ブラック企業大賞で悪いところを罰するというのも必要かもしれないけれども、なんとなく暗くなるし、ブラック企業大賞授賞式なんかをやっても誰も出てこないよね。

そんなんじゃつまらないから、「もうちょっとお祭り気分でハッピーになるような賞をやろう」ということで、その逆の“ホワイト企業大賞”というのを始めた訳です。

ホワイト企業という言葉は、山田昭男さんが最初に使い始めたんじゃないかな。山田昭男さんの追悼という意味でも、この大賞を始めました。

「今後は“ホワイト企業大賞”をどのようにしていきたいですか?」

いろんな審査がありますけど、社内アンケートを取って、“ホワイト企業指数”というのを算出することになっているんですね。これは今の天外塾でも使っていますけど、非常にいい指数です。

例えば、支店がいっぱいあるようなところだと、支店の伸び率とホワイト企業指数がものすごくリンクしている、ということが既にわかっています。ということは、その企業の中身を表す指数としてはすごくいいアンケートができたかな、と思っています。

天外塾でやっていた企業の健康度調査という7項目のネガティブなアンケートがあったけれど、あれは元々はうつ病傾向の人を探りだすためのアンケートだったんです。それから発展させて、表現をネガティブからポジティブに変えて、企画委員会で揉んで、結局7項目を40項目まで増やしました。これでだいたい、組織の内側の実態みたいなのが出てくるアンケートになりました。

いずれ多くの会社の会社案内の中に、ホワイト企業指数が入ってくる、という時代を夢見ています。

「経営者にとっては非常に勇気がいるものでは?」

そうですね。特に上司の診断みたいなのがありますから、経営者は皆しんどい想いをしますし、「こんなアンケートをやるなら会社を辞める」という人も出てきたりしますからね。でも、それに耐えて自分を晒していく、ということが、経営者の人間的成長の1つのポイントですよね。

アンケートをやることによって組織も活性化しますし、経営者も成長していきますね。特に上司の診断をやると、それぞれの上司がすごく成長していくと思いますよ。


(次回につづく・・)

天外 伺朗(てんげ しろう)   フローインスティチュート 代表
  天外塾 主宰、工学博士
  ホロトロピック・ネットワーク 代表

1942年兵庫県生まれ。元ソニー上席常務。工学博士(東北大学)。1964年、東京工業大学電子工学科卒。
ソニーに42年余勤務。その間、CD、ワークステーションNEWS、犬型ロボットAIBOなどの開発を主導。上席常務を経て、ソニー・インテリジェンス・ダイナミクス研究所所長兼社長などを歴任。
現在は「ホロトロピック・ネットワーク」を主宰し、医療改革や教育改革に携わり、瞑想や断食を指導している。
また、企業経営者のための「天外塾」を開いて経営改革に取り組むとともに、近年は教育改革へも手を拡げている。

<天外伺朗先生のHP>
【フローインスティチュート】

<天外塾のHP>
【天外伺朗の「フロー経営」セミナー】

<ホロトロピック・ネットワークのHP>
【ホロトロピック・ネットワーク】

<天外伺朗先生の著書>
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運命の法則 「好運の女神」と付き合うための15章


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名経営者に育った平凡な主婦の物語(フロー経営の奇跡1)


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「生きる力」の強い子を育てる 人生を切り拓く「たくましさ」を伸ばすために


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マネジメント革命 「燃える集団」をつくる日本式「徳」の経営



インタビュアー:倉橋竜哉(くらはしたつや 日本メンタルサービス研究所 代表理事)

倉橋竜哉

アイネスト株式会社、日本マイブレス協会の代表を務める。
日本マイブレス協会では、ブレスつまり息をコントロールする
「呼吸法」を通じてココロの穏やかさとカラダの健やかさを
お伝えする講師の養成を行っています。

HP:日本マイブレス協会
発行メルマガ:毎朝1分☆天才のヒント


インタビュアー:下平沙千代(しもひらさちよ)

下平沙千代

日本一やさしい女性ケアドライバーです。
タクシー車内がセラピールームになることも・・・、
アロマハンドマッサージや、ソース・ワークショップも開催しています。

ソース公認トレーナー、アロマハンドセラピスト、NLPセラピスト
レイキヒーラー、トラベルヘルパー、NPO法人東京シティガイドクラブ会員
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』


インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:岸眞美(きしまみ)

岸眞美

会社員生活を送るうちに、人が幸せになる、ってどういう事だろうという
素朴な疑問が生まれました。

社内教育に携わり、コーチングに出会い、資格を取得。
現在は、ほっとする「居心地の良い場所」を追究すべく、
自然療法フットケアサロンOPENに向け、日々研鑽中。


インタビュアー:比屋根章仁(ひやねあきひと)

比屋根章仁

呼吸を調え、自分を調える。毎日の生活をより豊かにしてくれる呼吸法を
お伝えしています。呼吸法を生活に取り入れると
日々のイライラから解放され、心も体もスッキリとしますよ!
アタマの中を「見える化」するメソッド、マインドマップもお伝えしています。

日本マイブレス協会ブレスプレゼンター、マインドマップ講師
HP:まなびの寺子屋
発行メルマガ:毎朝の習慣!自分道〜Making The Road〜


インタビュアー:荒川仁美(あらかわひとみ)

荒川仁美

株式会社サイドウェイズ顧問、コミュニケーションコンサルタント

ブレスプレゼンターとして、呼吸法を通じて「愛される豊かな人生」を
歩む人を育むことを使命とし、「人生を楽しむ自分になる」
「人と自分を比べない」「自分の成長を信じる」
この3点をモットーに、ココロとカラダが穏やかに健やかになる
「笑顔満杯の120分」のブレスプレゼント講座を開催している。
モットーは、人と人を笑顔でつなぐ架け橋になること!

HP:株式会社サイドウェイズ


インタビュアー:八木橋寿美子(やぎはしすみこ)

八木橋寿美子

あなたのいる空間は、あなたにとって心地よい空間ですか?
ピカピカに片付いた部屋が心地よいと感じる人もいれば、
おもちゃ箱のようにモノがあふれた空間を心地よいと感じる人もいます。
「部屋は心の鏡」と言います。
呼吸法で心を整え、思考の癖を知ることから、
あなたにとって心地よい空間を手に入れてみませんか。

ライフオーガナイザー(思考と空間の整理)、ブレスプレゼンター(呼吸法)
HP:つながるいえ


インタビュアー:鎌形和枝(かまがたかずえ)

鎌形和枝

ハープと、ピアノを、教えています。
トイプードルのレオンちゃん1年4ヶ月と、毎日散歩を楽しんでます。
一番好きな事は、運転をする事です。
舞浜在住


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、精神保健福祉士、認定THP心理相談員、統合心理カウンセラー、
米国NGH&ABH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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