第100回目(4/4) 野村 総一郎 先生 日本うつ病センター 六番町メンタルクリニック

相談機能を強め、心理療法・精神療法を組み合わせたチーム医療で、広い精神医療を

インタビュー写真

「今、悩んでいる方に先生からのメッセージをお願いします」

そうですね。悩んでいる人ね〜。うーん。(しばし、沈黙)

一つはやはり、時間を待つということ。これは一次予防的な意味でなんですけれど、時を待つ。時が解決してくれるという面も大きいのじゃないんですかね。

運気ってあるからなぁ。波があるでしょう? 運気がすごく良い時と悪い時って、人間にはありますからね。だからそれは、いずれ必ず良い方向にいくからね。だから時間を待つ事が大事なんじゃないかってことです。

「時を待つ・・・」

あとは、頼るとか、助けてもらうとか、そういうのはすごく重要じゃないですかね。もちろん、節度があるから、頼り方もあるでしょうけれど、あまり突っ張らないで自分の弱さを出してみる。人に迷惑をかけちゃいけないけれど、頼るっていうのもいいんじゃないですかね。

病気的なものもあれば、それこそ精神医療というのは一つの頼るべき価値があるものだと、私は信じています。

だけどこれは、もちろん自戒の意味も込めるし、精神医療界の人に対する、我々専門家に対する啓発的な意味も含めてなんですけどね。患者さんからの信頼を受け止められるような形であって欲しいですよね。

医療経済とか考えたらなかなか難しい所もありますよね。やはり、人の悩みだけで食べて生きていくというのは疲れますよね。

やはり精神科医のメンタルヘルスというのも考えなきゃいけない。前ばかり向き合っていくっていうのはすごく難しいですよね。

「先生ご自身はセルフケアとして何かなさっていますか?」

昨日、相撲を見に行きました。野球を見に行くとか宝塚やお芝居とか。映画も好きだし。それこそ、ナルトを読むとか(笑)。

「気分転換をなさる?」

そうですね。オタク系ですからね。いろんなコレクションとか。そういう趣味もあります。

「支援者・援助者のバーンアウトが、今とても問題だと思うのですが?」

そこは、私もずっと管理職をやっていて、そういう問題は多かったですね。医者や病院のメンタルヘルスというのも手つかずなんじゃないかな。割と放ったらかされている分野ですね。

企業のメンタルヘルスを産業メンタルへルスセンターでやると言いましたけれど、最大の顧客になり得るのが病院ではないかなと思っています。

大学等だと精神科はあるけれど、自分のところの病院の精神科に罹りたくないですからね。精神科医自体のメンタルヘルスも重要ですね。精神科医というのは、変な人が多いっていうか(笑)、こころを病みやすい人が多いので。

「自殺率が一番高い職種と聞きますが?」

高いですね。だから、そういうメンタルヘルスというのも十分考えなくてはね。

あれやってますよね、『ドクター倫太郎』。精神科医の話なんです。あれ、名作ですよ。倫太郎は素晴らしい精神科医、大学病院のスター的な精神科医なんですよ。その倫太郎、あまり大したことない精神科医の友達がいて、家に来て「バカヤロー」とか言って愚痴るんです。ああいうのが、必要なんだなと。治療ということではないんですけどね。

「心理職・看護職・介護職もそうですね?」

看護職のメンタルヘルスも大学病院の管理者としてすごく困りました。心理職も精神科医と共通したところがあるから、メンタルな問題を抱えている方も多いですね。


インタビュー写真


「援助職のグループワーク等、先生のところでなさいませんか?」

やってみたいですね。そう思っていたんです。管理職としての経験から根ざす部分もあるかも。病院の中では、そのくらいメンタルで悩む人が多いんです。

「患者さんからのネガティブな影響については、どうすればいいのでしょう?」

患者さんからのネガティブな影響は、非常に大きいね。相当ダメージを受けますね。医師や心理職の二次的PTSDはありますね。患者さんに自殺された時は本当にこちらも自殺するんじゃないかというくらい、すごいダメージを受けます。

「そういう時に、駆け込み寺的なグループワークがあるといいですね?」

話してもらうのがいいのかな。

「守秘義務があって家族にも言えないので、集団守秘義務の中で話せたらいいですね?」

ストレス解消のための、勉強会とか、ケーススタディ。お互いの体験を検討する、技術論的な検討をするという形で、やっていけるといいかもしれませんね。そういうのをやってみましょうか。

「心の仕事を志す方へのメッセージをお願いできますか?」

心の仕事を目指したいという原点があるはずだから、その原点を見直して、見つめてみるというのが、大事じゃないかな。自分自身の原点、なぜそれを目指そうとするのか、自分が悩んで悩みぬいて乗り越えてきて得たものを他の人に与えたいという発想の方が、良いような気がします。

悩んでいるんだけど「治療を受けたい」みたいな感覚で、悩みながら…では、うまくいかないんじゃないかな。もちろん、完璧な人間はいないし、完成された人間なんていないから、未完成でいいのだけれど、病的なものをある程度、乗り越えた体験はすごく大事で、ちゃんと押さえていないと。

多くの精神科医を育ててきた経験から、精神科医には「オーソドックスであれ」といつも言っています。「奇を衒うな」精神医療が奇を衒ったら絶対間違う。正統派、オーソドックス、どちらかというと、直球、まっしぐら、という方がいいですね。

ユニークな治療で、「私は薬は一切使いません」「サプリメントを飲めば治りますから、サプリメントセラピーだけです」とか、それはユニークかもしれません。なんとか療法とか言うような、それ一本で行くと間違える。

極めて正当な、今までの精神医学の歴史を踏まえて、薬物療法、カウンセリング論、ストレス反応、心理的脆弱性理論とか、オーソドックスに正統派でなければいけない。それを本当にマスターして、身に付けて実践したなということを確認してから、ユニークなのをやればいい。

いきなりユニークなのをやる若い人が結構いるんですよ。「やめなさい」と言います。

野球で言えば、高校の時から癖のある下手投げのものすごい投げ方のピッチャーがいたとして、その癖球で勝負するというのはいけない。オーソドックスな投球できちんと勝負できるようになってから、それから癖球投げろと、いうことですよね。

「ベースはオーソドックスということですね?」

精神医療はこの時点でもある意味、完成されている部分もある。そういう正当なものを身に付けなければだめです。臨床心理もそういうことが言えるんじゃないですか。

「そういう意味では、チーム医療なら、さらに補完し合えて良いですね?」

そうですね。

「厚生労働省としては、今後、うつ病対策としてどんな取り組みがなされそうですか?」

ストレスチェック義務化は自殺予防対策との絡みでしょう。一番問題なのは、精神保健指定医の問題でしょう。指定医を廃止しようという動きすらあるとか・・・。考えられるのは、精神科専門医への一本化でしょう。専門医制度をさらに強化しますから、専門医が精神保健指定医の役を果たしても良いように思います。

「先生の今後の夢は何ですか?」

防衛医大をリタイアしたのですが、むしろ、「これから」という感じです。この組織(JDC:日本うつ病センター)は、準備にも力をかけているから、夢というほどの余裕でなくて、具体的にこれをやらなきゃいかんという必死な思いがあります。

「具体的には、どんな形を目指していらっしゃいますか?」

相談機能を強めてやっていくということです。狭いメディカルではなく、広い精神医療を目指しています。縮んだり広がったりと言いましたけれど、あまり縮ませて「医者だから薬しか出せません」というような対応ではなくて、チーム全体で、精神療法という大げさなものではなくても、相談機能を持つ。

心理士や看護師、精神保健福祉士など、コ・メディカルの持っている具体的なノウハウを引き出して、精神科医の持っているノウハウと併せて、利用してやっていくということですよね。

薬物療法だけでなく、患者さんに合わせた適切な心理療法・精神療法を組み合わせたチーム医療による、効果的で包括的な診療です。


<編集後記>

シックで、ホールのような空間が広がる「六番町メンタルクリニック」で、
野村総一郎先生のお話を伺いました。

研究のお話の時は、目をキラキラさせて熱く語られ、
診療のお話の時は、慈愛に満ちた優しい眼差しで
「必要だと感じたら、相談相手の1つとして精神医療を利用してほしい」と、
静かにおっしゃったのが印象的でした。

「精神医療では、患者さんの成長を妨げるから答えを出してはいけない」
「具体的に指示したら、その人の悪いところは治らず、むしろ強化される」
「だから、精神医療は答えを出すのではないんです」

カウンセリングマインドを、ここまで深くお持ちのお医者様がいらっしゃるのだ!
という、驚きに満ちた感動を味わわせていただきました。
病気だけを見ず、その方の心・人生全体の最善を希求する誠実さに胸を打たれました。

老子の哲学を日本人の精神医療に活かす試み、この野村先生の新たな挑戦は、
非常に楽しみです。ブームを呼ぶ予感がします。
あなたも、勉強会に参加なさいませんか?

野村 総一郎(のむら そういちろう)   六番町メンタルクリニック 所長
  一般社団法人日本うつ病センター(JDC)副理事長
  医学博士、精神保健指定医
  日本うつ病学会 元理事長

1949年広島県生まれ。1974年に慶應義塾大学医学部を卒業。
1985年テキサス大学医学部、メイヨー医科大学留学。藤田学園保健衛生大学精神科助教授、1993年に立川共済病院神経科部長を経て、1997年に防衛医大精神科学教授に就任。2012年から2015年3月まで、防衛医科大学校病院長・精神科診療部長。
日本うつ病学会理事長などを歴任。
現在、一般社団法人日本うつ病センター(JDC)六番町メンタルクリニック所長。
うつ病や双極性障害を専門とする。読売新聞「人生案内」の回答者を長く務めており、回答を担当した回を集めた書籍も刊行されている。

<野村総一郎先生のクリニックのHP>
【六番町メンタルクリニック】

<一般社団法人 日本うつ病センターのHP>
【一般社団法人 日本うつ病センター】

<野村総一郎先生の著書>
cover
図解やさしくわかる うつ病の症状と治療


cover
双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本


cover
人生案内 もつれた心ほぐします


cover
うつ病をなおす



インタビュアー:下平沙千代(しもひらさちよ)

下平沙千代

日本一やさしい女性ケアドライバーです。
タクシー車内がセラピールームになることも・・・、
アロマハンドマッサージや、ソース・ワークショップも開催しています。

ソース公認トレーナー、アロマハンドセラピスト、NLPセラピスト
レイキヒーラー、トラベルヘルパー、NPO法人東京シティガイドクラブ会員
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:比屋根章仁(ひやねあきひと)

比屋根章仁

呼吸を調え、自分を調える。毎日の生活をより豊かにしてくれる呼吸法を
お伝えしています。呼吸法を生活に取り入れると
日々のイライラから解放され、心も体もスッキリとしますよ!
アタマの中を「見える化」するメソッド、マインドマップもお伝えしています。

日本マイブレス協会ブレスプレゼンター、マインドマップ講師
HP:まなびの寺子屋
発行メルマガ:毎朝の習慣!自分道〜Making The Road〜


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、精神保健福祉士、認定THP心理相談員、統合心理カウンセラー、
米国NGH&ABH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

  • 呼吸法の日本マイブレス協会
  • 毎朝1分 天才のヒント

インタビュー集

  • 毎朝1分天才のヒント メールマガジンで30日間の無料レッスン
  • さぱりメント あなたのお悩みをさっぱり解決