第100回目(3/4) 野村 総一郎 先生 日本うつ病センター 六番町メンタルクリニック

老子の哲学を、日本人のうつ病の治療論として精神医療に活かしたい

インタビュー写真

「患者さんとの向き合い方で、気をつけていらっしゃることはお有りですか?」

ものすごく大きいのは時間との勝負ですよね。時間をしっかりかければ、いい治療としての一番大事な要件を満たせると思うんですけれど、時間をかけるということは、他の人を待たせる、ということですからね。

患者さんによってポイントが違うんですけれど、きちんとポイントを押さえてやる、ということじゃないですかね。それからやはり、コ・メディカルとの協力が重要なので、そこでもチーム医療になりますよね。

「一般社団法人 日本うつ病センター(JDC: Japan Depression Center)の活動について教えていただけますか?」

1974年にWHO(世界保健機構)がうつ病の予防・治療委員会、というのを作って、その日本支部JCPTDが母体になって、「うつ病を一般医療として、一般の患者さんに対して啓発していこう」ということで、市民公開講座や、“うつ病を知る日”というのを作って全国で相談会をやったり、そういう活動をずっとやってきました。

ですが、任意団体なので、資金的にものすごく難しくて活動に限界があった。「それを一旦解散して、診療部門を持ってやったらどうか」というアイデアの元にできたのがJDCです。

そこでは、クリニックの診療部門、いろんな職種の人と一緒にやっていく精神療法センター、それから産業メンタルヘルスセンター。今、企業の中でメンタル問題が非常に大きい。今年12月から施行されるストレスチェック義務化などもあり、企業でも戦々恐々としているので、それに対する受け皿も含めてやっていく。

「その三本柱で、包括的に運営なさるのですね?」

産業メンタルヘルスセンターは、産業医大前教授の中村純先生が所長になっています。我々はクリニックで診療することによって起こってきた病的な部分を診ていく。精神療法センターは、担当者を作って認知療法などを行っていく。

産業メンタルヘルスセンターのやり方は、今、企業といろいろ相談しているところなので、具体的な方法はこれからの段階ですが、企業からの相談に乗る、というセカンドオピニオン的な対応や予防的なものなどをやっていくことになると思います。

あとは、グループセラピーのようなもの。今やろうとしているのは、SST(Social Skills Training:社会生活技能訓練)のようなもので、SSTで職場復帰をやっている先生に来てもらうことになっています。精神分析のオリエンテーションをグループセラピーでやったりしたいです。朗読療法など、いろいろ計画中です。8月から始めようと考えています。

「今後、特にやりたいことはお有りですか?」

私個人というより、チームでやりたい。グループセラピーだったり認知療法だったり、精神保健福祉士(PSW)と一緒にやるような方向にできたらと思います。勉強会みたいなものもやりたいんです。

うつ病限定ではありませんが、実際にはうつ病、特に企業関係のうつ病対策ということを中心に置きたいというのは確かです。予防活動、一次予防は、市民啓発活動ということですね。

話がいろいろ広がっちゃうんですけれど、私は、老子の哲学を精神医療に活かせないかという野心を持っているのです。老子の哲学っていうのは、日本人のうつ病の治療論として読むと、非常に優れているのじゃないかと感じているんです。

老子って読んだことありますか?

「はい。少しは・・・」

いわゆる有名な言葉があるじゃないですか。曲なれば即ち全し(きょくなればすなわちまったし)とか。人間は曲がっていた方が、無事だっていう。

「柔弱謙下(じゅうじゃくけんげ)、弱い方が実は強いとか?」

そうそう。上善如水(じょうぜんじょすい)、和光同塵(わこうどうじん)とか。低レベルな人には交わることが大事だとかね。あと、プライドの問題ね。人間のプライドとか自負心の問題などを扱っているんですね。

それから、宗教的じゃないっていうところがいいんですね。哲学的ですよね。そういう老子の言葉を、精神医療の言葉に置き換える本を書いているんです。こういう事をやってみたいなと。治療論としてみたらそうなんですよ。


インタビュー写真


「まさに、老子はピッタリだと思います」

私、人生案内もね、時々、老子的なことを書くんですけどね。すごく評判がいいんですよ。

「それは響くでしょうね?」

だから、日本人というのは老子的な考え方を言って欲しいんだな、というのを感じるんです。

「特にうつになりやすい方には、必要だと思います」

そうです。そうなんですよ。だから、それでいいじゃないかと。ただ、無為自然を誤解して、無為自閉を促進する可能性があるので、その傾向の人には、気をつけなければなりませんが。

「それはまた違いますね?」

もちろん認知療法も好きなんですけれど、日本人に合わないところがあるんですね。認知療法が言っていることは、オバマ大統領が言ったみたいに「チェンジ!」でしょう? あなたは変わらなきゃダメだと。変わろうとすることが第一歩だということを、すごく強く言うんです。

でも老子はそうじゃない。「いいんだよ、それで」です。

「受け容れる・・・からですよね」

そうそう。そこをどうやったらうまく伝えられるんだろうか、ということですね。それを今、勉強しているんです。

「それは楽しみですね?」

それで、勉強会をやろうかと言いましたけれど、老子の大先生を呼んでくる勉強会ではなくて、非常に単純に、老子を読むというだけの会。

「一般人の為の老子の勉強会。いいですね」

そうそう。それを読んでどう思うかを語り合うような。例えば、「無為自閉を促進するんじゃないの?」という意見も出ると思うんですよ。それに対して、どういうふうに考え、老子だったらどう応えるかというようなね。

「結果、それがグループセラピーともなる訳ですね?」

そうそうそう。それをちょっとやろうかと。患者さんも集めてやってみてもいいかなと。

「患者さんの親にも良いと思います。子どもに期待をし過ぎている場合がありますから」

そうですね。儒教的な考え方で押し付けてきて、額に汗して働け、という孔子様の教えに固まり過ぎて、それがマイナスに働いて…という場合がありますね。


(次回につづく・・)

野村 総一郎(のむら そういちろう)   六番町メンタルクリニック 所長
  一般社団法人日本うつ病センター(JDC)副理事長
  医学博士、精神保健指定医
  日本うつ病学会 元理事長

1949年広島県生まれ。1974年に慶應義塾大学医学部を卒業。
1985年テキサス大学医学部、メイヨー医科大学留学。藤田学園保健衛生大学精神科助教授、1993年に立川共済病院神経科部長を経て、1997年に防衛医大精神科学教授に就任。2012年から2015年3月まで、防衛医科大学校病院長・精神科診療部長。
日本うつ病学会理事長などを歴任。
現在、一般社団法人日本うつ病センター(JDC)六番町メンタルクリニック所長。
うつ病や双極性障害を専門とする。読売新聞「人生案内」の回答者を長く務めており、回答を担当した回を集めた書籍も刊行されている。

<野村総一郎先生のクリニックのHP>
【六番町メンタルクリニック】

<一般社団法人 日本うつ病センターのHP>
【一般社団法人 日本うつ病センター】

<野村総一郎先生の著書>
cover
図解やさしくわかる うつ病の症状と治療


cover
双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本


cover
人生案内 もつれた心ほぐします


cover
うつ病をなおす



インタビュアー:下平沙千代(しもひらさちよ)

下平沙千代

日本一やさしい女性ケアドライバーです。
タクシー車内がセラピールームになることも・・・、
アロマハンドマッサージや、ソース・ワークショップも開催しています。

ソース公認トレーナー、アロマハンドセラピスト、NLPセラピスト
レイキヒーラー、トラベルヘルパー、NPO法人東京シティガイドクラブ会員
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:比屋根章仁(ひやねあきひと)

比屋根章仁

呼吸を調え、自分を調える。毎日の生活をより豊かにしてくれる呼吸法を
お伝えしています。呼吸法を生活に取り入れると
日々のイライラから解放され、心も体もスッキリとしますよ!
アタマの中を「見える化」するメソッド、マインドマップもお伝えしています。

日本マイブレス協会ブレスプレゼンター、マインドマップ講師
HP:まなびの寺子屋
発行メルマガ:毎朝の習慣!自分道〜Making The Road〜


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、精神保健福祉士、認定THP心理相談員、統合心理カウンセラー、
米国NGH&ABH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

  • 呼吸法の日本マイブレス協会
  • 毎朝1分 天才のヒント

インタビュー集

  • 毎朝1分天才のヒント メールマガジンで30日間の無料レッスン
  • さぱりメント あなたのお悩みをさっぱり解決