第99回目(2/4) 岩松 正史 先生 傾聴講師 株式会社あえるば

相手の気持ちに耳を向ける。そして、相手をそのまま受けとめる傾聴

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「突破口は何でしたか?」

突破できた感覚は今でもないです。ただ反応が変わってきたと感じるひとつの要因は、インターネットですね。当時はホームページから申込みが来るというのはなかったんです。FAXや電話からの申込みでしたが、5年くらい前からインターネットから申込みが来るようになりました。

あともうひとつは東日本大震災の少し前あたりから“傾聴ボランティア”が世間で認知されるようになって、行政など公の団体が“傾聴ボランティア”の養成をするようになりました。傾聴という言葉を知っている人が増えてきて、聴く研修を取り入れようかという企業が増えて、よいきっかけにはなりました。3年くらい前にはテレビから傾聴の専門家として意見を訊きたいという取材を何件か受けました。

「震災後はいかがでしたか?」

傾聴のメルマガを出しているんですけれど、震災後は半年間で登録者数が一気に10倍に増えたんです。気持ちはわかります。現地に直接行って手伝いたくても何もできない、当時、この辺(飯田橋)も被災者の方が結構いたんです。

被災者の方と接する機会はあるけど、結局何をどうしていいかわからない閉塞感から、聴くくらいならできるだろうと思った方が多かったのかなと思います。現地に行って話を聴くボランティアをやろうという人もいて、そういう思いがあって増えていったというのがたぶんありますね。

あと介護施設です。ここ数年は介護施設の競争が激化していて、一次産業、ニ次産業を昔やっていたところで介護に参入するところが多いようです。造船業をやっていた知り合いの会社も今、介護事業をやっています。

昔は「傾聴ボランティアに行きます」って介護施設に行っても、ほとんど門前払いだったんです。それが最近ちょっと違います。ボランティアというだけでとりあえずウェルカムという状況のところもあって、傾聴ボランティアは比較的入りやすくなって、傾聴の講習に実際に来る方も増えた気がします。

「傾聴講座が波に乗り始めたのはいつ頃でしょうか?」

ここ3〜4年ですね。ずっと前年より需要は増えています。

「どういった方が受講されているのですか?」

バラバラです。学生さんも来ます。平均して多いのが癒し関係のお仕事をしている方です。看護、介護、整体師、鍼灸、セラピスト、学校の先生。あと面白いのが占い師さんも来ました。

占い師さんが来た時に『占いがあるんだから傾聴を学ばなくてもいいじゃないですか?』と訊いたら、占いしている時間より話をしている時間の方が長いんですって。だから占いが良くても、ぽろっとマズイことを言っちゃったりすると、占いそのものの信頼性がくなってしまうんだとか。

男性でいらっしゃる方は企業の方が多いです。男女比も半々ですね。女性が多いということは特にありません。

「男性は管理層の方が多いのですか?」

そう思うじゃないですか。でもそうとも限らないですね。リーダーの方、まとめ役くらいの中堅の方もよく来ます。

「コミュニケーションの中で傾聴が必須だというのが、浸透してきたのでしょうか?」

必須だろうなという感覚は浸透してきたのではないでしょうか。企業研修で聴く研修をされているところは増えたと思います。

でも聴くという言葉は抽象的な言葉でして、何をどう聴くってことを突き詰めていくと、その目的は企業によってバラバラだったりします。お客様のためと言いながら自分のためだったり。今が丁度、言葉だけが広がり過ぎた傾聴の、淘汰の時代の始まりかなという感じです。

「先生は“聞く”を3つに分けていますよね。そのあたりを教えていただけますか?」

一般的には「訊く」と「聞く」と「聴く」があると言われていますが、僕自身は分類にはあまり興味はないですし、別に傾聴しなきゃいけないとはこれっぽっちも思ってないんです。

傾聴は別にしなくてもいいんですけど、傾聴みたいな聴き方ができないが故にコミュニケーションが今すれ違っている。それで中々うまく解決できなかったりすることが多々あるという人は、傾聴という引き出しを増やせば楽になるかもと思います。

僕自身がいろいろカウンセリングの学校に行った中で納得できなかったことは「聞くと聴くの違いはなんですか?」と質問した時に、僕が理解できるように説明してくれた先生は一人もいなかったんです。

特にガッカリしたのが、「傾聴の『聴』という字は、耳編に十四の心と書きますから14個の心、つまり沢山の心を持って聴くんですよ」って言われたことです。そう言われて皆さんできますか? 心がけとして「ああ、そうなんだ」とは思いますけど、技術としては使えないと思うんですよ。

「では傾聴は心がけなんですか?」と訊くと「いや、技術です」って言うんです。「技術なら14の心を教えてください」と言っても、誰も教えてくれない。それ以上深く知ろうと質問すると先生に嫌な顔されるんです(笑)。

これだと人には伝えることができないと思って。以来、人に何かを伝える時にはできる限りクリアに伝えよるよう自分なりに工夫をしています。


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「情報収集の訊く、一般会話、傾聴と御著書にありますが、一般会話と傾聴は何が違うのでしょうか?」

一般会話と傾聴の違いを説明すると、よく一般会話が悪いと批判しているように誤解されるので、そうではないということを前提にお話しますね。

一般的な会話の場合は、先に話題があります。僕はよくディズニーランドを例に使うんですけど、『ディズニーランド行ったんだ』とAさんが言ったとしたら、その話題についてBさんが反応する。

『何に乗ったの?何食べたの?誰と行ったの?』とBさん自身が疑問に思ったことを質問したり、意見を言ったりする形が一般的な会話では多いかなと思うんです。ディズニーランドという事柄を中心に会話は続いていきます。

でもBさんはAさんの想いがわかったかというと、ディズニーランドのことはわかっても、Aさんの想いは多分わからないんですよ。AさんとBさんは内面的に繋がっているというよりは、お互いの話に触発されて自分の言いたいことが湧き出てきて、相手の話が途切れたら自分の言いたいことを話すだけ。これが一般会話の構造です。

お互いにボールを投げ合う、つまり自分の価値観と同じか同じじゃないかを軸に聞いて、お互いに思ったことを自由に言い合うというのが一般会話ですね。

傾聴は一般会話とはまったく別のことでして、人の気持ちを聴くというと抽象的な言葉になってしまうんですけど、まず中心にAさんという人物がいます。Aさんの周りにはいろんな話題があるんですね。

「Aさんの気持ちを聴く?」

ディズニーランドや仕事や家族、趣味の話など山ほどあるんですけど、Bさんは何を聴くかというと、その話題について語っているAさんがその話題についてどう思っているか、どう感じているか、その想い、感じ方、意味や価値に耳を傾けます。

傾聴だと、ディズニーランドに行ったんだと言われたら、耳はどこに向いているかというと、あなたにとってどうだったの?楽しかったの?嬉しかったの?というところに耳を向けながら聴きます。どこに耳を向けているかの問題です。

仕事をしている方に、「聴き方を使い分けていますか?」と質問すると「はい」と答える方が2割くらいいます。その2割の人に「どういう風に使い分けていますか?」と質問すると、「相手が大事なことを話している時は、できるだけ口を開かないようにしています」と、大体こう答えます。

でもこれは聴き方ではないんですよ。ただ口を開かないという行為です。僕が言っている聴き方は、耳がどこに向いているかです。その時に口を開かなくても、情報収集したり、一般会話のように知ってる知ってないに耳が向いているのであれば、それは傾聴ではないでしょう。

「そのあたりが一般の方は中々ピンとこないと思うのですが?」

そうですね。こないですよね。同業者の方の中でも、私にとっての傾聴はこれですよと明確に自分の言葉で伝えられる方があまりいない気がします。

「では先生の傾聴を教えてください」

まずは傾聴の目的からだと思うんですけれど、傾聴の講座に来る方の目的もいろいろです。お客さんに物を買わせたい、クレームを言うお客さんに早く帰って貰う為の傾聴とか(笑)、いろいろと傾聴の要望があるんですけど、結局、相手のことはわからないわけですよ。

お客さんが買ってくれるとか、帰ってくれるとか、その当人の心がそう思えば自然とそうなるわけです。僕がお伝えしている傾聴は、その気にさせたり気付かせたりさせる傾聴ではなくて、相手をそのまま受けとめる傾聴、その一言につきます。そのままがポイントです。

よく「ありのままの姿を見せる」と言いますけど、ありのままって何かと言うと抽象的でしょ。ありのままって言葉は、良いことばかり見るような表現に使われることが多々あるので、僕は使いません。そのままです。失敗した自分だってありのままといえばありのままでしょう。

良い部分のありのままは受け入れるけれども、悪いところのありのままは受け入れませんというのであれば、僕がわかりたいありのままではないです。あなたが良くても悪くても私は側にいるよ、という聴き方をしたいなと、それが僕がお伝えしたい傾聴ですね。

「この傾聴の良さは?」

僕が傾聴が少し身についてきて楽だなと思うのは、誰の話でも聴きやすくなったってことですね。相手が喜んでくれるかどうか、気付いてくれたかに僕は関心がないんです。

例えば、僕が知らない難しい政治の話や、自分に興味のない趣味の話を相手がしたりすると、昔ならこの事柄を知らないから聴けないなと思っていたんです。でも事柄なんて関係ないんです。傾聴は、そのことについてその人がどう思っているか、どう感じているかをやりとりするだけなので、その人が嬉しいとか、もやもやすると感じているならそこに関わって支えていけばいいだけなんです。

事柄はどうでもよくて、思いを受け取れればいいとわかってから、人と会うことが怖くなくなりました。これが決定的に僕にとって良かったことですね。

「受講生さんにも同じような変化があったのですか?」

8年やっていると受講生さんのその後の様子をたまに聴くことができます。皆がパーフェクトに素晴らしくなったと言う気はありませんが、受講生さんで講座後も日々習ったことを使っている方の中から、聴けたという体感が持てましたという声を聞きます。この声が一番ありがたいですね。本人が楽になった感覚を持っていただけるのが、僕にとって一番の喜びです。

「この話題の時は傾聴スイッチを入れて聴こうと、自己コントロールする感じですか?」

話題というより、今聴きたいかどうかでスイッチを入れます。だから聴いてあげるべきかどうかは申し訳ないですけど僕の中ではあまりないですね。もちろん仕事であれば必要な時はやりますけど、結局無理して頑張ってもスイッチが入らない時は入らないでしょ。

入りやすくするために訓練はしているつもりですが、聴けない時に無理して自分に何かをさせることはクライアントさんに失礼だと思うんですよね。これは僕の持論なんですけれど、人は自分を見るように他人を見るところがあると思うんです。

自分に厳しい人は他人にも厳しくて、自分の足りないことが目に付きやすい人は、人に会った時、「あなたここ足りないよ」が目に付きやすくなります。これは仮説ですが、自分ができないなと思った時も無理して頑張る癖がついてる人は、他人が頑張れない時に無理して頑張らせようとしたりすると思うんですよ。

そういう人はきっと、自分自身ができないことができるようになったら人生良くなるという感覚を、持っている人なんだと思うんです。

とすると僕がやりたい傾聴はそれではないんです。僕はできるようになったらOKを出したいのではなくて「できない今のあなたの側にもいますよ」っていうことをお伝えしたいので、僕自身ができないことを僕自身が受け入れていないと、クライアントさんにそのまま伝わるだろうと思います。

つまり口ではそのままでいいと言いながら、実際相手には「あなた、できるようになりなさい」が伝わると思うんです。僕は申し訳ないけどできない時は自分のハードルを無茶苦茶下げて1でも聴けたら良しとすることにしています。そういう意味でのスイッチは入れるようにしています。

「できない状態の時はやらない?」

それでもやらなきゃいけない場合があるじゃないですか。その場合は、自分の中のハードルを下げますね。疲れている時や忙しい時に無理に聴こうとしたら、カチンときて余計なことを言ってしまったりして、相手も傷つくんだけど、自分も傷つくと思いませんか? だから自分を責めないと決めています。

でも実際問題として立場上やらないといけないような時もありますよね。例えば以前、講座当日なのに体調管理ができていなくて声が出なかったことがありました。のどを痛めてしまって、ちゃんと進行ができない、情けなくて自分を責める要素が沢山あるわけです。でもその中でもベストを尽くしたら良しとして自分を責めないことにしています。

なぜかというと、自分を責めると人を責めたくなるんです僕は。だから我慢して頑張って聴ける方はどうぞ聴いてくださいと言います。僕は我慢して頑張って聴くと必ず他人に何かを求めたくなるので、僕も傷つきたくないし他人も傷つけたくないので、僕は聴けなくても仕方がないよねっていうことにしています。その方が翌日からよりよくしたい意欲が湧くんです。

以前傾聴を20年教えていますという先生が私の講座にいらしたことがありました。その時いまの話をしたらめっちゃ怒られましたね(笑)。「それはいけません。相手が聴いてほしいとおっしゃっているのですから聴いて差し上げねばなりません」と言うんです。「僕はそれができないので、先生はどうぞ聴いてください」って言いました。できない自分を受け入れられるかどうかは、上手に話を聴く時の大きなポイントになると思います。

「自分も他人も傷つけない聴き方・・・」

結論を言いますと、傾聴は相手の話を聴く技術じゃないんですよ。それは目的として一応は言いますけど、本当は結果なんです。傾聴というのは、そのままでいいよねと自分自身に思えたら、結果的に相手の話も聴きやすくなるというだけのことなんです。自分の心をよくよく傾聴しようとすることです。

心の中に思いはあっても、その思いが相手に中々うまく伝えられないということもあります。例えば落ち込んでいる相手に何かいいこと言ってあげないとと思って、いらない励ましの言葉をかけて傷つけてしまったりします。知識や技術は自分の気持ちを誠実に表現するためのただの手段です。

相手が変わるとか、変わらないとかはわからないからどうでもよくて、自分自身がそのままで良いと感じている、それでちゃんと相手とやりとりができている。結果、相手が喜べばそれも良し、喜ばなくてもそれも良し、それがそのままを認めるということでしょ。


(次回につづく・・)

岩松 正史(いわまつ まさふみ)   傾聴講師 心理カウンセラー
                        株式会社あえるば・飯田橋カウンセリングオフィス代表
                        産業カウンセラー、心理相談員

長野県出身。東海大学政治経済学部卒。
コンビニエンスストア本部スーパーバイザー、システム開発プログラマーを経て大人の教育をする会社、株式会社あえるばに入社。2006年に横浜でカウンセラーによる無料悩み相談会を立ち上げ、多く人のサポートをしマスコミにも取り上げられる。2007年から引きこもり支援NPOの相談員を務める。
2010年から東京都千代田区、台東区の傾聴ボランティア養成講座に関わる。
2012年は飯田橋カウンセリングルームを立ち上げカウンセリングやセミナーを開催している。
その他、企業、団体向けのメンタルヘルスケア研修、講演だけでなく保育園、小学校、子育て支援施設などでのコミュニケーション講座の経験を持つ。
また厚生労働省管轄の神奈川県西部地域若者サポートステーション事業の立ち上げメンバーの一人として、1年で100回以上の面談を行った。
「脳と心を開いて人生を開く」を信条としてカウンセリングの枠にとらわれず心のエネルギーを上げると手伝いとしてアクティブ・ブレイン記憶術、アクティブ・ダイエットなども全国で展開。協会認定マスター講師を務める。
傾聴講座の開催は100回、800人を超える。

<岩松正史先生のHP>
【初心者のための傾聴1日講座】

<岩松正史先生のブログ>
【聴く人が楽になる傾聴スキル】

<岩松正史先生の著書>
cover
「ねえ、私の話聞いてる?」と言われない「聴く力」の強化書



インタビュアー:福田りこ(ふくだりこ)

福田りこ

あなたの中に隠された宝の箱を開けてみませんか。

潜在意識に直接アプローチする心理療法を中心に、
自己受容と自己変容のプロセスに寄り添って行きます。

心理カウンセラー
米国催眠士協会認定ヒプノセラピスト
HP:セラピールーム・サンクチュアリ


インタビュアー:大島まさあき(おおしままさあき)

大島まさあき

大島まさあきと申します。年齢は木村拓哉さんと同級生になります。

現在、働く悩み専門カウンセリングを行っています。
小田急 新百合ヶ丘で活動しています。
働くことに苦痛、違和感を持ったまま働き続けると
人生の大きな舵取りを誤る可能性があります。
自分を見つめ直す機会を持ってみませんか? お気軽にご相談下さい。
HP:働く悩み専門カウンセリング


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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