第95回目(3/4) 二神 能基 先生 ひきこもり支援

日本の親は、飛べ飛べと言いながら、足首をつかんで離さない

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「ニュースタートのひきこもり支援は、どういうプロセスでなさるのでしょうか?」

君らは21世紀に生きるので、親とは違う21世紀の新しい幸せ度みたいなものを作ってやっていくんだということを、何とか彼らの思考の中に入って行く様にしています。自分らは敗者じゃないよと、すごく良い面を持っているんだよ、という部分をいかに引き出すか。

僕は「二神の21世紀講座」というのを新入寮生にはやるんですよ。今までの常識を疑えよ、これからは多分違う世の中になるよと、という風に頭をほぐす。結構刷り込まれていて、敗者になると余計にそれに執着するみたいなんだよね。働かないと俺はダメだみたいに思い込んでいるけど、別に働かなくても良いじゃないかと、そういう考え方を一度入れてやらないとね。

「ひきこもりの支援では、家から離れることは大事でしょうか?」

やっぱり難しいのは、家の中は20世紀なんですよ。どうしても親の考え方がね。だから家の中に居ると、20世紀の方へどんどんと引きずり込まれている。ひきこもりが長期化している子が来た時に一番困るのが、思考が古いんですよ。それでは出口はなかなか見つからないよね。

いわゆる良い学校から良い会社へという路線で言えば、そこから外れているのに、目指す方向がそこだと、やっぱり自分はどうにもならないみたいな。もっと違う幸せ、生き方、働き方みたいな方向へ目を向ければ、いくらでも展望は開けるという事を伝えないと。

「その為に一度親と離して、20世紀的な考え方から切り離すということなのですね?」

そうそう。やっぱり新しい時代に向けてルネッサンス的思考みたいなのを受けさせる必要があるから、そういう場としては日本の中では一番進化している場所だと思いますよ。現実に若者達を見ていて、少しずつ顔が変わっていくのは、その辺の思考が柔らかくなることによって変わっていくね。

「レンタルお姉さんというのは、どういう働きかけをするのですか?」

それは、もうケースバイケースだね。僕はどちらかというとゲリラ戦だと思っている。

「訪問活動の目的としては?」

家から出すことだね。一人暮らしでもいい。家から離れることから始めないと出発できない子どもがいっぱいいる訳です。長期化している子どもは、まず何をすべきかというと、親から離れて、親から離れた自分を見つめる。

初めに言う訳ですよ。「この子は半年以内に家を出すことが目的。その為のレンタル活動ですよ」と。反発くらってもいいから、結果として家を出れば良いレンタル活動でした、ということです。もちろん、そこには信頼関係みたいなのが必要だと思うけどね。ただ、それだけを言っていると動かせない場合が多いんで。「どこかで啖呵きって喧嘩しろ」とか(笑)。

家の中にいると、果てしなく洗脳されている。社会が両親だけになっちゃう訳だよ。どこか妙な反発心があるけど、頭の中は親の価値観に染まって動けなくなっているから、親子でない自分を見つけるためには、まずは離れないといけない。長期化している引きこもりの子どもについては、家にいるままでは難しいね。

イタリアプロジェクトの時にね、最後に迎えに行くんですよ。それでイタリアの心理学者なんかと、この子は日本に帰ったらどうしなくちゃいけないかなと話す。あの時ショックだったけど、「この子はすごく良くなった。だけど、この子は家に帰って玄関を開けてお母さんと目と目が合った途端に元に戻る」って言うんだ。「まさか」と思ったけどその通りだったよ。家っていうのは、何年もいたところだから、やっぱり力があるんだよな。

家に戻ると一瞬にして戻ると言われて、冗談だろうと思ってたら、実はそうだった。だから、やっぱり家から離さなくちゃいけない。イタリアから戻った奴は家には帰さないっていうルールを決めて、切り替えていった。

「親から離す、その後は体験を積むのですね。どんな体験をしていくのですか?」

そうそう。まずは仕事体験。それと寮でいろんな雑談をする。いろんな奴と話すといろんな考え方がある訳じゃないですか。家の中で凝り固まっていたものが、話してみるといろんな考えがあるなっていうのに気がつくと随分とラクになってくる。そこが、非常に大事ですよね。

最近もう一つ感じている問題っていうのは、イタリアのプロジェクトで、イタリアの人はアフターケアとして、若者だけの会、親の会、両方が一緒の会っていうのをずっと運営していたんです。そうしたら、7年目にイタリアの連中が話があるって言うんで行ったら「親の会は解散だ」と。

親は「毎回、いいお話しばかりで」と喜んで来ていたんです。だから「どういうことですか?」と訊いたら、イタリアの連中が言ったのは、「日本の親は、飛べ飛べと口では言いながら、足首をつかんで離さない」。これは、日本の独特の親子関係の問題だね。

親は、子どもが寮に入ったら、逐一自分の子どものことを知りたいんですよ。これは、足首をつかんで離さないというのとつながるんですよ。殆んど無意識なんだけど、自分の管轄下に置きたいんだよね。子どもの事を忘れて、親はもっと人生を楽しんでくれって思うんだよ。

「親が子離れできていないのですね?」

口では子離れって言いながら、足首をつかむっていうのは、日本独特の親子愛みたいな部分なのかね。それが、団塊の親の世代なんかは、特に濃厚にありましたね。心配し過ぎなんですよ。信じて待つなんて言ってるけど、あれはウソで、全然信じてないんだよな(笑)。

だから、「この子は親元にいるからダメなんで、出せばちゃんとやれるんだ。そこを信じ続けて背中を押し続けなさい」という風に言うんだけど、本人は信じているつもりだからね。ところが話していると心配事しか言わないんだよね。子どもの様子を聞くのでも、心配事だからね。

息子が30代で寮に来るじゃないですか。もう毎週電話してくるお母さんがいる訳よ。「うちの子はちゃんとご飯食べてますか?」って。「お宅の息子さんはいくつですか?」って聞いたら、「34歳」って言うんです。こうなると、自立はできないよね。

子どもには伝えないけど、その空気を子どもは感じているんですよ。親離れ子離れっていうのは、ある年齢で必要。それで親子が切れる訳じゃないんだけどね。講演をする時は親が多いから、それを言うんだけど、なかなか入らないね。


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「ニュースタートで大事にしているものを、教えていただけますか?」

ワークライフバランスの一つの表現として、ニュースタートには、「仲間」「働き」「役立ち」というのがある。仲間とプライベートな時間を楽しむのはとても大事だし、役立ちたい願望は結構強いなと思います。役立ちの場みたいな、ボランティアの輪みたいなのに参加して、そこで人生の喜びみたいなものを感じる。

それと「働き」については、働くのが嫌になった奴が来ているので、「一番嫌でない仕事で食い扶持くらいは稼ごう」としか言わないんです。「仕事なんて、人生で3分の1だ。生きがいを仕事なんかに求めるな」って。仲間とか、役立ちとかこの3つのバランスの中で、自分の生きていくことの喜び、幸せみたいなものを見つけたらいいと言っています。

これはイタリアの連中に最初に言われていたことなんですけど、「3つの世界を持たせるべきだ」って。ところが日本は、正社員になると、「この一つの世界で生きなさい、全部面倒みますよ」みたいな、窮屈な生き方になる訳で、それで報われる正社員システムかっていうと、経済的にはそうかもしれないけど、彼ら自身が求めているものは、もうちょっと全体的な人間的なものですね。

「仲間」「働き」「役立ち」の3本柱の人生の中で、幸せみたいなものを創っていこうって、これは繰り返し言ってる言葉なんですよね。

「現在の日本の就労支援については、どうお考えですか?」

今、“若者支援”って言うと“就労支援”のことばかりで、“若者支援”にはなっていない。“就労支援”って言う以上は、“人生支援”でなくてはいけない。或いは、“幸せ支援“でなくてはいけないんだけど、真面目な人ほど、“就労支援”の方に行ってしまう。

厚生労働省も何%就労したかなんて、すぐに言ってくるんで、しょうがない部分もあるんですが、もっと視野を広げないと就労支援にもならないって見ているんです。ニュースタートでは、女の子には嫌われながら、僕は、ニュースタートが若者に与えられるとすれば、仕事力と結婚力だと言っているんだ。

「仕事力と結婚力について聞かせてください」

結婚力っていうのは、哲学のところで行き詰っているんですよ。若者達は仕事ができないと、結婚はできないと思い込んでる。そんなことはないよと。ニュースタートの若者が、ニート婚というニート同士の結婚をしてくれて、そういうモデルがあるのは、有り難い訳ですよ。彼らはニート婚で幸せそうにやっている訳で、そういうのもありだよと。

20世紀型の価値観にまだ捉われていて、男は仕事、女は家庭みたいな、まだそんな風に考えているとニートは結婚できないという論理になっちゃう訳じゃないですか。だけど、それは人生をすごく貧しくするよ。

僕は、婚活には順番があって、「婚哲・婚育・婚活」。結婚の哲学のところでつまずいている奴が、婚活なんかしても仕方がないんだ。経済だけの結婚じゃない、人間としての結婚にはいろんな結婚があっていいんだっていうのを、まず言ってやる必要があって、婚活まではなかなかいかなくてね。

婚哲のところを、ニート婚をした若者の子どもを抱えて仕事してる姿を見て、感じて欲しいなと思うね。婚哲が一番大事だね。そこのところで、大半の子が諦めつつあるからね。それは少子化の問題でもあるんだけど、それ以前に、幸せ像が著しく狭くなるんですよ。一人で生きていく力のある奴は大いにそれでやればいいけど、大抵は普通の子だからね、やっぱり普通にやるのがいいよ。

若者達に、「お前らどうなりたいんだ」って聞いたら、殆どの子の答えが、「普通になりたい」って言うんだよ。偉くなりたいなんて思ってないんだ。上昇志向もとても低い。

みんな「家族を作って、仕事は面白くはないけど、何となしにやっていたら、楽しい部分も見つかってきた」みたいなそんな構造があるんで、仕事力と結婚力っていうけど、それは二本立てじゃない。それは、背中合わせでくっついている問題で、結婚して子どもができれば仕事力は自動的についてくる。そういう問題で、仕事だけで仕事力がつくかっていうと、人間ってそんな単純な動物じゃないよってことです。

「御著書の中に、『ひきこもり一年経ったら外に出せ』というのがありましたが、1年というのはターニングポイントですか?」

それ以上は、休憩にならないね。いろいろと疲れて休み時間、そっとしてやる時間というのは、僕も必要だと思うんです。基本的にいえば、休みは半年もあれば充分だね。後は、そこで休んだ惰性でズルズルと行っていて、本人の中では、そこいら辺から結構焦りみたいなものが出てくるんですよ。ですから、結果として出してやる方がいいよねと。

豊かなひきこもりというのは、非常に能力のある子には有り得ると思うんですよ。十年、二十年すると作家なんかも出てくるかもしれない。だけど、普通の子はひきこもったままでは生きていけないんだから、一年くらい休んだらもう充分だから、何かのきっかけで引き出してやることです。

僕は、「体と心が死んでいく」という言い方をするんだけど、どこか不安なので、いろんなことに手を出さない、刺激を受けないように自分を守る。そうするとね、体と心が死んでいくなって。

「退行現象が出るのですね?」

そうそう。5〜6年前にひきこもりのお遍路をやったけど、若者はお遍路に期待をしてくる訳ですよ。だけど、初日なんか30分しかもたない。歩くことじゃなくて、暑くて陽に当ることにやられるんです。ひきこもってるから、陽に当ってないからね。本人のお遍路に対する期待もあり、歩かなくちゃと思っているんだけど、それ以前に日光でやられちゃう。

まずは体を生き還らせることが要るんだなあと。お遍路は効果的ですよ。体が生き還ることで、心も動き始める。


(次回につづく・・)

二神 能基(ふたがみ のうき)   NPO法人ニュースタート事務局 理事

1943年生まれ。
愛媛県松山市での中学受験塾、幼稚園経営などを経て、1994年、目標を喪失した日本の若者をイタリアに送るプロジェクトを7年間展開。
1999年、ニートを支援するNPO法人「ニュースタート事務局」を千葉県市川市に設立。
これまで、40年にわたって育成、相談に携わった親子は4000組を超える。
早稲田大学講師、千葉県・内閣府等の委員を歴任。

<二神能基先生のHP>
【NPO法人ニュースタート事務局】

<二神能基先生の著書>
cover
働かない息子・娘に親がすべき35のこと


cover
希望のニート〜現場からのメッセージ〜


cover
ニートがひらく幸福社会ニッポン


cover
暴力は親に向かう―すれ違う親と子への処方箋



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:福田りこ(ふくだりこ)

福田りこ

あなたの中に隠された宝の箱を開けてみませんか。

潜在意識に直接アプローチする心理療法を中心に、
自己受容と自己変容のプロセスに寄り添って行きます。

心理カウンセラー
米国催眠士協会認定ヒプノセラピスト
HP:セラピールーム・サンクチュアリ


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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