第95回目(2/4) 二神 能基 先生 ひきこもり支援

二ートは脱落者じゃない。ニートこそ、21世紀の希望

インタビュー写真

「現在のニュースタート事務局の事業内容について教えていただけますか?」

最初から、基本的には三点セットと言っているんだけど、まずは訪問活動。ひきこもりの子はイタリアンプロジェクトやるんだけど、親は行かせたくてたまらないのに本人は説明会には来ない。スタッフが「来ないんなら、行けば良いじゃないですか」って言ったのね。行かないと始まらないから、訪問活動が始まったのね。

ネーミングが珍しかったのかな。厚生労働省が嫌う「レンタルお姉さん」でやったんだけどね。メンタルフレンド、心の友みたいなのは派遣できるのかと、基本的な疑問があった。心の友というのは自分で選び取るもんだろうと。メンタルフレンドなんて言えないよ。

うちなんかが派遣できるとすれば、「レンタルお姉さん」「レンタルお兄さん」しかないと思ったんだけど、未だに馬鹿にしてる人はいるよね。やっぱりメンタルフレンドでないといけないと。心の友を派遣できると思うのは専門家の思い上がりだよ。

それと、「レンタルお姉さん」は、厚生労働省がやろうとしている訪問活動とは、入り口から違う。厚生労働省の訪問活動は、本人が来て欲しいという場合しか訪問活動ができない訳ですよ。そのレベルの訪問活動は、僕にとってはあんまり意味がなくて、絶対に拒否するやつのところにこそ行かなければいけない状況があるんで、出発点が全然違うんです。

本人がYESというところにしか訪問活動できないという話になっているから、厚生労働省の訪問活動は何度も試みるけど、いつも途中でダウンしてしまう。

人間の心は作用反作用だから、こういう風に働きかけるとこういう反作用が出ましたという反作用として、この子は家を出すことがまずは必要だということになれば、まずは家を出すための訪問活動と決めて、結果として出せと僕は言っています。

高塚先生と重なり合う部分は、実はそこにあってね。カウンセリングだけしててもどうしようもないレベルの子ってかなり居る訳じゃないですか。その路線で行くと、だいたいうまく行ってないじゃないですか。

「結局、変化に繋がらないということですね?」

そうそう。ある程度思考力のある子、ある程度体験している子は、そこから進めるんだけど、非常に体験不足の子は少ない体験の中で結論を持っているから、言葉をかけてみても動かしにくいんですよね。それより、いろいろと違う体験させる、いろいろな人に会うことですね。

例えば、うちはイタリアの留学生が来るじゃないですか。存在が非常に大きいんですよね。ローマ大学の7年生、8年生とか、暇でしょうがないからニュースタートに来るかということで来て、自分の現状に対する捉え方が違う訳ですよ。良い時間を与えられてるから、いろいろやってみようと思っている。

日本じゃ「いい年して仕事してないのは、けしからん」みたいに言われるけど、イタリアは失業率が高いから、仕事してないというのは、そう大袈裟な問題でもない。彼らが、みんなにいい影響を与えてくれる。

何かしなくちゃいけないみたいな時間ではなく、与えられた時間をもっと積極的に活かして、一回り大きく、いろいろな事を柔らかく考えてみようという雰囲気でね。だからイタリアの学生を受け入れ続けている。

「ニュースタートの三点セットとは?」

先ほどの訪問活動と、寮での集団生活・人間関係、それから仕事体験の三点セット。

精神科医の顧問の先生が居るので病気が疑わしい子はそこへ連れて行くし、かなり本格的にカウンセリングが要るなという子は、清里のカウンセリングホームへやるんですけどね。その他の日常的な相談そのものが、全てカウンセリングだと基本的には思っているけどね。

「ニュースタートの強みは?」

やっぱり総合的な提案だね。病院で病気の治療だけしていて良くなるかというと、それではなかなか良くならなくて、もうひとつ希望が持てる様な何かをやってみる。人間との付き合いでいろいろな人と話すみたいな。そういうものがなくて、薬の治療だけやっているとどんどん病気の方に追いやられていく気がする。

その辺りは精神科の先生がよく理解してくれていて、病気をうまく食い止めている。違う体験をさせる、いろいろな人間と触れ合い話をする。そういうのを組み合わせた中にカウンセリングを含める。これだけで一点突破というのは、できる子もいるけど、普通の子は難しい。総合的に関わらないと。だから総合戦略を持っているということですね。

「ひきこもりの子を持つ親に対しては、どういう考えで接していらっしゃるのでしょうか?」

最初はそんなにはっきり意識しなかったけど、少し大袈裟に言えば、親は20世紀型の価値観なんですよね。若者達が生きていくのは21世紀な訳ですね。もう21世紀も14年目に入っているのに。基本的な価値観の違いみたいなものが、親が子を追い詰める構造になっていると思う。

親の方は間違いなく20世紀型で、子どもは21世紀型に移行しているかと言うと、意外に学校や親から刷り込まれた20世紀型価値観を引きずっている訳ですよ。何となく親の言う社会ではないなという違和感を持っているんだけど、そこが本人の中では入り混じっているので、早く就職しないといけないとか、早く学校に戻らなくちゃいけないという強迫観念に囚われているんですね。

そこを明瞭に意識した方が良いんじゃないかと思う。親が思う20世紀型の幸せと、子がこれから求めていく21世紀型の幸せは違うものだと、了解しておいて欲しいということです。


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「20世紀型の価値観というのは、具体的にはどういうものでしょうか?」

一番は経済中心主義だよね。日本の戦後の宗教は経済成長だという説があるじゃないですか。男は仕事、女は家庭というのを若者も引きずっているんですよ。仕事をして金を稼いでこそ男だ、みたいな。結婚観にもそれがある。20世紀はかなり経済婚だったなと思いましたよ。経済を中心に考える結婚だったな。女性なんか、結婚は永久就職なんて言ってたもの。

21世紀はこれだけ豊かになったんだから、豊かさを超えて経済主義から人間主義に変わらないといけない。今の若者達はガツガツ稼ぐよりも、時間とかいろいろなものを大切にして、経済的にじゃなくて人間的に豊かな生活を送りたいみたい。そういうのが出て来てる。

イタリアは既に先進的にそうやっている。イタリアは年収300万円くらいなのに、どう見ても日本人よりも豊かに暮らしているな。日本人はたくさん稼いでいるのに、何故かどこか貧乏たらしいんだよ。その大きな価値観のズレが親子関係をややこしくしている。親は間違いなく20世紀だけど、子どもは20世紀と21世紀が混在していて混乱しているから、前が見えて来ないというかね。

「21世紀型は人間らしい生き方?」

方向はそうなんだろうけど、まだモデルがたくさんは確立していないので、みんな模索している。企業に勤めて、こういう風に給料が上がって、将来は年金がこうだみたいな幸福の形しか見えない。

そこからはみ出している連中が脱落者なのか、負け組なのかと言うと、それは新しい幸せを求める主体として希望が持てる存在。みんなが同じじゃ相変わらず20世紀的のままでしょう。お金はいっぱいあるかもしれないけど、なんか貧乏たらしい生活みたいなね。

そこはやはり、はみ出した人間が新しい生き方、新しい幸せの在り方を追求していける様にしないと。経済でドンドン行ける時代は終わっているのでね。それで行くと負け組を大量に作るだけになってしまう。そうではなくて、また新しい生き方が出てくるのが国家としての成熟、成長、日本の未来だろうと思う。

僕は『希望のニート』と言う本を書いたけど、ニートこそ21世紀の希望なんだ。脱落者じゃない。彼らは親の生き方を見て感じたんだよね。自分はそういう生き方をしたくない、嫌だな、もう少し違う生き方をしたいなと、ぼんやり思ったから、親と同じやり方ができなくなった。そこには新しい時代を開く問題意識があるんじゃないかということです。

「これからは多様性を認め合うという事でしょうか?」

非常に簡単に言えば、いろいろな幸せがあるよ、ということですよね。

「ニュースタートのサービスは、どういう方に利用してほしいとお考えですか?」

20世紀型の価値観に囚われていて自分は敗者だと思っている人に、「お前そうじゃないよ。お前らこそ21世紀の新しい幸せを作る主体なんだよ」と言いたい。

1997年に日本経済新聞に長い文章を書いたんですよ。あれは日本経済新聞でも歴史に残るくらい反響の多い文章だったの。そこで最後に書いたのは、日本は今どう考えてもルネッサンスが要るんだって結論。やはり価値観の大転換。みんなが揃って変わるというのじゃなくてね。もうひとつ別の日本が要ると思っている。

バリバリ仕事で頑張るという奴も残るだろうし、一方で新しい21世紀の希望を創り出す様な若者が必要なんだ。これだけでみんなが行ける日本は終わっている訳だから、こちらで脱落しても、こちらもあるよ、みたいなね。

「実はダメではなくて、シフトして行くという事ですよね?」

そうそう。大袈裟に言えば20世紀型の僕らはあまりにもエコノミックアニマルだったと思うんですよ。やっぱりそれは育った家庭が貧しかったからね。少なくともお金がないと惨めだというのがあったから、いろいろな事がエコノミックアニマルとしての判断になっちゃうんだよね。

「お金が中心の判断?」

だから原発の再稼働なんかでも、僕はイタリアが国民投票で原発はやめると決めたのを見て、日本は原爆の被害も受けているし、今回原発の被害も受けたのに再稼働する、結局人間としての判断じゃなくてエコノミックアニマルとしての判断しかしてないなと。そこは非常に残念なんですよ。

人間として考えようよと。人間復興じゃないけど、僕は、そこら辺がニートはエコノミックアニマルから人間に進化しようとしている存在であるという基本認識を持っています。

「より人間らしい?」

まあ、そうだね。この前、商社の人事の人が言ってたんですけど、今商社は実績が良くて、35歳の平均年収が2千万円らしいんですよ。ところが意外に辞める人が多いって言うんですよ。給料は安くても良いから、もっと家族との時間を大切したいとか言うから、高い給料払っても何の役にも立たないということになるらしい。やっぱり若者達の意識が変わっていると思うんですよ。

「価値観が多様化しているということで、ある意味で健全化ですよね?」

そうですよ。うちにも、人手が足りないから時給高くするから何人か寄越してくれ、と言って来るんですよ。でも、うちの子は、時給が高いところには行かないの。大変な所に違いないと行かないんですよ。気持ち良く働けるところがいい、みたいな方向があってね。

バイトに行ったら、うちは辞めない子が多いから、店長がよくやってくれるから時給アップする、もっと働いてくれと言うと、時給上げた分、出勤日を減らして、どうして?みたいな事になる。もう若者の経済観、仕事観なんて理解できないのよ。だけど彼らが何を大事にしているかということですよね。

20世紀後半、日本人はエコノミックアニマルでこれだけ豊かになって来たので、そこからまた同じことをやるというのは、いろいろな条件で難しい。国家として生活改革を目指して、幸せはお金儲けだけじゃない、時間の豊かさ、交流の豊かさ、もっと違った豊かな生活など、文明的な問題がベースにあって、カウンセリングも考えないといけない。

そこを高塚さんはよく理解してくれていて、新しい時代に向かう様な若者支援でないと若者支援と言えないと言い続けたんです。ただ現状に適応させようということだけでは、却って若者を追い詰めるだけじゃないかと。

「新たな視点の若者支援が必要なのですね?」

若者支援を長年やって来て、最終的にはワーキングプアとブラック企業を作っただけじゃないの?という疑問がある。もっと先を見ないといけない。

何とか自立するけど、それで精一杯という人が結構いるんですよ。IT系なんか特にそうだけど、夜遅く帰って来て、帰りにコンビニでお弁当買って食べて、朝起きて会社行くだけの生活ですよ、みたいに言われると、僕はもうちょっと違う幸せを進んで欲しいなと思う。

そこら辺をなんとなく突破してるのは、ニート結婚じゃないけれど、結婚みたいなものが大事だよな。今の日本の結婚制度はあまりにも経済婚すぎて、法律でがんじがらめだから、もうちょっと柔らかい結婚制度にした方がいい。うちの女性スタッフから「二神さんは結婚は幸せみたいに言う」と反発くらうんですよ。でもそうじゃないよと。

21世紀型の結婚制度は、フランスのパクスみたいな緩やかな新しい結婚制度を取り入れるべきだね。今フランスでもスウェーデンでも比較的、少子化対策がうまく行っているんだけど、過半数が非摘出子、私生児なんですね。非正規の結婚から生まれている子が増えているわけでね。

結婚させたら子どもが生まれるというのは古い考え。制度そのものをもっとフレキシブルなシステムに変えないといけない。女性スタッフから、「結婚」と言うと反発くらうから、今はとりあえず「つがい」と言っています。


(次回につづく・・)

二神 能基(ふたがみ のうき)   NPO法人ニュースタート事務局 理事

1943年生まれ。
愛媛県松山市での中学受験塾、幼稚園経営などを経て、1994年、目標を喪失した日本の若者をイタリアに送るプロジェクトを7年間展開。
1999年、ニートを支援するNPO法人「ニュースタート事務局」を千葉県市川市に設立。
これまで、40年にわたって育成、相談に携わった親子は4000組を超える。
早稲田大学講師、千葉県・内閣府等の委員を歴任。

<二神能基先生のHP>
【NPO法人ニュースタート事務局】

<二神能基先生の著書>
cover
働かない息子・娘に親がすべき35のこと


cover
希望のニート〜現場からのメッセージ〜


cover
ニートがひらく幸福社会ニッポン


cover
暴力は親に向かう―すれ違う親と子への処方箋



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:福田りこ(ふくだりこ)

福田りこ

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潜在意識に直接アプローチする心理療法を中心に、
自己受容と自己変容のプロセスに寄り添って行きます。

心理カウンセラー
米国催眠士協会認定ヒプノセラピスト
HP:セラピールーム・サンクチュアリ


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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