第93回目(3/4) 斎藤 学 先生 家族機能研究所

「先を歩む人(回復途上者)」からの体験を聞く方がいい

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「グループカウンセリングの良さについて教えていただけますか?」

私がすべての人を診ていると、とてもじゃないけど時間が足りないんですよ。皆、1人ずつすごく変なところがあって、ちょっと変だなというような人の方が私は好きでね。でも、そういう人がこの診察室に入ると面白くなくなっちゃう。憂うつだとか死にたいだとか同じことを言う。

50年も患者を診てきているから大体のことが予測できちゃうし解釈できる。そうすると、いくらふてくされてみたり、弱々しくしてみたりしても大体想定内じゃないですか。そういう人には、「グループの方がいいよ」って言っている。一切発言しない人を含めて、その人がグループの中でどう振る舞うかという情報が取れる。

私のグループというのは40〜50人から、多い時には100人以上参加する。そういう中で、1度のセッションで7人が5分ずつしゃべるんです。その中から私が、「このテーマが今日の話題になるだろう」というものを選んで、一種の解釈というか、「精神の障害というのはどういうものか?」とか、「それが治るってどういう意味か?」とか、そういう話をする。

そもそも障害っていう用語には当てはまらない人もいます。例えば息子や娘が暴れたり、首を吊ろうとしたりするので来てる母親とか。ただ、どんな人でもメンタルな障害はあるから、あえて「病名」をつけてます。そうしないとレセプトが作れないから医院をやっていけない。だから君達は病人ということになってはいるが、それはこちらの都合。「自分は病人」というところで居直らないでもらいたいと言ってます。

要するに、自分の中のストレングスポイント、長所に気づいてないだけなんですね。むしろそれを欠点だと思っていたりする。

「強みを見つけていくのですね?」

そう。それで「徹底的に病気を磨け。過食症なら食いたいだけ食って、吐く時は最初に食ったものが出てくるまで吐け」とか。例えば、七色の飴玉を飲み込んで、「次、青いきます!」とか言ってパカッと出せば芸になる。それに毒飲まされてもすぐに吐けるから健康にもいいし。

私は20年前まで東京都の精神医学研究所に居て、それからこのクリニックを始めた。地方の大学からお声がかかれば悩んだと思いますが、幸いどこからも声がかからなかった。東京には、NABA(ナバ)とか、児童虐待防止センターだとか、AKK(アディクション問題を考える会)とか、今はJUST(日本トラウマ・サバイバース・ユニオン)とか、色々私が関わった自助的グループや法人があるんですよ。

研究所を出たのが54歳の時で。その時まではWHOのサイエンス・アドバイザーを10年ほどやったりしていました。WHOはジュネーブが本拠なんだけど、集会をアフリカのアンカラでやったり、コスタリカでやったりして、旅行させてくれるのですごく快適だった。でも、この20年の方がずっと楽しい。私しか治せない病気はないけど、私しか治せない人はいる。

そういう人というのは、私の言っていることが面白くて見に来ていて、観客として馴染んでいるうちに自分の病気が治っちゃった、という人です。だから、「治ったらおしまいね」というのはないんですよ。その人が子どもを産んだら子どもを連れてくるし、離婚したら離婚報告などに来るしね。そのうちまた憂うつになったら患者として来るわけで。

確かに、ある時にはクライアントと医者の関係だけど、本気で言っているんだけど、彼らを病人と思っていないんですよ。ただ、反社会的行為をする人の場合は「なぜ痴漢するの?」とか聞くと、「手が…」とか、「どうしてだろう?」とか言っているから、「お前、ダメだな。病人だな」ということになるけど。

「それもアディクションなのですか?」

私の分類だとそうです。でもこの人の場合は単なる愚か者だね。東京大学の大学院を出て博士になって、その後また音楽家学校の2年生をやっている青年がいる。彼はオーケストラの指揮者になりたいんですって。今は私立大学で数学を教えて幾らかもらっているだけ。致命的欠陥は自分を「ヘンタイの天才」と定義していること。でも、私との交友が続けば変わってくるでしょう。

「先生の今後の夢や展望を聞かせていただけますか?」

毎年20〜30人集めてリカバリング・アドバイザー講座をやっている。かなり高額な授業料を取っているからこっちも責任がある。まだ公的なものではないが、自分自身を悩ませた問題についても相談に乗れる人にしたい。摂食障害やってた人は、摂食障害者の先ゆく人だから、最も適切な助言者になれるはず。

「医者に診てもらった方がいい」という人もいるだろうけど、この領域には有能な医師なんて居ませんよ。何も知らない医師に頼って効かないクスリをもらうより、「先を歩む人」からの体験を聞く方がいい。助言者には「それで食っていけ」と言っているわけですよ。どうしようもなく難しい問題があったら私がサポートしますが。

私が直接診ていると数に限りがある。でも、私とそっくりな助言者を100人以上創れば、日本のアディクション問題は大体解決する。これがラスト1周くらいになった私の最後の仕事ですね。


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「それは医者ではなく当事者ですよね?」

医者も来ていますけど、医者じゃなければいけないとも思っていない。現役で心理やって開業している人も来ているけど、ここにいて患者をやっている人もいる。「医師免許を持っているからよく知っている」とも言えないから、私はその区別をしない。ほとんど治療というのはセンスの問題だから、私にとっては学歴がなくても、いい勘している人の方が都合がいい。

ただ、むしろ素人の方の方が病気ということに囚われて、その枠内だけで問題を見てしまいがち。医学部出て、臨床体験を上司付きでずっと診てきたという人は、案外病気じゃないところにこそ問題がある、といった見方ができるんですよ。

病気になってからよりも、それまでの少年時代、青年時代に、どのように周囲と対話していたか、ということに問題の解がある、というような見方を身につけるのが成長のコツです。

それに素人はとかく専門家のマネをしたがる。それでは、リカバードである利点が活きないから、ある程度の期間、私の持続的なスーパーヴィジョンが必要です。

だけど、確実に言えることは、数多く診て年数が経てばちゃんとした助言者になれる。有名な大学を出て論文ばかり書いていたり、ネズミの実験ばかりやっている人よりもいい治療者になる可能性があります。

「どんな視点が必要なのでしょう?」

個の問題というのは、個の問題として終始してませんよ。人間というのは人間関係という水の中で泳いでいるメダカみたいなものだからね。関係のないところに人はいないんです。だから、その水質を変えるようなことをすれば、全体に魚の形も変わってくるんですよ。

例えば、東京電力があんな風になるなんて誰も思ってなかったように、今までとは全然違う形で時々刻々と移っているわけでしょう。共依存という言葉だって、双葉町と東京電力なんて共依存じゃないですか。東京都民と東京電力も共依存でしょう。

こういうように少し社会的なものの見方ができる人が、家族の中で「どういう依存・被依存関係があるのか?」とか、「それのどこがダメで、どこがメリットか?」とか、そこから話を進められるような、巨視的、そしてミクロも見ることができる、そういう人を作ろうとしている。

そうすると、慶応の医学部の後輩なんかだと忙しすぎてダメ。せいぜい講演会に来て話を聴くくらいのレベルですよ。それじゃ伝えられないですね、普段から私の動向を見ている人じゃないと。だから私のファンを中心に、年間20人くらいずつ後継者を作っていこうとしているんです。

精神医学の時代とか、セラピストの時代とか、心の時代なんていう言葉は20〜30年前から言われてきたじゃないですか。だけど、実質的に起こっているのは、本当か嘘かわからない“脳科学の理論の蔓延”だけですよ。要するに、人工知能の問題が解決できれば心の構造みたいなものはわかるようになるでしょう。でも、それと「治す」こととは関係ないんですよ。

だって、「何台かの人工知能を持ったロボットの間で生じる対ロボット関係の中で生じる「プライド」や「他者からの承認」というのが、「生きる悩み」になるのだから。

この部分を取り扱うのが私の言う治療なんだよね。結局、社会的な仕組みの中で起きている話だということ。それはファミリーセラピーというよりも、コミュニティセラピーとか、エコロジカルセラピーといったものでしょう。

「それで、1対1での治療にはあまり関心がない、とおっしゃるのですね」

「1対1で、お部屋で話したい」という要望があれば診ますけどね。「お兄ちゃんがお尻を触った」とかいう性的被害体験があるから個室で話したいという人が多いんです。でもそれもいずれはグループの中で話していただきます。

ただ、性的加害が親の夫婦関係を背景として発生している場合は厄介です。15〜16歳になっても、お母さんから、「お父さんがお風呂って言ってるんだから、一緒に入ってあげなさい」と言って、「イヤでしょうがないけど20歳まで父と一緒に入浴していた」とか。中には、「どこの家でも、そうしているんだ」と言われたりする。この場合は母親の方が加害者として恨まれます。

「深刻なアビューズがあった家庭が元に戻ることはあるのでしょうか?」

それはないです。私と会った後の患者が元に戻らないのと同じだし、私もまた影響を受ける訳でしょう。性的な外傷体験があった以前に戻ってもう一回発達することは不可能ですよね。ただ、それについての意味付けは変わってきますよ。そういうことがあったけど私は何とか生き残っている、というように。実際、何とか生き残れるんですよ。

だから、世間で活躍して、世間一般の人の標準よりは色々なことができている人のプレヒストリーの中に色々な悲劇があるのは当たり前の話で、かと言って「そういうことがあったからこういう人になる」と断定することはできません。それぞれの人が持っている柔軟性だとかによって変化するので。

『SIAb.(Survivors and allies for education on Incest Abuse / シアブ)』というプロジェクトをやっている女性達がいます。児童期性的虐待の深刻度(Severity)があります。それは内外の文献を参照しながら私が決めたもので、深刻度1というのは、膣、肛門、口腔に男根を挿入された体験を指します。そういう人達には解離性障害が起こりやすいので、彼女達だけのグループを作って、自分達の体験を語りやすくしようというのがSIAb.の趣旨です。

で、そのセッションをyoutubeで公開している。その際、顔出し、実名を条件にしています。彼女達は被害者なのであって、そのことを恥じる必要はないからです。この問題を隠蔽し続けてきた日本の社会に彼女達が体験した「事実」を突きつける必要があるし、そうした証言を医師やジャーナリストの配慮で歪めさせてはならないと思うからです。

「顔出し、実名なのですね?」

被害者がなぜ顔隠したり恥じたりするわけ? そうしていると、ずっとその被害事実を栄養として取り入れられないでしょう。過去にどんなことがあれ、親に虐げられ無視されても、「それは自分にとっての貴重な体験だった」というようにしないと。

単なる虐待の悲惨な記憶になんてしておかないんですよ。それは、「生き残った私」というサバイバーのレベルだよね。それで、「あれがあってよかった」というのはスライブなんです。スライブというのは、小児科医がよく使う言葉で“成長”。

だから、いわゆる既存の精神療法家がやっているものと随分違うと思う。診察室でやらない、とか。でも、私は元々、小此木啓吾のもとに10数年いたフロイディアン。ただし、活動の幅が多過ぎて精神分析グループに居なかっただけ。


(次回につづく・・)

斎藤 学(さいとう さとる)   家族機能研究所 代表、精神科医 医学博士
                   医療法人社団學風会さいとうクリニック理事長

1941年東京都生まれ。1967年慶應義塾大学医学部卒。同大助手、WHO研修生、フランス政府給費留学生、国立療養所久里浜病院精神科医長、東京都精神医学総合研究所副参事研究員(社会病理研究部門主任)などを経て、1995年より、家族機能研究所代表。
医療法人社団學風会さいとうクリニック理事長。医学博士。日本嗜癖行動学会理事長、同学会誌「アディクションと家族」編集主幹。日本子ども虐待防止学会顧問。日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン(通称:JUST)理事長。アライアント国際大学/CSPP臨床心理大学院 東京サテライトキャンパス 主任教授。
“現代の病”ともいえる過食-拒食症、アルコール・薬物・ギャンブルなどの嗜癖(依存症)問題に長年取り組む。現在、アディクション及び家族の機能不全に関する研究者の第一人者として、彼の研究業績および思索はあらゆる分野の人たちに示唆に富む問題を提起。また、行動する精神科医としても知られ、AKK(アディクション問題を考える会)、NABA(日本アノレキシア・ブリミア協会)、JUST(日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン)など多くの自助グループ・団体の誕生を支援。現在も、臨床の合間をぬって、全国各地で講演活動やワークショップを行うなど多忙な日々を送る。

<家族機能研究所のHP>
【家族機能研究所】

<さいとうクリニックのHP>
【さいとうクリニック】

<斎藤学先生の著書>
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依存症と家族


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インナーマザー あなたを責めつづける心の中の「お母さん」


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家族パラドクス―アディクション・家族問題・症状に隠された真実


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アダルト・チルドレンと家族―心のなかの子どもを癒す



インタビュアー:下平沙千代(しもひらさちよ)

下平沙千代

日本一やさしい女性ケアドライバーです。
タクシー車内がセラピールームになることも・・・、
アロマハンドマッサージや、ソース・ワークショップも開催しています。

ソース公認トレーナー、アロマハンドセラピスト、NLPセラピスト
レイキヒーラー、トラベルヘルパー、NPO法人東京シティガイドクラブ会員
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:大島まさあき(おおしままさあき)

大島まさあき

大島まさあきと申します。年齢は木村拓哉さんと同級生になります。

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インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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