第91回目(2/4) 池田 明子 先生 日本フィトセラピー協会

植物のフィトケミカル成分が、抗酸化力とデトックス効果を

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「フィトセラピーとは、どんな療法ですか?」

フィトは、ギリシャ語で「植物」という意味です。セラピーも同じくギリシャ語のセラピアが語源で、「治療」や「奉仕」という意味です。「植物」と「治療」や「奉仕」が合わさった言葉なので、フィトセラピーを「植物療法」と訳します。

太古から人々は、植物をさまざまな方法で役立ててきました。フィトセラピーは、植物を用いたさまざまな癒しの方法のことです。

今着ている服も、綿や麻などの植物素材から出来ている。これは、日差しや寒さから身を守るためのフィトセラピーだと思いますし、植物を食べることもフィトセラピー。でも、そこまで含めるとフィトセラピーの範疇が大きくなりすぎてしまうので・・・。

アーユルヴェーダ(インド医学)や中医学をはじめとして、植物を用いた治療法には、数千年の歴史があります。中世のヨーロッパの教会には、必ず薬草園がありました。今から百年ほど前に、フランス人医師のアンリ・ルクレール博士(1870〜1955)が、薬草に関する論文を執筆し『フィトセラピー概説』としてまとめました。

その後、ハーブ文化が根付いているドイツで、ルードルフ・フリッツ・ヴァイス博士(1895〜1991)が『フィトセラピー教本』を発行し、フィトセラピーが「植物療法」として発展していった、という歴史があります。

「フィトセラピーは、私達の心身にどう良いのでしょうか?」

肥満や高血圧などの生活習慣病の予備軍や、生活習慣病そのものになって病院に行くと「なるべく野菜など植物性のものを食べなさい」と言われますね。肉は少なくして、野菜など植物を多く摂るように言われます。

その理由は、植物には、生活習慣病を予防する成分が多く含まれているからなのです。その成分をフィトケミカル成分と言います。フィトは植物、ケミカルは化学ですので、フィトケミカル成分は「植物化学成分」と訳します。フィトケミカル成分の素晴らしさは、後で説明しますね。

では、植物はどうして、そんな成分を持っているのでしょうか? それは、植物が動かないからです。植物は、動物と違って動かずに生きています。動物は餌になる他の動植物を求めて動きますが、植物は動けないので、自分で自分の餌を作り出します。光合成です。二酸化炭素と水があれば、光に当たることでグルコースを合成します。

それとともに、動けないので、常に戸外の大きなストレスにさらされています。直射日光の当たる暑い夏や凍りつく雪の中などを想像してください。その中で動けないのです。人間を含む、あらゆる動物は、動けなければ生きていかれないはずです。でも植物は元気に生きている。

そんなことがなぜ出来るのでしょうか。それは、植物は、光合成によって、グルコースのほかに、自分で自分の身を守るための強力な物質を作り出すからです。

外にいれば、直射日光や雪だけでなく、虫や細菌も沢山寄ってきます。それに負けていたら枯れてしまう。枯れないように自分の体を守る物質フィトケミカル成分を自ら作り出します。

「フィトケミカル成分が効くのですね?」

フィトケミカル成分にはどのようなものがあるかと言うと、皆さんご存知のトマトのリコピン、大豆のイソフラボン、ニンジンのカロチンなど。すべてフィトケミカル成分の名前です。フィトケミカル成分というのは、植物が作りだす栄養・カロリー以外のものです。それが植物の身を守ります。

植物は、グルコースをはじめとする栄養素やフィトケミカル成分を、植物自身の成長や種の保存に必要な分量より多く作りだして、動物に与えてくれます。それによって動物は生きていくことができます。つまり、植物は「生産者」で、動物は「消費者」。植物のことを「独立栄養生物」、動物のことを「従属栄養生物」と言う所以です。

フィトケミカル成分を沢山含む薬草を人間が利用するようになった経緯は、知る由もありませんが、たぶん太古の人々の経験が積み重なって定着したのではないでしょうか。

『神農本草経』という中国の薬草の本があります。薬草の効能は書いてありますが、薬草の発見の経緯は書いていない。それこそ神の天啓で、どういう薬草がどう効くとわかったのかもしれないし、野生動物を観察していて、動物が傷ついたり具合が悪くなった時に、食べた草からヒントを得たのかもしれない。

私達ホモサピエンスよりも古く、今は絶滅したネアンデルタール人も薬草を使っていたらしいですが、何にしてもフィトケミカル成分が、私達の体に良いと言われる薬草の成分の正体のようです。

「フィトケミカル成分は、どのように効くのですか?」

三大栄養素(炭水化物・蛋白質・脂質)にビタミン・ミネラルを加えて五大栄養素と言います。それに加えて食物繊維が第六の栄養素、そして最近では、フィトケミカル成分が第七の栄養素と言われるようになりました。

フィトケミカル成分の働きの大きなものの一つに抗酸化作用があります。人の細胞が酸化することは酸化とは言わず老化と言いますが、フィトケミカル成分には、人の細胞を酸化=老化から守る強力な作用があります。

紫外線で皮膚が黒くなるのは、皮膚の表面の細胞が酸化しているからです。血管の細胞が酸化すると動脈硬化になり、生活習慣病の原因になります。酸化の原因は、私達の体の中で発生する活性酸素によります。けれども私達は、生きている限り、空気を吸い、酸素を使ってエネルギーを作っているので、それに伴って活性酸素が生まれるのは仕方のないことです。

フィトケミカル成分には、その活性酸素を除去するという働きがあるんです。そういうことがわかってから、盛んに注目されるようになりました。


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「活性酸素を除去してくれるのですね?」

現在有名なトマトのリコピンも以前は全く注目されていませんでした。リコピンは、ニンジンのカロチン(またはカロテン)と同じカロチノイド色素ですが、体内でビタミンAに変わるカロチンとは違って、リコピンはビタミンAに変わらない。なので、リコピンが健康に役立つとは思われていませんでした。

けれどもアメリカで研究が進み、実はリコピンにはカロチンよりも強い抗酸化力があるとわかったのです。そうしたら一気にトマトの健康効果に注目が集まるようになりました。

フィトケミカル成分の働きの一つ目は抗酸化力、活性酸素を除去する、ということですね。

活性酸素はストレスがかかることによって、多く発生します。ストレス過多で交感神経優位になると、白血球のバランスが崩れ、顆粒球が増えるのです。顆粒球は2〜3日で死に、新しい細胞と入れ替わりますが、死ぬ時に活性酸素を沢山放出します。

逆に、リラックスして、副交感神経が優位になるとリンパ球が増えます。リンパ球はNK細胞やTセル、Bセルといった抗ガンやアレルギーに関連する細胞で構成されています。

ですから、ストレス過剰が続くと、白血球のバランスが崩れ、過剰になった顆粒球が新陳代謝を繰り返す中で、活性酸素が多く発生します。その活性酸素が細胞を酸化させるために、色々な身体症状が起こると言われています。

「では、ストレスケアにはフィトセラピーはぴったりということですね?」

そうです。フィトケミカル成分は、抗酸化力が強いですからね。植物は並大抵の強さではない、とっても強力な抗酸化力=抗老化力をもっているのです。樹木は抗酸化力のお陰で、何百年も生きることができるのです。

昔の人は、科学的にわかっていたわけではないけれど、動物の肉が酸化しないように、ハーブ(スパイス)を使っていました。だからスパイスはとても貴重で、スパイスのために戦いまで起こったのです。ハーブのセージを肉に入れたのがソーセージと言われています。生肉が腐りにくくなるハーブの効果を利用したものですね。

他にも、ハーブには菌やウイルスに対抗する力があり、精油(アロマテラピーで使用するエッセンシャルオイル)には強力な抗菌力や抗ウイルス力、防虫力があります。抗酸化力の説明は、大変興味を持っていただけるので、フィトセラピーをお伝えする時には必ず説明しています。

「他にも、効果があるのですか?」

インドで3000年の歴史を持つと言われるインド伝承医学のアーユルヴェーダでは、病気の原因は、決まっています。それは「体の管が詰まること」です。個人的には、ハーブは体の管の詰まりを取る効果が一番大きいと考えています。

人間の体は大小様々な血管や消化管、そして指先まで含めると太さ5ミクロンという本当に微細な毛細血管などがあり、全身無数の管が集まってできているんです。

アーユルヴェーダでは、その管が詰まって毒素がたまることが病気の原因と考えます。その管の詰まりを解消するために薬草を使います。解毒(デトックス)するために薬草を使うのです。

「デトックスの効果ですね?」

日本でアーユルヴェーダの本が翻訳されたのが1990年のことです。その本の著者のインド人のシュリ・バグワン・ダーシュさんが、前書きにフィトセラピーのことを書いています。フィトセラピーは太古のさまざまな伝統医学の中に普遍的に入っていたのですね。

デトックスというのは、身体の詰まりを取る、毒素排泄です。例えばダンディライオン。デトックスでは有名なハーブで、和名は西洋タンポポ。実は日本でもタンポポは昔から人々に役立ってきました。

ですが日本の場合、明治維新とともに伝統医学や、「養生」といった東洋的な医学を意識的に排除したのです。富国強兵のためです。列強が隣の国まで侵入しているのを見て「早く西洋化しないと! 養生なんて悠長なことは言っていられない」と(笑)。

即効性のある医学を求めたので、「養生」のような考え方はどんどん衰退していったのですね。そうやって日本では意識的になくした、という歴史がありますが、ドイツなどでは綿々と続いていて、ハーブの文化は根強く残っています。今でも自然療法士のような国家資格があって、それで開業できます。

ドイツでは今でも風邪で医者に行くと、抗生物質はあまり出さないそうです。昔に比べれば、出すようになったと聞いていますが、それでも多くの医者は、風邪くらいでは「レモンでも飲んで寝ていなさい」というようなことを言うそうです(笑)。

「レモンを飲んで・・・というのは、フィトセラピーですね?」

ふふふ、そうですね(笑)。

フィトセラピーの話に戻りますと、デトックスにも大きな効果があるのですね。

例えば、ダンディライオンは、腸内環境を整えてくれるため、便通も改善します。私達の体の老廃物は、70%以上が便から排出されますから、便秘は毒素をため込んでいる状態です。それを穏やかに改善できる、とても役立つハーブです。

腸内細菌を元気にしたり、新陳代謝の悪い腸壁を剥がれ易くして、新陳代謝を高めることも、ハーブの役目です。

それからハーブの持つ利尿作用もあります。尿からは、20%ほどの毒素が排泄されますので、利尿作用のデトックス効果は大きいです。

いままでお話ししたデトックスと、先ほどお話しした抗酸化力が、フィトケミカル成分の大きな特徴です。そして、そんなフィトケミカル成分を意識しながら、私たちが生まれながらに持っている自然治癒力を上手く働かせて、元気に生活するためにフィトセラピーがあります。

自然治癒力を上手く働かせるには、積極的に五感を働かせて、心地よさを感じることが大切です。心地よい香り、美味しいという感覚、気持ち良く触れることなどもとっても大切です。

フィトセラピーで植物を使うこととともに、タッチ(触れる)ということの大切さにも気づいて、2年ほど前からハンドケアの講座を始めました。

「ハンドケアですか?」

私も周囲も年をとってきて、近頃ではお世話になった方々へお見舞いに行く機会が増えてきました。お見舞いの時に思うことは、フィトセラピストとして、自分に何ができるだろうか、ということです。そんな時に、ふとハンドケアをしてみたら、すごく喜んでいただけたのです。

例えば、こんなこともありました。すっかりご無沙汰していた方なのですが、お見舞いに行くと、本人は元気そうでした。けれども、ご家族から「もうこの先、病院から帰れないかもしれない」と聞いて、またお見舞いに行きたくなったのです。でもご無沙汰ばかりの私が、急に何回もお見舞いに行くと本人に変に思われてしまう。

その時、ハンドケアをしたら喜んでいただけたので、「そんなに気持ちが良いんだったら、また、ハンドケアをしに来ますね」と言うと「お願いします」ということになって。自然にその方との最期のとても良い時間を共有出来ました。そういうことが立て続けに3人くらい続いたのです。

それで、ハンドケアの不思議なパワーというものを感じました。ハンドケアは、アロマやハーブを勉強するよりも身近に感じるのかもしれません。実際のケアですから、効果が見えやすい。「一家に一人ホームセラピスト」ではないですが、家でちょっとしたケアをしてくれるホームセラピストが増えるたびに、世の中が少しずつ良くなる、そんな風になったらステキだな、と思ったのです。

講座は、どなたでも受けていただきやすく1日で行うようにしました。そして、今なぜハンドケアが必要なのかといったことや、手の解剖生理や心理、そしてハンドケアで使う植物油のことなどの理論を含めて、3時間の座学と3時間の実習のハンドケアセラピスト認定講座を開催しています。

(次回につづく・・)

池田 明子(いけだ あきこ)   一般社団法人日本フィトセラピー協会 代表理事
                    ソフィアフィトセラピーカレッジ 校長
                    フィトセラピスト・植生工学士

臨床検査技師として病院勤務の経験から、伝統医学に興味を持ち、その後ハーブやアロマセラピーなどフィトセラピー(植物療法)を学ぶ。
植物の力で自然治癒力をサポートし、人々に美と健康をもたらすことのできる専門家「フィトセラピスト」の養成校を、2006年、東京・自由が丘に設立。
人生を豊かにするフィトセラピーの普及と植物療法の専門家「フィトセラピスト」の養成を行っている。
講演、文化活動は多岐に渡る。
夫は俳優の梅沢富美男氏、2女の母。

<一般社団法人日本フィトセラピー協会のHP>
【一般社団法人日本フィトセラピー協会】

<ソフィアフィトセラピーカレッジのHP>
【ソフィアフィトセラピーカレッジ】

<池田明子先生のブログ>
【フィトセラピスト池田明子blog】

<池田明子先生の著書>
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心と体を癒す手のひらマッサージ


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フィトセラピー生活12カ月


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草花のオーラで幸せを呼ぶ本 家、心、体を浄化する植物の魔力と活用法


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森はあなたが愛する人を守る



インタビュアー:下平沙千代(しもひらさちよ)

下平沙千代

日本一やさしい女性ケアドライバーです。
タクシー車内がセラピールームになることも・・・、
アロマハンドマッサージや、ソース・ワークショップも開催しています。

ソース公認トレーナー、アロマハンドセラピスト、NLPセラピスト
レイキヒーラー、トラベルヘルパー、NPO法人東京シティガイドクラブ会員
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』


インタビュアー:川崎綾子(かわさきあやこ)

川崎綾子

ゲシュタルト・再決断@府中「座★すわろう会」で活動中。グループの中で
お互いにサポートを得ながら、自分らしく癒されるセラピーをしています。
ペンギン好き。趣味はバレエです。

GNJゲシュタルト療法トレーニングコース修了、日本ゲシュタルト療法学会会員
NPO再決断カウンセリングジャパン会員
矢野惣一問題解決セラピスト養成講座(上級)修了
レイキティーチャー


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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