第90回目(4/4) 緒方 俊雄 先生 SOTカウンセリング研究所

人生の春夏秋冬で、求められるものが変わってくる

インタビュー写真

「先生のカウンセリングの特徴を教えてください」

特徴がないのが特徴みたいなもので。技法も使いませんし、心理テストも使いません。ただ向き合っている。クライエントさんによって、行なっているカウンセリングはまちまちで、変わってきます。クライエントさんに合わせて自然と変わっている感じです。ただ、ベースは聴くことをやっていますね。

幼少期に両親に受入れられないで傷ついた心が癒やされるのは、受入れられる経験ではないかと思って、カウンセリングではクライエントさんを受入れることを一番大切にしています。

「特にこういう方に来て欲しい、というのはお有りですか?」

私のカウンセリングルームには10〜20年うつ病でお医者さんや東洋医学、鍼灸、心理療法などを渡り歩いた方が多く来られるのですが、「心の病気の方の執着駅」になってあげられたらと考えています。お医者さんに行っても治らなくて困っている人をカウンセリングするっていうのが、自分自身のカウンセリングのアイデンティティです。

「気をつけていらっしゃることなどはありますか?」

うつ病の方の自殺だとか、境界線パーソナリティの方だと、怒らせないっていうのがありますけど、相手のことを受入れていくというのを基本でやっているので、時間はかかっても、そんなに変なことにはならないと思っています。

「自殺念慮のある方の場合、どんな風になさっていますか?」

その辛い気持ちを聴いていくってことなんですよね。自殺したいっていう方に、自殺してはいけないだとか、自殺したら親が悲しむだとか、そんなことを言ったとしても、そんなことは自分もわかっている訳ですよ。なので、「あなたなんかに何がわかるのよ!」って話になっちゃうんですよ。

自殺してはいけないことはわかっていても、自殺したいほど辛い訳でしょう。生きたいのと自殺したいのとで、さまよっているんですよ。その自殺したい辛さっていうのをずっと聴いていくということです。

面白いもので、サッカーの試合って1時間半でしょう。映画って2時間くらいじゃないですか。だいたい人の感情って1時間半から2時間なんですよ。1時間半から2時間ずっと辛いって話を聴いていると、治まるんですよね。

自殺願望が強い人が来ると、次のカウンセリングはキャンセルして、2時間くらい聴いていると治まってきて、笑顔が出てきたら帰すんです。

「悩みを抱えていらっしゃる方へ、先生からのメッセージをいただけますか?」

最終的には、諦めなかったならば解決する問題じゃないかと思っています。

心の病気をどう捉えるかっていうことにもよるんですけれど、遺伝的なものも若干はあるけれど、生まれた時は心は真っ白で、その後、いろんな環境で書き込まれてきた結果、心の病気が起こっているんだとすると、そういった病気は、カウンセラーの力量にもよるとは思うんですけれど、殆どの心の病気は本来治るべきものだと思っています。

それが、私ができるかって言うのはまた別の問題なんですけれども。

「諦めないで、自分自身に向き合うということでしょうか?」

結局、悩みを受入れるっていうことですね。悩みに浸るんですけれど、一人で浸るのは辛いから、カウンセラーと一緒に浸るっていう感じです。

いくら悩みや辛いことから逃げようと思って、別の方向に意識を向けていくようなカウンセリングをしたところで、最終的には治りはしないですね。最終的には、悩みに一緒に浸って、その悩みを本人が受入れていくっていうことですね。

「心の仕事をなさっている方へ、メッセージをお願いできますか?」

私が思うのは、すごく今の社会が効率、効率と言って、なるべく短くカウンセリングをしようとしたり、技法を使って効率的にやろうとするんですけれど、心ってそう早く変わるものでもないですし、技法を介すと結局そのクライアントと向き合わない。

技法に流れないでクライアントと直接向き合うのが一番大事かな、と私は思っています。カウンセラーになった頃は、技法をやった方が効率がいいのかと思ってやった時期もあったんですが、全て止めましたね。自律訓練法や腹式呼吸法を教えたりはしますけれど。


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「先生ご自身のリフレッシュとして、何かやっていらっしゃいますか?」

何もやっていないですね。まあ、よく寝ていますかね。

「今までにバーンアウトなどはなかったのですか?」

バーンアウト(burnout燃え尽き症候群)はなかったんですが、臨床心理士を取る時に4年間大変だったので、それを取った時はちょっとガクッてきた、というのと、先ほど話した、5月13日に3人同時にという時は、3週間くらいは調子が悪かったですね。

私ね、体は丈夫な方ではないんですが、15年間風邪を引いてなくて。

「それは十分、お丈夫だと思いますが・・・」

私、幼稚園の頃は普通の子どもよりずっと多く風邪を引いていたんですよ。だから20数年前に心の勉強を始めてから、自分もストレスが取れるようになったんだと思います。

「ストレスの仕組みを学ぶことでストレスを溜めないようになったという事ですか?」

ええ。私の場合は、自分の心の悩みで心の勉強を始めたという訳じゃないですけど、心の勉強を始めてからは、自分の内面を見つめたんですよね。そして、自分の心の葛藤を取り除いていったら、すごく生きるのがラクになりました。

「それはセルフでなさったのですか?」

セルフですね。セルフカウンセリングみたいな感じで、心の悩みを取り除いていったっていうことが、すごく体を元気にさせていってくれたんだと思いますね。

「取り除いていったというのはどういう形ですか? 感情を味わって、受入れてを繰り返す?」

そうですね。それをやって下手に技法に流れないのが大事なんです。

「人生の四季、あれは先生のオリジナルですか?」

そうですね。あれは、いろんな人のカウンセリングをしているうちに、つまずく時期ってあって、何でつまづくのかなと思って。

怠けていてつまずいた訳でもなく、前の時期を引きずって、上手くいったのを続けようとして逆に失敗している人が多くて、人生の春夏秋冬で求められるものが変わってくるので、生き方をちゃんとチェンジしていかなきゃいけないなっていう風に感じて『「勝ち組」の男は人生で三度、挫折する』を書いたんです。

それって後から思うと、人間の厄年に当たっているんですね。だから昔からそうなんだろうなと思いました。

「生き方の衣替えなのでしょうね?」

そう。衣替えなんだと思います。服を着替えないでずっと同じ服を着ているとダメなんでしょうね。それが凡人はなかなか変えられないんですよね。だから引っぱっちゃうんです。成功した社長さんというのも、なかなか変えられないで失敗しますよね。

「変わり時というのが大事なのですね?」

そうですね。

「先生ご自身は、変わるということには抵抗がなさそうですね?」

そうですね。変わっていく方が好きかもしれないです。ゆっくりゆっくり軸足を移していく感じですかね。

半導体レーザーの研究開発をする時も、普通は設計の人は設計、プロセスの人はプロセス、組み立ての人は組み立てをずっとやるんですけど、私は全部知っておかないといい設計ができないと思って、全部経験してもう一回設計に戻るような感じなんです。何でも一度やってというのはありますね。

「広げていくという感じなのですね。次の本の計画はお有りですか?」

何冊か書きたい本はありますけれど、本を書くのは結構大変で。

次に書いてみたいのは「中年の危機」をどういう風に乗り越えるかですね。中年の危機のところだけフォーカスして。非常に生きづらい時期なんですよね。仕事的にも家庭的にも非常につまずくので、どういう風にそういうものを越えていったらいいかというのを書いてみたいと思いますね。

「先生の今後の展望や夢をお聞かせください」

私のカウンセリングを通して1000人の人に「生まれてきて本当によかった」と感じていただけたらなと思っています。ですから、これから10年間はカウンセリングに打ち込みたいなと思っています。

それが終わってから、カウンセラーを育てることができるかどうかはわからないんですけれど、そういうことをやっていきたいなと思っています。カウンセラーを育てるってどうやったらいいのか、まだわかっていないんです。

よく頼まれて、臨床心理士のスーパーバイズや産業医のスーパーバイズをするんです。質問されていることには、答えているんですけれど、それで本当にカウンセリングが上達するかって言われるとよくわからなくて。

カウンセラー向けにカウンセラー講座みたいなのもやったことがあるんですけれど、それもどんな効果があるかよくわからなくて。あと10年くらいして、こういう風にしたらっていうのが見えてきたらやりたいなと思っているんです。

「カウンセラーの資質として一番大事なものは、何だと思われますか?」

自分の心が病んでいると、まずはカウンセリングできないんですけれど、だからといって、長嶋茂雄さんにカウンセリングを受けたいかっていうと何か違うでしょう。病んでちゃいけないけれど、病んでる人の気持ちがわからなきゃダメですね。

病んでる人の気持ちがわかるような繊細な面が必要なんだけれど、かと言って自殺未遂の話だとか、ものすごく重たい話にも直面しなきゃダメだから、繊細でなければダメだけど、大胆でもなければダメなんですよ。ものすごく両極端な面が必要です。

特殊な才能はいらなくて、どんな人でもなることができると思うんだけれど、その両面性を持つのが難しいと思いますね。

カウンセリングっていうのは、自分が経験してなくてもできるって言いますけれど、そうは言っても、自分が悩んだ以上のクライアントの悩みというのは受けられないから、会社員は挫折は無い方がいいけれど、カウンセラーだけは、挫折したり失敗したりのいろんな経験をしていた方が得ですね。私は挫折と失敗だらけの人生だったので、カウンセラーとしては得をしています(笑)。


<編集後記>

明るい木目調の、落ち着いた雰囲気の緒方先生のカウンセリングルームで、
お話を伺いました。

とてもソフトな先生のお声は、聞いているだけで癒される
穏やかで優しい響きに満ち、「受入れられる」安らぎ・安心感に
浸らせてくださいました。

「繊細さと大胆さの両面性」「変わることを怖れない勇気」「謙虚さと力強さ」
これらを、緒方先生から存分に感じ取らせていただきました。

『SOT』が何を指すか・・・は、どうぞ先生のHPでご確認ください。
きっと、先生の「大きな大きな願い」が伝わってきますよ。

緒方 俊雄(おがた としお)    SOTカウンセリング研究所所長
                     臨床心理士、産業カウンセラー

早稲田大学理工学研究科修士課程修了。
大手電機メーカーにて、研究開発、企画、マーケティング、カウンセリングなどの業務に従事。
その後、EAP(従業員支援プログラム)機関所属のカウンセラー経て、 現在、SOTカウンセリング研究所所長。
臨床心理士、産業カウンセラー。
2009年8月、うつ病者の復職支援の研究で、日本産業カウンセリング学会より学術賞を受賞。
心理カウンセリングに取り組みながら、メンタルヘルス関連の講演、研修、執筆などでも活躍。

<緒方俊雄先生のHP>
【SOTカウンセリング研究所】

<緒方俊雄先生の著書・共著>
cover
慢性うつ病は必ず治る


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すぐ会社を休む部下に困っている人が読む本 それが新型うつ病です


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「勝ち組」の男は人生で三度、挫折する


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カウンセリング実践ハンドブック



インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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