第90回目(3/4) 緒方 俊雄 先生 SOTカウンセリング研究所

新型うつの人には、責任を持たせて、やらせる。

インタビュー写真

「新型うつ病については、どのように捉えていらっしゃいますか?」

新型うつの方は、両親から甘やかされて手をかけられ過ぎている感じですね。

だから、学生時代はただ勉強をやっていればよかったけれど、会社に入った途端に全部自分でやらなければいけなくなってしまって、いろいろな事をこなす力がなくて、また自分のプライドだけは高いけれどコミュニケーション能力やストレス耐性がないので、不適応を起こしてしまう、というイメージです。

「それは、従来のうつ病とは別の疾患で、適応障害に近いものなのでしょうか?」

うつ病というのは職場で起こることもあるし、家庭で起こることもあるし、いろいろな原因で起こることがありますが、新型うつ病自体は、ほとんど職場に対する不適応なので、そういった意味だと適応障害と言えるかもしれないですね。

“新型うつ病は病気かどうか?”という話がありますが、心の病気をどのように定義するかということに依りますが、心の病気というのが、“社会生活や家庭生活を送れなくなった状態”だと定義すると病気なんだと思います。

「ご本人は困っていらっしゃる訳ですよね?」

そうです。

「でも、抗うつ剤は効きにくい・・・」

効きにくいですよね。

「では、先生はどのように新型うつ病にアプローチしていらっしゃるのでしょうか?」

1つは不登校の子と同じで、身体の症状を出して逃避している、という側面があります。会社に行きたくないので、身体の症状を出している。本人は苦しんでいるんです。ただ、本当は身体は悪くないものだから医者に行っても原因がわからなくてドクターショッピングになってしまうんです。

それをいかに気づかせるか、イヤなことに向かわせていくか、というアプローチが1つありますよね。

また、その元になっているのは家庭の甘やかしがあるから、家庭においてお父さんやお母さんと協力して対応を変えていくという面もあるし、会社という面においては、仕事に対する不適応なので職場の上司などと連携して適応させていく。

だから、従来型うつ病だとクライエントとカウンセラーだけのカウンセリングルームの中で収まっていたのですが、新型うつ病では家庭とか職場での対応もお願いしなければならないし、学び直しや育て直しという過程など、いろいろなアプローチが必要になり難しいですね。

「ご本人に直面させる働きかけが必要、ということですよね?」

そうですよね。やっぱり本人が逃げているうちはダメなんですよね。向かっていくようにしなければならないですし。

「ご本人には逃げたい気持ちがあるので難しいかと思いますが、どのようになさるのですか?」

やはり本人が困らなければダメなんですよね。本人が、「今のままじゃダメだ」というのがないと変わっていかないんですよね。

ひきこもりの人も同じで、親が面倒見てくれるのでひきこもっている方が楽な訳ですよ。「このままひきこもっていたら、10年後、20年後、お父さんお母さんが亡くなった時に、あなたはどうするんですか?」ということに本人が気づけるかどうかなんですね。

従来型うつ病の人は、だいたい本人が「辛いから」ということでカウンセリングに来るのですが、新型うつ病の人というのは本人は逃避しているので、本人から来ることはなくて上司や親が連れて来るんです。

面白い話で、慢性うつの本を読んでカウンセリングに来た人はいっぱいいるのですが、新型うつの本を読んで来た人というのは、まだ4、5人しかいないんです。その4、5人というのも、「自分は新型うつ病ではないか?」と言って来たのですが、話を聴いてみると、全員従来型うつ病でした。

そもそもカウンセリングは薬を出す訳でも手術をする訳でもないので、本人が「変わりたい」という気持ちが元になるんです。だから、本人が変わる気がないとにっちもさっちもいかなくなるんです。そのためにまず、「本人を変わる気にさせられるかどうか」というのがあると思います。


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「新型うつ病の方のご家族に対して、伝えたいことはお有りですか?」

結局、子どもの自立を妨げているんですね。共依存の関係になっている。だから子どもができることは全部子どもにやらせて見守る、ということだと思います。過保護、過干渉になり過ぎているんですよね。

「やはり母子の共依存が多いですか?」

共依存自体は母子なんですけれど、父親はどうでもいいということではなくて、父親のほとんどが仕事人間で家庭を顧みていないから、奥さんの関心が子どもに向くという面もあります。だから、父親が仕事人間を止めて、家庭の中できちんと役割を持って、母子よりも夫婦の方が会話を持たなければならないんですよね。

だいたい、母子の家庭に下宿人が1人、みたいな関係なんです。それで、子どもが一番大切にされているんです。だから、お父さんというのは居候のような感じで居場所がないんです。そこの構造を変える必要があります。

「まずはご夫婦の関係を構築し直して、共依存を断っていくということでしょうか?」

お母さんはお母さんで、自分の子どもが生きがいなんです。もう子どもは手放して、自分は自分で自分の人生の楽しみを見つけなきゃならないんですよ。

「それを先生がお母さんにアプローチなさるのですか?」

お母さんには話しますけどね。なかなか最初のうちは変わらないですね。本当に息子が居ついてしまって、もうどうにもならないっていう状況になると、お母さんも変わり始めます。

「やはり、いよいよ困らないと変わらない。そこなのですね。職場の方には、どんな風にアドバイスをなさるのですか?」

職場の人も結局、その人を手伝っちゃいけなくて、責任を持ってやらせなくちゃダメなんですよね。ただ、そうは言っても、新型うつになる人はコミュニケーションが下手だし、プライドが高いから仕事が停まっちゃう訳なんですよ。どうしたらいいかわからないでずっと停まっちゃう。

だから、一番話しやすい指導係というのを作って、その指導係が仕事の仕方を教えるという形になると思いますね。

「チューターの役割ですね?」

チューターとかインストラクターといったイメージですね。

「ある種、特別扱いになりますけれど、そういうのも取り入れていくということ?」

そうですね。仕事の仕方を理解してもらう、自分で仕事できるようにしていくということなんです。逆に、手伝ったら依存してきちゃうから、手伝っちゃいけないんですよね。

「教えてやらせる?」

教えてやらせる、ですね。それと、何か困っていることはないのか、時々声を掛ける、ですね。

「なるほど。そうやって、教育し育てていくという感じなのですね?」

よく、会社の人に「そこまでやる必要があるのか」って言われるんですね。「こんなことは、学校や親に教わってくるべきだ」って言う訳です。そうは言っても、日本というのは、一回雇った人をそうすぐに辞めさせる訳にもいかないじゃないですか。

雇ったからには、何とかその人にアウトプットを出してもらわなくちゃならない。だから、そういった対応が必要になってくるんだと思うんですよね。

「何年くらい対応したらいいのでしょう? 企業側はそこが知りたいと思うのですが?」

(笑)人にもよると思うんですが、早い人で一年とか二年だと思うんですけど、いくらやってもダメな人もいらっしゃいますよね。それは、本人が自覚して、やれるかどうかの問題であって、そういった人をいつまでも雇っておけるかどうかは、企業の基礎体力によると思うんです。

結局、本人と会社がWIN-WINの関係じゃないと何十年も勤められないんですよ。だから本人が意識して、必要な人間になるっていうのが一番大事なんですよね。本人がそこのところを放り出しちゃっていたとすると、いくら周りが手を差し伸べても無理だと思うんです。

そうだとすると、その会社で働いていることがその人にとって本当に幸せですかってことで、また考え直す必要が出てくるんですよね。

「温室を作っちゃいけないというのが、ご著書にありましたね?」

温室ね。ダメですね。

「温室になるのか、育てる環境なのかの見極めについて、教えていただきたいのですが?」

温室っていうのを作っていると、本人は喜ぶけれども、優しい上司や特別な仕事なんて温室が30年もある訳ないじゃないですか。そうすると、温室に居れば居るほど、働く力が無くなってくるということだから、なるべく他の人と同じようにやらせなきゃダメだと思うんです。

そうは言っても、協調してやるのが苦手だとかいろいろとあると思うので、一人で完結するような仕事だとか、その人に向いている仕事というのを考えなきゃダメなんです。

それと、普通の人が100%だとして、70%〜80%だったとすると許されると思うんですけど、20%〜30%だとか、下手すると足を引っ張ってるとなるといけないと思うんですよね。他の人と同等レベルの土俵で共存させる必要はあると思うんだけれど、仕事の内容や量みたいなものは、ある程度配慮するっていうことかもしれないですね。

「70%くらいまで?」

最低70%くらいが、大目に見ることができるラインじゃないですかね。

「その方の自己評価はどうなっているのでしょうか?」

自己評価は高いんですよ。だから、周りの人が100%だとすると自分は70%〜80%やっていると思っているんですよ。でもね、上司に聞いたら20%〜30%しかやっていない。だからそこのところを本人に明確に知ってもらう必要があるんですね。

それと、20%〜30%になっている査定をつける必要があると思うんですよね。

「ボーナスなどでですね?」

そうです。そうです。そうじゃないと、これでいいんだと思っちゃうんです。だいたい日本の企業って、メンタル疾患の人に対する査定が甘いんですよね。

従来型うつの人は、ものすごく過剰に働いて、そのためにうつになった訳だから、ある程度会社も考慮してあげたらいいと思うんですよ。

でも、新型うつになった人の経緯は仕事を過剰にやってというよりも、性格とか仕事と合わないとかでなっている訳だから、復職して半年間くらいは考慮してもいいかもしれないですけど、それ以降はちゃんとアウトプットに見合った査定をしていかないと。本人もそれでいいと思っちゃうから。

「ご自身のパフォーマンスの具体的データを返していくということですね?」

そうですね。うつの人には、ショックを与えちゃいけないんじゃないかというのがあって、普通の査定になったりする訳ですね。

「そういう方にも適正な査定をするというのが、大事なのですね?」

本来はそうだと思いますね。

新型うつというのは、仕事や何かがイヤで逃避しているということですから、満足していない訳なんです。その職場に居続けた方がいいかどうかというのは、わからないんですよね。仕事にならないんだったら、本人が納得して新しい仕事を探すというのが一番いいんです。

最初は会社ができるだけのことはしてあげる。チャンスを与えてあげる。チャンスを与えても、本人がやる気にならなかったなら、どうにもならないですよね。後は本人次第です。いつまでも、会社のお荷物になっているんだとすると限界がありますよね。

(次回につづく・・)

緒方 俊雄(おがた としお)    SOTカウンセリング研究所所長
                     臨床心理士、産業カウンセラー

早稲田大学理工学研究科修士課程修了。
大手電機メーカーにて、研究開発、企画、マーケティング、カウンセリングなどの業務に従事。
その後、EAP(従業員支援プログラム)機関所属のカウンセラー経て、 現在、SOTカウンセリング研究所所長。
臨床心理士、産業カウンセラー。
2009年8月、うつ病者の復職支援の研究で、日本産業カウンセリング学会より学術賞を受賞。
心理カウンセリングに取り組みながら、メンタルヘルス関連の講演、研修、執筆などでも活躍。

<緒方俊雄先生のHP>
【SOTカウンセリング研究所】

<緒方俊雄先生の著書・共著>
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慢性うつ病は必ず治る


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すぐ会社を休む部下に困っている人が読む本 それが新型うつ病です


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「勝ち組」の男は人生で三度、挫折する


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カウンセリング実践ハンドブック



インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

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