第90回目(2/4) 緒方 俊雄 先生 SOTカウンセリング研究所

慢性うつ病は、無意識に抑圧していた怒りや悲しみを、カウンセリングで取り出していく

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「本を出されて、反響はいかがでしたか?」

『慢性うつ病は必ず治る』(幻冬舎)を出したら、あの本を読んで、私のカウンセリングを受けたい、という人がけっこう出てきたんです。

面白いのが、「緒方俊雄」で検索するとヤフー知恵袋などが出てきて、「緒方俊雄さんのカウンセリングを受けたいのですが、どうしたらよいのですか?」などと質問が書いてあって、それで回答はない訳です。自分で書こうかと思いましたが(笑)。

そんな質問が3つくらいあったんです。そうしているうちにそういう人が、幻冬舎に手紙を送るんです。そうすると、幻冬舎経由で私に回送されて来て、10年や20年もうつ病の人の手紙を読んでいたら、「あまり待たせておく訳にもいかない」と思い、独立したというのが経緯なんです。

「クライアントさんの要望に応えて、という感じだったのですね?」

背中を押されて1年間前倒しして開業した、という感じですね。

振り返ってみると、「将来はカウンセラーになりたい」と思っていたのですけれど、ソニーで半導体の研究をしていて白石に行かされそうになって無理矢理脱出した訳です。

それも背中を押された感じですし、それで運良く人事センター長さんと出会ってカウンセラーで使ってもらって、今度はリーマン・ショックになって運良く外に脱出して、今度は慢性うつの本を書いて、気がついたら開業していたんですね。

だから、「将来はカウンセラーになりたい」とは思っていたのですけれど、節目節目は自分の意思ではなくて、何か背中を押されているような感じで、「気がついたらこうなっていた」というのが現実なんです。

「それは、“論文にして”という依頼にきちんと応えていらしたから次に進んだように感じますが?」

でもね、よく頼まれるんですけれど、学会発表も論文発表もまだ1回ずつしかやっていないんです。面倒くさいから(笑)。

「でも、着実に進んで来られた感じですね?」

まあ、ボチボチですね。

また、独立から気づいたんですけど、カウンセリングをしているよりも講演や研修などで話した方がお金になるんですね。なので、独立してからはいろいろなところで話すことも始めました。

「それはどういうところからお話が来るのですか?」

最初、独立した時は、自分自身で50社くらいに営業しました。でも、50社回っても1社か2社しか契約が取れないんです。「これはたまらないな」と思って、今は、見込客を紹介してくれる企業が話を持ってきてくれるんです。

「それは企業でのメンタルヘルス講習などですか?」

そうです。恵比寿でやっているカウンセリングと企業の中でやっているカウンセリングがあるんですが、全体の60%がカウンセリングで、20%くらいが研修や講演で、10%くらいで本や雑誌の原稿を書いていて、残りの10%くらいが営業ですね。営業と言っても、新規のお客様との打ち合わせなどですが。

「先生としては、ビジネスマンのメンタルヘルスを中心に考えていらっしゃるのですか?」

いや、そういうことはないです。ただ、私がカウンセリングでずっとやってきたのはビジネスマンが中心だったし、私自身もビジネスマンでずっとやっていたのでそこに強みはあると思います。

ですが、ここでカウンセリングを始めてからは、中学生からお年寄り、主婦の方だとか、さまざまな方が来られています。

「層が広がって戸惑う、というのはありましたか?」

そうですね。前はソニーやEAPで会社員の方だけを対象にしていたのですが、たとえば、働いていなくて10年も引きこもっている方だとかいろいろな人が来られるので、やっぱり最初は戸惑いましたね。もう試行錯誤ですよね。

「慢性うつ病について、先生のお考えをお聞かせいただけますか?」

うつっていうのも、いろいろなタイプのうつがあるんじゃないかと思うんですね。

今の医学界では原因じゃなくて症状で診ているから一括りにされちゃっているんですけれど、うつって言っても、ただものすごく仕事が忙しくてうつになることもあるじゃないですか。それは薬を飲んで安静にしていたら元気になるので、それはそれでいいと思うんです。

あと、親が亡くなったりとか、すごくショックな出来事が起こってのうつというのも、薬を飲んで安静にしていたら時間と共に復活してくるものだと思います。カウンセリングだと時間もお金もかかるので、最初はお医者さんに行って薬物療法で薬を飲んで、それで治るんだったらそれが一番いいと思うんです。

ただ、薬を飲んでうつが治っても、また何かのストレスがかかると再発を繰り返す、また下手をすると慢性化してしまう、という人は、いくら薬を飲んでも治らない。そういう人は、うつになりやすい考え方や生き方、行動パターンを持っているので、そこを変えていかないと、うつから卒業することができない。

だから、薬を飲んでも10年うつの人などは、カウンセリングでそういった根本原因を変えていかなければならない、ということです。

1つは、生き方や考え方を変えていくというのがあるのですが、もう1つは、そういう方は怒りや悲しみを無意識に抑圧していて、そういった感情をカウンセリングで取り出していくことによってよくなっていく、ということがあります。

「うつの方と怒り、というのは意外だと感じる方もいらっしゃるかと思いますが、その怒りというのはどこから来ているのでしょうか?」

怒りは、どんな人でも理不尽なことをされると怒りを持つんです。そうした怒りに対して、普通だったら怒って発散するんですけれど、上司みたいな人の場合はケンカができないから発散できない訳ですよね。普通の人だったら一杯飲み屋などで飲んで、「あの上司がよー」とか言って、くだを巻いて発散させて帰る訳です。

それが、すごく真面目な人というのは、「あの上司があのように怒ったのは、自分があのとき怠けていたからだ」とか、全部自分のせいにしてしまうんです。それで、抑圧する人は怒りも感じないんです。そうすると、本当は怒りを感じているので、どんどんどんどん無意識に怒りが溜まっていってしまうんです。


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「自分でも自覚できない怒りが溜まってしまう、ということですか?」

そうです。だから、飲むと怒り上戸、泣き上戸の人がいますけど、ああいう人は普段はものすごく真面目で優しい物静かな人なんです。それで、怒りや悲しみの感情を押さえつけているんです。それが、酔っ払うと押さえつけるのが弱くなるので感情が出てきてしまう訳です。

そうすると、男の人は怒り出したりだとか、女の人は泣き出したりとか、が多い訳です。だから、真面目な人に限って抱えているんです。そういったものを取り出していくんです。

面白いのは、意識の世界と無意識の世界というのは正反対になっている、ということです。意識の世界では誰の言うことでも聞くようなものすごくいい人が、うつになってカウンセリングを受けたりすると、今まで押さえつけていたものが無意識からどっと出てきて、「どの人も大嫌いで、どの人も殺してやりたい」とか言い出したりする訳です。

だから、まったく正反対なんです。そういった感情をずっと抑えてつけているから苦しいので、そういったものをカウンセリングで取り出していくんです。

「それはご本人も気づいていないのですよね?」

取り出すまでは気づいていないんですよ。

「先生に対して怒りをぶつける人はいませんか?」

私に対して怒りをぶつける人はいない訳ではないですけど、珍しいかもしれないですね。

「では、上司や親に対する怒りを語り出すということですか?」

そうですね。あとは、女性の人だったらずっと泣き続けるとか。1時間半とか2時間とか、涙が枯れるまで泣きます。

「その時、先生はどんな風になさっているのですか?」

ただ、ずーっと発散させるままにしますね。

「なるほど。先生は辛い感じにはならないのですか?」

そんなに辛くもないですけどね。あまり真面目な人がカウンセラーになると、自分がうつになってしまう人がいるんです。そういう人は、相手の悩みを自分が背負ってしまうんですね。でも、悩みというのは本来はその人のものであるべきなんです。

だから、本当はカウンセリングは、リセットしてリセットしてリセットするものなんですね。本来は、1時間は一生懸命話を聴いてもそれが終わったらリセット、のはずなんだけれど、そうは言っても人間だから、自殺未遂の話だとか重い話というのは残るんです。

会社員の時は8時間働いていると言っても4時間くらいは会議などで気が抜けているんです。一方で、カウンセリングの時というのは、ひたすら聴いていなければならない訳ですよね。だから同じ時間働くと疲れますね。8時間とか10時間カウンセリングすると、帰りの電車では疲れていますね。

カウンセリングばかりやっていると疲れるので、カウンセリングをやったり、講演したり、本を書いていたりすると、聴くのと話すのと書くのとで、何となくいいバランスですね。だから、カウンセラーだけをやっているのは大変だろうなと思います。

「巻き込まれる、ということはありませんか?」

境界性パーソナリティ障害の人は巻き込もうとします。夜中にどんどん電話やメールが来たりしますけれど、だんだんいなし方がうまくなってきた感じがあります。

境界性パーソナリティ障害の方って突然怒りだすじゃないですか。カウンセラーになったばかりの頃、1回怒らせたことがあって、「何であなたに私のことがわかるのよ!」と何かが怒らせてしまったみたいなのですが、それ以降ずっとうまくいっていたから、「境界性パーソナリティの人とは相性がいいな」なんて思っていたら、2年前くらいにまた怒らせてしまいました。今はボチボチうまくやっていますが、でも境界性パーソナリティ障害の方の時は気を遣いますね。

だから、慢性うつよりも境界性パーソナリティ障害や、新型うつ病の方の方が疲れますね。今思うと、10年前くらい前に、うつ病や強迫神経症、パニック障害の方をカウンセリングしていた時の方が楽でした。

境界性パーソナリティ障害や自己愛性パーソナリティ障害、新型うつ病やアスペルガー症候群など、最近注目されている方の方が難しいですね。だから、「そろそろ時代についていけなくなってきたから、80歳を待たずに引退かな」と思っています(笑)。

「なぜ、難しい人が増えて来ているのでしょうか?」

新型うつ病の本(『すぐ会社を休む部下に困っている人が読む本』)に書いたのですが、心の病気は時代の鏡みたいなもので、時代によって病気が変わってくるんですね。

たとえば、70〜80年代というのは仕事人間が求められたので、ものすごく仕事をしてつぶれるタイプのうつだったんです。一方、今というのは、物質的に豊かで、子どもがものすごく甘やかされていて、それで仕事に適応できないような「うつ」になっています。

だから、昔の「うつ」というのは過剰適応なので適応度を下げていけばいいのですが、今の「うつ」は甘やかされてできないということだから、学習していかなければいけないんです。対応が違ってきているので難しくなっていますね。

「境界性パーソナリティ障害も甘えが原因なのですか?」

境界性パーソナリティ障害というのは、両親から十分愛されていなくて、“愛されたい”と愛を求めて、愛の漂流者のようにさまよっている感じです。そうすると、カウンセリングの中で受け入れてあげて安定させてあげるということになります。

家庭が昔よりも難しくなっているかもしれないですね。離婚も増えているし、奥さんも働いている場合が多いですし。それに、両親自体が「自分は、自分は」というように自己中心的になってきているから、昔のサザエさんのフネさんみたいにはならなくなってきていますよね。

昔の日本は協調して集団を大事にしていましたが、アメリカの文化が入ってきて、これはいいことなのかもしれませんが、自分のことを主張し始めましたよね。そういった意味で心の病気も変わってきている気がしますね。

(次回につづく・・)

緒方 俊雄(おがた としお)    SOTカウンセリング研究所所長
                     臨床心理士、産業カウンセラー

早稲田大学理工学研究科修士課程修了。
大手電機メーカーにて、研究開発、企画、マーケティング、カウンセリングなどの業務に従事。
その後、EAP(従業員支援プログラム)機関所属のカウンセラー経て、 現在、SOTカウンセリング研究所所長。
臨床心理士、産業カウンセラー。
2009年8月、うつ病者の復職支援の研究で、日本産業カウンセリング学会より学術賞を受賞。
心理カウンセリングに取り組みながら、メンタルヘルス関連の講演、研修、執筆などでも活躍。

<緒方俊雄先生のHP>
【SOTカウンセリング研究所】

<緒方俊雄先生の著書・共著>
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慢性うつ病は必ず治る


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すぐ会社を休む部下に困っている人が読む本 それが新型うつ病です


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「勝ち組」の男は人生で三度、挫折する


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カウンセリング実践ハンドブック



インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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