第89回目(4/4) 榎本 英剛 先生 よく生きる研究所

常に原点に立ち返ること!

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「チェンジ・ザ・ドリームについても、教えていただけますか?」

今、世の中ではいろいろな問題が起きています。環境の破壊だったり、社会的な不公正だったり、精神的な行き詰まりだったり。日本で、毎年自殺者が3万人も出るのはまさに精神的な問題ですね。今の世の中で問題となっていることは、突き詰めるとだいたいこの3つに集約されるんです。

そして、「それはなぜ起こるのか?」という原因を辿っていくと、結局のところ、「その人がどういう意識で世界を見ているか」ということが、すべての問題の根源にあるというのがチェンジ・ザ・ドリームのメッセージなんです。

「人の意識の問題なのですね?」

その人がどんなことに問題意識を感じているにせよ、その問題は他の問題と切り離されて別個に存在しているわけではなく、それらの根っこを辿っていくとすべて繋がっています。いろんな団体が、環境の問題に取り組んだり、不公正の問題に取り組んだりして、互いに自分が取り組んでいる問題の方が大事だと主張しているけど、どれも元々は1つの問題から派生しているんです。

環境の問題はあるわ、テロの問題はあるわ、原発や放射能の問題はあるわ、というようにたくさん問題があると思うと圧倒されてしまって、無力感にさいなまれている人は世の中に多いと思います。

でも結局、すべての問題の根っこは「世界はバラバラである」という世界観にあると気づくと、企業や政治家など他の誰かが悪いというよりも、僕達1人1人の意識がそういった問題を作り出していて、自分自身にも責任があるということに気づくわけですね。

それに気づくことってすごく痛いことなんだけど、でも同時に、すごく勇気づけられることでもあるんです。

というのも、問題がたくさんあって、しかもそれら問題の原因が自分の外にあると思ってしまうと、何もできないという無力感に陥ってしまうんだけど、問題の原因は1つで、しかもその原因に自分も関わっていると思うと、「自分にもできることがあるんだ」とか、「自分も問題を解決していくための解決策の一部になり得るんだ」という希望が湧いてくるんです。

チェンジ・ザ・ドリームには“シンポジウム”と呼ばれるワークショップ形式のプログラムがあって、そこではまず「問題の原因は自分達の世界観にある」ということに気づいた後、「じゃあ、自分にできることは何だろう」と、参加者1人1人が自分の役割に気づいて、エンパワーされていくのを後押しします。

「自分には何もできないと思っていたところから、自分にもできることは何かを探していくのが、チェンジ・ザ・ドリームということですね?」

僕はエンパワーする上での最大の敵は“無力感”だと思っているんです。人は無力感に陥っている時、「自分にはどうにもできない」と思っているわけですが、その場所と「自分にもどうにかできる」という場所の間には大きな溝があって、その溝に橋を架けることが大事だと思っているんです。

その橋を架ける方法にはいろいろあって、コーチングという橋もあれば、トランジション・タウンという橋もあるし、チェンジ・ザ・ドリームという橋もある。

手段は何でも構わないけれど、無力感から何にもできないと思っている人が、自分にも何とかできるというところに移行するための橋をたくさん架けたい、という想いが自分を突き動かしているおおもとにあると思います。

その橋は多ければ多いほどいい。なぜなら、コーチングに興味を持って来てくれる人は限られているし、トランジション・タウンやチェンジ・ザ・ドリームだけでもそれは限られてしまうけれど、橋の数が増えればそれだけ接点が増えて、エンパワーされる人が増えるはずだと考えています。

「エンパワーするための橋を架けるのが、ご自身の天職?」

それが、自分が一生をかけてやってみたいことですね。今やっていないことでも、まだいろいろな方法があるんだと思います。


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「今、悩んでいる方や、セラピストを目指している方へのメッセージをいただけますか?」

常に原点に立ち返ることが重要だと思います。

例えば、「なぜあなたはセラピストになりたかったんですか?」といった元々の想いみたいなものを僕はその人の原点と呼んでいて、それは誰にでもあるんですね。でも、同じセラピストという職業でも「なぜセラピストになったか?」という原点は、それぞれのセラピストで違うと思うんですね。

僕だったら、「エンパワーするための橋渡しをしたい」ということが原点であって、コーチであるとか、トランジション・タウンの活動をやっているとか、いわゆる目に見える仕事の部分というのは手段に過ぎないわけです。

だけど、目的と手段を混同してしまうということはよくあって、例えば、コーチになるということは手段であったはずなのに、「勉強して資格をとらなくちゃ」、「スキルを磨かなくちゃ」、「クライアントを見つけなくちゃ」といったことを一生懸命にやっているうちに、「そもそも何でコーチになりたかったんだっけ?」という目的が後回しになってしまうことがあるように思います。

「目的が後回しになってしまう?」

「そもそも、何でやりたかったんだっけ?」という原点こそが自分の本業で、職業はその手段に過ぎないというところに常に立ち返ることができれば、別に1つの職業にとらわれなくてもいいと思います。

自分が本当にやりたいことを1つの職業、1つの方法だけで実現しようとすると、僕がそうだったように、ある時壁にぶつかる可能性があると思いますが、それを実現するのにいろいろな方法があると思うとラクになりますよね。

職業的な悩み以外でも同じだと思います。

「この道しかない」とか「この選択しかない」とか思うとすごく追い詰められるので、そういう時には一旦「そもそも、何がやりたかったのか」という原点に立ち返ることで、より多くの選択肢や解決策が見えてくると思います。

「今後の夢や展望を聞かせていただけますか?」

僕はあまり展望とかを持たない人間なんですね。よくビジョンやゴールを明確にすることが重要だと言いますが、僕はこれらは“両刃の剣”だと思っています。

何かを実現したいと思った時、そこに至るまでにはある程度の時間がかかりますよね。そこに向けて行動を起こしていくと、一歩前に行く度に新しい情報が手に入るわけですが、ビジョンやゴールを明確に決めてしまうと、そこに至る上で一見関係なさそうな情報をすべてシャットアウトしてしまう傾向があって、それはかえって可能性を狭めてしまう気がするんですね。

かと言って、ビジョンやゴールについて考える必要は一切ないか、と言うとそうではなくて、僕は、ビジョンの役割は、「明日どっちの方向に向かって一歩を踏み出せばいいのか?」を見出すためのツールだと考えています。

“ビジョンのジレンマ”と僕は呼んでいるんですけど、ビジョンは一歩行動を起こす度に更新していかないと、それに囚われてしまって、かえって足枷になりかねないと思うんですね。

「それが、ビジョンのジレンマですか・・・」

よく、ゴールを設定して、そこに至るまでの計画を立てて、それらに照らして今うまくいっているとか、いっていないという評価をするじゃないですか。でも、ゴールとかビジョンに至る道筋って本当はいっぱいあるわけですから、自分の小さな頭で考えた計画だけを基準にして、うまくいっているか、いっていないかって判断できるものではないように思います。

僕は、ビジョンやゴールを明確にするよりも、「エンパワーをしたい」といったように、自分のエネルギーが向かう方向=ベクトルがはっきりしていればいいと考えています。「エンパワーをしたい」というのは形のないものですから、それを実現する方法はたくさんあるけれども、形のあるものに囚われると結構危険だと思うんですね。

行動ってある種の意思表示だと僕は思っているので、自分が行動を起こすとそれに世の中が反応していろいろな情報が引き寄せられてきます。例えば、僕は組織開発を勉強するために留学したわけですが、いざ行ってみたら、実は生き方とか仕事とかいうことに興味があることがわかって、そこからコーチングに出会っていくわけです。

もし僕が「組織開発を勉強して、組織開発コンサルタントになる」と決めてそれにこだわっていたら、多分、風変わりな名前の授業を取ることもなかったですし、コーチングに出会うこともなかったと思うんです。

だから、形に囚われるのではなく、その瞬間のベクトルだけを意識して一歩を踏み出し、そこで引き寄せられてくる情報にしたがって、次の一歩をその都度考えるという方がいいんじゃないかと。

「ベクトルだけを意識して、何をやるかはその都度考える?」

未来のある一点に向かって可能性がだんだん狭まっていくボトルネック的な生き方よりも、一歩踏み出すごとにどんどん可能性が広がっていくオープンエンド的な生き方の方が僕自身は面白いと思うので、敢えてビジョンとかゴールとか形のあるものを設定しないようにしているんです。

だから、「エンパワーしたい」というベクトルは多分ずっと変わらないと思いますけど、具体的に何をやるかはその瞬間瞬間に判断していこうと思っているので、1年後自分が何をやっているか全くわかりません。そういう先が見えない感じがなぜかたまらなく好きなんです。

逆に、1年後自分が何をやっているかが見えてしまうと、とてもつまらなくなってしまうんです。CTIジャパンの経営を離れたのもそれが1つの理由です。代表としての役割を果たしていく中で、1年後自分が何をやっていて、どういうスケジュールで動いているのかが見えてしまって…。それがイヤなんですよ。

このことは幼少時に探検ゲームをやっていたこととつながっているのかもしれません。多分、迷いたいんですよ、僕は(笑)。きっと、そういう生き方をする種は昔からあったんだと思いますね。


<編集後記>

雨の中、タイトなスケジュールの合間を縫って、インタビューをさせていただきました。
好奇心に導かれ、自分の人生の旅をし続けるヒデさんの瞳の奥は、キラキラと光っています。

「よく生きる」とは「正しく命を使うこと」
生き方、暮らし方、どう命を使うのか、自分の人生のテーマを考えるひと時となりました。(A)

榎本 英剛(えのもと ひでたけ)  よく生きる研究所代表、CPCC、PCC
                     CTIジャパン創設者、セブン・ジェネレーションズ創設者
                     トランジション・ジャパン共同創設者

1964年、兵庫県宝塚市生まれ。一橋大学法学部卒業後、株式会社リクルート入社。人事・営業・企画・研修開発などの業務を経験し、1994年に退社。米国サンフランシスコにあるCalifornia Institute of Integral Studiesにて組織開発・変容論を専攻、1997年に修士号を取得。
米国留学中の1995年にCTIのコーアクティブ・コーチングと出合い、翌1996年に日本人として初めてプロコーチの資格であるCPCCを取得。2000年には株式会社CTIジャパンを設立。
2003年末からは、スコットランドのフィンドホーンというエコビレッジにて、家族とともに持続可能な暮らしを肌で学ぶ。帰国後、持続可能な未来を創るための市民運動であるトランジション・タウンおよびチェンジ・ザ・ドリームを2008年から展開。2012年には、これまでの経験を統合し、広く共有するための場として、よく生きる研究所を設立し、活動の主軸としている。

<榎本英剛先生のHP>
【よく生きる研究所】

<CTIジャパンのHP>
【CTIジャパン】

<榎本英剛先生の著書・訳書>
cover
部下を伸ばすコーチング


cover
コーチング・バイブル第3版


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バーチャル・チーム



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:大島まさあき(おおしままさあき)

大島まさあき

大島まさあきと申します。年齢は木村拓哉さんと同級生になります。

現在、働く悩み専門カウンセリングを行っています。
小田急 新百合ヶ丘で活動しています。
働くことに苦痛、違和感を持ったまま働き続けると
人生の大きな舵取りを誤る可能性があります。
自分を見つめ直す機会を持ってみませんか? お気軽にご相談下さい。
HP:働く悩み専門カウンセリング


インタビュアー:岸眞美(きしまみ)

岸眞美

会社員生活を送るうちに、人が幸せになる、ってどういう事だろうという
素朴な疑問が生まれました。

社内教育に携わり、コーチングに出会い、資格を取得。
現在は、ほっとする「居心地の良い場所」を追究すべく、
自然療法フットケアサロンOPENに向け、日々研鑽中。


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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