第89回目(3/4) 榎本 英剛 先生 よく生きる研究所

人がエンパワーされる社会とは? トランジション・タウンの活動

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「トランジション・タウンに興味が向かったきっかけは?」

コーチングをやっていて、常に疑問に思う事がありました。

コーチングって何?といった時に、いろいろな説明の仕方がありますが、その1つに、相手をエンパワーするための手法というのがあります。つまり、相手が自分自身の本来の力に気づいて、それをフルに発揮できるよう支援していく方法だと思うんですね。

実際自分がコーチングをしてもらったり、させてもらったりする中で、人がエンパワーされていく場面を何度も見てきて、これは素晴らしい手法だということには確信を持っているのだけれど、その人が生きている世の中はどうなんだろうか、という疑問があったんですね。

今の世の中の仕組みが、そこに生きている人達の可能性を引き出すような仕組みになっているかというと、そうじゃないな、と思ったんです。それは政治の仕組みもそうだし、経済の仕組みもそうだし、教育の仕組みもそうだし。ありとあらゆる仕組みが人の可能性を引き出すような仕組みになっていない、という風に感じていました。

そのような仕組みの中で1人1人、コーチングを通してエンパワーしていっても、どこかで限界が来るのではないか、ということを常に感じていました。そこで出てきた問いは、「人がエンパワーされる社会って、どういうものなんだろう?」というものでした。

「エンパワーされる社会とは? という問いですね」

どういう仕組みになれば、コーチングという手法に頼らなくても、そこに生きている人達が自然にエンパワーされ、常に自分らしく、本来の力を発揮できるような社会になるんだろうという問いが湧いてきました。

僕は、問いが湧いてきて、それが気になり始めると、追究せずにはいられない性質みたいで。まさに留学に至る過程と似ているんですけど、その疑問を抱えたまま、これまで通りコーチングを続けていくわけにはいかなくなったんですね。

具体的なきっかけはピースボートという3ヶ月で世界を一周する旅に出たことでした。旅の間、世界で今起きている様々な問題を見聞きするうちに、自分はいかに何も知らないかということに気づき、コーチングという小さな世界の中で「井の中の蛙」になっていることに愕然としたんです。

このままいくとマズイという危機感が強くなり、“井の中”から出なくてはいけない、と思いました。とは言え、会社を作ってまだ3年も経ってなくて、事業も軌道に乗ったとはとても言えない時期だったので、相当悩みました。

そこで、1年だけ自分に時間的な猶予を与えることにし、その間にやり残したと思うことを全部やり、後を継いでくれる人も見つけて、ピースボートから戻ってきてちょうど1年後に、満を持して経営から身を引かせてもらいました。非常識なことだとは思いますが。

「経営から身を引いた後、どうされたのですか?」

辞めてから何をするかっていうのは、全く決めてなかったんですが、1つ、エコビレッジというのが気になっていました。

これは持続可能な暮らしを営むコミュニティの総称で、その中でも世界的に有名なフィンドホーンっていうスコットランドにあるエコビレッジのことを以前から知っていました。ある時、そのフィンドホーンから送られてきたパンフレットを何気なく眺めてたら「この度、新しくエコビレッジ・トレーニングを始めました」という文章に目が留まったんです。

その案内文を読んだ時、すごくワクワクしました。何が書いてあったかはもう覚えていませんが、直感的に「ここに自分が探している答えのヒントがあるかもしれない」と思ったんです。そこで、まずはフィンドホーンに行って、1ヶ月間のエコビレッジ・トレーニングを受けることにしました。

ただ、1ヶ月くらい行っただけでは何もわからない、というのが正直な感想でした。やはり実際に住んでみないとわからないと思い、1年くらい経った時に家族を連れてフィンドホーンに移住することにしました。

そこで持続可能な暮らしっていうのを身をもって体験しながら、「人をエンパワーする社会ってどういうものか」という問いに徹底的に向き合いました。

「どのようなことが、わかりましたか?」

フィンドホーンでは、食べるものにしても、エネルギーにしても、暮らしていく上で必要となるものは基本的にすべて自分達で作っているんですね。自分達で農場を持っていますし、風力発電用の風車を4基持っています。経済についても、地域通貨といって、コミュニティの中でお金を循環させる仕組みを持っていました。

彼らは、いかに外の世界に依存せずに、持続可能な暮らしを営んで行くかを考えているわけですが、それが同時にそこに住んでいる人達をエンパワーする仕組みにもなっていることに気づきました。このようなコミュニティが世の中に増えていけば、人がエンパワーされる社会をつくることも可能かもしれない、と思い始めたんです。

ただ、じゃあ日本でエコビレッジでも始めようかと思っても、日本はそもそも土地があまりない。土地があったとしても資金がない。資金があったとしても、時間はかかるし、人手もかかる。そんな悠長なことをやっていたら、気候変動やピークオイル等の世界が直面する差し迫った問題にも間に合わないと思いました。

どうしようと思っていた時に、誰かから「トランジション・タウンって知ってる?」と言われたんです。話を聞いてみると、それだったらできるかもしれないと感じました。


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「どう違うのですか?」

エコビレッジが基本的に何も無いところからコミュニティを築いていくのに対して、トランジション・タウンは、既存のコミュニティ、つまりすでにある市町村に住んでいる人達が中心になって、それをより持続可能なコミュニティに変えていこうという市民運動なんです。

トランジション・タウンの考え方って、コーチングの考え方と近い部分があるんです。コーチングでは、その人が必要とする答えはその人の中にあるって考えるんですが、トランジション・タウンではその地域が持続可能な地域になるために必要なリソースは全部その地域にあるって考えるんですね。対象が個人か地域かだけの違いであって、全く同じではないかとびっくりしました。

コーチングをやっている人達から見ると、僕がなんで突然トランジション・タウンのような市民運動をやり始めたのか、理解できないようなのですが、自分の中では全部繋がっているんです。

ちなみに、「エンパワーしたい」というのは、自分にとって人生の目的と言えるものなんだと思います。対象が個人であったり、地域であったりして、それぞれやり方も違うけれども、結局は1つのことをやっているという感覚なんです。

「フィンドホーンにいる人達は、エンパワーされているのですか?」

皆が皆、エンパワーされているわけではないと思いますけれど、いざという時の安心感があるように感じます。食料やエネルギーなどは自分達で作っているし、困った時にはお互いに支え合えるだけのつながりもあるので、喰いっぱぐれることがないんですね。

最近、特に大都市に住んでいる人達を見ていると、常にそこはかとない不安を抱えている人が多いように感じます。それは、例えば、食とかエネルギーなど、生きる上で必要となる基本的な要素との距離が離れてしまって、何があっても大丈夫という感覚がないことから来る不安なのではないかと思います。

これは、被災地支援で東北に行った時にもすごく実感したことなんですが、東北と一言で言っても、農漁村もあれば町中もあるんですね。

避難所に救援物資を持って行った時に、農業とか漁業をやっている人達のところに行くと、「俺達は海や畑さえあれば何とかなるから、他に持って行ってやれ」なんて言うわけですよ。家も船も流されて何にもなくて大変な思いをしてるっていうのに。

一方で、町中の避難所に行くと、幽霊みたいな感じで人が群がってきて、我先にと救援物資を持っていくんです。「この違いは何なんだろう」と思いました。

「何が違うのでしょう?」

僕は、これからの時代の1つのキーワードに“レジリエンス”というのがあると思っています。どんな変化に対しても柔軟に対応できるしなやかな強さという意味の言葉ですが。

レジリエンスには、個人レベルのレジリエンスもあれば、地域レベル、組織レベル、国レベルのレジリエンスもありますけど、何があっても何とかなるさとどっしり構えていて、実際何とかしてしまう、そういう底力を、個人レベルでも地域レベルでも国レベルでも失ってしまっていることが、そこはかとない不安を生んでいる気がしています。

何があっても大丈夫、というのは心のレジリエンスですし、実際に何とかしてしまえるのは暮らしのレジリエンスだと思いますが、この両方を身につけていくことが、これからの時代に求められている大事なことだと思っています。

(次回につづく・・)

榎本 英剛(えのもと ひでたけ)  よく生きる研究所代表、CPCC、PCC
                     CTIジャパン創設者、セブン・ジェネレーションズ創設者
                     トランジション・ジャパン共同創設者

1964年、兵庫県宝塚市生まれ。一橋大学法学部卒業後、株式会社リクルート入社。人事・営業・企画・研修開発などの業務を経験し、1994年に退社。米国サンフランシスコにあるCalifornia Institute of Integral Studiesにて組織開発・変容論を専攻、1997年に修士号を取得。
米国留学中の1995年にCTIのコーアクティブ・コーチングと出合い、翌1996年に日本人として初めてプロコーチの資格であるCPCCを取得。2000年には株式会社CTIジャパンを設立。
2003年末からは、スコットランドのフィンドホーンというエコビレッジにて、家族とともに持続可能な暮らしを肌で学ぶ。帰国後、持続可能な未来を創るための市民運動であるトランジション・タウンおよびチェンジ・ザ・ドリームを2008年から展開。2012年には、これまでの経験を統合し、広く共有するための場として、よく生きる研究所を設立し、活動の主軸としている。

<榎本英剛先生のHP>
【よく生きる研究所】

<CTIジャパンのHP>
【CTIジャパン】

<榎本英剛先生の著書・訳書>
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部下を伸ばすコーチング


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コーチング・バイブル第3版


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バーチャル・チーム



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鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


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マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


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大島まさあきと申します。年齢は木村拓哉さんと同級生になります。

現在、働く悩み専門カウンセリングを行っています。
小田急 新百合ヶ丘で活動しています。
働くことに苦痛、違和感を持ったまま働き続けると
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岸眞美

会社員生活を送るうちに、人が幸せになる、ってどういう事だろうという
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社内教育に携わり、コーチングに出会い、資格を取得。
現在は、ほっとする「居心地の良い場所」を追究すべく、
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脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
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前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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