第89回目(2/4) 榎本 英剛 先生 よく生きる研究所

どうしたら活き活きと働けるか、本来の力を発揮できるか?

インタビュー写真

「留学後、どのように今に至るのか、その道筋を教えていただけますか?」

話が錯綜するかもしれませんが、人を活かす組織のあり方を知りたくて留学したんですけれど、組織開発を学び始めて間もなく、組織がどうあればいいかということに、自分はあまり関心がないなと気づいたんです。

それよりも、働き方、生き方という部分に自分は興味があるんだと気がついたんです。そのきっかけは、留学して2学期目に取ったある授業でした。その授業は、自分が所属していた学部のものではなくて、隣の学部のものだったんですが、この大学院では学部を超えて授業を取るのが割と自由だったんですね。

今でも覚えていますが「自分の生きたいように生きて、かつ生計を立てる」という風変わりなタイトルの授業だったんです。でも、何か心惹かれるものがありました。その授業を取ってみたらとても面白くて、組織論の授業が色あせて見えてきて、自分がやりたいのはこういうことだったんだと思ったんです。

「それはどういう?」

子どもの頃から仕事というものに対して疑問があったんです。大人になると多くの人は当然のことのように仕事をするわけですが、自分の父親を見ていると、とても辛そうに仕事をしているように見えて、「何で人は仕事するんだろう。何で仕事って楽しくないんだろう」、という素朴な疑問を持っていました。そこで大学院の卒論は仕事のことを書きたいと思いました。

折しも日本では終身雇用が崩れて、キャリアや仕事の見直しがなされている時期だったので、「仕事とは何か? どうしたら活き活きと仕事ができて、かつ自分が持っている力を最大限に発揮できるのか?」をテーマにしました。

結果的に“天職創造”という天地創造をもじったコンセプトが自分の中から出てきて、そのコンセプトを体験してもらうためのワークショップを卒業プロジェクトとして開発したんです。

「天職創造ですか!」

それがコーチングとの出会いと繋がるんですけれど、2年半の大学院生活を通じて、こういうスタンスで仕事と関わっていけば、より活き活きと働けるし、本来の力を発揮できるのではないかというものを自分なりに見出したんです。それで日本に帰って、天職創造セミナーをやっていこうと。

ただ、そのワークショップで仮に多くの気づきが得られたとしても、それを実際に形にしていくには時間がかかるんです。僕もアメリカで様々なワークショップに出ましたが、その時は盛り上がっても、日常生活に戻ると「あの盛り上がりは一体何だったんだろう?」となることがありました。

自分のワークショップではそうなってほしくなくて、その気づきを日常に戻ってちゃんと形にしていくところまでサポートするにはどうしたらいいんだろうという問いを持ったことが、コーチングに出会うきっかけだったんです。

「そこからコーチングの方に進んで行かれるのですね?」

幸いその大学には、“インディペンデント・スタディ”という仕組みがあったんです。自分が勉強したいテーマを自分で選び、先生や授業計画、課題図書まで自分で決めていいという仕組みです。

ここでも、デザインするのが好きという自分の性質が出てくるんですが、それなら例の風変わりなタイトルの授業(自分の生きたいように生きて生計を立てる)をやっていた先生に自分のインディペンデント・スタディの担当教授になって欲しいと思い、頼みに行ったんです。

最初は、「今学期で学校を辞めるから」と断られたんですが、そこを何とかと説得して、担当してもらえることになったんです。ちなみに、その先生はフルタイムの教授は辞めたんですが、一部の授業は引き続き受け持っていました。

天職創造セミナーの骨格ができつつあった頃、その先生に「お前はいつも一人でやっているけど、たまには自分が研究しているテーマを他の人達にも話してみた方がいい。俺の授業に来て、時間を作るからプレゼンしてみないか」と言われたんです。

それで、その先生の授業に参加して、自分は日本に帰ってこんなことをしたいと思っていますと、天職創造セミナーの話をしました。同時に、セミナーの後どうやって参加者をフォローアップしたらいいかで悩んでいると言ったら、その授業が終わってから、ある学生に「コーチングをやってみたら?」と言われたんです。でも、その時はまだピンと来てなかったんです。

ちょうど同じ頃、友人のパーティで「僕は日本に帰ったらこういう事がしたいんだ」という話をしていたら、ある人から「コーチングをやってみたら?」とまた言われて。そういう事が何回か続いたので、「そこまで言うなら」とコーチングのプログラムに参加してみたのがきっかけだったんです。

「日本に帰ってから、どうされたのですか?」

天職創造セミナーでは、その名前にも表れているように、「自分の仕事は自分で創るものだ」という話をするんですが、そういうこともあって、再就職するっていう発想は全くなかったんですね。

もちろん、天職創造っていうのは、必ずしも独立することとイコールではないのだけれども、自分の中では再びサラリーマンの世界に戻るっていう選択肢はなく、かといって気合いを入れて独立したわけでもなく、きわめて自然な形で「天職創造セミナーをやっていこう」って思ったんです。

セミナーの終わりに、「実はコーチングっていう手法を使って、皆さんが今日見出した、自分の天職の可能性を実際に形にしていくサポートもしているんですが、もし良かったらどうですか?」っていう感じで案内して、「是非!」という方に対してコーチングを提供していきました。

だから、天職創造セミナーが主で、コーチングが従だったんです。

コーチングに出会って、「これだ!」とは思ったけれども、日本に帰ってきた時点で、コーチングを事業として広めていこう、という発想は全くありませんでした。それよりも、日本における仕事のあり方を変えたい、という気持ちの方が強かったですね。

初めのうちは、天職創造セミナーとコーチングだけでは食べられなかったんですけれども、翻訳の仕事をしたりして何とか食いつなぎながら、ちょっとずつ参加者やクライアントが増えていって。それでも、それだけで食べられるようになるまでには2年くらいかかったかな。


インタビュー写真


「その後はどのように?」

天職創造セミナーに参加された何人かの方から、「天職創造もいいけれども、あなたがやっているコーチングも面白そうなので、自分も勉強してみたいが、どうしたらいいか」という相談を受けるようになって。当時はコーチングを学べる場所が無かったので、勉強会をやることになったんです。

そうこうするうちに、どこで噂を聞きつけたのか、人材教育系の雑誌から、「コーチングについての記事を書いてくれないか」とか、セミナーをやっている会社から、「企業の人事担当者向けにコーチングについての講座をしてくれないか」という話が入ってくるようになったんです。

その流れに乗っていったら、ある時コーチングについての本を書くことになったんです。きっかけは、CTIの創始者が書いた本を日本語に翻訳して出版したいと思って、その原稿を持って出版社を廻ったことでした。

ある出版社に行ったら、「うちは翻訳本はあまりやってないんだけど、テーマとしては面白そうだから、君が書くんだったら、企画会議にあげてみてもいいよ」と言われて。「えっ、僕が書くんですか?」っていう感じだったんですが、あげてみたらそれが通ってしまったというわけなんです。

それが『部下を伸ばすコーチング』という本なんですけれども、出版したら意外にも反響があったんですね。主に企業から「コーチングについての研修をやってくれないか」という依頼がたくさんくるようになって、一人では対応できなくなってしまったんです。

「研修依頼がたくさんきて、どうなさったのですか?」

以前から、CTIのプログラムを一度は日本で開催してみたいという想いはあったので、CTIの創始者に相談してみることにしました。その時も事業を立ち上げるというよりは、講師を呼んできて、自分が通訳をするという形で、何回かコースをやれればいい程度の発想しかなかったんです。

CTIはCTIで、海外ではイギリスでしかやったことがなかったので、日本という非英語圏の国でやる事に対して、「通用するのか?」という疑問を最初は持っていました。

でも、「自分のここ数年の経験からもCTIのコーチングは必ず通用するはずです」と伝えたところ、「では、やってみるか」という事になりました。ただし、条件があって、それは僕が通訳ではなく、教える立場になる事でした。その時も「えっ、僕が教えるんですか?」っていう感じでした。

中には、僕が最初からコーチングを事業として日本で広げていこうと考えていたと思っている人達もいるようなんですが、全然そうではなくて、とっかかりの発想は極めて小さかったんですよ。

「CTIのコーチングの、他との違いや特徴は何でしょう?」

“コーアクティブ・コーチング”って言うんですけれど、自分がこれを学んで最初に思ったのは、「すごく東洋的だな」と。西洋のものって、いつもステップ・バイ・ステップというか、これをやってから次にこれをやるという風に、順を追って進めていく直線的な手法が多い気がしています。

一方、CTIのコーチング・モデルは円の形をしています。そのせいか、どこが最初というのはなくて、どこから入ってもいいし、全体が大事だという、ホリスティックな感じがありました。

他のコーチングだとよく「こういう時にはこういう質問をする」みたいなものがあったりしますが、そういうものも無いんですね。「とにかく好奇心が大事だ」とか、「その時にその場面にふさわしい質問が直感で出てくる」といった、ある種のあいまいさがあって、そのあたりの考え方が東洋的だと思いました。日本人にはフィットしそうだなとも。

CTIのコーアクティブ・コーチングには、フルフィルメント、バランス、プロセスという3つの指針と呼ばれるものがあるんですが、その中で重要となる価値観や視点、感情といった要素はすべて「Being」に関することなんです。

「あなたは何を大切にしているの?」「あなたは何をどう見ているの?」「あなたは何を感じているの?」というのが根本的な問いになるんですが、これらは「その人の中で何が起きているのか?」に焦点を当てたものです。そういう意味で、コーアクティブ・コーチングはBeingを重視したコーチングだと言えますし、そこも東洋的だと感じる理由の1つです。

一方、他のコーチングは、ビジョンやゴールを描いて、それに到達するための行動計画を立て、それを着実に実行していくというDoing重視の傾向が強いような気がします。もちろん、コーアクティブ・コーチングでもDoingは扱いますが、「何をするか」だけでなく、「どうあるか」を見ていくことで、より本質的な変化が起きるという考え方をしています。

「他にはいかがでしょう?」

あと、CTIはそのトレーニングに特徴があって、参加体験型のワークショップ形式で、実践を通して習得していくやり方です。例えば、「好奇心が大事です」と伝えて、その要点を説明した後、すぐに2人1組になって、実際に相手に好奇心を向けて質問をする練習をしてもらいます。

その後、相手と共に何がうまくいって、何がうまくいかなかったかを振り返る中で、学びや気づきが生まれてきます。

講師の説明をただ聞いているよりも、実際にやってみて、「好奇心を向けて質問するって難しいな」とか、「相手にとって何が良い質問かは、最初から決まっているわけじゃないんだな」といったことを身をもって体験することで、好奇心の大切さが腑に落ちていくのです。

(次回につづく・・)

榎本 英剛(えのもと ひでたけ)  よく生きる研究所代表、CPCC、PCC
                     CTIジャパン創設者、セブン・ジェネレーションズ創設者
                     トランジション・ジャパン共同創設者

1964年、兵庫県宝塚市生まれ。一橋大学法学部卒業後、株式会社リクルート入社。人事・営業・企画・研修開発などの業務を経験し、1994年に退社。米国サンフランシスコにあるCalifornia Institute of Integral Studiesにて組織開発・変容論を専攻、1997年に修士号を取得。
米国留学中の1995年にCTIのコーアクティブ・コーチングと出合い、翌1996年に日本人として初めてプロコーチの資格であるCPCCを取得。2000年には株式会社CTIジャパンを設立。
2003年末からは、スコットランドのフィンドホーンというエコビレッジにて、家族とともに持続可能な暮らしを肌で学ぶ。帰国後、持続可能な未来を創るための市民運動であるトランジション・タウンおよびチェンジ・ザ・ドリームを2008年から展開。2012年には、これまでの経験を統合し、広く共有するための場として、よく生きる研究所を設立し、活動の主軸としている。

<榎本英剛先生のHP>
【よく生きる研究所】

<CTIジャパンのHP>
【CTIジャパン】

<榎本英剛先生の著書・訳書>
cover
部下を伸ばすコーチング


cover
コーチング・バイブル第3版


cover
バーチャル・チーム



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:大島まさあき(おおしままさあき)

大島まさあき

大島まさあきと申します。年齢は木村拓哉さんと同級生になります。

現在、働く悩み専門カウンセリングを行っています。
小田急 新百合ヶ丘で活動しています。
働くことに苦痛、違和感を持ったまま働き続けると
人生の大きな舵取りを誤る可能性があります。
自分を見つめ直す機会を持ってみませんか? お気軽にご相談下さい。
HP:働く悩み専門カウンセリング


インタビュアー:岸眞美(きしまみ)

岸眞美

会社員生活を送るうちに、人が幸せになる、ってどういう事だろうという
素朴な疑問が生まれました。

社内教育に携わり、コーチングに出会い、資格を取得。
現在は、ほっとする「居心地の良い場所」を追究すべく、
自然療法フットケアサロンOPENに向け、日々研鑽中。


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

  • 呼吸法の日本マイブレス協会
  • 毎朝1分 天才のヒント

インタビュー集

  • 毎朝1分天才のヒント メールマガジンで30日間の無料レッスン
  • さぱりメント あなたのお悩みをさっぱり解決