第87回目(2/4) 高野 雅司 先生 日本ラビングプレゼンス協会

マインドフルネスは、“気づきの意識”

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「マインドフルネスとはどんなものか、教えていただけますか?」

マインドフルネスというのは、元々、仏教瞑想から来ているんですけど、簡単に言うと『気づきの意識』。自分の中に起きていることを、ただそのまま気づいていく。

「あ、こんなことを考えている」「あ、こんな気持ちがしている」とか、体のここが暖かいとか、硬いとか。「あ、こんなことを思い出した」とか。自分の中にフッと起きていることを全部そのまま、ただそのまま気づく。ポイントは、そこに良し悪しなどの判断を入れない、ということですね。

「こんなこと考えちゃいけない」とか、「これは昨日ああだったからかな」とかね。そういった意味付けとか解釈とかを我々はしがちですけど、そうではなくて、「ただこういうことが起きている」というように、ひとつひとつただ起きていることに気づいていくだけに留める、というのがマインドフルネスなんです。

よく瞑想というと、日本では禅のイメージが強いので誤解されやすいんですけど、瞑想って大雑把に言うと2つの要素がある。

『止観』という言葉があるんですけど、『止める』というのはサンスクリット語でサマター。簡単に言うと、これはまさに止めるっていう文字通り、自分の意識に起こってくるものをストップすること。

よく『無の境地』とか言うじゃないですか。禅でも「心の中を空っぽにして」というイメージがあるでしょ。それは、『止』、サマターの方向性なんですね。でも心を無にするのってメチャクチャ難しいじゃないですか。

もう1つの『観』というのは、ヴィパッサナーという言葉にあたります。ヴィパッサナー瞑想というものがありますが、こっちは『観』だから、文字どおり眺める、観察する。自分の中に起きていることを止めなくていいから、「ただそのまま見ていきましょう。ありのままに」という方向性です。

「ありのままに、で良いのですね?」

厳密に言うと、マインドフルネスには『止』と『観』両方の意味合いが入っているんですが、大雑把には『観』により近い感じですね。ただそのまま気づいていく。こっちの方が、あるがままでいいので比較的やりやすいんですよね。何か考えていても別にかまわないし、雑念が起きていてもそれに気づいていればいいということなので…。これがマインドフルネスです。

「いろんな雑念が浮かんできちゃうので、うまくマインドフルネスになれません」みたいなことをよく言われるんですけど、「雑念をすべて消そうとしなくていいんですよ。ただそれに気づいていればいいだけですから」とアドバイスしています。

そうしたマインドフルネスのような方法を活用した心理療法、「顕在意識の声を静かにさせて、潜在意識の声を聴けるようにする」アプローチを中心とした心理療法はあまりない、という話をさきほどしましたけれど、その理由は、アメリカで暮らす中で分かってきました。

結局、文化の違いということに関係していることなんですけど、西洋の人ってプレゼンテーションがうまいイメージがあるじゃないですか。説明したり表現したりするのが得意なイメージ。

基本的に、向こうの人達のコミュニケーションは話すことが中心なんです。話すことをぶつけ合う中でコミュニケーションが成り立っている。コミュニケーションスタイルが全然違う。

「それは、言葉が中心ということですか?」

そうです。一方、日本の場合はどっちかというと聞き手が中心のコミュニケーションをしています。はっきりものを言わなくてもちゃんと気持ちを汲んであげるとか、察してあげるとか。聞き手により責任がある、ということです。

日本にいるだけだと、それが当たり前なので分からないかもしれませんが、我々は聞き手にウェイトがあるコミュニケーションにしているんですよね。「沈黙は金」みたいな言葉もあるように、ベラベラ喋る人はどちらかというと軽薄で信用ならないとか。寡黙で、でも人のことをちゃんと推し量ったり、踏まえて振る舞えたりできる人が成熟してる、みたいなイメージがある。

向こうの場合は、黙っていたら無視される。まったく相手にしてもらえない。話してナンボの世界なので…。それで結構、面喰らいましたけど。元々向こうでは、子どもの頃から、授業では「君はどう思うの?」と意見を求められて、ディスカッションで授業をしている。

日本みたいに、先生の言うことを黙々と聞いて、ノートを取って、というのとは全然違いますから、後から培われたものだと思うんですけど、「あ、こんなに違うんだ」と痛感したんです。その中で、「なるほど!」と気づいたんです。

つまり、ほとんどの心理療法は西洋人が作ったわけです。だから、彼らの文化や価値観が反映されるのは当たり前なわけですよ。彼らにとって自己表現することは当たり前なので、だから「無意識の声を引っ張り上げる」ようなアプローチが多いんだと…。

彼らは普段から、当たり前のように何かを表現していく。言葉にしろ、体にしろ。だから、心理療法でも、自己表現的なアプローチが多いんだなとすごく納得できたんですね。

でも、我々日本人は自己表現することに慣れていないので、自分も照れが出たり、恥ずかしいとか、そういうざらつきを感じたんだ、というのがすごく腑に落ちたんですよ。もちろん日本人でもいろいろな人がいるから個人差はあります。でも多くの日本人はそうだろうなって思います。

それに対して、ハコミ創始者のロン・クルツさんもアメリカ人なんだけど、ハコミは仏教的なことや老荘思想(タオイズム)的なもの等、かなり東洋的なものを取り入れて作っているんです。

マインドフルネスも仏教から来ていて、アプローチ自体がすごく東洋的なので、「だから自分にとってはすごく自然に感じられたんだな」と思ったんです。後付ですけど、理屈の上でも自分の実体験が納得できたんですね。それで、「このワークは絶対日本人に向くはずだ」と確信を強めて、「よし、これをちゃんと日本に持って帰ろう」というのをミッションの1つとしたんです。

「ハコミは、クルツさんが広められたのですよね?」

そうですね。彼が『ハコミ』っていう名前で始めたのは1980年前後ぐらいですね。


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「ハコミセラピーの『ハコミ』という言葉について、説明していただけますか?」

『ハコミ』という言葉自体は、アメリカの先住民のネイティブ・アメリカンのホピ族の言葉で、「あなたは何者ですか?」という意味の言葉らしいんですけど、このハコミという名前に決まったのにはあるエピソードがあります。

80年頃に、彼とその仲間達が「このワークを確立してやっていこう」となって、「どういう名前にしようか?」と考えたんですが、なかなかピッタリくるものが出てこなくて煮詰まっていた中で、メンバーの一人がこんな夢を見たそうです。ロン・クルツさんが、(夢を見た)本人に紙切れを差し出し、その紙切れを受け取ってみると、そこには『ハコミ』と書いてあった…。

翌朝、夢の内容は覚えていたけれど、「『ハコミ』という言葉なんて聞いたことないな」と夢を見た本人はわからなくて、メンバーにも「こんな夢を見たんだけど、『ハコミ』という言葉を知っているか?」と聞いたら誰も知らなかったそうなんです。

だけど、夢で出てきたというのは意味があるかもしれないし、響きもいいから「調べてみよう」ということになって調べたら、ホピ族の言葉で、そういう意味があるということが分かって、「意味的にもこれからやろうとしていることにピッタリだし、この名前にしよう!」ということに決まったんだそうです。

「日本に帰られてから、ハコミをどのように展開していかれたのですか?」

アメリカで、僕も入れて3人の日本人でハコミトレーニングを受けていたんですが、協力しながらロン・クルツさんのハコミの本を翻訳したんです。僕は1997年に日本に帰ったんですけど、その時にはもう翻訳本は日本で出版されていて、帰るタイミングでロンさんに「日本に来てもらえないか?」と交渉して、日本に来ていただいてワークショップをやったことが出発点でした。

その時点では、先のことはまだ考えてなくて、「日本に来て欲しいから、とりあえず1回やってみよう」ということだったんですけど、結果的には満員御礼でキャンセル待ちも出て、中身もすごく好評だった。「トレーニングはやらないんですか?」と逆に参加者の人から言われて。

そこまでの計画はまだなかったんですけど、いろいろ相談して、「とりあえずやってみようか」ということでやり始めたと。最初のきっかけはそんな感じだったんです。元々、日本人には向くだろうなと思っていたんですけど、結構、人気が出ました。

「ロンさんを呼んでのワークショップは、どれくらいやっていらしたのですか?」

最初の5〜6年くらいは、年に2回ずつ来てもらってましたね。そこでワークショップをやったりトレーニングコースをやったり。それをやりながら、自分も教えられるようにトレーニングしてもらいつつ。

「その頃は、お仕事などはされていたのですか?」

蓄えを全部つぎ込んでアメリカに行ってしまったし、最初は3年のつもりでいたんですけど、面白くなってしまって博士課程まで5年いてしまったので、途中ですっからかんになって、親にもちょっと借金しました。しかも、行く前に結婚していたので、2人で行って、帰りは3.5人で帰ってきたんです。1人はお腹の中にいて…。

借金しかなかったし、家族もいますから、生活していかなければいけないし、就職してお金も貯めつつ、ネットワークも作りつつ準備をして、ある段階で自分のやりたい方向に行くのが現実的かなと漠然と考えていたんですけど、実際に帰国してみると、不思議なことに物事が非常にうまく回っていったんです。

その伏線になったのが、留学中に年に2、3回ずつ発行していた『高野の消息』という個人的なニュースレター。当時はまだブログ等もなかったので、こっちで今こんなことをやっているとか、こんなことがあったとか、自分でパソコンで打って、コピーして、手紙で日本の友達200人くらいに毎回送っていたんです。

一橋といういわゆる一流の大学に行っていたので、皆、いわゆる一流企業に入って、まあ絵に描いたような人生を送っているわけですよ。それはそれで悪いわけじゃないけど、でも「本当にそれだけでいいの?」という想いもあって、「こんな奴もいるんだよ」と一石を投げかけるような意味も含めて、自分なりの考えや体験を発信していた。

すぐには伝わらなくてもいいから、何か投げかけて、それがどこかに波紋を広げていったらいいな、くらいの感じで送っていたんです。

単にそれだけの目的だったんですけど、結果的に、それが非常に意味があって、日本に帰って来ていろんな人に会うんだけど、このニュースレターのおかげで皆、僕がどんなことをやってきたか、どんなことを思っているかとか、皆だいたい分かっていたわけなんですよ。

なので、会う度に「こんな人がいるんだけど」とか、「こんな話があるんだけど」みたいなことをバンバン振ってくれて、それで「できることは何でもやります!」みたいな感じで仕事をちょろちょろやっているうちに、それなりに「このまま食っていけるのかな」みたいな感じになっていったんですね。

将来の具体的な仕事のための種まきをするつもりなんて全くなかったんですが、結果的には種まきになっていたんですね。それで、もう就職とかしないで、「とりあえずやれるところまでやってみよう」という感じでフリーで仕事をしていったんですよ。ハコミにも人が結構来てくれて、何となくそれで仕事が回り出して、結局今日に至っているわけなんです。

「ハコミを日本に持って帰られて、何年ぐらい経つのでしょう?」

97、98年からだから、ちょうど15、16年くらいですかね。

(次回につづく・・)

高野 雅司(たかの まさじ)  日本ラビングプレゼンス協会代表、心理学博士(Ph.D.)
                   ハコミセラピスト、ハコミ公認トレーナー

一橋大学を卒業の後、コンサルティング会社勤務を経て、私費留学のため渡米。
カリフォルニア統合学研究所(California Institute of IntegralStudies)の東西心理学部を卒業し、博士号を取得すると共に「組織開発と変容」課程も修了。また、ハコミセラピーの公認プロフェッショナル・トレーニングも修了し、その後は臨床経験を深める。
1997年に帰国し、心理臨床の現場で活躍するとともに、異なる価値観を持つ個人/集団間の創造的な対話を促進するためのコミュニケーション研修やコンサルティング活動なども行う。また、自己表現に不慣れな多くの日本人に適した、繊細かつ内省的な心理療法としてのハコミセラピーの紹介と普及にも力を注いでいる。
2011年、「日本ラビングプレゼンス協会」を設立。 現在は、「一人ひとりの『心の平和』の実現からより良い世界が生み出される」という、自らの原点にある思いを実現していくための重要なカギとして、ラビング・プレゼンスの普及をライフワークのひとつとして位置づけ、可能な限り世界中に広めていくべく意欲を燃やしている。

<日本ラビングプレゼンス協会のHP>
【日本ラビングプレゼンス協会】

<日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク(JHEN)のHP>
【日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク(JHEN)】

<高野雅司先生の著書・訳書>
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人間関係は自分を大事にする。から始めよう


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ハコミセラピー


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魂のプロセス


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トランスパーソナル心理療法入門



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:高橋美智代(たかはしみちよ)

高橋美智代

不惑を過ぎてから、心理学を勉強中の身です。
一瞬一瞬を、共に過ごす人々と、大事にして生きていきたいと思う
今日この頃です。

好きな動物:猫
趣味:読書 ピラティス
レイキマスター


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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