第87回目(4/4) 高野 雅司 先生 日本ラビングプレゼンス協会

セラピーは、クライアントとセラピストとの間に生まれる“関係性のアート”

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「今、悩みを抱えている方へ、メッセージをいただけますか?」

多分、人間生きている限り、悩みがなくなるということはないと思うんですよね。もし悩みがなくなってしまったら、ある意味で、人間って生きる意味を失ってしまうんじゃないかな、とさえ思うんです。悩むのは人間の本質というか、イコール生きていることでもあると思うので…。

でも、もちろん苦しいものは苦しい。僕も今だって悩みがなくなっているわけじゃないですし、日々悩みながら生きていますけど、自分の体験から言うと、今は、悩むことが苦しいんだけれど、一方で楽しくもあるというか、両方の感覚があるんですよね。

「この悩みの先には今度は何が待っているんだろう」って、悩みから逃げずにちゃんと直面しながら進んでいった時に開けてくる新しい世界とか気づきとか、そういうものに対しての喜びとか、そういったことも実感しているので…。そういう意味で、悩むことに対して苦痛だけではなくなったという感じです。

でも辛いですよ。キツいし、「もう、ヤダー」と思うことも今でもあります(笑)。でも、それ一色にはならない。

「その先に開けてくる世界があるということを信頼できる…というような感じですか?」

そうですね。それは実感としてすごくあります。ただ、それは自分で体験してみないと分からないことなので、「そういうものなんだ」と聞いたからといってできるものでもないと思うんですけど…。ただ、僕はすごく確信を持っています。誰にとってもそうなんだと。逃げなければ必ず。

止まない雨はないのと同じで、絶対に必ず陽は差してくる。でも、そのために一つカギになってくるのは、初めの方の話とも絡むんですけど、自分が変わることに対して恐れない、ということ。

ラビング・プレゼンスもそうなんですけど、基本的に「人というのは常に変化している」という前提で人と係わっていくというのが、ポイントになっている。人って、どうしても現状にしがみつきたくなるんだけど、変わるとか、変わっていくんだということに対して心が開かれると、いろんなことがすごく楽になる。

人って、どうしても今の自分を前提としていろいろなことを考えがちだと思うんです。「自分はこうだから、ああだ、こうだ」って、悩む時ってだいたいそうじゃないですか。でも、今の自分っていうのはずーっと続くわけじゃなくて、常に変化していくものだから、そこに対して信頼する。

今はこうかもしれないけど、でも1年後は全然違うかもしれないし、1時間後でも何か違うかもしれない、というようにいられると、すごくいいと思う。ラビング・プレゼンスをやると、そういったことを深く実感できる。常に瞬間瞬間変わっていく相手と自分を感じていくものなので…。

そうした自分の変化を信頼するとか、そこに見える喜びとか、そういうものにもつながると思っていて、そういう深いところでもラビング・プレゼンスをやってもらうことによって、心が楽になるというものがあるのかな、と思っています。

「ラビング・プレゼンスを実践された方は、そういう変化をお持ちだったりするのですか?」

そうですね。いろいろ楽になっていますよね。本にも事例をいくつか入れていますけど、それこそ嫌いな人とか苦手な人とか誰でもいると思いますけど、そういう人との係わりでもすごく楽になっていったりします。

それ以前に、日常の中でいつでもどこでも自分で「充電」できるので、常に充電できる充電器を自分の中に持っているようなものです。それを使えば使うだけ自分を自分でハッピーにできるので、自分で自分を何とかできるというのは、すごく救いだと思うんですよ。

もちろん、本当に深い悩みについては、一人で何とかしようとしてもなかなか難しいことも多いので、セラピストやカウンセラーの助けを借りるというのは有効だとは思います。ただ、いろんな人がいるし、相性もあるので、誰でもいいというわけじゃないですけど。

「どんな風にセラピストを選ぶと良いのでしょうか?」

「どういうセラピーを受けようか」ってことに悩んでいる人に関して言うと、「自分(の症状)にはどういう手法がいいか」ではなくて、あくまでも「どういうセラピストと行うか」の方が、数十倍大切です。

頭で考えて「こういう療法がいいんじゃないかな」と選ぶよりは、いろんなセラピストの写真でもサイトでも何でもいいので触れて、「フィーリングが合うな」など何でもいいので、直感的なところで「なんとなくいいな」って感じた人に電話などで問い合わせたり、とりあえず試しに一度会ってみる。

それで実際に係わっってみた時の自分の感覚、相性的なものも含めて、セラピスト選びをする。そっちを大事にする方がよいと思います。療法選びではなくて、セラピスト選びが大事です。

例えば、ハコミをやっているセラピストだっていっぱいいる訳で、誰とやってもうまくいくわけではもちろんないでしょう。セラピーって、クライアントとセラピストとの間に生まれる「関係性のアート」だと思っているんです。

駆け出しのペーペーのセラピストと、経験何十年のベテランの人がいたとしましょう。ある特定のクライアントさんにとっては、ベテランのセラピストは全然いいセラピストじゃなくて、ペーペーの人の方がすごくいいセラピストになるって場合だって、いっぱいある訳ですよ。

そういう世界だと僕は思うんです。なので、人で選んでくださいね。自分と合う人を選ぶ感覚っていうのは、誰でも持っていますから。「頭で選ぶんじゃなくて、直感とかフィーリング、感覚で選ぶようにしてください」というのは、すごく言いたいことですね。


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「先生が、セラピストとして大事にしていらっしゃるものは何でしょう?」

セラピーというのは、セラピストが「何をするか」ではなくて、「どうあるか」ということが一番大事なところです。それは、アメリカ心理学協会で行われた大々的な調査でも確認されている点で、僕自身もそこを最も大事にしています。

今は、何とかセラピーとか、何とか療法とか、いろんなのがあるじゃないですか。「勉強したいんだけど、何をやっていいのかわからない」という人も結構多いと思うんですけど、大事なのは何療法をするかじゃないんですよね。ある意味、どんな技法を使ってもそんなに大した差はない。

むしろ、どういう療法をやるにせよ、まずは自分自身の「あり方」、クライアントに対しての向き合い方が大事…英語で言うと“Doing”ではなくて“Being”です。それが一番問われる仕事ですので、そこを大事にしてほしいと思います。

「あり方が、大切なのですね?」

どうしてもお勉強となると、スキルや技法に走りがちですけど、本質はそこじゃないんです。如何に自分の「あり方」を磨いていくか、自分を見つめ続けるか。そういう意味で、セラピストを目指す人には自分を見つめることから逃げないでほしいし、どんなしんどい部分についても徹底的に悩み続けてほしい。その延長線上でしか、「あり方」は深まっていかないと思います。

もちろん、全部の悩みが解消するわけじゃないですし、自分磨きなんて最終ゴールがあるわけじゃなくて一生続くものですから、それが完成しないとセラピストになれないということではないですよ。僕自身も未だに道の途中ですし…。

ただ、それを続けていくという姿勢と、あくまでも自分はまだ未熟なんだ、ということに対する謙虚さをしっかり持ち続けていることが、とても大事なんじゃないかと思います。

でも「あり方」ってすごく漠然としていて、どうしたらいいのかわからない部分もあると思うんです。もう少し具体的に言うと、これはハコミのトレーニングの中でもよく言うんですけど、僕の中では、「絶対的にクライアントさんのプロセスを信頼できるかどうか」が核心だと思っています。

「クライアントさんのプロセスを信頼し切る?」

セラピーをしているといろんな局面がありますよね。例えば、すごい恐怖や強い感情が出てきたりとか…。でも、どんなことが起きたとしても、ちゃんとその先にはその人なりの行き着く先があって、そこに向かっていける力があるんだ、潜在的にその人の中にそういう能力が宿っているんだ、という自然治癒的な部分を信頼し切れるかどうか。

そういう姿勢を持ち続けられるかどうか、というのが一番ベースだと思っているんですね。これって言ってしまえば単純なことなんですけど、実際の現場でやるとなるとそう簡単な事じゃなくて、慣れないうちは、自分の中にいろんな気持ちや動揺などが起きてくるわけですよ。

「大丈夫なのかな…」とか、「何とかしなきゃ」とか。こっちが何とかしてあげなきゃいけない、と思ったりとか。不安になってきて、「このまま続けていいのかな…」と迷いが起きたりとか、いろんな反応が絶対起きてくるんですよね。

結局、そうした反応っていうのは自分自身が抱えている問題の表われで、自分の中に何らかの課題やテーマがあるわけですよ。そういう揺れる自分というものから逃げないでちゃんと見つめ続けて、セラピスト自身が自分の中に何があるのかということをひとつずつ丁寧に扱って、一枚一枚皮をはいでいく。

そんなことを続けながら、だんだんと本当にクライアントを信頼していくという「あり方」の深まりが出てくるものだと思うんです。

だから、実際に動揺したり失敗したりした時の自分から逃げないで、それをちゃんと見つめていきながら、一歩一歩そういう絶対的な信頼感、僕もまだ絶対までは行けてないと思いますけど、そういうものに近づいていくことを目指していく。

セラピストがそういう感覚でいられると、どんなことが起きていても「大丈夫だよ」と口で言わなくても、どこか腹の底で「大丈夫だ」という感覚でいてあげられると、不思議とクライアントの方はちゃんと前に進んでいくんですよね。

こっちがブレていると、絶対にどこかで行き詰まったりとかが起きてくるので、目には見えないけれども、そうした信頼感に根ざしたセラピストの「あり方」こそが、最大の援助なんだと思っています。そこにどう近づいていくかが一番大事です。

「今後の夢や展望をお聞かせいただけますか?」

くり返しになりますが、セラピーという枠を超えて、ラビング・プレゼンスを広く伝えていきたいと思っていますが、ラビング・プレゼンスをやる上でも、マインドフルネスっていうのが前提になっている訳なんですよね。

マインドフルネスで自分をちゃんと感じてあげて、自分に気づいてあげるっていうことができないと、ラビング・プレゼンスもできません。自分の中に起こっている「心地よさ」を味わっていこうとするので、まずは自分の感覚に気づけてないと始まらない。

心地よさって、普段はあまり味わっていないんですよ。何かいいことがあっても、「あー、楽しかった」だけで終わっています。楽しい事や嬉しい事があった時には、何らかの心地よさが身体などに起きているはずで、そうした感覚をじっくり感じていけばいくほど、脳がポジティブな方向に変わっていくっていうことも、最近の脳科学で分かってきました。

残念ながら、我々の脳って、元々はネガティブなことに意識が向きがちなんです。大昔、進化の過程では、そうしなければ生き残ってこれなかった…。そのネガティブな傾向を変えて、もっとポジティブな方へ感度が上るような脳にしていくためには、自分が良い体験をして良い感覚が起きている時に、その感覚をなるべく時間をかけてゆっくり感じ切る、味わうことがカギになるんですよ。

そうすればするほど、新しいシナプスの結合が起こって、脳の傾向も変わっていくことが最新の脳科学で分かってきたので、そういう意味でも、心地よさを味わうっていうことで、自分で自分の脳も変えていけるし、自分自身をいい方向に変えていけるんです。で、「心地よさ」を味わうためには、その感覚が起きていることに気づけないとダメなので、マインドフルネスって絶対に必要なんですよね。

「ラビング・プレゼンスとマインドフルネスの両方が必要なのですね?」

ラビング・プレゼンスと同時にこのマインドフルネスを、生きていくための基本的なスキルとして伝えていきたいなって思っていますね。

ここ最近、マインドフルネスっていうのは、「自分と仲良くなること」だって言い方をしています。要は自分に起こっていることに丁寧に気づいてあげるってことなわけですが、普段気づいてないことっていっぱいある訳ですよね。

頭ばかりで考えて、自分の身体や感情について意外と気づいていないんですね。ちゃんと自分に気づいてあげて、自分の状態をより的確に分かっていると、自分にとって的確な判断や行動が出来るようになる。自分の本当の気持ちが分からないで何かをやって、後で「あ〜あ」ってこと、いっぱいあるじゃないですか。

例えば、お腹一杯なのについつい食べちゃって「ああ苦しい…」みたいなことってあるけど、もっとちゃんと身体のことを感じてあげていれば、頭だけの判断で食べちゃうことが減ってくる。自分にとって優しい、適切な言動がとりやすくなる。自分を分かっていないから、変なことをついやっちゃう訳ですからね。

そういう意味で、マインドフルネスを活用して、自分を知れば知るほど、自分にとって優しくなれるし、自分と仲良くしてあげられる。自分にとって「いい選択」をしていけることにつながっていくんです。単純なことなんですけど、それって日々の中ですごく大事なことだなって思います。

生きていく上での基本姿勢として、もっと自分に優しく、仲良くするっていうことを大事にして、全ての人に生きていって欲しいなって思うし、そうしていれば、悩みだって減るはずなんですね。

難しいことを伝えるんじゃなくて、そういうシンプルで大事なことを伝えていきたいなって思っています。

一人でも多くの人が、自分を大事にするところから始めて、それが周りの人達とのいい関係につながってもいきながら、日々生きていくっていう輪がどんどん広がっていくことを願っていますし、そのためにやれることをやっていきたいなって思っています。

どこまで広く伝えられるかは分からないけど、ある程度まで広がっていけば、それがガラッと世の中の空気感をシフトさせる可能性もあるのかなって。それを楽しみにしながら、残りの人生をやっていけばいいかなって思っています。


<編集後記>

高野先生の飾らない雰囲気と温かい笑顔で、インタビューはとても和やかに
進みました。

学生時代に、世界平和と戦争がない世界を実現させたいという夢を抱きながら、
壮大な夢に、方法が見いだせず絶望されたことが、今の高野先生の土台と
なっているような印象を受けました。

日本ラビングプレゼンス協会での、一人一人の意識の変化をサポートされる
活動は、学生時代に描いた夢の実現への第一歩。

変わらずに夢を持ち続ける意志の強さと思いの大きさが、
先生のお話しから伝わってきました。

ラビング・プレゼンスは、心の充電器。
みんなが持つと、自分を大切にしながら人といい関係でつながっていく輪が
広がっていく、そんな予感がしてきますね。(A)

高野 雅司(たかの まさじ)  日本ラビングプレゼンス協会代表、心理学博士(Ph.D.)
                   ハコミセラピスト、ハコミ公認トレーナー

一橋大学を卒業の後、コンサルティング会社勤務を経て、私費留学のため渡米。
カリフォルニア統合学研究所(California Institute of IntegralStudies)の東西心理学部を卒業し、博士号を取得すると共に「組織開発と変容」課程も修了。また、ハコミセラピーの公認プロフェッショナル・トレーニングも修了し、その後は臨床経験を深める。
1997年に帰国し、心理臨床の現場で活躍するとともに、異なる価値観を持つ個人/集団間の創造的な対話を促進するためのコミュニケーション研修やコンサルティング活動なども行う。また、自己表現に不慣れな多くの日本人に適した、繊細かつ内省的な心理療法としてのハコミセラピーの紹介と普及にも力を注いでいる。
2011年、「日本ラビングプレゼンス協会」を設立。 現在は、「一人ひとりの『心の平和』の実現からより良い世界が生み出される」という、自らの原点にある思いを実現していくための重要なカギとして、ラビング・プレゼンスの普及をライフワークのひとつとして位置づけ、可能な限り世界中に広めていくべく意欲を燃やしている。

<日本ラビングプレゼンス協会のHP>
【日本ラビングプレゼンス協会】

<日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク(JHEN)のHP>
【日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク(JHEN)】

<高野雅司先生の著書・訳書>
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人間関係は自分を大事にする。から始めよう


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ハコミセラピー


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魂のプロセス


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トランスパーソナル心理療法入門



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:高橋美智代(たかはしみちよ)

高橋美智代

不惑を過ぎてから、心理学を勉強中の身です。
一瞬一瞬を、共に過ごす人々と、大事にして生きていきたいと思う
今日この頃です。

好きな動物:猫
趣味:読書 ピラティス
レイキマスター


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

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