第87回目(3/4) 高野 雅司 先生 日本ラビングプレゼンス協会

ラビング・プレゼンスでは、相手から受け取ることから入る

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「日本ラビングプレゼンス協会を作られましたが、ラビング・プレゼンスとは?」

ラビング・プレゼンスというのは、ハコミセラピーで一番大事にしているもののひとつで、簡単に言うと、関係性・信頼関係を作るための考え方とアプローチです。

いわゆる心理療法というのは、まず信頼関係があってナンボの世界なわけですが、一般的には傾聴とかロジャースの「受容・共感・自己一致」といった考え方があるじゃないですか。

まさにその通りなんですが、「どうやったらそうした状態になれるのか」ということがほとんど語られてないというのが問題で、僕の中では、このラビング・プレゼンスというのは、そうした状態をセラピストが具体的な形で自然に生み出すためのひとつのスキルだと思っているんです。

セラピーに限らずに一般の日常でも、普通、人といい関係を作ろうとした場合は、だいたい自分が相手に合わせるところから入るじゃないですか。相手の都合に合わせたり、話を合わせたり、時間に合わせたり。あと、与える。贈り物をしたり、サービスをしたり、というところから入りますよね。

そんな風に「合わせる、与える」というところから入りがちなんですけど、逆転の発想で、ラビング・プレゼンスでは、まず「相手から受け取る」ことから入るんですね。何を受け取るかというと、目には見えない自分にとっての心の糧みたいなものです。

「まず相手から受け取る?」

受け取ると言っても、「勝手に感じ取っちゃう」みたいなものなんですけど。その人の存在を通じて、自分の中にある種の「心地よさや快な感じ」を呼び起こしてくれるような何かを感じ取る。積極的に意識して、相手からそういうものを感じ取ろうとする。

で、そこで起きてくる自分の中の何か「いい感じ」とか、「気持ちいいな…」とか、「あったかいな…」とか、「安心するな…」とか、「ワクワクするな…」とか、そういう感覚を味わっていくところから始める、というのがラビング・プレゼンスのキモになります。

そういった感覚を味わっていると、自然に自分自身が「いい状態」になっていき、またそれが相手に伝染していく、ということが自然に起きる。

「いい状態が相手に伝染していく?」

自分がいい状態になるきっかけを相手にもらっているじゃないですか。実際は、相手が何かをしてくれるわけじゃなく、自分が勝手に感じているだけなんですけど、きっかけになってもらっているので、自然と「ありがとう…」的な気分になって、相手を受け入れる姿勢が勝手に生まれてきちゃう。

これは意識的に相手を受け入れようとしたり、共感したり認めようとするのとは全然違う感覚。当たり前の感覚として、相手に対して自分が「開かれる感じ」に自然になっちゃう。それが相手にも伝わるので、無理のない形で自分が楽で心地良くいながらも、相手との信頼関係が生まれやすくなる、というのがラビング・プレゼンスの考え方なんですね。

ハコミでは、セラピストがとにかくラビング・プレゼンスから始めていくんですけど、これは僕にとっても初めて知った時はすごく目から鱗で、「そんなやり方があるんだ」と。実際、臨床なんかでやってもメチャメチャ使えるんですよね。

「どのように役に立ちますか?」

自然に無理なく信頼関係を作っていけるだけでなく、自分が常にいい状態でいられるので、まず楽だし、「燃え尽き」の予防にもなります。

セラピストや教育現場とか医療現場とか、どうしても「与える、与える」ってなってしまいがちです。燃え尽きるまで頑張ったりとか、一生懸命やり過ぎちゃうとか、自分が疲弊しちゃう。でも、ラビング・プレゼンスだと、常に自分が充電しながらやっていくので無理がない。

自分がいい状態でやれるから、ある意味、自然な形でいい援助ができる。そもそも自分が疲弊していたら、本当にいい援助なんかできないじゃないですか。そういう意味では、燃え尽きの予防になるし、いい援助ができるし、自分も気持ちいいし、「一石三鳥」なんだと思っています。

でも、これを心理の世界だけに留めておくのはもったいないなという気持ちはすごくあって…。どんな人とのコミュニケーションや人間関係にも使える普遍的なものとしてもラビング・プレゼンスを伝えていきたいな、というのがすごくあったんですね。

話がまた戻るんですけど、僕の学生時代からの最初の原点の想いとすごくリンクするんですよ。ラビング・プレゼンスを一人一人が身に付けて、日々の中で実践して、自分がよりよい感じになって、自分で自分をハッピーにしてあげることができる。

今は、街の中を歩いていても、何か皆あまり幸せそうじゃない。どこかで何か諦めてる感じがするんですよね。幸せにはなりたいけれど、こんな時代の中でどうしようもないよな、みたいな無力感を感じているようにも思うんです。

でも、このラビング・プレゼンスって、自分でどうにでもなっちゃう。自分の意識の向け方次第で、人でも周りの世界でも、全部がリソースになって、そこから自分がエネルギーを充電できる。そういう感覚を持てるので、これってある種「究極のエンパワーメント」だなって思っているんです。


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「自分で自分をよい状態にできるのですね?」

ええ。これを一人一人が身に付けて、自分で自分を元気にしてハッピーにしてあげる、ということをどんどん皆がやっていけば、一人一人が自分の心の平安を取り戻していける。しかも、それが自己完結じゃなくて、人との関係にも伝播していくので、それがどんどん広がり、いい関係が生まれていく。

そして、その延長線上として、いい家族とか社会とか国とか世界というものに広がっていく、という大きな意味でのビジョン、学生の時からこだわっていたビジョンを実現するための具体的な方法として、「あ、これじゃないか!」というのが自分の中ですごくつながったんです。

だから30年の時を経て、「これをこれからのライフワークにしていこう」と、2年ほど前に「日本ラビングプレゼンス協会」を作ったんです。忙しくて中々一歩が踏み出せなかったんですけど、50才になるのを前に、「そろそろ動かないとまずいだろう」というのもあって…(笑)。そのためにも、まず様々な人達に広めていくための一般向けの本を書いて、ようやく出版にこぎつけました。

「ご本の題名は?」

『人間関係は自分を大事にする。からはじめよう』というメインタイトルです。サブタイトルには、『「自分中心」で心地よく変わる“ラビング・プレゼンス”の秘密』というのがついています。

ラビング・プレゼンスというものを、誰にでも使えるコミュニケーション・スキルのベースとして伝えていく、ということを、ハコミセラピーの紹介と平行して、今後のライフワークのひとつとしてやっていきたいと思っています。

対象は誰でもなんですけど、特に対人援助の人達には、日常だけじゃなく仕事にも直結するので、コーチングにしろ、カウンセリングにしろ、看護師さんや介護の人、学校の先生、ボディワークの人や、販売員といわれる対人的な仕事の人、ウェイトレスさんや旅館の仲居さんとか、人と係わる人たちには、ラビング・プレゼンスの意識を持って人と係わってもらうと、よりいい関係を作りやすくなるだろうし、サービスの質も上がるだろうし、自分もハッピーになれる、ということで、これを広めたいなという感じですね。

「ハコミのアプローチとして、身体を大事にしていくことの良さについて教えていただけますか?」

ハコミの大原則の1つとして、心と身体は切り離せないと思っています。心理療法をやっている人は「心が大事だよ」って、「そうすれば身体だって後からついてくるよ」みたいな考え方をしたりするじゃないですか。

逆にボディ系の人は、「いや、そうじゃない、身体を整えれば心だって整うんだ」って言い方をしたりする。それはどっちも正解なんですよ。そしてどちらかだけに還元できるものでもないと思うんです。

身体が整えば心にも影響があるし、心が整えば身体にも影響があるっていうのは間違いなくて、両方とも合っているんです。ハコミの場合は、「どっちもありだよね」ってことです。

身体から入って、そこから心の気づきに入っていくころもあるし、心から入ってそれが身体の反応に出てくる。それを見ていくとまた心に戻ってくるってこともある。

常に身体のプロセスと心のプロセスを行ったり来たりしながら、いわゆる全部が繋がっていきます。東洋医学じゃないですけど、ホリスティックな考え方をしているので、常に全体性としての人間の中に起きている有機的なプロセスの1つとして、心のプロセスも身体のプロセスもある。

常に縦糸と横糸のように、織り交ぜながらやっていくっていうのが、ある意味セラピーでは当たり前かなと僕は思っています。

「こんな方はハコミセラピーを受けてみるといい、というのはありますか?」

ハコミって、何をやるかとか、こうじゃなきゃというのは、あまりないんです。その時その時にクライアントの方に起きていることにただ徹底的に寄り添ってついていくっていう感じなので、そういう意味では、どんな人がどんな悩みを持ってきたとしても、自然に必要なことが起きてくる。

そういうことが自然に起きてくる「場」を作っていくのがハコミなので、ある意味ではオールマイティな感じはあると思います。一般的な悩みを抱えている方であれば、心の問題であれ、身体の症状であれ、有効にアプローチできるかなって思っています。

身体の場合は、最初は皆さんお医者さんに行くじゃないですか、お医者さんに原因が分かりませんって言われて、だいたい次に心療内科に行って、それでも結果が出なくて、セラピーに流れてくるって人も結構多いんです。

そうやって、身体の症状で悩んでくるっていう人も結構いるし、それはそれで、その方の症状に沿ったアプローチをしていくわけで、結果としていろんなことに自分で気づきながら克服されていく方も沢山います。

「身体の症状でいらっしゃる方には、どんなアプローチをされるのですか?」

基本的には、マインドフルネスで、まずはその時の身体に起きていることを丁寧に観察しながらやっていきます。本当に面白いんですけど、単純に自分に起きていることを丁寧に感じてあげるだけで、何にもしなくても、ちゃん留まっていれば、それだけでいろんなことが起きてくるんですよ。

普段の意識状態だと頭が忙しいから、次々と次のことに考えが行っちゃうから、そんなこと絶対にしないんですよね。ひとつのことに丁寧に「あ〜、こんな感じが起きているな」って留まろうとはしないんです。

例えば、肩凝りひとつ取ったって、頭痛ひとつ取ったって、「肩凝ってるな…、頭痛いな…」って、それぐらいの気づきはあるでしょうが、そこを丁寧に「こんな範囲で、こんな感覚が起きているんだ…」なんて、いちいち丁寧に微細に意識して感じるってこと、まずしないじゃないですか。

だけど、本当にマインドフルネスでそうやって丁寧に感じたり、気づいたりしてあげるだけで、いろんなことが展開していきます。

セラピストはそこで、必要に応じて「お産婆さん」的なお手伝いをします。基本的には、その人が丁寧にとどまって、自分が起きていることに一緒にいてあげることができれば、紆余曲折はありますけど、その人の中の自然治癒力というか深い叡智のようなものが働いていって、ちゃんと前に進んでいけます。

安心して自分の体験に留まれるような「場」を、いかにこちらが提供してあげられるかです。「信頼してついていけば大丈夫だからね」って口で言わなくても、安心していられるような寄り添い方、セラピスト側の「あり方」(Being)が一番のポイントです。そういう「場」がそこにあって初めて、その人は自分の体験と一緒にいられる。そういう感じでやっていけば、どんどんその人に必要なことが起きていきます。

「ハコミセラピーが合う方というのは、あるのでしょうか?」

マインドフルネスのような、自分のことを丁寧に感じることに慣れている人、好きな人は、最初から入り易いでしょうね。

「感受性が豊かな人ということですか?」

そういう人も含めてです。男性の中には、「感じるって、さっぱりわからない」っていう方も結構いるじゃないですか。ただ、そういう人も、その人の状態に応じてやっていきますから、丁寧に一歩一歩やっていくと、段々と自分を感じたり、気づいたりできるようになっていきます。感じる力って、誰でも元々は持っているものですから…。

ビジネスの世界などでバリバリやっていて、心も身体もかなりガチガチになっている人なども、だいたい3回くらいやれば少しずつ感じてくるようになるようです。

元々、ハコミでやっている「自分に気づいていく」とか、「自分に起きていることに一緒にいる」みたいなことって、本来、我々が当たり前のように持っている感覚っていうか、潜在的に自分の魂が望んでいることなんじゃないのかなって思うんですよ。

それを頭が阻害しているだけなので、ちょっときっかけさえ掴めれば、誰でもそういうところには自然に行くんです。

そのためのちょっとしたきっかけというか、コツを知る機会を提供している感じです。なので、特にこういう症状の人におススメっていうのはあまり無いんです。基本的には、誰にでもです。ハコミの神髄は、「自分のペースを大事にしながらスムーズに進んでいけるように、あなたに徹底的に寄り添っていきますよ」ってことなので。

(次回につづく・・)

高野 雅司(たかの まさじ)  日本ラビングプレゼンス協会代表、心理学博士(Ph.D.)
                   ハコミセラピスト、ハコミ公認トレーナー

一橋大学を卒業の後、コンサルティング会社勤務を経て、私費留学のため渡米。
カリフォルニア統合学研究所(California Institute of IntegralStudies)の東西心理学部を卒業し、博士号を取得すると共に「組織開発と変容」課程も修了。また、ハコミセラピーの公認プロフェッショナル・トレーニングも修了し、その後は臨床経験を深める。
1997年に帰国し、心理臨床の現場で活躍するとともに、異なる価値観を持つ個人/集団間の創造的な対話を促進するためのコミュニケーション研修やコンサルティング活動なども行う。また、自己表現に不慣れな多くの日本人に適した、繊細かつ内省的な心理療法としてのハコミセラピーの紹介と普及にも力を注いでいる。
2011年、「日本ラビングプレゼンス協会」を設立。 現在は、「一人ひとりの『心の平和』の実現からより良い世界が生み出される」という、自らの原点にある思いを実現していくための重要なカギとして、ラビング・プレゼンスの普及をライフワークのひとつとして位置づけ、可能な限り世界中に広めていくべく意欲を燃やしている。

<日本ラビングプレゼンス協会のHP>
【日本ラビングプレゼンス協会】

<日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク(JHEN)のHP>
【日本ハコミ・エデュケーション・ネットワーク(JHEN)】

<高野雅司先生の著書・訳書>
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人間関係は自分を大事にする。から始めよう


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ハコミセラピー


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魂のプロセス


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トランスパーソナル心理療法入門



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川田史郎(かわだしろう)

川田史郎

マーケティングプロデューサー、コーチ。

現状を変えていきたい人、何かをはじめたい人の
コーチングをしながら、
解決策のプロデュースや事業化のお手伝いをしています。


インタビュアー:高橋美智代(たかはしみちよ)

高橋美智代

不惑を過ぎてから、心理学を勉強中の身です。
一瞬一瞬を、共に過ごす人々と、大事にして生きていきたいと思う
今日この頃です。

好きな動物:猫
趣味:読書 ピラティス
レイキマスター


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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