第85回目(1/4) 宗像 恒次 先生 SAT療法

独自の情動認知行動療法、「SAT療法」

今回のインタビューは、筑波大学名誉教授で、
「SAT療法」開発者の宗像 恒次(むなかた つねつぐ)先生です。

宗像先生は、筑波大学発ベンチャー株式会社SDSの代表取締役でもあり、
SAT療法の普及とセラピスト育成に尽力していらっしゃいます。

イメージ療法、情動認知行動療法に基づく心理療法「SAT療法」の
生まれた背景とマイクロキメリズムについて、
SAT療法の独自性や効果とともに、今後の展望などのお話を伺いました。

インタビュー写真

「SAT療法について教えていただけますか?」

SAT療法は、情動認知行動療法と言ってもいいですね。現在の認知行動療法って、考え方を変えて行動を変えていくじゃない? でも、症状の少し重い人には無理だよね。

SAT療法は、「感じ方」を変えたら「考え方」が変わるし、「行動」が変わる訳ね。理性と情動が戦ったら、絶対に情動が勝つ。命を守るためにね。だから情動を変えることに効果がある訳です。

情動っていうのは、大脳辺縁系の扁桃体に支配されているんです。顔反応性細胞をもつ扁桃体は、人の顔の表情に影響を受ける。自分の見ている人の顔の表情を、嫌な顔の表情をイメージとして認識すると、顔反応性細胞をもつ扁桃体が情動を決めているので、嫌な気持ちになる。

そこで、SAT療法では、例えば人間関係が悪い人だと、嫌なイメージの人を良い顔のイメージに変えてしまう。

「イメージを変えるのですね?」

そう。嫌な人の顔を思い浮かべると、胸や肩が張ったりして緊張する。その時に、その緊張緩和に効く光の色を使うんです。周波数が中波長の色、たとえば黄金色や黄色やクリーム色やオレンジやグリーンなどを使うとリラックスする。夏に滝の傍に行った時みたいになる。身体がリラックスした時に、目をつぶってその人をイメージすると良い顔が見えてくるのです。

その人の悪い時の顔でなくて、良い時の顔をイメージできると、その人の「良いところ」が見えてくるのです。結構、「優しいな」とか、「誠実なところがあるな」とかね。反応がないことに腹を立てていたけど、そういう良い面があるなってね。良いところが見えると良い人間関係になる訳。

ところで、嫌な顔の中でも「貞子顔」と呼んでいるんだけど、ああいう嫌な顔を見て、イメージとしてピッと入ってきた時には、なかなかそのイメージが取れないでしょう。それに支配される訳です。精神病の方の中には初めは恐怖顔で来ることもあるから、そういう「貞子顔」イメージがピッと入ってきた時、セラピストはそのイメージが反復再生するために取りつかれたみたいになる。

そういう「貞子顔」のイメージに何度もさらされ反復再生し続け、慢性ストレスともなると、無自覚でも脳内や身体内ではその慢性ストレスに反応してマクロファージから炎症性サイトカインが放出され、低レベルの脳内炎症や身体炎症を起こし始めるんです。そこで、体の痛みや嫌な気分や不眠をなくそうとして脳活動を低下させる抗精神薬を使うかもしれないが、それはそれで弊害がある。

精神病の方を治療している精神科医は、多くの「貞子顔」のイメージが取れないと、無自覚に嫌な気分が持続し、それを自分で薬を使ってコントロールしようとするので、薬物依存になっている方が少なくないと思います。それで職業病のようになって、自分でも抗精神薬を絶てなくなることがある。

私が厚生省の研究機関にいた頃に、日本でも医師の中で精神科医のメンタルヘルスが最も悪いことを調査で明らかにしたことがあります。患者との関係が難しいことがストレスの原因になっていました。米国の統計でも精神科医は普通の人の三倍以上も自殺率が高いのです。カウンセラーは燃え尽き症候群が多いかと思うので、それを他山の石としたいものです。

そこで、SAT療法のセラピストは、「貞子顔」のイメージがその人に入ったら、それを良い顔に変えます。


インタビュー写真


「それは、イメージングでなさるのですか?」

そうです。色彩イメージを用いると、その人の顔の表情がパッと変わる。例えば、恐怖顔の人を見ると、頭、肩、背中、胸などに身体違和感を感じるね。その違和感を軽減するために、どのような暖色系の色を用いるといいのかが直感できるので、その人にとっての良いイメージの色を使うと体が癒される。すると良い顔になるから、そうやってイメージを変えてしまう訳。元来脳は良い顔イメージを欲しているからね。

でも、変え方が分からないとそのままでいるので、夜にも貞子顔を思い出すでしょう。すると不眠の原因にもなってくる。パッと写真を撮ったみたいな形で記憶する人がいるでしょう。特にそういう直感像型の人は、打撃がくるね。それが写真のような記憶となり固定化しているから、それによって病気になっていくことにもなるかもしれない。

これまでの心理療法って、考え方を変えようとか、前頭葉に働きかけるよね。でも情動噴出している問題っていうのは、前頭葉では無理なんだよね。その時は扁桃体に前頭葉はハイジャックされているから無理なんだね。身体の違和感やそのような身体記憶を変えなきゃダメなんだよね。

例えば、ある人を見た時に、その人に対して怒りがあるとすると、「腹が立つ」と言われるように、お腹が反応するじゃない。それを変えられる?

「難しいですね?」

ストレスがあると身体の中の頭、首、肩、心臓、胃とかに違和感が生じ、それらの違和感が記憶され、さらにストレスが生じる悪循環が生じて、そこが緊張の痛みから低レベルの炎症で痛みを起こしていて、それが脳を支配するから、まず身体違和感を変えていかないと脳は正常に動いてくれない。

それは意思だけではコントロールできないんだよね。また身体違和感を取ろうとして薬を使うと、それはそれで無自覚でも弊害が起こり、悪循環のループに入る。

私達の身体には自己とは違う遺伝子をもつキメラ細胞がいることは、図1のように科学的には性染色体の染め出しによって明らかにされている。

インタビュー写真
図1:自己免疫疾患1型糖尿病の男性の膵臓中の女性のキメラ細胞 VanZyl B et al.: Why are levels of maternal microchimerism higher in type 1 diabetes pancreas? Chimerism 1: 2,45- 50 (2010).


一般には知られていない考え方だけど、マイクロキメリズムという最近の研究があり、自分の60兆の細胞の中に、他人の遺伝子をもつ細胞(ほとんどは親族由来)が入っている事が科学的に明らかになってきた。

この考え方は重要で、慢性ストレスがあると、この非自己の細胞が病原体と同じように、自分の免疫の攻撃のターゲットになり、膠原病や全身性エリテマトーデスとか、1型糖尿病などという自己免疫疾患とか、癌とかを作りだす。

このような遺伝子の違う他者の細胞は、生物学的にはキメラ細胞と言われるのです。それはヒトの脳の中にもいます。183人の女性の死亡脳の65%に男性のキメラ細胞があることが、昨年明らかにされました。

「どなたにもそういう細胞が混ざっているのですか?」

そうです。お母さんの細胞が胎児の細胞に入っていく。胎児にお母さんの細胞が入る。とくに甲状腺や女性器というのは、自分の子どもの細胞が沢山入っているといわれる、慢性ストレスをもつと、そこがいわば攻撃されやすく甲状腺腫、甲状腺がんや子宮筋腫、子宮がんなどの病気になる訳。

普通、妊娠中はセックスをしてももう妊娠しないと思っているでしょう。そう思って、浮気したら妊娠しちゃったってことが起こる。そういう過妊娠、過受胎という現象が最近分かってきたんです。白人夫婦に白人の子どもと浮気相手の黒人の子どもが同時に生まれたから、分かったんだけどね。

また右の卵管と左の卵管と同時に卵子が降りることがあるのだけど、近くに着床すると、卵子は融合しやすく、キメラネズミみたいにキメラ人間になります。サルではその実験が成功し、人工的にキメラ猿が誕生できた論文が2012年に掲載されました。

精子は卵子に一個しか入らないと思うでしょう。二個入ることもあるんです。多精子受精っていうのがあって、キメラとして出生することが2007年に学術研究で明らかにされました。

キメラ細胞は有益な側面と有害な側面がある。有益なこととして、お母さんの腎臓が悪いと、子どもを妊娠すると、胎児の細胞は幹細胞だからお母さんの腎臓組織を治してくれるんです。そういう有益な面もあるけれど、非自己だから攻撃を受けて、自己免疫疾患や癌になるんです。

女の人は妊娠する度に子どもの細胞が入るから、組織の損傷が修復されて、普遍的に男の人より長生きするでしょう。でも自己免疫疾患の80%以上は女性だよね。そういうことなのよ。

「プラスもあれば、マイナスもあるのですね?」

SAT療法は、自己免疫疾患や悪性腫瘍にも効果が見られて感謝されているのですが、その理由はイメージ療法で自分の中のキメラ細胞を攻撃させないようにしていると考えられます。

自分は一体何者か、知りたいと思っていることはありませんか?

「はい」

それは異物がいるっていうことを、自覚していなくても実は脳が知っているからなんです。自分で自分をコントロールできない部分があるでしょう。それは異物がいることを脳が知っているから。

自分の体の中には、親や胎内で消失したきょうだいとか、おじさん、おばさんとか、親族由来が多いのですが、他者の細胞がいるってことを知っておかなくてはいけない。臓器移植者や胎児がいる母の場合、行動特性や嗜好性が変わるように、他者がいることで私たちの性格は変わるところがある。

自分を変えられないって悩んでいるけど、そんなの当たり前で、自分の中に他者がいる以上変えられる訳がない。キメラ細胞は自分と気質も違えば、遺伝子活動が違うんだから。自分がこうしようと思っていても、もうひとりは違うかもしれないからコントロールできないってことが起こる。

「それはキメラに操られているということですか?」

場合によっては、そういうことが起きますね。だから、SAT療法はキメラを認め、イメージ療法でそれらと共存できるように働きかけていると考えていいでしょう。

たとえば自殺ということも、胎内消失したキメラの情動にコントロールされていることがあるので、キメラの良い表情イメージを作り、身体違和感を取れれば、自殺衝動は消失します、こうして自分で自分をコントロールできるようになるのです。そういうことをやっている訳。

「大学に入られた時は、どんなことをやりたいと思っていらしたのですか?」

母親がいつも悲しみやあきらめがある人で、いつも母親の訴えを聞いていたから、心に関することに興味があって、そして、人の恋愛相談をしている17歳の時に自分は心の相談に才能があると感じたんです。

それで大学では専攻はどうするかという段になって、心理学といっても動物実験が中心で、動物実験じゃ、ひととは遠いでしょう? といってカウンセリングは科学になっていないし、経済学は、人は利益を追求するっていう前提で組み立てられているし、法学は「なぜ」と問わないし、医学では心なんか入る余地がないし。

社会学だと、何をやってもいいような学問だなと思ってね。といって、これまでの社会学はどちらかというと社会哲学が主で、厳密な科学志向じゃないところもあるので、社会心理学や行動科学をやったんです。

「最初は社会心理学や行動科学から入られたのですね?」

そうです。社会心理学や行動科学を応用し、社会的に役に立ちたいと思ったので、その領域で健康や保健医療の世界に行くのがいいだろうと、応用研究は保健医療系の方に進んだんです。

でも、まともに行っても潰されると思っていた。日本って独創的なものは徹底的に潰されるよね。日本の中では、創造活動なんて出来ないことを大学や大学院のとき直感的に理解し、アメリカに行って初めて自由を感じた。アメリカは独創的なことを保護してくれるから。学問の世界で自由を感じたのはアメリカに行って初めてでしたね。

アメリカは何度か行きましたが、最初1981年〜1982年にUCLAの神経精神医学研究所に二年くらい客員フェロー(客員研究員)で行っているんですよ。エイズがUCLAで世界で初めて発見された縁があって、1987年以降にはエイズ問題にも取り組みました。

(次回につづく・・)

宗像 恒次(むなかた つねつぐ)  筑波大学名誉教授、SAT療法開発者
                     株式会社SDS代表取締役社長
                     ヘルスカウンセリング学会会長

1948年、大阪府豊中市生まれ。筑波大学大学名誉教授。保健学博士、社会学修士。
日本看護協会調査研究部、国立精神衛生研究所主任研究官、国立精神・神経センター精神保健研究所研究室長、カリフォルニア大学神経精神医学研究所客員研究員、ハーバード大学医学部客員研究員、世界保健機関(WHO)エイズ世界計画研究顧問および薬物依存部顧問を歴任し、現在、日本保健医療行動科学会顧問、ヘルスカウンセリング学会会長。
1993年にヘルスカウンセリング学会を設立し、2003年に特定非営利活動法人化し、公認ヘルスカウンセラーの専門資格(厚生労働省ホームページhttp://kokoro.mhlw.go.jp/qualification/参照)を養成する活動を行っている。イメージ療法、情動認知行動療法に基づくカウンセリング・セラピー技法としてSAT法(Structured Association Technique)を開発し、その普及のために筑波大学発ベンチャー企業(SDS)も設立、日本、中国、ドイツなどで多数のSATセラピーセミナーを開催している。
セラピーを受ける患者やクライアントが、心身の問題を自らの成長エネルギーへ変えていくことができる「SAT療法」と呼ばれる独自に開発したイメージ療法、情動認知行動療法を確立する。またそれに基づいて、脳、心、免疫、遺伝子発現の関連を世界に先駆け研究をしている。

<宗像恒次先生のHP>
【筑波大学発ベンチャー株式会社SDS】

<ヘルスカウンセリング学会のHP>
【ヘルスカウンセリング学会】

<宗像恒次先生の著書>
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SAT療法


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SAT法を学ぶ


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健康遺伝子が目覚めるがんのSAT療法


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遺伝子を味方にする生き方



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:福田りこ(ふくだりこ)

ふくだりこ

あなたの中に隠された宝の箱を開けてみませんか。

潜在意識に直接アプローチする心理療法を中心に、
自己受容と自己変容のプロセスに寄り添って行きます。

心理カウンセラー
米国催眠士協会認定ヒプノセラピスト
HP:セラピールーム・サンクチュアリ


インタビュアー:塩野博雪(しおのひろゆき)

塩野博雪

2008年11月にボディケア・トレーナー資格
2011年9月に和みのヨーガインストラクター資格
2013年3月に介護のヘルパー2級資格取得。

現在、横須賀で整体の店『星のなごみ』を開業しています。
いつまでも皆様を健康で若々しくあり続けるようにするべく、頑張っています。
塩野博雪 54才


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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