第83回目(3/4) 久保 隆司 先生 インテグラル・ソマティックス

ビオダンサは、人間の持つポジティヴな部分に注目し、そこを伸ばしていく

インタビュー写真

「ビオダンサの魅力について、教えていただけますか?」

ビオダンサは人間の持つポジティヴな部分に注目し、そこを伸ばしていくことがその基本アプローチとなります。より具体的には、人間であれば誰もが生まれながらに備えている持つ5つの潜在力を伸ばしていくことに注力します。

バイタリティ、セクシャリティ、これは狭い意味で男女の関係っていうのもあれば、男性性、女性性っていうのもあります。そして、クリエイティビティ(創造性)、アフェクティビティ、あとは、トランセンダンス(超越性)で、個を超えたより大きな存在とのつながりです。

近代化された社会では、これらの能力を育てるどころか、逆に抑え込む傾向があります。子どもが自由に遊びを創造したりするじゃないですか。でも大人になったらそういうことってできないじゃないですか。人間は、生命としてそういう要素を本来的に持っているから、それらを出していかないと、表現していかないと、日常のストレスだけでしょぼんとしてしまう。生命体としての成長も、生命体群としての種の進化も停滞してしまう。

これら5つのポテンシャルを現代人は伸ばしていくことで、普段の生活も変化していく。普段の生活のパターンが自分自身を見失わせるものであれば、そこから出て行こうっていうモチベーションも強化していける。

男女関係にしても、夫婦関係とか性格も合わないなって感じているけど、世間体もあるし、とりあえず惰性で繋がっているみたいなことってままあるじゃないですか。でも本当にそのままでいいのでしょうかね。お互いのストレスを大きく育てるという共同作業のパートーナシップの維持は間違っています。実際に現在のパートナーより合う人っているかもしれないのに。

自分自身の持っている男性性とか女性性とか、それを実生活に活かしているかなって。ビオダンサは、そういう部分に焦点を当てて、大切に伸ばしていくことになるわけです。すべての要素を活かしていくプログラムになっているので、継続的にコミットする必要があるんですね。

「室内でやるのですか?」

はい。通常のクラスはそうです。音楽も使いますので、音響設備も必要です。ただ、特別プログラムでは、屋外の自然の中でやったりもします。

「何人くらいでやるものなのでしょうか?」

何人でもできます。ふたりでも、10人でも、50人でも。例えば、海外の国際大会では、大きな体育館などで数百人もの人が一斉にやることもありますよ。

「どんな人たちが参加するのでしょう?」

ダンス、身体を使った動きを通しての自己表現をしたい人、自分自身を感じ、他者との繋がりを体感したい人が参加します。

「アメリカでビオダンサを学ばれたと聞きましたが、日本とは違いますか?」

私が住んでいたサンフランシスコのベイエリアには、色々な人種や文化背景の人々が沢山来ているわけですよね。アジア系、中南米のヒスパニックの人口も急増しています。ですが、実際の暮らしでは、それぞれ同じ人種や文化圏の出身者でコミュニティを作っていて、異人種間、異文化間の交流はそれほどないんですね。

しかし、ビオダンサは、ラテン発祥のこともあってか、参加者の1/3から半分ぐらいは、ラテン系の人でした。ラテン系の友逹が飛躍的に増えました。中には、南米から来たばかりで英語がまったく通じない人もいましたが、身体で付き合えるといいますか、その人達とも非常に深い非言語的コミュニケーションが出来るんですよ。魂レベルで理解し合えるというか。

それで、クラスが終わると、言語的コミュニケーションができないので、お互いもどかしく感じてしまう。言葉がない方が理解し合えるという真理の一つの側面を理解できる非常に貴重な体験でした。多くの日本人にも、人種や言葉を越えて、深いところで通じ合うことができることを実感して欲しいですね。

ビオダンサは実践です。それ自体は学問や心理療法ではないのですが、それまで学んできたソマティック心理学の知見とも共通する部分を多く含んでいたんです。まず、それに驚きました。その後、本格的にトレーニング始め、現在に至ります。4年ほど前から、月に1回大阪でクラスを開いています。関西人は日本のラテン系との説もありますね。要望があれば、たまに東京、その他の場所でもやることもあります。

一般論ですが、欧米と比べて、日本は人の目を見たりとか、タッチやハグとか、他人との身体的なコンタクト、コミュニケーションが苦手と言われます。日本人も江戸時代などでは、踊り好きだし、公衆浴場は男女混浴だし、おおらかで親密な肌と肌との付き合いを楽しんでいたようです。

ビオダンサには、身体的に触れ合うエクササイズも多くあります。ビオダンサが万人向けのアプローチであるとはいいませんが、タッチや身体的な触れあい自体は、本質的には万人にとって必要なものです。ブラジルで大発展したビオダンサだけに、肉食系なところがあります。でも、現在の草食系の日本人にこそ、ラテン系、肉食系の“栄養”をもっと摂取して欲しいですね。


インタビュー写真


「ビオダンサは踊りから、心理の方につなげるのですか?」

心理の方につなげるというより、踊りが即、心理、感情と結びつくという感じでしょうか。ただ、ビオダンサは、先ほどの分類では、第三の道であり、心理療法ではありません。ビオダンサのファシリテーターになるに際して、心理学や心理療法の専門教育を受けることは要求されていません。もちろん、ある程度、それらの分野にも精通している方が望ましいですね。

ビオダンサの心理学的側面としては、ソマティック心理学的な理解がピッタリきます。例えば、ビオダンサでは、プログラムによって、1人で踊ったり、2人で踊ったり、全員で踊ったりとか、その曲も激しいリズムの曲であったり、ゆったりとした静かな曲だったりとか、様々な曲とエクササイズが合わさって複雑なので飽きません。この背景として、心理学と神経生理学の理解が必要となります。

たとえば、交感神経系に働きかけるにはリズムがよいわけです。リズムとは生命体の原初的な脈動に発するもので、私達が持っている生命活動の根元ともいえます。まずそこから経験することで、バイタリティを活性化していきます。プロセスが高まるに従って、今度は、どんどん落ちついていって、副交感神経的な部分を押し深めていくメロディのラインで、プロセスを深めていきます。

最初の時より若干アップした感じでクラスを終えます。このようなプロセスを定期的に繰り返し体験することで、ある意味、神経シナプスの回路を、慣習的に押し付けられているネガティヴな回路から、ポジティブな回路への変容を促進させるのです。

このことは、また、様々な心理的葛藤に直面することにもつながる可能性があります。なぜなら、現代社会の多くの人は、文明的な規制や規範、道徳として、“ネガティヴなパターン”がアイデンティティの主要な一部になってしまっているからです。“生命中心原理”的に適切な“ポジティヴなパターン”を育てることは、自己の長年のアイデンティティを破壊し、再生することです。これはある意味の“死”であり、容易ではありません。

「ただのダンスとは違うのですね?」

以上の説明からもお分かりのように、“ただのダンス”とはかなり違いますね。人に見せるために、きれいに踊ったり、正しく規範に従って動くことが要求されることはありません。パーフォーマンスとしてのダンスでは決してないのです。

ビオダンサでは、セルフ・レギュレーション(自己調整)をとても重んじます。人によって、身体を大切にすると言っても、さまざまに違うわけですね。自分のことは、本来的には自分が一番知っている筈ですから、自分の体調、身体の声を常に聞きながら、様々な判断を、“今ここ”でおこない、体験していきます。

例えば、各エクササイズへの参加の強制はしません。クラス中、いつ休んでもいいんです。いつ水分を補給するとか、トイレに行くとか、少しだけ頑張ってみて様子を見るとか、すべて自分で判断します。広い意味で、これも練習の一部ですね。もちろん、ファシリテーターは、参加を促すことはありますよ。それが役目でもありますし。でも、自己調整ですから、最終的な判断は参加者が自分でやります。

ファシリテーターも、参加者に適切なプログラムを提供しようとするわけですが、グループワークですし、一人一人の個性や体調もあります。また、初心者とベテランが混在するなど、正直、全員に満足してもらうのは難しい場面も出てきます。

「ビオダンサの語源は何なのですか?」

Biodanza:スペイン語で、bioというのは、life、danzaは danceです。「dance of life :生命の踊り」という意味です。

「どんな風に介入なさるのですか? それとも介入はなさらずに一緒にやるのですか?」

介入はしませんが、その都度、インストラクションを与え、ファシリテートします。例えば、「人生とは歩みのようなものです。未来に向けての歩みです。それでは音楽に合わせて、一人で一歩一歩しっかり大地を踏みしめて歩いてみましょう」とか、「また人生には、仕事のパートナーだったり、夫や妻であったり、友であったり、共に歩んでいく時期、プロセスがあります。その象徴として、今度は2人で手を繋いで歩いてみましょう」とか。

身体で動いている時、参加者は言葉を使いません。話すことによって体験が限定されてしまいますので。

言葉というのは厳密化するのにはいいのですが、何かを厳密化することによって、何かにスポットライトを当てるということは、そして、狭義のボディワークとは、一人称的な気づきを得るための身体ワークを意味しますが、それ以外の領域が見えにくくなることでもあるので。エクササイズの内容や人数の関係で、ファシリテーターが一緒に加わるときもあれば、そうでないときもあります。

「限定されて失うものも、あるということですね?」

そうですね。特にこれは、わざわざ身体を使って、身体によって無意識、そういうところにアクセスするということがベースとしてあるのですから、終わった後も言語化しないのが基本となります。

基本構造としては、1週間に1回ですので、次の1週間後に最初の30分位シェアリングの時間をとります。「この一週間ぐらい前回からこんなことがあって、こんな風に感じました」とか。

そのシェアの後に、「それじゃあ、今週の踊りを始めましょうか」ということで、1時間半くらい踊って、そして終わった後はシェアリングも無く解散します。その繰り返しです。ただ、踊った後は。大抵、お腹がとても空きますので、有志で二次会に行って、食べて、わいわいと雑談はしますよ。そのせいか、身体を動かす割には痩せません。

(次回につづく・・)

久保 隆司(くぼ たかし)  インテグラル・ソマティックス代表 臨床心理士
                  ローゼンメソッド公認ボディワーカー、ビオダンサ公認ファシリテーター

大阪大学人間科学部にて文化人類学、米国ジョン・F・ケネディ大学大学院に てソマティック心理学(身体心理学)を専攻。カウンセリング心理学修士。
現在、都内にて大学院非常勤講師や心理カウンセラーを務める。
ビオダンサ・サンフランシスコ校出身
その他、サンフランシスコ・ハコミ研究所なども修了。
日本トランスパーソナル学会理事、日本トランスパーソナル心理学/精神医学会理事。東京在住。

<久保隆司先生のHP>
【Welcomeソマティック心理学へ!】

<久保隆司先生の著書・訳書>
cover
ソマティック心理学


cover
PTSDとトラウマの心理療法―心身統合アプローチの理論と実践


cover
PTSDとトラウマの心理療法ケースブック


cover
ローゼンメソッド・ボディワーク 感情を解放するタッチング


cover
インテグラル理論入門I ウィルバーの意識論


cover
インテグラル理論入門II ウィルバーの世界論



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:前田みゆき(まえだみゆき)

前田みゆき

身も心も魂も輝やくように、いつも笑顔を心がけています。
人とのご縁で、気づかされることが喜びです。

自称 遅咲きさん

コーチングと心と体の健康について、もっか勉強中


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

  • 呼吸法の日本マイブレス協会
  • 毎朝1分 天才のヒント

インタビュー集

  • 毎朝1分天才のヒント メールマガジンで30日間の無料レッスン
  • さぱりメント あなたのお悩みをさっぱり解決