第81回目(3/4) 向後 善之 先生 統合的カウンセリング

傾聴・共感だけでなく、直面化も必要

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「今、ハラスメントで苦しんでいる方は多いと思うのですが、それについてはいかがでしょう?」

ハラスメントをされて、苦しんでいる人達に対してどういう風にするかっていうとね、落ち着く方法をお伝えするっていうことですね。

これは基本的に呼吸です。大事なのは、足をしっかり地面につける、呼吸をゆっくりすること。そして絶対に顔を伏せないで、顔を上げて相手を見る。相手を見るけど睨まない。これが基本ですね。

ハラスメントはね、いろんなことをやってくるけど基本的にパターンは決まっていて、罪悪感を投げ掛けてくるんです。人格否定。例えば、仕事のミスなのに、「お前はバカか!」っていうところから始まって、ひどい事を言ってくる。「だいたいお前は考えが甘くてやる気がないんだよ」って。

本当に真面目にやっていたのに、ミスしたことに対して人格攻撃的なことを言ってくる。だから、ますます固くなってミスしちゃう。「だから三流大学出身はだからダメなんだよ」とか、「ゆとりはダメなんだよ」なんて言う。これは傷つきますよね。

他にも、精神論に変えちゃったり、「〇〇さんのこと、誰それさんがこう言っていたよ」という形で攻撃したりする。ハラスメントする側には、「俺はこんなに苦しいんだよ。それなのに、俺にまだ迷惑をかけるのか」みたいな、いくつかのパターンがあるんですよ。

「パターンがある?」

そうです。クライエントさんに、そのパターンを覚えてもらいますね。そうすると「パターン2で来たな」とか、心の準備ができる。それで、実際に自分がミスした行動については反省をするんだけど、人格だとかなんだとか言ってくることについては一切反省しないで、右から左に聞き流す。

「他のことを考えていてもいいし、話を聴くのは1分だけ」と伝えています。1時間2時間、ひどいときは8時間も説教しているって例があって。そんなの意味ないですよ。「あの時はこうだった、この時はこうだった」って聴かなくてもいい話です。

顔上げて堂々としていたら、相手は段々喋りにくくなってきて、説教を止めるのが少し早くなります。例えば、「私がこういう風に言うのは、君のことを将来の幹部だと期待しているから言ってるんだ」なんて言ってきたら、そろそろ説教は終わり。

相手の先を読むみたいになってくるとラクになりますね。相当傷ついちゃっている人は、そうは言ってもビクビクしますから、その傷が癒えるまではちょっと大変ですね。

「その場合は、ケアをしてからですね?」

そうです。

一方、ハラスメント、DVする側のカウンセリングもやるんですけど、その時に大事なのは共感じゃないんです。日本は、傾聴と共感ばっかり強調しますが、直面化っていうのがあってね、「あなたのテーマはこれですよ」っていうのをもっとやらなくてはいけない。

「直面化ですか?」

実は、僕は両輪だと思っている。被害者のカウンセリングの場合には、傾聴・共感の要素が強いですけどね。ハラスメントしている場合は、直面化の要素が強くなります。

例えばね、ハラスメントしている人は、僕に共感してもらうことを期待するよね。「しょうがないですね。課長っていうのはそういうものですものね」って。

DVの加害者が必ず言うセリフがあります。「向後先生は男ですよね。奥さんを殴ったことはありますよね」「殴りたいと思ったことってありますよね」って、すごく早い段階で聞いてくるんですよ。その時、僕は「何の目的があって聞くんですか?」って聞くんです。

「別に何もないよ」って言うんですが、でもそこで終わらせないんです。「目的のない質問はございません」と言います。「物事には、必ず目的がありますからね」って。そうすると、「何なんだよここは! カウンセラーってのはクライエントの話を聴くとこなんじゃねえのか」って、段々怒りが高まっていく。

「だから、お話は聴きますし、質問にも答えますけど、私がお聴きしているのは、目的のない質問は・・・」と申し上げると、クライエントさんは「目的目的ってうるせえんだよ!」って始まって、ワ〜って怒りだす訳ですよ。怒りだした時に、僕がどうするかって言うと、「そういう風に奥さんにもやっているんですか?」って話をするのね。そうすると、ふっと立ち止まる。そういう人は治ります。

それで、「そうなんだ」って、泣き出しちゃった人もいるね。「奥さんにもいろいろとあって辛いんだよ」ってね。そうすると暴力的にならないでやれる方にいけるんですよ。DVのカウンセラーの中には、DVの加害者は治らないって言う人がいますが、僕は必ずしもそうは思っていないんです。

自分の意思で来た方や、無理やりにでも来る方はいいんですよ。アメリカで治りにくいのはね、裁判所のオーダーで行くからです。

「強制ですからね」

行けば特典がある訳ですよ、行っているってことでね。だから治りにくい。日本の場合は保険も効かないところに来る訳ですよ。それだけで、何らかの意思がある訳だから、ちゃんとアプローチをしていくと結構な割合で治る。ハラスメントする人は、難しい分野なんですよ。根深い問題があってね、全部は治らない。半分くらいですかね。

ある程度以上重い人格障害になると難しいですね。こんなカウンセリングは無駄だって言って止めてしまうのがオチですね。でも、それはしょうがないと思っています。

「そこまででない場合は、楽になられますよね?」

そうですね、姿勢も変わるし、顔つきも変わって、力が抜けていくんですよね。最初はおっかない顔しているんですよ。

「いろんなものが乗ってるし、鎧も着てますものね?」

鎧、あれは大変ですね。だいたい肩がぐっと前に出ていますね。

「でも、その方の感覚では、被害者なんですよね?」

そうですね。基本的に彼らは被害者の感覚があるし、不安・恐怖があるんですよ。だからやるんですよ。恐怖の反応のファイト反応ですからね。いじめられている人はフリーズ反応。うまい事すり抜ける人は、フライト反応って言いますね。


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「就活で苦労している方のために本を出されましたね。メッセージをお願いできますか?」

今、鬱になる人が多く、それであの本が企画されたんです。

そういう人からいろいろと話を聴きました。彼らの多くは、「こうしなきゃいけないんですよね、ああしなきゃいけないんですよね。」って言うんです。「そんなこと誰が言うの?」って聴いたら、就活本に書いてあるって言うんです。

本を調べたらね、まあいい加減なことが書いてあって、ビックリしちゃった。これを真面目に信じていたら可哀想だなって思ってね。

「鬱にもなりますよね?」

偉そうに、「面接官は10分話せばその人のことは分かる」みたいに言っている人がいる訳ですよ。分かる訳ないです。カウンセラーはね、一回のセッション50〜90分だけど、分からないですよ。それを、一目見れば分かるって言い切っちゃってる。分かるのは、好き嫌いだけでね、その人のパーソナリティとか実力とか潜在力なんて分かる訳がない!

採用する側がそんなこと言っていて、まあひどいなと思いました。帰国子女はマザコンが多いとか言う人までいましたからね。

「根拠なしの偏見ですね?」

そう、偏見なんです。

「劣等感の裏返しかもしれない・・・」

そうですね。英語が喋れる人、帰国子女に対しての劣等感ね。いじめ体質ですね。あとは、成績がよくなきゃいけないっていうところがあるかと思えば、大企業で「うちはBが多い奴を採用する」とかね。あれを見てたら、学生さんは混乱して、何をやっていいのか分からなくなっちゃいますね。

「混乱させるような情報に影響されないようにしましょう。できるだけ素のままで。無茶なことを質問してくることがあるかもしれないけど、沈黙を大切にしましょう。『ちょっと考えさせてください』って顔を上げて言えばいいから」ってアドバイスをしていますね。

「情報過多になって、過敏になっていますよね?」

情報が多くなるほど、不安になって後悔も多くなるんです。だから、最初から絞っていって、あんまり聞かない方がいいと思いますね。

「こういう社員が望ましい」とか言っても、どうかなと思われるものもあります。白いスーツを着てきた学生がいて、「何であなたは白いスーツなんですか?」って聞いたら、「この会社の色に染まりたい」って、なんか気持ち悪い。

「お嫁さんか?! ですね?」

その時点で僕なら不採用ですけどね。

「でも、それが神話になったりするんですよね?」

そう、神話になるんですよ。納豆神話っていうのもあって、粘り強いのがいいっていうと、次の年の面接はみんな「納豆のように・・・」って始まってしまう!

面接する側の問題でもあると思いますね。そこまでスキルないんだもん。それなのに、分かったような自分の思い込みでやっているからマズイし、目先の利益ばかり追い求めようとし過ぎちゃっている気がしますね。あんなやり方していたら、内定者はみんな金太郎飴みたいになっちゃいます。

「学生さんには、何ておっしゃりたいですか?」

「大人は信用しないように!」っていうのと、「私はこう思うっていう形で考えましょう」って言いたいですね。

「私は」を主語にして言ったら、どういう風に見えるのか、この会社に本当に行きたいのか。まあ、「行くとこないから行きましょう」っていうなら、それで行けばいい。「この会社に行かなければならない」だと、「行けなかった僕はダメだ」って方向に必ず行っちゃうじゃないですか。だからそういう発想の転換をやります。

切羽詰まった頃に来るからあまり時間はないんですけどね。できるだけ自分の頭で考えるっていうのと、足をしっかりと地面につけて落ち着く方法っていうのが、応用範囲が広いですからね。そこのところと、「反省しない」ところですね。そんなに反省する必要ないんですよ。

「そうですね。単なるマッチングの問題ですものね?」

採用担当も本当は苦しんでいるんですよ。エントリーシートが山のように来て、「こんなに見れないよ」って。就活生は就活生で授業はそっちのけで説明会に行って、OB・OG訪問に行って。みんな疲れ果てている訳です。

それから、親が出て来るのは問題ありですよね。びっくりしちゃったんだけど、あるお母さんが、親の三大業務っていうのは、「受験・就活・結婚」ですって言うんです!

「それは、お母さんの依存ですよね?」

それが、母親だけじゃないんですよ。親父もですね。父親が息子のエントリーシート全部書いて送っちゃって、息子の方は親父から、「お前今日は面接だろう」と言われて行く訳です。お母さんは、「お父さんの言うこと聞いてれば間違いないから。お父さんは一部上場の人事部長だから」ってね。

そういうことをやっちゃってるからまずいですよね。転ばぬ先の杖みたいなのをやり過ぎてますよね。

「それではスポイルしちゃいますよね」

見ていて可哀想だね。大したことないことで、ポキンってなっちゃう訳です。

「素直過ぎてね」

いい子なんですよ。僕はわりと“ゆとり”に期待しているんですよ。「君達の時代だ、みたいに持ち上げられて、就職になったら君達“ゆとり”だからねって、どういうことだ!」って。だから、「僕達は人の意見をそのまま信用はせず、自分の頭で考えて判断する」と主張する、骨太で面白いのがいますよ。

もちろん折れるのもいるし、“ゆとり”だからって卑屈になっちゃってる人もいますけどね。

「その反骨精神に期待したいですね?」

どんどん牙をむきなさいって言っているんですけどね。

(次回につづく・・)

向後 善之(こうご よしゆき)  ハートコンシェルジュ 臨床心理士
                    統合カウンセリング学修士  

1957年神奈川県生まれ。
石油会社で会社員生活の後、40歳から渡米。
CIIS(California Institute of Integral Studies:カリフォルニア統合学研究所)で学び、統合カウンセリング学修士。
サンフランシスコ市営のRAMS(Richmond Area Multi‐Services:サンフランシスコ市営のカウンセリングセンター)他でカウンセラーとして働いた後、帰国。
現在、恵比寿のカウンセリングオフィスハートコンシェルジュでカウンセラーとして勤務するとともに、カリフォルニア臨床心理学大学院東京サテライトキャンパスで臨床心理学を教えている。
日本トランスパーソナル学会常任理事・事務局長。

<向後善之先生のHP>
【カウンセリングのハートコンシェルジュ】

<向後善之先生のブログ>
【ハートコンシェルジュ カウンセラー’sブログ】

<向後善之先生の著書>
cover
わかるカウンセリング―自己心理学をベースとした統合的カウンセリング


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就活でうつにならないための本


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ゆるぎない心 を作る8ステップ おとなの悩トレ!


cover
人間関係のレッスン



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:前田みゆき(まえだみゆき)

前田みゆき

身も心も魂も輝やくように、いつも笑顔を心がけています。
人とのご縁で、気づかされることが喜びです。

自称 遅咲きさん

コーチングと心と体の健康について、もっか勉強中


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

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