第79回目(3/4) 上田 信行 先生 同志社女子大学

真剣に関わっている時のドキドキワクワクする気持ちが、プレイフル!

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「プレイフルという言葉について教えていただけますか?」

この言葉は、日本語にするのが難しいのですが、もともと僕は子どもが夢中になって遊んでいる時、何かに没頭している時の精神に興味がありました。遊びそのものではなくて、playful spiritに関心があったのです。

プレイフルって不思議な言葉でしょう。ひとことで言えないけど、何となくわかりますよね。「今日のインタビューはプレイフルにやりましょう」とかね。そのまま訳すとプレイに満ち溢れているということです。

真剣に何かに関わっている時のあのドキドキワクワクする気持ちがプレイフルなんです。好きなことをやってる時に感じる興奮と楽しさ、だんだん引き込まれて面白くなっていく。ものごとを楽しくするのではなくて、「楽しいことの中に素晴らしいことがいっぱいある」という考え方なのです。

みんな「楽しくやりましょう」と言うけど、楽しいからこそ学びが溢れていて、楽しくなければ素敵なことが起こらない。それを強調した言葉が「プレイフル」で、生き生きと真剣にものごとに関わっていくattitude、姿勢なんです!

いつも、どんな時もワクワク感じようというポジティブな姿勢、心意気というか、心の姿勢というか。すごく大切な言葉なんですが、なぜかこの言葉にぴったりする日本語が思いつかない。「遊び心」と言ってもちょっと違うし。僕は人に説明する時は、憧れに向かってものごとに真剣に取り組んでいる時に感じるあのワクワク・ドキドキ感、と言っています。



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「時間を忘れてしまうようなことが、そこで起こっている?」

そうですね。台湾でプレイフルの学会があったのですが、台湾の先生がすごくわかりやすい表現をしていました。1 hour×pretty girl = 1 minute かわいい女の子といると1時間が1分に感じる。これがプレイフルだと。

楽しい人といると時間が早く過ぎますよね。没頭して仕事をしていると、あっという間に時間が過ぎますね。「今、この時間が続いてほしい、終わって欲しくない!」という時間がそうですね。

「ワークショップについてお聞きしていいですか? ファシリテーターの役割についてはいかがでしょう?」

僕のイメージするファシリテーターは、状況と対話しつつ、参加者ひとりひとりが自分の居場所を感じられるよう、それぞれが自分なりに関わっていける場を演出する人だと思います。

僕自身はファシリテーターではなく、みんなを巻き込んで、インヴォルブしていくタイプだと思っているんです。僕がワークショップをする時には、最初にパワーのある音楽をバッとかけて、みんなでダッとダンスをする。そうすると一瞬で一体感が出来上がるんです。あっという間に参加者全員が音楽にインヴォルブされて、みんなが一つになる。

この間、ゆずのコンサートに行ってきました。始まる前にラジオ体操ですよ。みんなで体動かして、ダ―ンと始まるんです。うまいですよね、オープニングの作り方が。素晴らしいインヴォルブメントですよね。「わかってるな〜やられたな〜」と思いましたね。


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「空気を創るという感じでしょうか?」

そうですね。知らない人達が集まった最初の空気は、何となく寒いですよね。それは暖めないといけないですね。空気をつくるのは、場をしつらえることによって可能です。

例えば、僕はいつも誰かを招いてミーティングをする時は、A3のコピー用紙でプレイスマット(ランチョンマット)を作って、そこにきれいな色で今日のテーマを書いて、ポンとチョコレートを置いておくんですよ。

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それだけで、レジメとは全然違うのですね。空気がなごみますよね。これが場をファシリテイトするということだと思います。普通はこんなことをしないですね。だからこの意外性がいいんですよ!

僕は、企業などでクリエイターの人達と一緒に新しい製品などを開発するワークショップの時は、シェフをお願いするのです。「何でシェフが要るの?」と訊かれますけど、「いやー、美味しいものを食べないと素晴らしいアイディアは生まれないでしょう!」って言います。「そんなのどうやって予算取るんですか?」などと訊かれます。だけど、この経験を一回味わった人は、もう戻れない。シェフと食べ物の魅力に虜になってしまう。

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シェフというのはメタファーでもあるのです。つまり、いつもシェフを雇えるわけではないので、例えば、少しの予算でもお菓子などは買えますね。お菓子を買って来てそこにコンセプトなどを書いた紙でラッピンをすると、それだけでevocative(喚起する)objectになる。

食を媒介させるということと、そういうことにどれだけ気を配ることができるかということが、ワークショップや会議を盛り上げていくことの秘訣なんですよ。それは、テクニックじゃないんです。先ほどのマインドセットみたいなもので、参加者をウェルカムしたいという姿勢ですよね。

「その方のハートが伝わるということですよね?」

そうそう。ハートを伝えるためにオブジェクトを使う。その方がわかり易いでしょう。口で言うだけじゃなくて。風船に「今日はありがとう」と書いて渡すと、「おっ!」と思うんですよ。ちょっとした工夫がものすごく大切なんですよね。誰かに会う時に、どうしたらその人が驚くかなと考えるだけで、すばらしい関係性が創れます。コミュニケーションがずいぶん変わりますよ。



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「日本のおもてなしの心・・・みたいな感じですね」

先ほどお話したファシリテーションって「おもてなし」だと考えてみると参加者への接し方が変わりますね。英語で言うエンターテイン(相手を喜ばせる)という言葉が近いですが、少しニュアンスが違います。おもてなしは、もう少し奥行きのある言葉ですよね。このおもてなしマインドはどんなことにも大切だと思います。

「日本人ならでは、ということもありますよね?」

そうですね。京都には、この「もてなす」や「ふるまい」、そして空間の「しつらえ」などいい言葉がありますね。こんな言葉を使ってワークショップをデザインできれば素敵ですね。ワークショップをどうしつらえようとか。ファシリテーターもワークショップも素敵な日本語で表現できればいいのですが。

それから、「たしなみ」という言葉がありますね。僕のゼミ卒業生がデザイナーの人達と一緒に、学びとデザインをテーマにした「undesign」というサロンを開いてます。そこでは、デザインはマニュアルに沿ってやるものではなく、誰もが思わずデザイン的に考え、ふるまうデザイン体質になることが大切だと言い、そのことを「デザインのたしなみ」と呼んでいます。【undesign】

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こういう昔からあるいい日本語をうまく使いながら、出来事を設計していくとイメージが変わってきますね。言葉の力って、僕はすごく大きいと思っているんです。どんな言葉を使って、その出来事を作るかによって、全然違ってくるんです。だから、言葉にすごく敏感になることが必要なんです。これを僕はメディアセンスと言っています。言葉やツールをうまく使ってコミュニケートするセンスです!

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ファシリテーションって言うのと、おもてなしって言うのとではイメージがだいぶ変わりますね。どう呼ぶか、どんな名前をつけるかって大切ですね。皆さんの分野でもそうだと思います。

どんな言葉を使って世界を形作っていくかによって、空気感が変わってきますね。元気が出る言葉をたくさん使って、明るくポジティブに生きていきたいですね。言霊(ことだま)って昔から言うように、言葉のインパクトは大きいと思いますよ。

「今、大学の役割をどのようにお考えですか?」

大学の役割は、幼児教育と同じくらい重要だと思っています。小学校に入る前の早い時期の教育環境ってすごく大事ですね。それと同じくらい大学教育も大切だと思っています。もちろん小中高も大事なんですけど、受験勉強があるので大胆な教育改革が難しいですね。その点、大学は自由度が大きい。今、どの大学も必死で大きく変わろうと努力をしています!

大学って、自分の経験を新しい知識と結びつけ、仲間や先生と議論しながら新しい解釈や考え方を再構成し、生産する場所ですよね。学びそのものを創造的に創っていくオポチュニティ(機会)であり、自分の将来へ向けてのヴィジョンやミッションを時間をかけて創り上げていく「ラーニング・インスティチュート」だと思っています。

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憧れを創り、ヴィジョンを創り、コミュニティを創る場所になると、キャンパスが活き活きとしてきます。大学にいる間に、まだ誰も挑戦したことのないことに勇気をもって向かっていく自信(creative confidence)を育ててほしいですね。でないと、社会に貢献できないと思います。こういった意味で、僕は大学の役割ってすごく大きいと思います。

「大学全体が大きなワークショップですよね?」

そうですね。大学は多様な人々からなる学びのコミュニティだし、新しい物を生み出す場所ですから。新しい関係性を創り上げる。ゼロから創るんじゃなくて、いろんなことを様々な形で結びつけていく。weaving、編みあげていく希望の場所だと思います。

(次回につづく・・)

上田 信行(うえだ のぶゆき)  同志社女子大学 現代社会学部現代こども学科教授
                     ネオミュージアム館長

1950年奈良県生まれ。同志社大学卒業後、『セサミストリート』に触発され、セントラルミシガン大学大学院、ハーバード大学教育大学院で学ぶ。ハーバード大学教育学博士(Ed. D.)。帝塚山学院大学専任講師、甲南女子大学人間科学部人間教育学科教授を経て、現職。
専門は教育工学。学習環境デザインとメディア教育についての実践的研究を行っている。
実験的アトリエとして奈良県吉野川のほとりに「ネオミュージアム」をつくり、1990年以来、実験的ワークショップを数多く実施している。
現在、人と人が織りなすコミュニケーションから豊かな学びの場をつくる「プレイフル・ラーニング」という新しい考え方を構築し、実践的な研究を続けている。

<上田信行先生のHP>
【learningthroughlove label】

<ネオミュージアムのHP>
【neomuseum】

<上田信行先生の著書>
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プレイフル・ラーニング


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プレイフル・シンキング



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、ゲシュタルトファシリテーター、NLPセラピスト、
交流分析士1級、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:前田みゆき(まえだみゆき)

前田みゆき

身も心も魂も輝やくように、いつも笑顔を心がけています。
人とのご縁で、気づかされることが喜びです。

自称 遅咲きさん

コーチングと心と体の健康について、もっか勉強中


インタビュアー:古武家真美(こぶけまみ)

古武家真美

心理学とカウンセリングを勉強中。
自分らしさを探す旅の真っ最中です。

学生の悩みに手紙やメールで答えるVFM東京でも活動しています。


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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