第78回目(4/4) 関 則雄 先生 日本クリエイティブ・アーツセラピー・センター

アートセラピーをやっていると、全部がつながってくる

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「臨床アートセラピスト養成コースについて、説明していただけますか?」

この「一般社団法人 日本クリエイティブ・アーツセラピー・センター」を立ち上げたのが2年前になります。主旨としては、アートセラピーの真の精神と実践力を身につけた人を育成していくこと、そのトレーニングの場を用意し、実践の場を広げていくということですね。

現在、1〜2ヶ月に1回の割合で、「シンボルセミナー」、「臨床実践セミナー」、「さまざまな素材のワーク」その他、のセミナーやワークショップを行っています。

また海外の専門家との連携も深め、窓口になっていきたいと思っています。タッチドローイングの創設者のデボラ・コフィンを招いて昨年と一昨年にワークショップをやりましたし、今年は、アメリカとイギリスに次いで芸術療法が盛んなイスラエルの諸芸術療法の専門家達と一緒に、4回のジョイント・ワークショップを企画しています。

そして、創立して半年ぐらいで3.11の東日本震災が起きたので、そちらの活動等で滞ってしまった部分があったのですが、やっと昨年10月から、本願であった2年コースの「臨床アートセラピスト養成コース」をスタートしました。

アメリカ・アートセラピー協会で定められている、大学院でのアートセラピーの学科設立のための基準にのっとってカリキュラムを作っています。しかし時間的には、その7割ぐらいの時間で納めています。

心理の勉強をきちんとやっているということと、一応臨床の人達が参加していますが、そうではなくても、本人がきちんと向き合う気持ちがあるという人でしたら、学ぶことを通して、臨床をやっていくという道もあります。

その場合は、インターン先で、研修をしながら学んでいってもらおうかなと思っています。そこが今までと大きく違うところかな。あくまでも臨床現場に結びつけてやっていこうと考えています。

「どんな方に受講してほしいというのはおありですか?」

そうですね、現在何らかの形で子ども達とか障害児に接したりしている人達や、実際病院はデイケアでアートセラピーをやりたいという人達、それと、一般の方でしたら、自分の仕事としてきちんと向き合っていきたいという気構えのある人ですね。

ちょっとカルチャーセンター的に学んで、というのとは違うので、かなり覚悟がいると思うんですよ。現在のクラスでは、アートセラピーというものを通して、皆さん、毎回成長をしているのを感じています。

まだ10数人といった人数で、まだそんなに回数を重ねたわけではないのですが、受講生のワークの深さには毎回驚かされています。私もこれからを楽しみにしていますよ。

「相互作用が起きているということですか?」

そうですね。私は、単なるアイデンティティの1つとしてではなく、これからの時代を担っていく人を育成していきたいという思いでいます。

生きるというものはどういうことかということを含めて、もっとトータルで人間というものを見られるように、アートセラピーを通して学んでいけたらいいなと思いますね。結果的に、アートセラピーがその手段の一つになる、という感じかな。

もちろんアートセラピーは、技法としたら、いくらでも教えることはあるんですけれど、逆にそれは、技法でしかないことなんです。ですから、むしろその人達が現場でぶち当たってどうしたらいいのかという時に、役に立つ学びをしっかりと身につけていきたいと思います。

例えば、アートセラピー演習の授業では自分自身に起きていることとか、実際に臨床現場で起きていることのケースを持ってきて話し合ったりとか、そういうことをメインにやっています。

「では、将来的には、先生が卒業生のスーパーバイザーになるということですか?」

ええ、もしくは卒業生達がまたひとつの大きなつながりを持って、お互いスーパービジョンし合えるような形で。当然私も、卒業後も引き続きその人達のスーパービジョンをしていると思うんですけど。

アメリカでは、例えば精神分析医自身もその上の分析医にスーパービジョンを受けてるんですね。その人はまたその上の人にと、ピラミッド状になっています。これはすごく大事なことかなと思います。

「今、悩みを抱えている人に、先生からメッセージを頂戴できますか?」

一般論的な答え方しかできませんが、どんなことにも意味があると思うんです。その渦中にいる時は、フォーカスがそこに絞られますね。トゲが刺さった時には、あれっぽっちなのにそこだけに意識がいって、これが身体の全部みたいに感じますよね。

どんな辛い体験でも、何年か経つと、ただのエピソードになって、「ああー、あの時はこうだったのか」と思えるようになってしまうこともありますし。

今、起きていることをきちんと感じると同時に、それをうーんと距離を置き、地球からも離れるぐらいに引き離してみたならどう見えるか。10年後20年後の自分が振り返ってみたらどう思うだろうか、その両方を感じてみると、その中間ぐらいのところに答があるかなという気がするんです。

「両方の中間を見てみる?」

とかくどっちか一方に行ってしまいがちですが、その中間ぐらいに“遊び”があって、「ああ、私の人生は、何でこうなの?」って実はそこに意味のある問いかけがあるかもしれない。気づきってそんな中から湧き上がってくるのかもしれません。

「そうは言っても」という人もいるかもしれないですが、例えば、パニックになって気が動転した時に自分を取り戻す方法、それは、呼吸に意識を集中し、“今、ここ”の現実に戻ることです。

緊張している時、思い詰めている時は息をしてないんですよ。吸うと緊張するから、とにかく「ふ〜っ」と吐くことです。そのほんの数秒のことなんですけれど、そこに“遊び”が出てくる。それだけでも違ってきます。

「空気が変わってきますよね?」

空気も変わってきますし、余裕ができるんですよ。「うーん」と思い詰めた時に、数秒の余裕ができたら、何か白けますよね。それができるようになったらいいんです。

そのためにも“今、ここ”のリアルな感覚をしっかり感じていることが重要です。でないと、“遊び”ではなく、現実から逃避をした解離になってしまいます。


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「心の仕事をなさる方に、先生から一言お願いできますか?」

・・・今浮かんだ言葉は、「誠実であること」。これは、自分にも誠実、クライアントにも誠実ということです。

誠実であるということは、正しいことをやれということではないんですよ。自分の気持ちに誠実であって、嘘をつかないということ。そうできない時があっても、それに気づけばいいんですよ。気づけば、コントロールできる。気づかないから、いろんなところでトラブルとなって出てくる。

「先生の夢や、今後の展望を教えていただけますか?」

早くアートセラピーを多くの人に、正しい形で引き継いでもらいたいですね。それがきちんと引き継がれたら、私自身は、狭い意味のアートセラピーからは離れ、そのさらなる可能性と広がりを追求していきたいと思います。

「そして、その時はどうなさるのですか?」

まあ、今もやっているんですけれど、占星学をアートと結びつけてやっていまして。描いた絵の中にちゃんと星の影響が示されているというような、びっくりするようなことが分かってきています。これは真面目な研究で、アメリカ含めて三つの学会で発表しています。

だからね、アートってすごいんですよ。全てにつながっている。宇宙ともつながっているんですよ。そしてこれは、きちんとした数字で証明できることなんですね。というのは、その絵を描いた時の星の動きというのは、惑星運行表で分かることですから。

昔の人達は、そのことに気づいていたのでしょう。でも、アート作品という形を通したからこそ、それを具体的に示すことができるようになったんです。それを自分の中でつきつめて、自然や宇宙的とつながったものをやっていきたいというのが夢ですね。それをやっている時の自分の方が生き生きとしているようですから。

アートセラピーをやっていると、全部が1つにつながってくるんですね。

芸術、心理療法、スピリチュアリティー、身体、集団、気など、表向きは別々ですが、本来同じ源からきていますし、つながっていると思います。アートセラピーというものをキーワードに、全部がつなげられそうな気がするんですね。

ですから、狭い意味でのアートセラピストというアイデンティティーを持つと、逆にそれができなくなってしまうと思います。ユングなどは、旧来の心理学の枠を超えて、古代からの思考形態である錬金術や、占星術をも結びつけようとしました。

「マンダラの研究などもやっていましたよね?」

ユング自身もマンダラを描いていたし、自分でもホロスコープを作ってやっていた人です。ユングはホロスコープのチャート自体、1つのマンダラであると言っています。・・・あまり知られていないんですが、ユングの娘の一人は占星術師だったんですよ。

「全体性とのつながり?」

全体性というのは、生きてるこのスパンではなくて、宇宙全体のことをも含んでいるんですね。だって、我々は土星や金星に行ったことはないでしょう。でも、もろに影響を受けているんです。そしてそれが、描いた絵に現れている。

そして、あるシンボルの理解が本当に自分のものとなると、それはありありと生きているのを体験します。シンボルというのは、シンボル事典に描いてあるのがシンボルみたいに思うでしょう? 違うんですね。

アートってすごいなと思うのは、いったん形に出て、目に見えるものとして示されるから、そういうのがはっきり分かるんですね。

「先生から、読者の方に伝えたいことは?」

ちょっとだしぬけですけども、日本に生まれたということを自覚して、大事に思ってもらいたいですね。日常に追われているとなかなか気がつかないんですけど、癒しの原点のカギを持っているような気がします。それを今の日本人は、だんだん自分自身で踏みにじっているような気がするので。

私の希望的観測なんですけれど、変わる為には、ジャンプする時に1回こう縮こまりますよね。そのステップが、今のような気がして。これから新しいパラダイムが花開いていく時代になるんじゃないかなと予感してるんです。

何か確信みたいなものがあるのと同時に、この現実の中で、いっこうにそれが反映されていない、この噛み合わなさを日々感じているわけですけれど、そこは“遊んで”ゆったりやっていると、ひとりでに噛み合ってくるかなとも思っているのですが。

「遊ばせているうちに噛み合ってくる・・・」

そうですね。特に我々を今、いちばん遊ばせなくしているものには2つのものがあります。一つは経済問題、つまり、お金です。もう一つは、死。

お金に関しては、元は大事なコミュニケーションのツールだったお金が、現代ではそこから離れて、ただの紙切れでしかない紙幣と数字操作のバーチャルな世界に翻弄されてしまっています。

死に関しては、臨死体験の研究でも明らかになってきたように、次のプロセスのための通過点でしかない。

でも、両者に共通して言えるのは、バーチャルなんだけど、すさまじいリアリティーを感じさせる。

この「お金」や「死」を「窓枠」とし、「私」をその枠の中で制限された「窓ガラス」としてみると、その中間の「遊びの領域」で、遊び、学び、働き、芸術活動をし、文字通りお金を使うわけです。

でも、皆がこの遊びの領域で“酔って”遊ぶのをやめ、“シラフな”遊び、つまり “今、ここ”の本物のリアリティーの中での生を生きることで、「窓ガラス」としての限定された私も、「窓枠」としての硬直した社会も、その波紋により揺さぶられ、やがて変化をせざるを得なくなるのではないでしょうか?

これが私の考えている、新しい世界へのパラダイムシフトです。アートセラピーはこの「遊びの領域」で、それに向けての大きな貢献ができると思っています。

やはり「遊び」が大切なんですね。


<編集後記>

「誠実さ」を絵に描いたような関則雄先生のお人柄にふれる
インタビューの時間となりました。

先生の中からわきでてくる優しさやあたたかさ、繊細さを
お話し中から感じ取っていただけたのではないでしょうか?

アートと触れると年齢の垣根がなくなります。
アートに触れると時間の感覚がなくなります。
アートに触れると夢の世界に導かれます。

年齢も性別も役割も超えた自分と人に出会える空間。

アートとこころの世界のつながりの奥深さと面白さを
皆さんもぜひ体験してくださいね。(A)

関 則雄(せき のりお)  一般社団法人 日本クリエイティブ・アーツセラピー・センター代表
                  アートセラピスト 日本芸術療法学会認定芸術療法士
                  日本集団精神療法学会認定スーパーバイザー

上智大学外国語学部ロシア語学科卒。ニューヨークのプラット・インスティチュートにてクリエイティブ・アーツ・セラピー学科(大学院)卒業。ニューヨーク市立キングス・カウンティー・ホスピタル・センターにアートセラピストとして勤務し、精神障害者へのセラピーに携わる。
1990年に帰国後、碧水会長谷川病院(精神科)にアートセラピストとして勤務、現在に至る。また、1993年よりクリエイティブ・アーツ・セラピー研究会をスタートし、アートセラピーの普及に努める。
2006年10月には実行委員長としてクリエイティブ・アーツ・セラピー国際会議を開催し、大会議長を務めた。
長年にわたり日本芸術療法学会研修セミナー講師、明治安田精神保健講座の講師等を務める。聖マリアンナ医科大学神経精神科および関西医科大学心療内科におけるアートセラピーのスーパービジョンも行なう。
また、東京都教職員研修センター、全国学校教育相談研究会をはじめ、各自治体の教育相談室、フリースクール、養護学校の職員、幼稚園教諭、養護教諭などを対象に数多く行なう。さらに上智大学、日本大学芸術学部、女子美術大学(大学院)での講義を行っている。

現在、アートセラピーのトレーニングと実践の場を広げるための一般社団法人 日本クリエイティブ・アーツセラピー・センターを立ち上げ、代表理事を務める。碧水会長谷川病院精神科アートセラピスト(2010年6月からは非常勤)。女子美術大学非常勤講師。臨床歴25年。

<日本クリエイティブ・アーツセラピー・センターのHP>
【一般社団法人 日本クリエイティブ・アーツセラピー・センター】

<関則雄先生のHP>
【多摩蘭坂アートセラピー・ルーム】

<関則雄先生の著書>
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芸術療法(共著)


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新しい芸術療法の流れ クリエイティブ・アーツセラピー


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practica〈2〉アート×セラピー潮流



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、NLPセラピスト、日本ゲシュタルト療法学会・GNJ会員
交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:前田みゆき(まえだみゆき)

前田みゆき

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自分のキャリア(強み・経験・スキル)を活かして楽しんで生きよう(エンジョイ)
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脇坂奈央子

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心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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