第77回目(2/4) 安保 徹 先生 新潟大学大学院

無理すると免疫が下がるし、楽すると免疫が上がり過ぎる

インタビュー写真

「免疫力と自律神経との関係について、教えていただけますか?」

私達は、日中は活動して、夜は眠って生きているでしょう。この活動と休息の体調を、交感神経と副交感神経という自律神経が準備してくれている。この自律神経の働きがあるから、日中活躍して、夜はぐっすり眠る、そういうバランスで生きられる訳だよね。

ところが現代人は、真面目過ぎて忙しくしたり、睡眠時間を削ったりするので、自律神経が交感神経の側に偏るでしょう。逆に子どもだったら、外で遊ばないとかご馳走ばかり食べるとなると、リラックスの副交感神経の側に偏るでしょう。

自律神経が偏ると、忙しい時間が続けば心臓に負担が掛かるでしょう。逆に楽な生き方が続くと、身体は能力が低下する。だから特に大人の場合は、忙しさや悩みで身体を壊す。子どもは楽し過ぎて、能力低下で身体を壊すんだね。

それと更に免疫低下と連動して、細菌を処理する顆粒球の方が交感神経の支配で、免疫の方が副交感神経の支配になる。無理すると免疫が下がるし、楽すると免疫が上がり過ぎる。バランスが崩れるんだよね。

「免疫が上がりすぎるというのは、どういう事なのでしょうか?」

過敏体質だね。紫外線に過敏になったり、金属に過敏になったり、化学物質に過敏になったり。ハウスダストに過敏になったのが、アトピーや喘息。

逆に無理して顆粒球が増えると、顆粒球は細菌を処理する大切な細胞なんだけれど、増え過ぎると常在菌とかの炎症を起こすんだね。そうすると、歯周病とか痔とか過敏性大腸炎になる。

昔の子どもは青っ鼻をたらしてたけれど、今は青っ鼻をたらす子はいなくなったでしょう。昔は寒さやひもじさがきつかったから、顆粒球が増えて、副鼻腔常在菌が反応して炎症を起こして青っ鼻をたらしてた。今は青っ鼻たらす子どもがいなくなった。

逆に、アトピーや喘息の子が増えてきたでしょう。たった50年とか60年の歴史で、病気の内容が変わっちゃう。だから私の免疫の理論を知らないと青っ鼻の謎も解けないし、アトピーも治せない。皆、右往左往してるね。

だけど医療の世界というのは、長い歴史と保守性があるから、新しい事を言ってもすぐには受け付けないんだね。だから一般書で啓蒙して行く流れも必要になる。

色白な人は、そもそもリンパ球が多い体質だから、アトピーとかになりやすい代わりに長生きできる。免疫が高くないと、途中で肺炎とか起こして死んじゃう。子どもの時にアトピー気味な人が、100歳に辿り着いてる感じだね。

「自律神経はバランスよく使う、という事でしょうか?」

そうだね。本当はほどよく使えば良いんだけど、私達の生きざまって、殆んど遺伝傾向で決まってるから、無理する人は無理する性格で生まれてるんだね。

おしとやかな人とか優しげな人とかも、やっぱり親の遺伝を貰ってるから、丁度良いところを選ぶのがそんなに簡単でない訳なんだ。

怒り癖のある人は、大抵一生怒って暮らすんだ。だけど怒るっていうのも、うまく使えばプラスになるからね。戦いとか競争とかに、怒る力が踏み込んで行く気迫になってるから、うまく使えば活きる。

遺伝で貰った感覚で生きて行くんだね。だから大変なんだ。ああしよう、こうしようと思っても、そう簡単にはできない。お父さんとお母さんの性格を半分位ずつ分けて貰って、そういう中で生きざるを得ない訳だ。

親の遺伝で、どういう心の持ち方っていうのがかなり決まっているから。しょっちゅう頭にくる性格も遺伝だし、逆もそう。良寛様みたいに、全部許して不思議な感じの人もいるでしょう。

「良寛様ですか?」

ああやって物乞いして生きるのを自分に許すという生きざまも、殆んど遺伝なんだよね。普通だったら、自分で食べる物くらいは自分で働けばいいって思うじゃない。物を貰うってのは、人間にとって屈辱的だから。

それを受け入れて、へりくだって、どん底で生きるってのは勇気がいる訳なんだ。普通の人は成し遂げられないから、「良寛さん」って呼ばないで、皆、「良寛様」って呼ぶんでしょうね。

本当に深く掘り詰めて行った感覚っていうのは、人間が尊敬するんだね。物を貰うっていうのも、結構大切な事なんだね。多かれ少なかれ皆いろんな物を貰ったりして生きてる訳でしょう。それをとことんまで下げて生きれて、尊敬されるってすごいよね。

人間の歴史に残る人達っていうのは、皆が持ってるんだけれど、それが研ぎ澄まされて極限まで行った人達。そういう人を、歴史が残すんだね。

宮本武蔵も、一寸先を刃が通っても微動だにしなかった。一寸あれば十分ゆとりがあるっていう感覚。そういう感覚って普通ないでしょう。普通は、刃物が目の前を通ったら恐怖で青ざめるでしょう。人間ってそういう能力まで持てるんだって、その極限を体得した人を歴史は残すんだ。

「現代文明については、どう感じていらっしゃいますか?」

今、いろんな心の問題で大変さ。文明が進んで、10万年位の人類の歴史には無かった事をしていて、人間が自然の摂理から離れ始めてるから、子ども達にとっても若者達にとってもすごく生き辛いんだよね。

やっぱり、外で相撲をとったり、川で泳いだりして過ごすのが子どもでね。机に座って活字ばかり見たり、パソコンを小っちゃい時からパチパチやっているようじゃ、なんとなく人間として怪しげだよね。子ども達が今、その不自然な世界におののいているんだね。

私は小さい時に自然に親しんで生きてきたから。パソコンとか携帯とか使えないけど、紙に書いてタイピストに渡すから、結局文明の恩恵は被っているんだけどね。

「原稿は、手書きなのですか?」

そうそうそう、手書きだね。だから、「皆のやってるパソコンってどんなもの?」って、一週間前から家内に「パソコンを教えて」って言って、今朝も30分やってきたんだよ。

「奥様から習っていらっしゃる?」

そう、「がみがみ言わないで教えてよ」って(笑)。

人を雇うってことも大切なんだよね。雇用を生むっていうのが一番の社会貢献のような気がするんだ。だって、自分のお金を独り占めしていると悪いじゃない? 人を雇って皆が潤うといいね。

あまりに仕事をやり過ぎて、体を壊す人がいるじゃない。アルバイトでも雇えばいい。雇用ができれば、ひとが潤う、皆、一人でやり過ぎるね。特に、夜遅くまでパソコンをやるような人は、すぐに体を壊すから、危険だね。

「タイピストの方を雇うのも、雇用を作ることにつながるのですね?」

そうだね。一日4時間以上はパソコンをしないように気をつけてあげているけどね。人類が体験したことのないような姿勢を続ける訳だから、不自然だ。体に悪そうだよね。30分くらいだと練習しても疲れないけど、4時間以上、真夜中までだと、体を壊すよね。

「どうして、体を壊すのでしょう?」

それは、交感神経緊張状態だよね。肩が凝ったり、女性だったら血管収縮による低体温で、体が冷えてきたりさ。免疫が下がるから発癌する。今すごく癌になる人が多い。低体温による発癌なんだ。体が冷えると血流が悪くなって酸素も運んでくれないから。

20億年も前の先祖に戻るっていうのが、癌なんだ。私達の古い生命体は、酸素のない地球で生きていたから、基本的に単細胞で、分裂するっていうのが生命体の基本なんだね。

バクテリア類は皆、単細胞のまま分裂して、ブドウ糖を乳酸に分解するっていうような解糖系って方法でエネルギーを作っているんだけど、その後に、有酸素でエネルギーを作るミトコンドリアが寄生して我々ができたからね。

本当に辛い目にあって、低体温・低酸素がくるとミトコンドリアを削って元に戻るんだ。単細胞の分裂細胞に。仲間を増やすっていう元の形、それが発癌なんだ。


インタビュー写真


「発癌とは、元に戻る…ということなのですね?」

そう。私達っていうのは、ミトコンドリアが入って、どんどん進化を始めて、特殊細胞を作り出して、髪の毛ができたり、歯ができたり、大腸ができたりっていうような、進化のために特殊化していった。

でもその特殊化したものは、ストレスがかかった時に維持するのが困難なんだ。やっぱり、元に戻るのが一番エネルギーを使わないから。だからストレスがあると、髪の毛が抜けていって、生き易くする。無理した人は歯も抜けていく。

どんどん特殊化したものを切り捨てて、基本に戻って省エネで生き延びるんだけど、その極限が癌なんだ。だから癌は、20億年も前の先祖細胞への回帰現象。そうやって特殊化したものを全部切り捨てて、この世を去るっていう感じ。

生命はすごくうまくできてる。どんどん基本に戻って、特殊化したものを切り捨てて、この世を去る。死ぬ人がいくら逝っても、また新しい生命は生まれるから、何てことはない訳だ。

よくお年寄りに血圧の薬を飲ませたり、介護を熱心にやって三食も食べさせたり、手間暇をかけるけれど、もう死に時が来ているのに、そんなに介護を熱心にする必要はない訳だね。

もしも、自分の意志が最後に残っていたら、食を断つっていうのが一番すっきりした死に方だね。するといつまでも意識は明瞭で清明で、感謝の気持ちいっぱいでこの世を去れる。

「食を断つのですか?」

そう。だけど皆、胃瘻(いろう)を作ったりして栄養を入れて、頭を全部麻痺させて、尊厳を削って生かすからね。お金はかかって、経済は立ち行かなくなる。

私は「70歳過ぎたら病院にはかからない、救急車には乗らない。死に時が来たら食を断つ」この3つを守るように団塊の世代に言っているんだ。

私達の上の世代の人達は、医療が発達していなくて医者にかかれない時代を経験しているから、今は、山ほど薬を飲んでこの世を去るのもいい。

でも、私達は高度成長期に入って、それなりに我が身を振り返る余裕のある時期に育ったから、こういう人達は、「死に時が来たら食を断つ」っていう慎みが必要なんだよね。すると幸せだよ。食べない幸せってすごい。仙人みたいでかっこ良いじゃない。

「先生が理想の最期として書いていらしたのが、恍惚状態で亡くなりたいと…」

そうそうそう。感謝してね。

野生動物は全部、群れを離れたり、死に場所で食を断って、この世を去る。人間もできるようになっているんだよ。歴史に残るような偉人は、食を断っているんだ。空海なんかもね。何でそんなことを書くかと言うと、勘で分かるから。

「怖い感じもするのですが?」

怖くないよ、気持ちいいもん。食べるのって大変なんだ。例えば、どんぶり飯を2杯食べてごらん、苦しいよ。それが胃瘻を作った状態なんだよ。寝たきりの人が1500カロリーとか入れられたら大変さ。だから七転八倒の状態でこの世を去っているのさ。

飢餓ではないんだよ。活動をしている人にとっては飢餓だけど、活動をしていない人にとっては、食を断つことは飢餓ではない、幸せなんだよ。自然に食べたくなくなるんだ。生き物は、努力しなくてもそういう状態になるようにできている。

犬でも、死ぬ時っていうのはもう食べなくなっているよ。猫だってどこか知らないところに行くんだ。あ〜、楽しみ。

「楽しみですか?」

楽しみ、楽しみ。だって生きていると結構つらいでしょう。私は、「51の喜びと49の悲しみ」って言っているんだ。人間ってそれぞれに生きるのが大変なんだよ。世の中に、幸せいっぱいっていう人は、あまりいないでしょう。

皆ぎりぎりなんだ。だって、曇り空がたった一週間続いただけで、人間は気が滅入ってくるからね。死にたくなるでしょう。そうなっているんだもん。生き物っていうのはぎりぎりのところで生きているんだね。

ちょっとお天気が悪かったら、死にたくなるようにできているの。でもね、少し生きる喜びの方が強いから、51対49って言っているのさ。

人間だけじゃなくて、生命体は皆ぎりぎり。ミミズでも雑草でも、本当にぎりぎりのところで生きている。ちょっと肥料が多いと、かえって伸び過ぎて倒れるしね。大変さ。

(次回につづく・・)

安保 徹(あぼ とおる)  新潟大学大学院 医歯学総合研究科教授
                  医学博士 免疫学者

1947年、青森県生まれ。東北大学医学部卒業。
現在、新潟大学大学院医歯学総合研究科教授(国際感染医学講座 免疫学・医動物学分野)。
米国アラバマ大学 留学中の1980年に「ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクローナル抗体」を作製。89年、胸腺外分化T細胞の存在を発見。96年、白血球の自律神経支配のメカニズムを初めて解明するなど、免疫学の世界的権威として知られる。
国際的な場で精力的に研究結果を発表し続け、免疫学の最前線で活躍中。

<安保徹先生のHP>
【医学博士 安保徹オフィシャルサイト】

<安保徹先生の著書>
cover
免疫革命


cover
まじめをやめれば病気にならない


cover
免疫力が上がる生活 下がる生活


cover
病気は自分で治す―免疫学101の処方箋

インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、NLPセラピスト、日本ゲシュタルト療法学会・GNJ会員
交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:前田みゆき(まえだみゆき)

前田みゆき

身も心も魂も輝やくように、いつも笑顔を心がけています。
人とのご縁で、気づかされることが喜びです。

自称 遅咲きさん

コーチングと心と体の健康について、もっか勉強中


インタビュアー:鈴木三千世(すずきみちよ)

鈴木三千世

現在、交流分析とゲシュタルト療法を勉強中。

将来的にはセラピストとして人と関わりを持ちながら、
社会に貢献して行ければと 思っております。



インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

  • 呼吸法の日本マイブレス協会
  • 毎朝1分 天才のヒント

インタビュー集

  • 毎朝1分天才のヒント メールマガジンで30日間の無料レッスン
  • さぱりメント あなたのお悩みをさっぱり解決