第74回目(1/4) 衛藤 信之 先生 日本メンタルヘルス協会

今ある状態で幸せになること。大事なのは受け取り方

今回のインタビューは、日本を代表するカリスマ心理カウンセラー、
日本一顧問企業数の多い心理カウンセラーとして有名な
日本メンタルヘルス協会代表の衛藤 信之(えとう のぶゆき)先生です。

全国4ヶ所で開講される衛藤先生の講座は、
“職場や家庭ですぐに活用できるふだん着の心理学”として人気が高く、
約4万人の受講生を輩出していらっしゃいます。

ネィティブ・アメリカンとの生活経験から、
インディアン心理カウンセラーの異名を取る衛藤先生から、
カウンセラーに求められているもの、感動を咀嚼することの大切さ、
“セルフラブ”のパワーなどについて、深いお話を伺いました。

インタビュー写真

「先生は、カウンセリングをどのように捉えていらっしゃいますか?」

カウンセリングはとても面白い反面、一番大変なところで関わるので、しんどい仕事でもあるんです。だけど、自分がその立場にならないと気づかないようなことを、たくさん学ばせていただける仕事ですよね。

例えば、ある人は、ご主人が亡くなって、グリーフケアの中で、「夫のいびきがないのが寂しい。いびきがあった時は何度首を絞めてやろうかと思ったことか。でも、いびきがなくなるとそれが寂しい。今一番、いびきが懐かしいです」そう言っていました。

また、奥さんを亡くした人が、台所に立って料理をして、いかに妻が偉大だったかに気づく。「作っては食べられ、片づけては汚される仕事。男は外の世界で成果を上げれば評価はされるが、妻はやって当然とされる。妻の仕事のありがたさを言ってあげるのは、僕だったんだ」と。

そういうことを聞かされて、その立場になってみないとわからないことを、カウンセラーは、前倒しで教わるんですよね。

「前倒しで教えていただける仕事?」

僕の師匠の河合隼雄先生が「カウンセラーという仕事はゴミ箱みたいで大変だろ。苦しいこと辛いことばかりを吐き出していく。でもその中に、必ずキラッと光るダイヤモンドを落としてくださる。だから僕らはカウンセラーをやめられないんだね」と言っていましたが、本当にそう思います。

そう考えると、僕らカウンセラーは辛い話を聞くけれど、逆に言えば、いただいている部分も多いんです。

これは日本メンタルヘルス協会の理念なんですけど、カウンセリングの普及というか、従来、病的な人へのカウンセリングに焦点を当てていたのを、普通の人へのカウンセリングにと、考えているんです。

「普通の人へのカウンセリングなのですね?」

今、普通の人が幸せに気づいていない。ベンツに乗るぞとか、セレブになるぞとか言って、そうでないと幸せでないと決めつけて、そうでない自分に焦点が当たって、より落ち込んでいくという流れになっている。

僕は、妻や子どもが外出して一人で部屋にいる時に、ふと思うのですが、何十年かして、子ども達が独立して僕だけが取り残されるということが起こった時に、今は妻と子ども達が帰ってくるという前提で待ってますが、一生帰って来ないんだと思って一人でいるのとでは、孤独が全然違う。

そうなった時に、何億円払ってでも、この瞬間に帰りたいと思う日が来るんですよね。そう思うと、僕達のポケットには、既に何億円というお金が入っているんです。ただ僕達はそれに気づいていない。

子どもがくっついて離れなくて「ママー、ママー」とトイレまでついて来て大変だ、というお母さんのお話も聞かせてもらいますが、それもせいぜい14〜15年で、子どもはどんどん離れていく。その時になって急に寂しくなって、「あの時をもっと楽しんどけばよかった」となる。

「後から、その幸せに気づくのですね?」

心理学の基本ですけれど「here and now 今ここ」。まさにそうですよね。「今ここ」に幸せがある。「先」ではない。

僕は両親が離婚して、2番目の母親が自殺しています。まあ、それがきっかけでカウンセラーになったんですけど、最初はすごく父親を恨んでいました。僕にはお母さんと呼んだ人が何人もいました。僕の父親はすごくもてたんですよ。会社も手広くやってましたし。

それで、僕は父親の跡を継ぐよう期待されていたんですが、それを蹴って、大学で心理学を専攻して、勘当同然でサイコセラピストの資格を取るためにアメリカに行ったんです。

アメリカで友人にお酒に誘われても「父親がお酒を好きだったから、僕はあまり行きたくない」とか、ボウリングに誘われても、「ボウリングは父親が一番得意だったスポーツだから、あまりしたくない」と毎回言っていました。

すると、アメリカのトレーナーが「ノブはパパが大好きなんだね」と。「大嫌いって言ってるじゃないですか!」って僕はすごくキレた訳なんですが、「ここは自由の国アメリカだ。パパを日本から連れて来るなよ」と言われたんです。

「そこにいないパパに、とらわれていたのですね?」

その時に初めて、自分が勉強していた「とらわれ、トラウマ」というものを本質的に、実体験で理解しました。

「ノブ、今日の一日は真新しい一日だ。お前がどんな風に気持ちを入れ込んでも自由なんだ。お前、パパのことを考えてる瞬間に気分が悪くならないか? お前が勝手に思い出しているんだ。それはパパのせいじゃない。お前のせいだ。トラウマ理論、それは昔の心理学だ。大事なのは今。それはお前が作れるんだ」そう言われたんです。

本当にそうですよね。これは、今、講座でもすごく大事にしているんです。過去どうのこうのって、意味がない。

何年も前に自分の元を去って行った人に、毎月1回、呪いの日と言って電話している女の子がいました。出たら「元気?」って切るんですって。でも、彼女は気づいていないですよね。そんな大嫌いな彼氏と、何年間も憎しみというお付き合いをしているって事実に。やっぱりそこに気づかないと。

心理学を本で勉強して、トラウマとか、知っている人も多いと思いますが、カウンセリングをしていて、「トラウマってどこにあるの?」と言いたくなることはありますね。それにとらわれるのはその人の問題であって、トラウマのせいではないと、僕は思っています。


インタビュー写真


「トラウマのせいではなく、その人の問題・・・」

大事なのはそれを考えるか考えないか。思い出すのか思い出さないのか。トラウマのせいにすると、どんどん色濃くなっていく。

どこに意識を向けるのかは、自分が決める事で、人生の中でどこに焦点を当てるかは、実はこちらの問題ですよね。そこに焦点を当てると、やればやるほど傷口が開いて、よけい治りにくくなる。だから、僕らの講座では、「まず今日を楽しみませんか」と伝えています。

僕らの協会が目指しているのは、今ある状態で幸せになること。大事なのは受け取り方です。僕も過去そういう経験があったから、カウンセラーになった。

カウンセラーとして、ビジネス上では日本で一番成功していると言われているけれど、僕があの両親の元で生まれてなければ、今の僕はなかった訳だし、僕はそれをいっぱい事例に使って講座をしていますから、僕の講座の迫力は子どもの時の経験からでしょうし。

結婚して、妻の料理がとても美味しく感じたのは、子どもの頃とても質素な食事しかしていなかったから。僕が料理研究家の息子だったら、妻の料理は料理と思わなかったかもしれません。だから、禍転じて福となす、というのはまさにその通りなんですね。

今、ほとんどの人が笑っていないし、楽しんでいない。キラキラしていない。今をどうやって楽しむのか、というのを伝えていきたいと思うんです。

「キラキラですか?」

僕がアメリカで教わったのは目力。目を常にキラキラさせとけ、と言われていました。

アメリカで学んでいる時、僕が廊下を歩いていると先生から「お前、幸せか?」と訊かれました。「多分」と答えると、「この2階から跳べ。幸せがわかるから」と言われたんです。絶対止めてもらえると思って「じゃあ跳びます」と言うと、「行け!」と(笑)。そこで僕は跳んだんですね。

すると先生は「ノブ、すごいな。本当に跳ぶとは思わなかった。何万という学生が学ぶこの学校で、お前のことを今は覚えているが、すぐに忘れるかもしれない。でもこの瞬間、お前を忘れられなくなった。お前はこの学校の歴史を塗り替えた。2階から1階へ1秒で移動したのはお前が初めてだ」

「お前はさっき、『多分、幸せ』と言った。そんな奴がここで勉強して日本に帰っても、何も教えられない。お前が楽しめ!」と言われて、その言葉で僕はその先生が好きになって、その先生のような面白い授業をしたいと思うようになったんです。

「その先生は、日本にいる時からご存じだったのですか?」

いいえ。たまたまアメリカで出会いました。僕はいろんな人から影響を受けています。それも、意味ある偶然・シンクロニシティなのだと思います。

インディアンのところに行った時も、アリゾナの長老に可愛がられていました。その人には普通、なかなか会えないんですが。ニコニコして神様にゲタを預けていれば、全部引き寄せられるんだろうなと思っています。

「いつ頃から、心に関心がおありだったのですか?」

母が亡くなった小学校4年生くらいです。何で、愛し合ったのに傷つけ合うのだろうと。いつも言葉足らずっていうのが父親にはあって、言葉にできないから叩く。母親も寂しいから、わかってもらおうと、「どうして? どうして?」と言っちゃう。

父親もそう言われると、責められていると思ってまた攻撃的になる。それを子ども心に、そこで親父が「わかった」って聴いてあげさえすれば済む話なのに、母親もただ「寂しい」と伝えればいい話なのにって。子どもながらに、そこで消えていった言葉を反芻していましたよ。

だから今、講演やカウンセリングをしていて、心についてのいろんなワードが出てくるんだと思います。

母親が自殺した時に、母親の友達が来てくれたんですが、その人が電話で「友達が亡くなったんだけど、あの子バカよね。結婚もしてもらえず、自分の子じゃないのに2人も預かって」という話をしていた。僕はその時から表情がとんでしまって、笑えなくなった時期がありました。

僕が「ママ、出て行かないでね。本当のママになってね」と言ったからいけなかったんだ。僕はもう幸せになってはいけない。僕は母親を殺してしまった、と思いました。

その時に助けてくれたのが、心理学を勉強していた大学生。その人が僕の話を黙って聴いてくれたんです。その人が最後に「勉強のためにアメリカに行く」と言っていたんです。それでサイコセラピーを学ぶならアメリカだ、と思って、僕もアメリカに行こうと決めたんです。

「アメリカから帰ってからは、どうされていたのですか?」

最初はフリーターでした。どこかの会社に入ると、没頭して辞められなくなると思ったので。そのうち、カウンセリングをしてほしいという人が出てきたので、最初はホテルのロビーやカラオケルームでやっていました。

昔はよく、ホテルは立ち入り禁止になっていました。勝手にソファを動かして、何時間も話して、相手の女の人が泣いたりして、そこでお金のやり取りがあるので、かなりイメージ悪いですよね。「一体、何してるんだ」ということで、立ち入り禁止。今、ホテルに行くと、「そういうことだったんですね」なんて言われたりしますけど。

でも、あの経験でとても力をつけたと思います。今はカウンセリングルームがあって、たくさん著書があって、バックボーンがあるので、何を言っても通ります。信じてくれるしラポールもかかりやすい。

でもあの当時は「ここ、ですか?」から始まって、1時間くらいの時間で「この先生はすごい」と思ってもらわなければいけない。それで僕は力をつけたのだと思います。

だから今も、無かったら無い中でやっていくこと、を話しています。欠けているところを見るか、足りているところを見るか。足りている中でどう楽しむかなんです。そしてやがてそれはネタになる。僕もこうやってネタにしているんですけど。

そうやっていく中で、「僕のマンションを貸してあげる」と言ってくださる人が出てきたりしました。そして、市民大学でカウンセリングの話をしていると、いろんな企業の人から「そんな話は企業でもできますか?」と言われるようになって、企業でもやり始めたんです。

「それはどんなテーマで?」

聴き方のトレーニングやアサーションだったり。心理学のバージョンを変えて、企業でやったのがすごくウケたんです。企業で、カウンセリングマインドを教えていく。それが一つの大きなきっかけですね。20年前くらいの話です。

僕からしたら、フリーターをしていて1時間何百〜何千円の世界で、たまたまその時、1時間半話して3万円もらったんです。僕にとっては画期的で、「なんだこの世界は!」と思いました。

今は講演で何十万とかいただくんですけど、「これでは受けられへんな」とか言うと、妻に「昔は3万円でありがたいって泣いていたのにね。今はそんなこと言うんだね」と突っ込まれます。彼女は僕の原点を知っているので。

そこからがスタートですね。だから、カウンセリングマインドを一般の人に普及するというのは得意ですが、1対1のカウンセリングは下手かもしれないですね。

今は東京、大阪、名古屋、博多の4か所に毎週、行ってます。それはとても楽しいです。最初、大阪で3人で始まった教室が、満員になります。それが嬉しいし、楽しいですね。

(次回につづく・・)

衛藤 信之(えとう のぶゆき)    心理カウンセラー
                       日本メンタルヘルス協会代表

日本で従来行われていた理論中心の心理学に代わり、誰でも日常生活に役立つ実践的プログラムを開発。その軽快な語り口は心理カウンセラーの枠を越え、まるで役者のライブのような臨場感があると評判になり、現在、日本一企業顧問数の多い心理カウンセラーとして、多くの人がより自分を輝かせる心理テクニックを教えている。
2001年に約8ヶ月間ネィティブ・アメリカンと生活を共にし、その自然観や伝統儀式に参加し、日本社会が失ってきた人間本来の「心の豊かさ」の真髄を心理学的見地から会得。帰国後、さらに学歴・地位・名誉・権力にとらわれることのない人間関係の創生を目指し、現代の日本に一石を投じるべく新たなメッセージを伝え続けている。

<衛藤信之先生のHP>
【日本メンタルヘルス協会】

<衛藤信之先生のブログ>
【衛藤信之のつぶやき】

<衛藤信之先生の著書>
cover
今日は、心をみつめる日。


cover
幸せの引き出しを開ける こころのエステ 夢をかなえるカギはあなたの中にある


cover
イーグルに訊け―インディアンの人生哲学に学ぶ


cover
上司の心理学―部下の心をつかみ、能力を高める

インタビュアー:前田みゆき(まえだみゆき)

前田みゆき

身も心も魂も輝やくように、いつも笑顔を心がけています。
人とのご縁で、気づかされることが喜びです。

自称 遅咲きさん

コーチングと心と体の健康について、もっか勉強中


インタビュアー:高橋美智代(たかはしみちよ)

高橋美智代

不惑を過ぎてから、心理学を勉強中の身です。
一瞬一瞬を、共に過ごす人々と、大事にして生きていきたいと思う
今日この頃です。

好きな動物:猫
趣味:読書 ピラティス
レイキマスター


インタビュアー:古武家真美(こぶけまみ)

古武家真美

心理学とカウンセリングを勉強中。
自分らしさを探す旅の真っ最中です。

学生の悩みに手紙やメールで答えるVFM東京でも活動しています。


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

  • 呼吸法の日本マイブレス協会
  • 毎朝1分 天才のヒント

インタビュー集

  • 毎朝1分天才のヒント メールマガジンで30日間の無料レッスン
  • さぱりメント あなたのお悩みをさっぱり解決