第70回目(2/4) 松木 正 先生 マザーアース・エデュケーション

三段階のアプローチで、「拡大家族」的な繋がりを作っていく

インタビュー写真

「マザーアース・エデュケーションのキャンプには、どんな特長がありますか?」

我々のキャンプは、子どもが参加してそれで終わりでなく、例えばリトルウルフキャンプの場合、保護者の説明会をします。その時に、子ども達の育ちのことや自己肯定感がいかに形成されていくのかお話しする場面があります。

話を聞いた後にお母さん同士がシェアしたり、保護者同士の安心な繋がりを作ることにエネルギーを向けています。そして、キャンプが終わったら<おもい出会>をやります。

子ども達一人一人が、どんな風に変わっていったか、何ゆえにそう変わったのかという我々カウンセラーの見立てをお伝えして、こんな所が変わりつつあるから、家庭に帰ったらどの部分を大切にして欲しいのか、こちらの想いも伝えます。

子どものこの部分に変化が起きるのは、お母さんにどんな変化が起きた時にそうなるのかということを保護者の人に引き継いでいくような場ですし、我々スタッフとキャンパー家族が繋がる場です。

「繋がりを作っていくのですね?」

三段階のアプローチですね。プレキャンプがあって、本番、終わってから<おもい出会>を通して、いかに大切な事を共有していくかということですね。

そうなると、今度はお父さんやお母さんが大人版のウルフのキャンプに参加する。うちのキャンプの子どものリピート率が6〜7割ぐらいなんですね。

ほとんどの子ども達も親同士もお互い分かっているし、その子らが大きくなって、やがてうちのスタッフになって仲間入りしてくるケースも少なくありません。ある種の育ち合う安心な場=homeなんです。それって結局は、僕が子どもの時にあったコミュニティの感じに近いかもしれない。

元々伝統的なインディアンの世界って、拡大家族・テオミパイエという考え方なんです。狩猟採集民だから、コミュニティ的なものが拡大した家族として旅をしながら狩りをし、生活を共にし、子どもを力を合わせて育む。

「拡大家族ですか・・・」

だから親を亡くしても、親の代わりの人がいるし、自分の子じゃなくても、自分の子どものように育ててくれる人がいる。それがインディアンのコミュニティ。

その感じに近いものはウルフキャンプのスタイルにも色濃く出ているし、マザーアース・エデュケーションに関わっている人達とのあり方にも出ています。でっかい家族、拡大家族です。

多分、僕が子どもの時にいたあのコミュニティの中にもあったし、そのしがらみの中で、皆にいじってもらって、ちゃんと存在を見てくれる人がいて、その中で人は育っていくのだなと。

狼から学んだり、インディアンから学んだり、そういうことを偶発的に一杯経験して、そういう繋がりが大事だと強く認識しました。一個一個のプログラムが単発で終わらないようにしていくことが大事ですね。

「火のワークでは、どのようなことをするのですか?」

火のワークも一つの切り口だと思うんです。火というのは、残酷なくらい自分を映し出す鏡みたいなものです。アメリカの先住民にとって火というのは、幸福と同じ意味なんです。つまりある種のメタファーですね。

年寄りが「こうやったらこうなるやろ」みたいな話をしながら薪の組み方を教える。それは薪組みの話をしていると同時に、人が幸せになっていく道のりをお年寄りは話しているんです。

つまり、炎が立ち上がるというのは、幸福の炎が立ち上がるようなものです。火をちゃんと扱えているということと、幸福でいることは、かなり近いものがあるかもしれない。

僕らがやっている火のワークは、トタン板の上に薪組みをします。両サイドに2メートル位のスティックを地面に突き刺して立ててその間に麻紐を張る。丁度高さ160センチくらい。薪組みした木で、炎が160センチの麻紐を切れるかが課題。それを1泊2日の間に2回トライします。

いろんな火を扱うサバイバル「テクニック」的コツと、インディアンの人達の「あり方」を教えながら、実際に森の中へ行って薪を集めてきて組みます。

炎が勢いよく立ち上がったけどばっしゃんと倒れたとか、炎は一瞬上がるけど全然熱量が上がらないとか。終わってから薪を除けたら、トタンの上に焼け跡が付きますから、どこに中心があったかがはっきり見えます。中心がぶれていたり熱量が少な過ぎたこと等は、その焼け跡から分かります。その炎では絶対切れない。

薪組みをしていく過程の中に、自分の「今」が映し出されてくる。


インタビュー写真


「薪組みは独りでやるのですか?」

はい。独りで1個薪組みをやっていく。それを家族でやったら、家族の形が出てくる。箱庭療法のようなものです。一つの形の中に投影されて出てくる。炎は強烈に映し出しますね。炎はどんな環境の中でもできます。雨が降ろうと、風が強かろうと、どんな時でも。

それは先住民の智慧の中にあります。どれだけ雨が降っていても、炎を舞き上げることもできるし、力強い熱量を生み出すこともできます。

震災の時に被災地が映って、火を焚いていますね。僕はあれを、これだけの薪を使ってあの熱量しか出ないのは惜しいなと思いながら見ていました。これだけ周りにいろんな物があるのに、どうしてもう少しちゃんと火が焚けないんだろう、そして、ひもじい思いをするんだろうと思うんです。

「それは何を映し出しているのでしょう?」

大切なものを見落としていること、大切なものは何なのか気づいていない。主体性をもって生きていない。そして、自ら主体的に自分の物語を組み立てていない。今起こっている出来事が大き過ぎて対応できてないということもあるでしょうけれど、結局どれだけ人が主体的に生きているのか、ということが問われている様な気がします。

客体性をもって生きて、周りに合わせたり、他人がどう見るのかというようなことを基にいろんな事を選び取って生きてきたり。自然との関係で言うと、人間をいつも主体にし、自然はコントロールできるものだとして人間の都合に合う様に自然を客体化させ、その中で生きていたら、そこには、どこにも自立した主体と主体の関係は存在していない。

いじめる側といじめられる側が入れ換わる主体と客体のコントロール関係にも似ている。我々が先住民的なプリミティブなサバイバルを教える時、人間である自分という存在と、自然の様々な存在との主体と主体のFull Valueな関わりを経験させている様に思う。

極寒であれ、雨降りであれ、どんな環境でも火は上がるんですよ。ということは、どんな環境にあっても、人は幸せでいれるということなんですよ。もし、自然の生命の「今」を主体にし、寄り添い分かろうとすると、自然の方から「私達はこうHelpできるよ」と助けてくれる。

昔のアメリカ先住民の人達だったら、どんなに大きい災難があっても、その中で幸せに生きる力は十分あったはずですよ。単なる技術じゃなくて、幸せに生きるための何かを知っているんでしょう。それは両主体のFull Value な関係を知っていたからだと思います。

火のワークは、まさに自分が幸福になるための道筋を示してくれるし、今までの自分のあり方を映し出してくれる。ちょっとだけコツを知ってくると、全然炎の立ち方が変わってきますね。

「こういうことを私は見落としていたんだな」とか「こんなものがあったのに全然見てなかったな」とか、そのワークを通じて、一つ一つ見えてくるんじゃないですかね。火を通して、自分のコアが育っていくっていうことですかね。本当に自分にとって大切なものが何か、ということです。その信念を「見方」にして、世界・出来事を人は認識し、行動するんです。

「様々なワークを体験しながら、気づいたり、学んでいくということでしょうか?」

そうですね。日頃、そのまま受け止めてもらえることってあまりないでしょう? 人の話を聴きながらも、「でも、こうでしょう?」って言われたりする。遮断されたり、「お母さんはね」ってお母さんの話に転換されたりとか、結構多いと思いますよ。

実は、子ども達本人を主体にしてちゃんと聴いたりしていることって意外と少ないかもしれない。言い換えると子ども達は、物語の主人公になってないかもしれないですね。物語というのが僕らのキーワードかな。

「物語・・・ですか?」

僕がカウンセリングして話を聴いている時や、ワークショップの参加者の語る事に耳を傾けている時、物語を聴いているような感じになっていくのです。多分カウンセリングは、物語作りを手伝っているんだと思うんですね。ストーリーメーカーみたいなものかな。

つまり日常の体験は、それがストーリーになってないよね。瞬間瞬間、無自覚の内に自動選択でやってしまってることが大半で、それがずっと続いているけど、体験ばかりか、もしくはしゃべっているけど語っていない。

人は誰かに分かってもらう様に語った時、自分が何を経験しているのか、つまり、どんな時どんな気持ちになったり、どんな反応・行動を取っていたのか認識できる。体験が経験化されて初めて物語になる。

僕らが話を聴いてる内に、「ああそうか。こういう思い込みやこういう信念が、こういう行動を選択させて、こんな風に出来事を引き寄せながら物語を作ってきたんだ」ということに、気づいていく。

その、人の持っている信念や思込みは、人から人へと連鎖していることが結構多くて、特に長女から長女への連鎖が多いですね。お母さんの持っている信念や思い込みが、自分の長女、つまり娘に連鎖している可能性がすごく高い。

これが、長女から長女へ受け継がれるから、僕らは「長女長女の物語」と呼んだりするんですよ。前の代から綿々と続いていたりするから、「ネバーエンディングストーリー」と言ったりしています。

「ビジョンクエスト(魂の目的=自分が何の為に生れてきたのかを知るセレモニー)を繰返しやってこられて、ご自分の使命は何とお考えですか?」

今やっている事そのものだと思うんです。自己肯定感という人が立つための根を育てるという、結局そこだなという気がしています。自分の大きなテーマになっているのは、自己肯定感が育まれるための大きなファクターである「受け容れる」ということだと思うんです。

受け容れるってとても大事だし、カウンセラーが受容するってとても大事だと皆言うけど、受容ほど幅のある奥行きのあるものはないと思っています。

僕自身、いろんなカウンセリングやセレモニーを通して、いろんな形の受容を経験してきていますが、それこそ沢山の受容があると思うんです。

受容というのは、すごく人の成長に関係していると思う。社会心理学者であるギブという人が言う様に「人は自分自身や他者をより良く受容できるようになっていく過程を通して、成長することを学んでいる」。それくらい受容は意味深いし、奥深い。

他者から大切に受容されるのかどうか、自分自身がそのことをどのように受容したのか、それとも抑圧してその時の感情を押し込めてしまうのかで、物語も変わってくるし、生き方も変わってくるし、幸せ感も変わってくる。だからそこがものすごく大きなテーマだと思います。

私は、今そこに存在している人のあるがままを受け止めつつ、ストーリーを生み出していったり、そのストーリーを形作っている信念や思い込みに気づいていったり、新しい信念を勝ち取っていったりするのを手助けしているんだと思います。

それが繰り返しビジョンクエストを重ねて授かったビジョンのピースを埋めていく内に、分かってきたことです。狼のキャンプも、元々は、ビジョンクエスト中のビジョンを通して来たものです。大概の僕のプログラムのコンセプトは、ビジョンクエストを通して知ったことです。

(次回につづく・・)

松木 正(まつき ただし)  マザーアース・エデュケーション主宰
                   チーフ・ディレクター

大学在学中、キャンプカウンセラーとして小学生・中学生を対象とした教育キャンプに携わる。また在学中、自身がうつ病を克服していく過程でカウンセラーと出会い、教育の現場にカウンセリングの手法を用いることの可能性を探り始める。
卒業後、大阪YMCA六甲研修センターに奉職。「体験学習法」を用いた企業研修や幼稚園児から大学生までを対象にカウンセリングの手法を用いた野外教育(キャンプ)を実践。
YMCA在職中にアメリカの環境教育に出会い、本物を目指して渡米。全米各地で環境教育のインストラクターをする中でアメリカ先住民の自然観・宇宙観・生き方、またそれらをささえる儀式や神話に強く引かれ、サウスダコタ州シャイアン居留区に移り住みスー・インディアン(ラコタ族)の子どもたちの教育とコミュニティ活動をしながら伝統を学ぶ。
現在、神戸でマザーアース・エデュケーションを主宰し、“自分をとりまく様々な生命(いのち)との関係教育=環境教育”をテーマとし、独自の環境教育プログラムを展開。
小学校・中学校・高校での人間関係トレーニング、また保護者に向けてのワークショップ・子育て講座、アメリカ先住民の知恵を前面に打ち出したキャンプの企画と指導、神話の語り(ストーリーテリング)、教育的意図をもった企画講座、自宅横にワークショップ棟(ストロングホールド)を構え、個人カウンセリングと独自のワークショップを展開中。

<マザーアース・エデュケーションのHP>
【マザーアース・エデュケーション】

<松木正先生の著書>
cover
自分を信じて生きる―インディアンの方法



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、NLPセラピスト、日本ゲシュタルト療法学会・GNJ会員
交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:前田みゆき(まえだみゆき)

前田みゆき

身も心も魂も輝やくように、いつも笑顔を心がけています。
人とのご縁で、気づかされることが喜びです。

自称 遅咲きさん

コーチングと心と体の健康について、もっか勉強中


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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