第70回目(1/4) 松木 正 先生 マザーアース・エデュケーション

キャンプを通して、人が主体的に成長していく活動がしたかった

今回のインタビューは、独自の「環境教育プログラム」を展開されている
「マザーアース・エデュケーション」主宰の松木 正(まつき ただし)先生です。

マザーアース・エデュケーションの「環境教育」とは、
“私”を取り巻く様々な生命(いのち)、
存在(自然、人、自分、大いなるもの)との調和を追求し、
バリュー(Value=大切なこと)を主体的に学びとっていく「関係教育」。

アメリカ先住民の智慧をベースに、野外教育活動やワークショップ、
講演・カウンセリングで、全国を飛び回る松木先生に、
「自己肯定感」「主体性」を育むことについて、深いお話を伺いました。

インタビュー写真

「小さい頃はどんなお子さんでしたか?」

僕の育った街は、京都の伏見なんです。京都市の中心部に住む人は、伏見は京都でないと言います。すごく泥臭い所です。僕の育った街は、一説によると頭に「ヤ」のつく自由業の方々がお住まいになっている人口密度が日本一高い街です。

「そこでどんな風に育ちましたか?」

家の前が神社で、神社の鎮守の森が僕の遊び場だった。地域が濃厚に関わり合っているんです。古い街なので、自分の親も同じ小学校だし、おじさん、おばさんも皆同じ小学校。僕の時で100何年の歴史だったから、もうしがらんでますよね。すごいしがらんでる街だった。

そんな街に育ったから、まず男は強くないとダメみたいな風土だった。だから生まれてから19歳までが人生の物語の第一章だとすると、第一章のタイトルは超人追求編。空手をやってました。体を鍛えてどれだけ人間は強くなれるか、がテーマだった。

19歳の時に自分がどれだけ強くなったか計ってみようと、京都から北海道まで走ってみようと思ったんです。当時は毎日30キロくらい走ってましたから、行けるだろうなーと、京都の北の端、東舞鶴から日本海側をずーっと北海道まで走ってみようと思ったんです。

新潟市に入った時、丁度、僕の北上するのと同じペースで梅雨前線が上がってきたんです。毎日雨の中を走ることになって、結局、風邪をこじらせた。もうスポーツ心臓の限界まで来ていたと思うんですけど、病院で心電図を取ってみてみると波形が1つなかった。

ドクターストップがかかって、19歳で初めて立ち止まったんですね。立ち止まったのはいいけど、今までずっと爆走してきたから、走り続けてきた人間は立ち止まると、今まで身体に意識が向けられていたものが思考する事に向き始めるとハートが冷えてきて…鬱状態になる。約一年半くらい鬱状態だったかな?

それが多分、自分の人生の変わり目だったと思うんです。体から心とか、もっと深い所に入っていくような、究極的に「何で生きなきゃいけないのか。何のために生きてるのか」と自分の「あり方」を問い続けたのは、その時期ですかね。その転機で方向転換した。第一章の終わりです。

「その時は、大学生ですか?」

大学の二回生です。経営学部でしたが、あまり大学で何かを学んだ覚えがない。大学生の頃は、キャンプカウンセラーをやっていたので、キャンプリーダーみたいなことを地元の行政のキャンプ場でやっていた。そういう活動をしていましたけれど、主体的に何かを学んでいる熱心な学生ではなかったですね。

「一年半の鬱から変わるきかっけは?」

いくつかきっかけはあったんですが、親が二人とも心理学部卒で、同期だったか?の人が心療内科を開いていた。そこでカウンセラーに初めて出会ったんです。そこで話を聴いてもらったのが大きかったかもしれませんね。どんな自分のつまらない話にも関心をもって評価せずに聴いて…分かろうとする人の存在と初めて出会ったことです。

それだけがきっかけではないけれど、小さな自分の「今」のままの感じに近い共感性を伴う出来事にテレビの中継や本や色々なもので出会ったような…そんなことが複合的に重なったのかなと思う。その頃、キャンプカウンセラーをやっていたのですが、キャンプ“カウンセラー”と名前がついている割にはカウンセリングなんか全然していないなと思ったんです。

もっとカウンセリングを勉強したら、子ども達が自ら気づき、自ら選択を重ね自ら成長していく本当の意味での「学びの」効果が上がることができるのではと思った。自分もカウンセラーに罹ったもんだから、子ども達に寄り添うしかないと思って、そこからですね。

本当の意味での野外教育や、カウンセリングを勉強しようと思った。キャンプ(野外教育)を仕事にできることと、カウンセリング的アプローチができそうなところと思って、YMCAに入ったんです。キャンプを通して人が主体的に成長していく活動がしたかった。

キャンプは、活動内容であるアクティビティというより、集団の中にいる「私」のことを丁寧に集中的にみつめてみることで人と関わる時の「自分」が数日間で、何かしら変化を起こす。そこは、キャンプのもっと魅力のある、もっと深い世界だろうと思った訳で、それを追求しよう思った。

プログラム内容もさることながら、アクティビティの中でカウンセラーが子ども達の「今」に寄り添って聴いたり働きかける事での効果の大きさに気づき始めた。

鬱になってなければ、大学4年間のキャンプカウンセラー生活はレクリエーション的な活動で終わっていたでしょうね。奥行きが出たのは、自分が鬱になったというのが大きかった。

「子ども達が対象というのは、子どもに伝えたいという思いがあったのですか?」

僕は、親以外のおとなの人に沢山遊んでもらったんですね。学校から帰って来たら、公園とかで遊んでいると、そこに頭にヤの付く人がいたりする訳ですよ。学童保育みたいな状態ですね。

今思えば、そのおっちゃん達から父性的なものをもらった部分もあります。普通の親ならあれや、これや、あぶないから…きたないから…やめろというようなことや、そんなことしたらダメみたいなことを、あの人らは、「ヤレヤレ! かまへん。かまへん。おっちゃんが責任とったるわ」って。とってくれた試しはありませんけどね。

それともう一点は、存在の肯定的なものをものすごくもらった。時々親に怒られて家から放り出された時、怒られるから家に帰らん方が良いと思ってトボトボ歩いていたらおっちゃんらが「どうしたんや。泣いてんのか。おっちゃんとこへおいでやー。メシ食って行けやー」と声を掛けてくれる。

存在そのものをまるごとちゃんと見てくれる…そういうのがすごく大きかった。キャンプカウンセラーというのも、おっちゃんらがしてくれたように、本気で子どもと遊んだり、本気になって関わろうとしてくれたり、一緒に笑ってくれたりとか、そういう存在だと思っていたところがどこかあったんでしょうね。


インタビュー写真


「環境教育について、分かりやすくお話いただけますか?」

環境教育というと、自然保護運動とか環境問題に取り組んでそういう教育活動をしていると思われがちですけれど、マザーアース・エデュケーションでは「環境」を4領域でとらえていて、環境の4領域は、「私」という生命を取り巻いている環境のこと。生命のこと。

一つは自然環境。私という存在と自然という存在がどう関わりあっているか。自然って、当たり前にまわりにあるけど、なかなか触れ合ったり、そこで関わりあったり本当の意味で自然と出会う「自然経験」が少ない人が多い。

自然豊かな所に育ったとしても、自然と触れているかと言うとそうでもない。むしろ街の子の方がキャンプに行ったりして、自然体験豊かですね。田舎に行ったら、全部車で送り迎え。ドア トゥ ドア。自然があっても自然と触れていないし、人が周りにいても出会っていない。感情のやりとりをちゃんとしていない。

自然と濃厚に出会うこと。つまり五感を使って、ここにちゃんと生命ある存在が、こんな風にいるんだなと認知したり(Body)、自然と触れ合う活動から、出会った自然と自分がどう関わりあっているか(Mind)、自然と関わりながら自分の内側でおこっている感情を、ことばや作品にして表現してみたり(Emotion)、自然との一体感を感じたり(Spirit)。そういう活動をしているのが、この私と自然という領域での生命との関わり方。

それと対人関係。それは「私」と家族との関係、クラスメートとの関係、クラブの仲間やいろんな仲間との関係ですね。つまり人間関係。

それともう一つは自分自身との関係。僕は「私」と自分というのも一つの環境と置いています。自分の身体だったり、考えだったり、感情だったり、ある種スピリチュアルな部分、それらを全部含めて自分という考え方ですね。

自分自身とちゃんと関われていないことで、病気になったり心が病んだりたくさんの問題を引き起こしていることがあると思うんです。だからこれも一つの環境ですね。

「自分との関係も環境なのですね?」

それとセレモニーで取り扱っているのが、大いなる存在との関係。この4領域にまたがって僕らが仕事をしている。この中で調和よく生きるというのはどういうことか、もっといい関係はないだろうかと探るモチベーションを生み出します。

いわゆる I`m OK! You're OK! みたいな、ちゃんとあるがままを認め合える関係を、遊びやアクティビティを通して気づいたり、それを援助したり、カウンセラーとして引き出していったり、気づきを導く手助けをしたり。そういうことが僕らの環境教育です。

自分という生命と自分を取り巻くいろんな生命との関係教育です。環境教育は、関係教育ですね。それに先住民的な智慧を借りながらプログラミングされているのが、マザーアース・エデュケーションです。

「先住民との関わりについて、教えていただけますか?」

先住民との関わりはインディアンとの関わりですね。映画の「ダンス・ウィズ・ウルブズ」に出てきたスー族。YMCAを通して居留区に入って、コミュニティの教育活動をやっていました。

27歳くらいの頃、アメリカで環境教育の勉強をするために、日本のYMCAを辞めて向こうに渡ったんです。

そこでアメリカの環境教育のいろんな要素の中に先住民的なものの考え方が時々ヒョコヒョコ顔を出してくることが分かったんです。特に、あるプログラムにスタッフとして関わった時、1日の終わりに毎晩ストーリーテリング(神話の語り)をする人がいたんですね。その世界は何か惹かれるものがあって…で、それの本物を見ようと思ったんです。

「先住民の人達が大切にしている生き方など、教えていただけますか?」

多分、一つには、誇りの高さだと思います。そのままの自分に対して誇りを持てる、そんな存在に人を育てることです。俺は大丈夫だ、というある種の自信というか、自分への信頼というか。自己肯定感とも通じるものですね。

インディアンのいろんなセレモニーも、結局それを育てているんだと思います。セレモニーって、スピリチュアルな側面もあるけど、実はものすごく教育的な側面もあって、人を育ててくれる。

「具体的には、先住民的要素をどのような形で活動に活かしているのですか?」

一つの切り口としては、僕のものすごく惹かれる動物のひとつで、インディアンにとっても大きな存在で歌や物語・トーテム(守護霊的動物)として現れるすごく大切な動物のひとつに「狼」があるんですね。

アメリカの歴史をずっと遡っていくと、人間が意図して絶滅に向かわせようとした種が二種類ある。その一つが狼で、もう一つはインディアン。今、その両方から学ぶことに意味があると気づき始めている人が沢山いると思う。

動物って進化していきますよね。多くの場合、捕食動物は一頭でも狩猟する能力が高くなるように進化していく傾向が強いと思うんですけど、狼は進化の過程で「群れ」を選んだ種なんですね。群れるということは、ものすごく群の仲間との関わりが重要なわけです。家族や社会との関わり。

と同時に、人が忘れてしまったようなことを狼達は普通にやっていると思うんです。一つはコミュニケーション能力。狼のコミュニケーション能力はものすごく高い。全動物の中でも超越的に感情をちゃんと伝えることをするし、そのことができる動物だと思います。その事が狼を狼たらしめてきたと思うぐらいです。

「感情を伝える能力ですね?」

例えば、狼のイメージとして誰もが挙げるハウリング。つまり遠吠え。ハウリングは、いろんな感情表現ができます。人間に欠けていて狼にしっかりあるのが、誰かが声を出した時、皆が反応(レスポンス)を返してくれることです。今の子ども達が一番怖がるのは、自分が何かを発信しても何も反応が返って来ないことです。

狩りをする時、彼らは走りながら眼球の動きだけで作戦の変更を伝えられる。すごく「コミュニケーション」能力が高い。身体的な表情で伝えることもできるし、声でもできるし、眼球の動きでもできる。

そして、群れの中では個性が尊重される。一頭一頭が違うということが大切にされる。鳴き方もハウリングも違う。狼は同じ声で鳴かない。いろんな声でハウリングするとハモる訳です。ハモることで他の群の狼達には大勢いるように聞こえるし、その歌声はチカラを感じさせます。また。自分達が深く群として繋がっている一体感を感じます。

一頭一頭が違うということは役割の取り方も違う。皆が力を合わせて、子育てには群れ全員が関わり合います。そういう社会性がある。勿論、狩りは「チームワーク」なので、それぞれが持っている力を最大に発揮して、弱い所を補い合いながら狩りをする訳です。

それともう一点は忍耐ですね。トライ&エラーする力はものすごく強い。狼の狩りというのは、6割くらいが失敗なんです。広大な北極圏の狼になると9割くらいは失敗です。つまり、10回に一回くらいしか成功しない。狼達はあきらめずトライ&エラーを繰り返すんです。

今の子ども達は一回失敗したら、失敗することを恐れます。いや、失敗が起こりそうな場面を回避しようとします。失敗したら「もう無理」と言います。やろうと言っても「無理。ありえないし、意味ない」と。狼は狙いを定めた獲物に、2日後、またアタックを試みます。それを繰り返す間に獲物は生命を明け渡すのです。

コミュニケーション、個性が尊重されること、チームワーク、忍耐、この4つの「生きる力」がものすごく高いのが狼なんです。

「それで狼なのですね?」

もう10年以上前から、狼になるキャンプ<ウルフキャンプ>をやっています。小学校の4〜6年生対象のリトルウルフキャンプ、中学・高校生対象のJr.ウルフキャンプ、そして大人対象のBe-Wolf Campをやっているですが、どのキャンプでもこの「狼の生きる力」が、4つの柱になります。

この4つの柱を学びの切り口にして、群(パック)=グループの仲間との関わりを通して、個の力を高めていく。これは単にこういうことが大事だよとか、どうしたらコミュニケ―ションがもっとうまくいくよと教えるのでなく、体験を通して自ら主体的に学び取っていく。

あるシチュエーションで、自分のやっているコミュニケーションのあり方が、相手を傷つけていたり、嫌な感じだったり、相手の存在を値踏み(Discount)してしまっていることがあるかもしれません。

日頃のコミュニケーションの取り方はほぼ無自覚です。また、自分が無自覚のまま取っている行動は、実は自分で自分の存在価値を落としていたり、自分でも心地良くないままそうしてしまっているかもしれません。

そこで、4つの生きる力を高めることを通して、自分の存在も相手の存在も大切にする=Full Valueなあり方を意識づけ、自ら新しい行動を試みる「心の冒険」をすることが、このプログラムのねらいです。

個性を尊重するというのは、誰かが「それ怖い」と言った時に、「怖いのね」とそのまま同意してしまうのか、もうちょっと深く聴くか。深く聴いていくと、もっと違うものを持っているかもしれない。尊重するって実は難しいことなんですね。

皆1つ1つが大切な事は知ってるけど、それが自分にとってどうなのか、主体性を自分に置きながら学び行動してみるのです。

Full Value(一人一人の存在を大事にすること)を意識して、4つの柱を鍛えていこうとしてるわけです。

(次回につづく・・)

松木 正(まつき ただし)  マザーアース・エデュケーション主宰
                   チーフ・ディレクター

大学在学中、キャンプカウンセラーとして小学生・中学生を対象とした教育キャンプに携わる。また在学中、自身がうつ病を克服していく過程でカウンセラーと出会い、教育の現場にカウンセリングの手法を用いることの可能性を探り始める。
卒業後、大阪YMCA六甲研修センターに奉職。「体験学習法」を用いた企業研修や幼稚園児から大学生までを対象にカウンセリングの手法を用いた野外教育(キャンプ)を実践。
YMCA在職中にアメリカの環境教育に出会い、本物を目指して渡米。全米各地で環境教育のインストラクターをする中でアメリカ先住民の自然観・宇宙観・生き方、またそれらをささえる儀式や神話に強く引かれ、サウスダコタ州シャイアン居留区に移り住みスー・インディアン(ラコタ族)の子どもたちの教育とコミュニティ活動をしながら伝統を学ぶ。
現在、神戸でマザーアース・エデュケーションを主宰し、“自分をとりまく様々な生命(いのち)との関係教育=環境教育”をテーマとし、独自の環境教育プログラムを展開。
小学校・中学校・高校での人間関係トレーニング、また保護者に向けてのワークショップ・子育て講座、アメリカ先住民の知恵を前面に打ち出したキャンプの企画と指導、神話の語り(ストーリーテリング)、教育的意図をもった企画講座、自宅横にワークショップ棟(ストロングホールド)を構え、個人カウンセリングと独自のワークショップを展開中。

<マザーアース・エデュケーションのHP>
【マザーアース・エデュケーション】

<松木正先生の著書>
cover
自分を信じて生きる―インディアンの方法



インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主宰、Team Oasis 代表
自分がなんだか分からない。何かやりたいけど、見つからない。
心の悩み、病を抱えた方、自己実現したい方のお手伝いをいたします。

心理カウンセラー、NLPセラピスト、日本ゲシュタルト療法学会・GNJ会員
交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:前田みゆき(まえだみゆき)

前田みゆき

身も心も魂も輝やくように、いつも笑顔を心がけています。
人とのご縁で、気づかされることが喜びです。

自称 遅咲きさん

コーチングと心と体の健康について、もっか勉強中


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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