第64回目(3/4) 倉成 央 先生 メンタルサポート研究所

自分の感情を吐き出してスッキリする「感情処理」

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「他にもオリジナルの言葉などはおありですか?」

そうですね。他には「感情処理」というのは完全にオリジナルですね。処理というとあまりいい言葉じゃないかもしれませんけど、感情をスッキリさせる、悲しみ、怖れ、怒りなどの感情を吐き出していってスッキリさせようという考え方を取っていて、かなり力を入れて言っています。

それはオリジナルの言葉と言えばオリジナルの言葉かな。

「ではその感情処理について詳しく伺えますか?」

例えば、私達は悲しい出来事、怖い出来事、腹が立った出来事を、感情を出しても出来事は一緒なので、我慢していれば忘れると思って我慢したり抑え込んだりするじゃないですか。それがしばらくすると調子が悪くなったりすることがある。

それで、その時に出さなかった感情をもういっぺん吐き出してしまおうというのが、感情処理の考え方なんですね。

例えば、ある男の人に振られた女性が相談に来たことがありました。彼は結婚すると約束していたのに、ある日突然やってきて「他に好きな人ができた」と。その女性はすごく怒ったらしいんです。彼に部屋の物を投げつけたりして、出て行けってののしって。

それからしばらく経った頃から微熱がずっと続くようになった。37度何分という微熱が半年ぐらい続いて、お医者さんの紹介で来たんです。微熱が続いたのは半年ぐらい前からなんですけれど、彼氏と別れたのは2年前なんです。

それで、彼とのお別れの現場をもう一度再体験してもらって、怒りを沢山その人が表した後に「ちょっと試しに『私は悲しい』って言ってください」って言ったら、その人は「悲しくない!」って言うんですね。

僕が「悲しいっていう気持ちは感じませんか?」と尋ねたらボロボロ泣き出されて「こんな奴のために悲しいなんて認めたくない」っておっしゃるんです。

「そうやって自分を支えてきたんだよね。もう、いいよね? 今日は自分のために『悲しい』って言ってあげようよ」って言ったら、10分くらい泣かれていました。それは私流に言うと、悲しみの感情処理なんです。それで、翌日から熱が下がって平熱に戻ったんですよ。

感情は溜めるといろんなことが起きてくる。だから感情を吐き出していく必要がある、という単純な考え方なんですけれど、カウンセリングで「感情を吐き出す」という考え方はあまりしないんですよね。

私は、感情はちゃんと吐き出してしまおうという考え方を強く薦めていて、感情処理という言葉をあえて使っているんです。処理すると言うと、全部きれいにしてしまうような感じがするので。

「しっかり感じて、出すということですね?」

そうなんです。感情というのは、私は人にぶつけるものではないと思っています。一般的には、相手に言いたい気持ちがあったらハッキリ伝える方がポジティブだと考えられますよね。でも、私は必ずしもそうとは思っていないんです。

それよりは感情を溜めないようにすることが大事なのであって、例えばむかついたからといって相手にその気持ちを言えばいい、とは私は思っていないんです。溜め込んでいると良くないから、それは相手の見ていないところで吐き出しましょう、というのが感情処理なんです。

「それは相手に対して吐き出す訳ではないのですね?」

感情処理は相手に向けて行うものではなく、自分自身で行うものです。

「相手でなく、その方の問題なのですよね?」

そうですね。例えば相手に向けて感情を吐き出す、相手に対して腹が立つと直接伝えたとしても、スッキリしない人が多いんです。

相手に向けて怒りを吐き出すのは結構難しくて、攻撃や批判になってしまい、腹が立つ、という純粋な怒りではなくなってしまっていることが多いんです。だからスッキリしないことが多い。

「確かに攻撃をしている限りは解消されないですよね。そのあたりに気づかれたのは?」

自分自身がそうだから、何となくですね。相手に対して文句を言ったって、スッキリしないんですよね。だから自分で楽になる方法を考えたら、相手に文句を言うよりは自分でスッキリする。スッキリとなった者勝ちだから、そう考えた方がいいと思ったんです。


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「そのあたりの違い、相手への攻撃ではなく、自分自身の怒りの感情を出すのだということが少し難しいかと思うので、説明していただけますか?」

イメージで、例えば新聞紙で、誰も見ていないところでクッションを叩いて怒りを出すとするでしょう。その時に相手を攻撃しているというイメージではなくて、自分のお腹の中に怒りが溜まっていて、それを新聞紙を通して吐き出しているというイメージを持つんです。

あくまでも吐き出すんです。誰かに向けるんじゃないんです。そういうイメージなんです。僕のワークショップでは相手の空椅子を新聞紙で叩くのではなくて、怒りを消化するための別の空の椅子を出して、それを叩いてもらったりします。

「その空の椅子には誰か座っているのですか?」

誰も座っていない。怒りを出すための、ただの椅子です。そこに大きな音が出ないようクッションを置いて、そこを叩いてもらうんです。

「先生は震災後のストレス対処の活動をされて、本も出していらっしゃいますが、今、どのように考えていらっしゃいますか?」

何と言えばいいんでしょうか・・・。震災の後に被災された方に会ったりもしました。10代の女の子が、例えば目の前で体験した津波の話を「全然なんとも感じない」って話したんです。その子は目の前で知人が流されるのを見ているのに何ともなかったかのように淡々と話したんです。

でもそういう目に遭って、本当は怖かったんですよ。先ほどお話しした感情処理の考え方から言うと、その怖さを消化しないままにしていると、後にPTSDなどの問題につながる可能性だってゼロじゃないわけです。

それで、私はその子に「怖かったよね」って言ったらその子は返事をしなかった。もう一回「怖かったろう?」って言ってみたんです。彼女、顔が引きつっていたんです。

私はその時、要らんことしたなと思った。この子は向き合いたくないのに、私が無理やり向き合わせようとしたんです。話を聞いて楽にしてあげるどころか、逆に傷つけるばかりで。そういうのがいくつも心の中であって。

今はまだ向き合う段階でないから、せっかく「否認」して認めないようにしているのに、余計なことをしているんじゃないかと。そういう思いを体験してきて、カウンセリングなんて偉そうに言っているけれど、いったい何ができるんだっていうことも思い知らされた感がある。

「そうでしたか・・・」

例えば、何と声をかけていいかどう接したらいいか私は分からないわけですよ。声をかけないのも傷つけるような気がするし、声をかけても傷つけるような気がするから、ああいう時は心理をやっていても、自分はとても無力ですね。

そのうちに被災地で人と会うのが怖くなっていくんですよ。また要らないことして傷つけるんじゃないかと、そういう風に思うんです。だから、助けを必要としてくれたら行くよというスタンスが一番いいのかなと私は思う。

「必要とされた時にということでしょうか?」

カウンセラーが本当に必要とされるのは、もうちょっと後かな。ずかずかと入っていくのではなく、相手が求めてくれたらそれに応じて動く、この方が私はいいんじゃないかと思っているんです。

私の本には、出版社にかけあって、どうしても入れてもらった一文があるんです。「被災していないのに、どうして?」っていう言葉を入れてもらったんです。

被災した人に、感情を処理しましょうとは絶対に言えないと思ったんです。被災はしなかったのに心に不安感を持っている人とか、そういう人はどうぞ感情処理をしましょう、ということですね。

「そういう方は、今、たくさんいらっしゃいますよね?」

そうですね。そういう人のサポートは今でもできることかなって思っています。

「今の先生の活動としては、カウンセラー育成が中心ですか?」

カウンセラー育成というほどのものか知りませんけれど、セミナーとワークショップですね。

「個人セラピーは?」

個人セラピーはほとんどしていないですね。精神科クリニックに10年以上行っているので、そこの患者さんにしかほとんどしていないですね。グループワークだけです。後は、メンタルヘルスセミナーと研究くらいですね。

メンタルヘルスも、メンタルヘルスをやりたいというよりは、カウンセリングや心のことに対する理解を広げたいということだけなんです。だからあまり、メンタルヘルスのビジネスという感じではないんです。

「カウンセリングを身近に感じてもらいたいということですか?」

そうですね。まずは、広がっていって、何か将来的にうちができることが、カウンセリングの勉強をしている人達が関われるようなことが出てくればと思って、メンタルヘルスもやっているんです。

「先生ご自身は、セルフケアとして気を付けていらっしゃることはおありですか?」

セルフケアもそうですけど、カウンセリングもスーパービジョンも継続的に受けています。それがセルフケアかな。

(次回につづく・・)

倉成 央(くらなり ひろし)  メンタルサポート研究所代表
                  臨床心理士 メンタルヘルスコンサルタント

「再決断療法」の第一人者。
1963年、福岡生まれ。大学で経営学を学び、大手経営コンサルティング会社で経営コンサルタントとしての実務経験を積む。その後、大学院で臨床心理学を学び、臨床家としての実務経験を重ねる。現在は、経営コンサルタントと心理カウンセラーの両方の経験を活かし、精神科でのカウンセリングの傍ら、企業でメンタルヘルスの導入・定着に向けたコンサルティングや研修を行う。
日本心理学会、日本心理臨床学会、交流分析学会などに所属。

<倉成央先生のHP>
【倉成央 公式ウェブサイト】

<メンタルサポート研究所のHP>
【メンタルサポート研究所】

<倉成央先生の著書>
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凹まない生き方

インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川崎綾子(かわさきあやこ)

川崎綾子

ゲシュタルト・再決断@府中「座★すわろう会」で活動中。グループの中で
お互いにサポートを得ながら、自分らしく癒されるセラピーをしています。
ペンギン好き。趣味はバレエです。

GNJゲシュタルト療法トレーニングコース修了、日本ゲシュタルト療法学会会員
NPO再決断カウンセリングジャパン会員
矢野惣一問題解決セラピスト養成講座(上級)修了
レイキティーチャー


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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