第63回目(2/4) 岡野 守也 先生 サングラハ教育・心理研究所

理論が実感になった時、完璧な自己肯定感になる

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「コスモロジーの要点というのは、どういったことなのでしょうか?」

現代科学のコスモロジー(宇宙観)の分野における主要な成果として、5つの学説があります。

まず、ヘッケルが「エコロジー」という学問を1860年代に言い始めました。これは100年後の今、もはや誰も疑わないくらいに確立した科学の理論です。

「エコロジー」という言葉は「すべての生命同士、そしてすべての生命と非生命(すなわち環境)は、地球において1つの生態系システムを成している」ということなんです。この「1つ」というところが大事です。地球全体が1つのエコシステムであり、バラバラではないということ。

デカルト的な分析では、世界はバラバラの物の寄せ集めに見えていた。ところが、エコロジーは「元々つながって1つである。それが世界の本来の姿なんだ」ということを明らかにしたんですね。つまり、今この瞬間、僕らは生命・非生命と全部つながっているんですよ。

次に、20世紀の初頭にアインシュタインが「相対性理論」という画期的な理論を提唱しました。では、相対性理論が何かというのはご存知ですか?

「光より速く運動する物はない、というのが有名ですよね?」

それも知られていますね。つい先日「あるかもしれない」と、話題になっていましたけれど。ですが、コスモロジーとして大事なのはそこではないんです。

E=mc2という数式があります。この数式が示している世界像がすごいんです。Eはエネルギー、mは物質の質量、cは光の速さ。つまり「エネルギーと、物質の質量と光の速さを2乗したものは、等しい」という数式です。

要するに「物質の大きさと速度・運動は、エネルギーと交換可能だ」と言っているんです。我々は近代科学で「世界は物質・運動・それを行う空間・時間でできている」と教わってきたけれど、アインシュタインによれば「物質も運動もエネルギーである」ということなんです。

近代科学では「すべては科学的に突き詰めて考えていくと、物である」となるのに、アインシュタイン以降の現代科学は「すべてはもっと突き詰めたらエネルギーである」と、考えが変わったんです。

「すべてはエネルギーということなのですね?」

自分のことを考えてみた時に「私ってただの物なんだ」と思う時の感じと、「私って宇宙エネルギーなんだ」って思う時の心理的効果はどうでしょうか? 宇宙エネルギーだと考えた方が、元気が出てきそうじゃないですか?

だから、アインシュタインの理論を勉強したら「私って単なる物なんだ。あーあ、ガッカリ」ではなくて「ああ、私って宇宙エネルギーなんだ!」と科学的根拠を持って思えるようになった。

しかも、宇宙エネルギーレベルで見ると、すべての物が宇宙エネルギーである。つまり、宇宙エネルギーとしては「すべての物が一体である」ということになる。ということは、皆さんと僕は、宇宙エネルギーレベルでは一体なんです。

ここにある湯飲みも、テーブルも、その辺りにある植木も、僕達も、皆、世界中にある宇宙エネルギーとして見たら一体なんです。

「世界は宇宙エネルギーとしては一体だ」っていうことが、アインシュタイン以降の科学的な正しい世界の見方になった。「世界は1つ」ということが科学で言えるようになった。

ロマンチックで現実性のない理想的なヒューマニズムじゃなくて、科学的根拠を持って「宇宙エネルギーとしては、世界は一体である。それも、地球だけではなくて全宇宙が一体である」ということが言えるようになったんです。すごい話でしょう?

これは東洋の神秘思想に近いんだけれど、それを科学が言うようになった。アインシュタイン自身も「私の言うことはインドのヒンドゥー神秘主義や仏教にすごく似ているようだ」と言っています。

まずここで、世界像が変わる。物からエネルギーへ。バラバラの寄せ集めから1つへ。大変化ですよね。

その後、1947年に、ジョージ・ガモフのビッグバン仮説というのがあります。このビッグバン仮説というのが何を言っているのかは知っていますか?

「大爆発が起きて、宇宙ができた、ということでしょうか?」

うん。それ以上に大事なのはこういうことなんです。

20世紀初頭に望遠鏡の技術が発達して、倍率と解像度の両方が優れた望遠鏡が使われるようになりました。その結果、今までぼんやりと煙っている星のように見えていたものが、実は「銀河」であると分かってきた。銀河がものすごく沢山あることも分かってきた。

そして、銀河と地球の距離を測る方法が開発されて、銀河と地球の距離や、銀河と銀河の距離が測られるようになったんです。そして、ハッブルという人が「銀河と地球は遠ざかっている。銀河と銀河も遠ざかっている。そこには法則性がある」ということを発見したんです。

そして「それは宇宙空間が膨張していると解釈すべきだ」と言ったんです。そこから、時間が経つと膨張するのであれば、遡ったら凝縮するはずだという話になって「どのくらい遡ったら宇宙はどのくらいの小ささまで凝縮するか」ということを学者達が研究したんです。

その結果「百数十億年前、宇宙は限りなく小さく、10のマイナス34乗cmという小ささだったであろう」ということが科学的に推測されました。「1の後にゼロが34個ついて、それ分の1cm」です。10分の1で1ミリでしょう。直径1ミリの宇宙を想像してください。それだって信じがたい。そのあと33個ゼロがつくんです。

「そんなに小さいのですか?」

そういう目にも見えない小さな一点に、全宇宙が凝縮していたはずだ。そして、それが爆発的に広がり始めて今の宇宙になった。それがビッグバン仮説です。

重要なのは「最初は1つだった」ということなんです。しかも、あまりにも小さいのです。今、物質の一番小さい単位としてクォークとかレプトンの存在が知られています。「10のマイナス34乗cm」というのはそれよりも小さいんですよ。

すなわち、これは物質ではありえない、ということです。でもアインシュタイン理論があるから「いいんだよ。エネルギーだから」っていう説明が成り立つんです。

今から137億年前、宇宙は「10のマイナス34乗cm」というたった一点にすべてが凝縮しているものすごいエネルギーの塊だった。この「一点」というのが大事なんです。

ここから、コスモス・セラピーの講義になります。
ここに、とても小さな、弾力のある風船が1個あると想像してください。これをふくらませると信じられない大きさになったとします。その時、風船って何個になりました?

「1個ですね?」

そうなんです。最初1個だったものは、どんなに広がっても1個なんです。宇宙は最初に1つだったんだから、どんなに広がっても1つなんです。宇宙は、個々の現象としては様々なものがあるけれど、やはり1つなんです。

だからもう1回「皆さんと僕とは、宇宙として見れば一体です!」とね。こうしていくと、段々世界観が変わってくるでしょう。

だから、クライアントさんに対しても「君は孤独だと思っているかもしれないけど、宇宙は一体だから孤独ということはありえないんですよ」と言うんです。


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「孤独ではありえない?」

自分以外の人や物と、全部一体だから、自分だけ分離して孤独なんて言っていられないんですよ。「孤独感を感じている人はいっぱいいるけど、事実として孤独な人はこの世に一人もいないんだよ」って僕はよく言います。

それに気が付くと、結構、孤独感は吹っ飛んでしまうものです。「君が勝手に孤独だと思っているだけで、事実としては君は孤独ではないんだよ」と、こういう話をしながら気付いていってもらう。

要するに「元は1つのエネルギーの玉だったから、広がっていろんな形ができているけど、エネルギーとして考えたら一体で、宇宙と君は一体です」ということ。野外に行って実際に星空を見ながら体感してもらうと、コスモス・セラピーとしての効果が高いですね。

「エネルギーとしては、あの星と、あの星と、あの星と、この地球と、君と、全部一体なんだ」と、そう言いながら星空を見る練習をする。

星がよく見える所に行って芝生に寝転んでもらって、「星空を向こうに見るんじゃなくて、星空の中で“星空と一体の存在として私がいるんだ”と思う練習をしよう!」と30分から1時間放置しておくと、宇宙意識の入り口くらいになりますね。

という風なことをいろいろやっていくのがコスモス・セラピーなんです。今ちょっと聞いただけでも何となく納得できる感じがするでしょう。理論的に疑問は起きませんよね。

「理論と体感を大事になさるのですね?」

科学をベースにしながら、自分が宇宙の中に存在していることに意味感を感じていけるのが、このコスモス・セラピーの良さなんですよ。

それでは、宇宙は元々1つだったのに、まるで別々のように見えるようになったのはなぜかというと、エネルギーの分布に濃いところと薄いところがあったと推測される。宇宙が広がるにつれて濃いところが凝縮して物質に、薄いところが空間になった。これが現代の標準的な宇宙論です。

僕らは「物質と空間は別のものだ」と思っていますけれど、現代科学では「物質と空間は同じものだ」ということになる。宇宙エネルギーの濃さが違うだけで、同じものなんです。

物質は重力を持っているからそこに他の物質を引き寄せる。だから濃いところはどんどん濃くなり、薄いところはどんどん薄くなる。そうやって宇宙の中に濃いと薄いの模様ができてきたのが、物ができた始まりなんです。

最初に、クォークやレプトン、それが重力で引き合って素粒子ができる。素粒子の中の電子と陽子、これらが電気的に1:1に組み合わさってシステムができる。陽子1個、電子1個の原子は何だか覚えていますか?

「水素ですか?」

そう、水素ですね。宇宙の最初の10万年〜30万年で、今宇宙に存在する水素のすべてができたと言われています。

ここに水があります。これは「私」ではないですね。でも、私がこの水を飲むと「私」の身体の水分になる。すなわち「私」の一部になる。「私」でなかった水が「私」になるんです。

でも、ずっと保有しておくと尿毒症になって死んでしまうので、尿や汗として出していく。出したらもう「私」じゃないですね。水と私は、「私」でなかったものが「私」になり、再び「私」ではなくなっていくという関係にあるんですね。

さて、私達の身体はおよそ70%が水分です。水は水素と酸素が結合したものですから、私の身体は水素だらけです。炭水化物の「水」というのも水素です。炭素と水素が化合したものという意味です。炭水化物の分もあるから、私の身体は水素だらけなわけです。

つまり我々の身体には、水素の持つ宇宙の歴史が137億年分、びっちり詰まっている。私は、今のような形では約60年前に生まれたけれど、私が生まれるに際しては、宇宙が始まった頃からずっとつながっている。それが私になっている。

「宇宙が始まった頃からずっとつながっているのですね?」

つまりね、単純な質問をすると、お父さん・お母さんが生まれなくても自分は生まれたと思いますか? 思わないですよね。

では、現生人類が誕生しなかったらどうでしょう? やはり、私達は生まれませんよね。

生命は約40億年前に誕生したらしいです。最初は単細胞生物で、進化しながら複雑になっていった。人間は60兆くらいの細胞が協力している生命ですが、もとを正せば単細胞生物です。40億年前に地球で生命が誕生せずに、私が誕生する、それもありえないですよね。

地球は46億年前に誕生したことが、科学的証拠から分かっています。地球が誕生しなかったら、そうしたら私は誕生できない。

地球の始まりの話をすると、原始太陽の中心部と、周りを回っている物質があった。それらの物質が回りながら、衝突しながら、固まりながら、惑星ができていった。50億から46億年前ね。その時に太陽系ができなくても、私が誕生するということはないですよね。

太陽系が誕生するためには天の川銀河が誕生しないといけない。だいたい100億年くらい前。その時に天の川銀河ができないと、私は誕生しない。そもそも宇宙が誕生しなければ、私は誕生しない。

「確かにそのとおりですね?」

ここまでは理論的に納得できましたか? では、今の否定的な言い方を、肯定的な言い方で考えてみましょう。

「宇宙が誕生したから、137億年経って私が誕生した」、こう言っていいですよね。宇宙の誕生は、私の誕生の必須の条件だったんです。言い換えれば「準備ができていた」ということですね。

では、言ってみましょう。「宇宙の誕生は、私の誕生の準備だった」

何だかすごいと思いませんか? 宇宙が誕生したから、私が誕生した。私の誕生には宇宙137億年のできごとが全部関わっている。途中でちょっとでも変わったら、もう私はここに存在しないんです。

ある遺伝子学者が、「単細胞の生命が宇宙の中で生まれる確率」を計算したんです。そうしたら「1億円宝くじに100万回続けて当たるよりも低い」と出た。そんな低い、ほとんど起こりえない確率のことが起こった。これが生命が誕生したということの宇宙的意味なんです。

ほとんど起こり得ないことが起こることを、日本語で何と言いますか?

「奇跡、でしょうか?」

そう! だから、あなたの生命は奇跡なんです。

「君が生まれてきたってことは奇跡なんだよ! これはロマンチックなメルヘンの話をしているんじゃないよ。科学として言えば、君の存在していることはそれ自体が奇跡なんだよ」と。だから、「君は、存在しているだけで、宇宙的な奇跡として価値のある存在なんだよ!」って。

そういう言葉で、アドラー流に言えば「勇気づける」。根本的な勇気づけです。存在してるだけで宇宙的にOKなんだよ、と。

僕らが何かを創る時に、肯定しているから創りますか? それとも、否定しているから創りますか? 否定していたら壊すよね。創るというのは肯定しているということでしょう。つまり「宇宙が137億年かけて君を肯定しています。だから今、生きているんですよ」と伝えるんです。

宇宙に認められている私を認めたら、絶対的自己承認です。揺るぎなき絶対の自信になる。誰が認めなくてもいい。才能があるとかないとかそういうことはどうでもいい。生きているだけで奇跡で、宇宙的な価値がある。宇宙に肯定されているんだ、と。

「絶対的な自己肯定ですね?」

誰にも文句言わせないですよね。実際、人間の尊厳の根拠もここにある。宇宙が生み出した奇跡であるところの人間を、他の人間が勝手に壊してはいけない、ということです。こうして理論的に、自己の宇宙的な価値に気付いてもらうんです。

今言ったことを、僕は信じて、深く認識しているから、本気でそう思っている。

学生に対しても皆1人ずつ宇宙の奇跡だと思っているから、その子の目を見ながら「君は宇宙の奇跡なんだよ。宇宙は君を認めてるし、僕も君を認めているから、誰も認めてくれないなんて嘘を言うなよ」と話すんです。

普通のセラピストは、自分だけでクライアントを支えようとするけれど、僕は自分だけじゃなくて、自分の背後に宇宙がいるから、「万一僕が認めなくなっても宇宙が君を認めているから大丈夫だよ」って言える。

こうやって、たぶん他のどんなセラピーもできなかったであろう「自己の存在の絶対的肯定」を、少なくとも理論としては伝えられるんです。この理論が実感としてしっかり自分のものになったら、それは完璧な自己肯定感になります。

もちろん、理論として分かることと実感することの間に距離があるので、いろいろなセラピーテクニックを使いながら伝えるんです。

例えば、寝転ぶと、大地は支えているでしょう。立っているより寝ている方が支えられている感じが強いんですよね。座っていても、椅子が支えてくれていて、それを床が支えてくれていて、建物が支えてくれていて、それを実は大地が支えている。

その大地っていうのも、地球全部につながってるんですよね。地球が僕らを支えてくれている。

今「私が椅子に座っている」という意識モードも、間違いではないんだけれどとても狭い。だから「地球が私を支えてくれている」という意識モードに取り替える練習をしてみる。

(次回につづく・・)

岡野 守也(おかの もりや)  サングラハ教育・心理研究所主幹
                   日本仏教心理学会副会長

1947年、広島県生まれ、山口県育ち。関東学院大学大学院神学研究科修了。
卒業後、牧師と兼務で出版社に勤務、仏教、心理学、エコロジー、ホリスティック医学などの企画編集に携わる。並行して92年、サングラハ心理学研究所を創設、98年独立して研究所に専心。現在、名称をサングラハ教育・心理研究所に変更。「持続可能な社会」創出のための人材育成を目指し、執筆、翻訳、講演・講義、ワークショップなどの活動を続けている。機関誌『サングラハ』を主宰。法政大学、武蔵野大学、桜美林大学などで講師も務める。

「サングラハ」はサンスクリットで全体的・統合的に把握するという意味。からだ・こころ・たましいへの「インテグラル(統合的)」なアプローチをめざしていること、理論のベースのひとつとして『摂大乗論=マハーヤーナ・サングラハ』があることを示している。

<岡野守也先生のHP>
【サングラハ教育・心理研究所】

<岡野守也先生のブログ>
【伝えたい!いのちの意味−岡野守也の公開授業+α】

<岡野守也先生の著書>
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コスモロジーの心理学 コスモス・セラピーの思想と実践


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仏教とアドラー心理学 自我から覚りへ

インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:川崎綾子(かわさきあやこ)

川崎綾子

ゲシュタルト・再決断@府中「座★すわろう会」で活動中。グループの中で
お互いにサポートを得ながら、自分らしく癒されるセラピーをしています。
ペンギン好き。趣味はバレエです。

GNJゲシュタルト療法トレーニングコース修了、日本ゲシュタルト療法学会会員
NPO再決断カウンセリングジャパン会員
矢野惣一問題解決セラピスト養成講座(上級)修了
レイキティーチャー


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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