第61回目(1/4) 岡本 英二 先生 ビジネスカウンセリング協会

カウンセリングだけでなく、まず職場環境を整える

今回のインタビューは、従業員支援プログラム(EAP)スペシャリストで、
ビジネスカウンセリング協会会長、メンタルへルス倶楽部代表としても
ご活躍の岡本英二先生です。

リズム運動を活用した企業研修「トレーニング・ビート」や、
大自然の中でのチーム活動「ロゲーニング」等、
ユニークなプログラムの開発・実践に取り組まれています。

EAPは「楽しく元気よく働くための支援システム」とおっしゃる
岡本先生に、これからの「日本風のEAP」のあり方と、
今後のご活動や展望についてお話を伺いました。

インタビュー写真

「先生は、元々は心理のお仕事ではなかったのですよね?」

全然違います。最初は歯科技工士です。専門学校を出て資格を取って20歳から8年間それをやって、歯科技工士の将来に疑問を持って辞めました。

その後は波乱万丈の人生です。いろいろな仕事をしました。不動産屋、生命保険会社、損害保険会社、運送業も自分でやったし、特許開発の手伝いをしたり、スカパーも売ってみたり。警備の仕事もしました。

そういうものをいろいろやってお金を稼いで、そしてカウンセリングに出会って、カウンセリングをやろうと思ったんです。警備会社でバイトして、そのお金で勉強をして大阪で資格を取りました。

「カウンセリングに出会われたきっかけは?」

知り合いの社長に「カウンセリングに興味ある?」と言われ、「ある」と即答しました。僕はその頃、SMIというセルフモチベーションに携わっていました。ナポレオン・ヒルの考え方と同じようなものです。僕はそこのモチベーターもやっていました。

成功の哲学や理論などは素晴らしいのですが、少し日本人とは違うなぁ〜と感じていて、そのときにカウンセリングを勉強してみる機会をいただいたんです。当時は愛媛の松山にいたのですが、そこに大阪から先生が泊り込みで教えに来てくれました。

それを2泊3日で学んだ時に、カウンセリングが先であること、モチベートをかける前にマイナスをゼロに戻す作業が絶対に先だ、ということに気がついたんです。そして、こっちの方が面白いと思って勉強を始めて、大阪に通って講師の資格を取りました。

しばらくは愛媛でカウンセラーとしていろいろやっていました。登校できない子達が集まるところに呼ばれて、箱庭療法をやったり、お母さんと話をしたりといろいろしていたのですが、食べていけるほどは稼げない。

そうこうしているうちに、僕の今のビジネスパートナーの社長が東京にいて、人事系や採用系のセミナーをやっていたんですが、そこでどうやって面接で人事が人を見抜くか、ということについて話をしてほしいという依頼を受けて、東京に出張に来る機会を得ました。

そのとき、ITの派遣会社の役員の方から「実はうつ病などのメンタル不調の人が大勢いるので、診てくれないか」と相談を受けたんです。何千人といる会社ですから、「東京に出て来た方が早いね」ということで愛媛から出て来ました。

「それは何年ほど前ですか?」

9年ほど前です。

「まずは企業に、外部カウンセラーとして入られたのですね?」

そうです。その頃はまだEAP(従業員支援プログラム)もあまり知られていませんでした。僕はカウンセリングだけをやっても駄目だと分かっていたので、自分なりにいろいろ試行錯誤していたら、EAPというのがあると耳にし、調べてみると僕がやっていることとすごく似ている。

当時は日本語訳されているのが1〜2冊しかなかったんですよ。モチベーションも、アメリカの理論を日本に持って来ても、そのままではちょっと違うというのはありました。EAPも、アメリカは法律もあるし、やはり日本とアメリカではシステムが全然違う。会社のシステムが違うし、精神の土壌も違う。

それで、日本風にいろいろ考えながらやってきましたが、そのうち、閉塞感が出てきたんです。そんなにお金をかけて予防はできないし、やっても、やってもなかなか会社の上の方は変わってくれない。

派遣会社の現場はバラバラです。担当者を集めて教育をしないと駄目だと私は言うのですが、担当者も忙しくて全然集まらない。現場でも、何かがあったときにはトラブルになっている。カウンセリングに来られる人はまだいいけれど、辞めさせられる人や辞めていく人も沢山いる。

「企業の実情はいかがでしたか?」

企業だと短期のカウンセリングになってしまうことが多い。じっくりカウンセリングはできない。長い場合は「病院に行ってくれ」となる。どちらかというと問題解決をする役割が多くなります。

その当時は、メンタルヘルスに関する就業規則もきちんとしていないので、メンタルダウンに対して何日休めるというのが決まっていなかったりする。仕事を休んでも給料の6割が出ると言っても、健康保険料を払っていなければ出なかったりします。休みが長くなってくると、保険料を払っていなくてそこでトラブルになったりして信頼関係が壊れたりする。

「どんな取組みをされたのですか?」

僕なんかは、まずは労災(労働災害)を抑えないと、というのがすごくあります。喧嘩をしてもお互いに良いことはないので、労災にならないように人事異動をお願いしたりと、根回しなどをしたりします。

カウンセリングも環境を整えてから、というのが僕の基本なんです。とりあえず愚痴は聞いたりもしますけれど、まずは環境を整える。その部署でいじめられているというのであれば、違う部署に異動させてからやらないと余計酷くなる。

現在は、企業では、どちらかというと出向いて行ってセミナーをするということが多いですね。僕がお勧めしているのは、企業の中での管理職の教育です。メンタルヘルスに関する管理職の教育を徹底してやらないと、管理職が潰れていきます。

「管理職の方ご自身が?」

つぶれています。これは、企業の中に矛盾がすごく存在していることの証明になると思います。人が足りないということもありますけれど、上からの命令と現場とのギャップを全部、管理職が抱えてしまう。ひどい会社は「何とかしろ」で終わりですから。

それで、「こうしたい」と言ったら「それでは駄目だ」と言われる。「ではどうすればいいですか?」と言うと「お前が考えろ」と責任転嫁をされる。一方、下は突き上げてくる。

僕はどちらかというと東洋医学的な考えで、全体の流れを整えるというのが好きです。これを同時にやらないと駄目ですよ。今のメンタルヘルス事情で言いますと、大手はある程度きちんとしていますが、中小になるとほとんど全体の調和というのはないんですね。

古い体質の企業ほど、メンタルダウンの人を製造するような仕組みになっています。企業の矛盾や葛藤を全部、人が吸収する仕組みになっている。「そこはとりあえず君が泣いて頑張ってくれ」とか。そういうことで何とか回している状態です。そこが止まったときにその人が発症したりします。

そういうことが多いので、できれば同時に経営者の方にも携わりたい。経営者に対して、「こうした方が会社も儲かりますよ」と提案していっています。予防した方がどれだけ儲かるか、という話からしています。社員が気分良く元気に働いたら生産効率が上がりますよね、と。


インタビュー写真


「日本ではEAPの評価はいかがですか?」

EAP自体はアメリカでは効果が証明されていますけれど、日本ではほとんど証明されていない。数字がないのです。導入前の数値と後の数値の差をどこかは取っているはずですけれど、公表されていない。

「EAPを入れて良かった」くらいはありますが、「これくらい儲かった」という数字が出ていない。そういうシステムを入れていること自体を、黙っているということが非常に多いんです。マイナスの改善の方に目を向けてずっとやってきたのですが、エンドレスというか、ひどくなっている。

だから、カウンセラーが壁にぶち当たるんです。企業の中の産業医さんや保健師さんはすごく真面目なのですが、結構縄張り意識が強い人もいて、自分達のところに入ってくるな、ということなどがあって、なかなか連携しづらいということもあります。

予防医学やメンタル系の先生であれば、まだ分かってくれる先生もいて、連携できれば楽ですけれど、専門が違う先生などは「そこは知らない」という先生も実際は結構います。そうなるとやりづらいです。病院と連携して、と言いますけれど、病院もなかなか情報は出してくれませんし。

病院の先生の言った情報を基準にして、僕らはそれを元に支援するしかないできない。お医者さんの言うことをこちらが駄目ということはできないので、難しいですね。

「最初にカウンセラーとして企業に出向かれた時の印象はいかがでしたか?」

最初は、「2年くらい休んでいて自殺未遂もしたことがある人がいて、非常に困っている」と言われて行ったんですね。会って話を聞くと、借金だらけだったんです。部署を変えられて残業が減って、収入が減った。その上、勤務先が遠くなって、バイトもできない訳です。

貯金を取り崩してギリギリのところまでいってしまってどうしようもない。母子家庭で家族に障がい者の方もいて、収入は彼しかない。彼はだんだん追い詰められて、おかしくなっていって自殺を図ったんです。彼から話を全部聴いてみると、結局は「光が見えない」と・・・。

「背負っているものが重たいし、自分の力ではどうしようもない」と言うので、「上司の人に相談していいか。半分は任せてくれ」と言って、カウンセリングだけではなく介入して、上司に相談したんです。

その会社の顧問弁護士を引っ張り出して、破産で清算させて、働いたら月に手元に十万は残るぞとか、その段取りを取らせて、なるべく希望の職場に就かせてくれと直談判をして、環境を整えた結果、何とか働けるようにはなりました。

「カウンセリングだけではなく、環境調整の介入をなさったのですね?」

そうですね。そうでないと絶対に治らないですから。いくらカウンセリングをしても、結局家族も食べられないし、借金取りから会社に電話がかかってきますから会社にも居場所がない。僕が多くの現場で苦労してきたことが、幅広い環境を調整できることに役立っているんですね。

環境を整えるというのはそういうところからどんどん学んでいった感じです。先にそこをやらないと駄目です。普通のカウンセリングだけでよくなるのであれば僕は幸せだと思いますよ。今まで悪くなかった人が悪くなっていく要因が、何かある訳です。

人間関係に対する打たれ弱さもあるかもしれないですけれど、借金があったり、寝たきりの親を看ないといけないとか、周りには分からない要因があったりする。そういうところに手をつけないと、一瞬元気でも、また…となりますから。そこを変えていかないと治らない。

「根本原因や外部状況を変えていくのですね?」

それも同時に変えていく。カウンセリングでその本人を強くしたり受け止め方を変えたりしていくのは、僕は時間がかかると思っています。ショック療法的なやり方でないと、直ぐには人は変わらない。そこには時間が必要なので、環境を作っておかないと、やっても、やっても意味がない。

「それで、まず環境にアプローチをするというスタンスをお取りなのですね?」

そうです。企業では、そこを整えるだけで元気になる人が大勢いるんです。上司に打たれ弱いといっても、結局は上司が半分パワハラだったということもある訳です。ものの言い方や相性も当然ある。そこの部署を離れた段階で大体は治りますから。

最悪の場合でも、その会社を辞めたら大体の人は元気になるんです。後は食べていけるかどうか。

僕は、休ませるというのも当然考えるんですけれど、その前に「生活できる?」って訊きます。給料の6割は保険から出ますけれど、「家のローンがあって、子どもが学校に行っていて、貯金もないし6割じゃ足りないです」と言われたらなるべく休まずして治していく方法を考えます。

「休まずして治す、ですか?」

お医者さんは「休みなさい」と簡単に言いますけれど、僕は病院にリファー(紹介)したことはないですよ。病院に行っていて、こちらに来た人はいっぱいいましたけれどね。

「お医者さんに殺される」と言って駆け込んで来た人がいました。大きな病院の精神科医の女医さんに「あなたは働いたら駄目よ。あと2年くらい働けないわね」と言われたらしいのです。

僕のところに来て、泣きながら「私、働いていいですよね?」と言うので、「どうしたの?」って訊いたら、「ウツっぽかったので病院に行ったら、2年くらい働いてはいけないと言われた。誰もお金をくれないし、私、働かないと生きていけないです。働かせてください」と。

話を聴いていると、ちゃんと受け応えできるので、仕事ができるレベルだと僕は思いました。「落ち着いてもう一度病院に行って、その調子で『働いていいですよね』と先生に言って、診断書をもらっておいで」と言いました。会社は診断書がないと働かさないと言い始めていたんですよ。

結局、「働いてよし。ただし、要通院」と書かれた診断書を「もらいましたー」って持って来たんです。お医者さんって怖いなと思いました。

まず休ませるというのがあるじゃないですか。その後、職場復帰があって、とりあえず楽な仕事からってセオリーがありますよね。体力的には楽なものでいいのですが、「どうでもいい仕事は与えるな」と僕は絶対言います。

「自分が役に立っている、職場に居場所がある、という仕事を与えてください」と言っています。そうじゃないとまた悪くなるんです。

(次回につづく・・)

岡本 英二(おかもと えいじ)  ビジネスカウンセリング協会会長 メンタルへルス倶楽部代表

昭和37生まれ。従業員支援プログラム(EAP)スペシャリスト。歯科医院、不動産会社、保険会社、流通、開発、通信、コンサルタントなどさまざまな仕事を経てプロカウンセラーになる。
幅広く豊富な経験を生かし、「カウンセリング」と「体験ワーク」を上手く取り入れた企業研修が好評。
日本企業に合った従業員支援を提唱し、総合的な生産性の向上をサポートする。経営者や社員の心の病を治すだけでなく、予防医学の見地に立ったリスクマネジメント的な効果を狙った研修も注目を浴びている。とくにIT業界やセールス、接客、サービスや現場でのコミュニケーションを必要とする業種での人気が高い。
同時にビジネスカウンセリング協会を通し、さまざまな癒しを企業に提供している。また、主婦などを中心とした女性向け、個人向けセミナーも積極的に行っている。

<岡本英二先生のHP>
【BCA ビジネスカウンセリング協会】

【MHC メンタルヘルス倶楽部】

【音楽を使った企業向け社員研修 ビート・オブ・サクセス】

<岡本英二先生のブログ>
【BCA〜こころの四分休符〜MHC】

インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:高橋梨恵(たかはしりえ)

高橋梨恵

「本当の自分を知り、自分らしさを発揮して生きること」
社会におけるこのテーマの実現を心理的側面からサポートするため
現在カウンセリングの勉強中です。
趣味は旅・自然にふれること。

社団法人 産業カウンセラー協会 会員
レイキヒーラー


インタビュアー:力武一世(りきたけかずよ)

OLの傍ら、物書き業をしています。
自身の価値観の変化から人生が激変し始めたことをきっかけに、
「人の心のありよう」に興味を持ち始めました。
心が変われば、現実が変わる。たくさんのセラピストの方々に
お会いするたび、それを実感しています。

ブログ:『たびとたびびと』
読んだ人の心が軽くやわらかくなるような文章で、
周囲の人たちを幸せにしていきたいと思います。


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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