第60回目(3/4) 安部 朋子 先生 TA教育研究所

TAの哲学があるから、TAの理論が生きてくる

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「他にも、知っておくと役に立つというものはありますか? 人生脚本などは?」

人生脚本も興味深い理論ですが、日常生活の中では別に知らなくてもいいと思います。私からすると「私には最後までやりきらない脚本がある」と分かった事で、今までの『うまくいかなかった』出来事の裏事情が解明できることは確かですが、これからの出来事でそれを言い訳に使ってしまうのでは役立ちません。

それよりも「ゴールを切りたいんです!」と決めてくれた方がサポートのしようがあるんですよ。

もちろん、TAを勉強する場合は人生脚本についてもしっかりと勉強してほしいけれど、日々使うとしたら「コントラクト」という理論があります。コントラクトとは「契約」です。

「コントラクトについて教えていただけますか?」

例えば、仕事を沢山入れて休みをなかなか取れなくて一杯一杯な状態っていうのはうまくいっていないですよね。自分も家族も、心配だし、楽しくない。仕事にも負の影響が出る可能性もあります。コントラクトというのは、それからどうしたいかを明確にするということなんです。当事者自身で「自分がどうしたいか」を考えてもらう手順が大切でもあります。

恐らく最初は、「何とかしたい」というところからスタートすることが多いかと思います。そこで、「『何とか』という言葉は、具体的になりますか?」の質問です。「休みが欲しい」に「どれくらい?」の質問。

「少なくとも週1日は定刻に帰りたい」というクライアントさんに、「いいですね。何曜日にします?」と尋ねる。「金曜日の夕方は早く帰りたい」と。「では、そう決めますか?」と訊いたら「はい」っておっしゃるので「では、そう行動してみましょう」と考えを進めていけます。適切な質問で答えを導き出す作業が必要です。

そうしたら、金曜日の夕方は定時に帰る、というのがその人のコントラクトになるんです。そしてその人は「では、隣の人にそう言って相談してみます」とおっしゃったので私は「よかったね」と言うだけ。

コントラクト、つまり自分が得たいモノと、それに関連する能力や役割、期限等を明確にしたもののことです。そしてそれを明確にするプロセスを『TAスーパービジョン』とも言います。日常でとても役に立つと思います。

「自分で決める。それを先生がサポートするのですか?」

私は「何がしたいの?」「〜ってどういう意味?」とか、質問はするかもしれないですけれど、根底は本人が自分で自分のことを決めるお手伝いです。金曜日は定時に帰っているという「最終出来上がり映像」が、本人にとってのコントラクトなんです。そしてそれを手に入れるために、自分のできることをやってみる。

その「決める」という事がなかなか人はできない。「定時に帰りたい」とは言うんですけれど「帰る」とはなかなか言わないんです。そこが面白いところです。

だいたい悩んでいる時は、最後の出来上がり状態が決まっていないことが多いですね。「私のコントラクトって何だったんだろう?」という風にもう一度考える。「初心に戻る」っていう事ですね。「最初、どういう理由でこれを始めたんだろう?」と、戻るところがコントラクトでもあります。

そうしたら「人の役に立ちたかったから始めたんだけど、何か今、皆に当り散らしてるわ」って気付いたりする。「私のコントラクト、やりたかったことは皆の役に立つことだったんだわ」とか。

そして「自分がつぶれてしまったらお役に立つことさえできないから、もうちょっとセーブしましょう」となるかもしれない。まずは「何でやり始めたの?」というところがキーですね。

私達は幸せをキープするために生まれて来ているんですけれど、時として辛い方に行ってしまう時がある。仕事が手一杯なのにも関わらず「それ、やっときます」と口が先に言ってしまってるとか。そんな時に初心に戻って「私は本当に幸せになるって決めていたのか?」って見直すんです。

そして、最初の目的に必要でないものであれば、No!と言ってもいいってことなんです。あるいは、沢山並んでいるものをもう一回見直して「これは要らなかった」「次からはしない」とか、「自分が幸せになる」っていう最初の目的に沿って調整し直す。これもコントラクトがあるからできることですね。

「コントラクトもTAの理論なのですか?」

TAの理論ですね。TAは元々臨床心理の立場から生まれたんですけれど、カウンセリングする際でもコントラクトが一番重要です。

例えばパートナーとの人間関係がうまくいかないでご相談にみえた時に、別れるための相談なのか、やり直すための相談なのかによって違うじゃないですか。

別れるために、自分が次に向かっていけるようにカウンセリングを受けるのか、やり直すために受けるのかを、最初に結んでいくのがコントラクトです。とっても重要です。

あるいは、それすら分からない時もあります。そうしたら、自分がどうしたいのかを分かるためにカウンセリングを受けるというコントラクトになる。また全然違ってきますね。

どの山に登るかを決めないと、山には登れない。登り方は、タクシーでも、歩いても、いろいろあるんだけれど、まずは、どこの山に登るかを決める。

特にグループで何かする時は「この人達と、どの山に登るか?」という山がハッキリしてないと皆バラバラに登りますからね。だから「我が家はこの山に登る」「このチームはこの山に登る」、それを明確にすることが、すごく役に立つと思います。個人でも、組織でも同じです。


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「他に、TAで大事にしているものは何でしょうか?」

理論は全部大事なんですよ。でも、理論ではありませんが、基本にTAの哲学があります。基本的な考えです。

まずは「人は誰でもOKです」ということ。何かができるからOK、できないからダメではなくて、存在自体が平等であると。だから、幸せになっていいというレベルでは皆一緒です。あなたは小さいから2番目とかじゃなくて、皆一緒。

そして「誰しも考える能力がある」ということ。考えたことを表現するのは訓練や経験で上手・下手があるんですけれど、選ぶこと・考えることは誰でもできる。だから、他人の考える能力を取らないということです。

先ほどの相談の例で、パートナーと別れたいのか別れたくないのかも、こちらから見て「もうその関係あかんやろ」って思っても、本人達がやり直したいって言うんだったら、そのサポートをする必要があるのかもしれないしね。

子どもが迷ってたら、ついつい「もう、こっちにしときなさい」って、親はすぐ言ってしまうけれど、そうじゃなくて、考える能力を信じてちょっとの間、待ってみましょうということですね。

3つ目に「自分の運命は自分で決める。そして、いつでも変えることができる」ということ。これもやはり大切だと思います。一回決めたら変えてはいけないって思う時も多々あるんですけれど、そんなことはないんです。あなたが決めたんだから、変えてもいいよってことです。

このTAの哲学があるから、沢山あるTAの理論が生きてくるんですよね。

「子育て支援に力を入れていらっしゃるとのことですが、どんな想いからですか?」

自分が心理学に目覚めたきっかけが、自己啓発セミナーでした。その中で親の影響力って大きいなと思ったのが一番大きいですね。

自分が心理学を勉強するのと、子育てを並行していましたし、人は必ず子どもの時があるから、そこが大事じゃないかと思います。大人になってからでは遅いという事もありません。

例えばバイキングで、テーブルの上に20種類ずつのメインとかサラダとかデザートとかが並んでいてどれでも食べていいよって言われるのと、ご飯と塩と海苔だけで、どれでも食べていいよって言われるんだったら、どっちに行く?という話で、ほとんどが前者って言いますよね。

そうしたら子育ても、いろんな事を親がやってあげて、子どもが選んでいくと楽しいじゃないですか。沢山の選択肢の中から、好きなモノやそうでもないモノを選ぶことができる。選ぶ能力も磨ける。

でもご飯と塩と海苔しか食べられなかったら、それはそれで美味しいけれど、次に何か他のモノを見た時にびっくりするし、楽しみが3つしかないじゃないですか。その内1つでも嫌いなモノがあれば最悪!

「お子さん自身が選ぶ力も育ちにくいですよね?」

いろんな関わり方から学ぶ、子育てもそういう風にしたらいいと思うんですよ。

やはり一人の力には限界があるから、それを自分だけじゃなくて、隣の人とか近所のおばちゃんとか、と一緒にするといろいろな関わり方をこども達が体験できる。そんな子育てができたらいいなと思っています。

私がうちの子を一人で育てたとしたら、どんなに一生懸命お料理したとしても、私の出すものって限られるんですよ。でも隣の家に行ったら、隣の家の味付けも分かる。同じ料理でも、隣で食べたらもっと美味しいかもしれない。誰かの所に行ったら、いろんなものが食べられますよね。

そんな風に子育て支援をする中でいろんな人が関わって、それぞれの子を育てていけるような感じで接する、育てるお父さんやお母さんも隣をのぞくみたいな感じでやったらいいと思っています。一人の親の影響だけじゃなくて、いろんな親とか親に代わる人の影響を受けてできる子育てです。

「親自身も楽になりますよね?」

そうですよね。何でもない事を悩んだり、大事な事をスルーしたり、一人だとやっぱり限度があるのでね。いろんな人に「どんな風にやってるの?」っていうような子育て支援ができたらと思っています。

「子育てで悩んでいるお母さんに、先生から伝えたいメッセージはおありですか?」

この間近くのパン屋で、乳母車に乗った赤ちゃんがぐずり出したんですよ。お母さんは最初パンを選んでたんだけれど、だんだんぐずってきたから、抱っこひもを出して抱っこしたんです。抱っこされたら、赤ちゃんはピタッと泣き止んで「何だったの?」っていう顔しているんですね。

私は「やっぱり抱っこいいよね」ってその赤ちゃんに投げ掛けたんですよ。そうしたら、そのお母さんが「抱っこしてもいいんですかね?」って尋ねて来られたんです。

「一生で抱っこできる時間ってほんの少しなんだから、抱っこしたい時にしたらいい。でもしたくない時は無理しなくてもいい。泣き叫ぼうが安全だけ確保しといたら、疲れたら寝るし、大丈夫。抱っこしたい時はいつでも抱っこしていいよ」ってお応えしました。

そうしたら、そのお母さんが「嬉しい! 抱っこをずっとしてたらいけないかと思って、気になってたの」って言うから、「全然大丈夫」って応えました。自分のしたい子育てをしたらいいと思うんですよ。

このパン屋さん、私の『子育て本』を宣伝してくださっているので、お話しし易い環境でもありますが、そんな場面が好きです。

「そのお母さんは抱き癖がつくとかそういうことで、躊躇していたのでしょうか?」

そうですね。それも一種の思い込みですよね。どこかで情報もらったり、誰かが言ったりした事ですよね。

「でもご自身は抱っこしたいという気持ちがあるのですよね?」

そう。したくなかったらしなくてもいいんだけれど、したいならすればいいと思うんです。でも、「こうあらねば」とか、あるいは誰かの目が気になってできなかったり。「抱き癖が付く!」って言われたりするから、我慢してるのかもしれないけれど。

お母さんのやりたい気持ちってあるじゃないですか。育児だけじゃなくて、「食べたい」とか「見たい」とか「動きたい」とか、その気持ちを大事にして欲しいと思います。

普段の生活では意外と我慢する事が多いですよね。仕事でも「今はちゃんとしないと」とか「人の目が気になる」とかがあるから、自分のしたい事を見つけておく、そして時間がある時はそれをする。子育てしてても仕事してても、それは大事かもしれないです。

「そうやってお母さんがハッピーな気持ちだと、お子さんにもいい影響がありそうですね?」

特に新生児や乳児というような小さい子どもは、非言語のメッセージにすごく敏感です。言葉一個一個の意味は分からなくても、私達大人以上に敏感にその雰囲気を感じ取ってると思うんですね。

だから、お母さんが「あなたがいるから幸せ!」っていうのを一杯出してると、その子は心地良い感覚に育まれる。その心地よい感覚を将来も求めるっていう事は容易ですよね。

分かれば求めるのが当たり前になってくるけれど、それを知らないで、いつもピリピリした所にいると、ピリピリに慣れるんですよね。大きくなっても慣れ親しんだ感覚はやはりピリピリですよね。そうしたら、わざわざピリピリを作り出さないといけなくなるんです。残念です。

そう考えたら、やっぱり「ほんわか、心地いい」の所にいた方がいいと思うし、ほんわかの感覚を知ってる子はピリピリの所へ行ったら、「ここじゃない」と分かる。そうしたら、そのピリピリをほんわかにする動きが取れるかもしれないし、場所を離れる事ができるかもしれない。でもピリピリが通常だったら、違和感がないかもしれません。

子どもは「ほんわか、心地いい」を持って産まれてるじゃないですか。私達は乳母車で寝てる赤ちゃんを見たら、ほんわかした気分になりますよね。それは私達に「忘れてませんか?」って教えてくれてるんだと思いますよ。

そういう意味で、お母さんがあまりピリピリしないで「何とかなるよ」みたいな気持ちでいて欲しい。そして、周りの大人からの「何とかなるよ」とか「何かしてあげようか?」の言葉がけやサポートが、お母さんを「ほんわか、心地いい」にする・・・いい循環だと思うんですね。

(次回につづく・・)

安部 朋子(あべ ともこ)  TA教育研究所理事長 国際TA協会本部公認准教授

米国での商社勤務を経験後、人間ひとり一人が持つ素晴らしい能力と無限に広がる可能性に感動。
TA(Transactional Analysis:交流分析)を学ぶ。
一般社会人向けのコミュニケーション講座やTAカウンセリング入門講座、保護者や教育にたずさわる人たちを対象に子育て学習会や講演会、TAを使ったリーダーシップ研修、社員教育の実施、専門学校での心理学の指導を行っている。
T.G.I.F.代表、大阪府キンダーカウンセラー

<安部朋子先生のHP>
【TA教育研究所】

<安部朋子先生の著書>
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ギスギスした人間関係をまーるくする心理学―エリック・バーンのTA


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ぎゅ〜っと抱きしめ子育て法

インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:村上友望(むらかみともみ)

村上友望

今は普通のOLをしながら、セラピストとして活躍できるよう勉強中です。
出会った方々の幸せな笑顔をサポート出来たらと思っています。

ヨーガセラピスト ソース公認ベーシックトレーナー
パステル和アートインストラクター ジュニア野菜ソムリエ
アロマテラピーアドバイザー キャンドルアーティスト
ブログ:http://ameblo.jp/ohisamakokoro/


インタビュアー:高橋梨恵(たかはしりえ)

高橋梨恵

「本当の自分を知り、自分らしさを発揮して生きること」
社会におけるこのテーマの実現を心理的側面からサポートするため
現在カウンセリングの勉強中です。
趣味は旅・自然にふれること。

社団法人 産業カウンセラー協会 会員
レイキヒーラー


インタビュアー:川崎綾子(かわさきあやこ)

川崎綾子

ゲシュタルト・再決断@府中「座★すわろう会」で活動中。グループの中で
お互いにサポートを得ながら、自分らしく癒されるセラピーをしています。
ペンギン好き。趣味はバレエです。

GNJゲシュタルト療法トレーニングコース修了、日本ゲシュタルト療法学会会員
NPO再決断カウンセリングジャパン会員
矢野惣一問題解決セラピスト養成講座(上級)修了
レイキティーチャー


インタビュアー:力武一世(りきたけかずよ)

OLの傍ら、物書き業をしています。
自身の価値観の変化から人生が激変し始めたことをきっかけに、
「人の心のありよう」に興味を持ち始めました。
心が変われば、現実が変わる。たくさんのセラピストの方々に
お会いするたび、それを実感しています。

ブログ:『たびとたびびと』
読んだ人の心が軽くやわらかくなるような文章で、
周囲の人たちを幸せにしていきたいと思います。


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント

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