第57回目(4/4) 森田 汐生 先生 アサーティブジャパン

個人の問題と社会の問題と、常に両方見ていられる力を

インタビュー写真

「アサーティブを学ぶことの良さは何でしょう?」

対人関係をうまく扱うスキルを身につけることで、自分も相手も尊重して「伝える」自信が持て、自己信頼が高まることでしょうか。

「誰かがこう言ったから私はこうしたんだ」じゃなくて、主体的に、自分で考えて自分で行動して、自分はどんな人生を生きたいのか、どんな社会を作っていきたいのか、日本をどういう国にしていきたいかという、市民の一人一人の発言力を高めるというのが私たちの目的なのです。

自信を持つことは大事ですが、自信を持った結果何をしたいのでしょうか。一人一人が主体的に生きることができるようになると、世の中がもっと生きやすくなるんじゃないかなと、私自身は思っています。

いじめや暴力が減る、戦争ではない方法で社会の問題解決に取り組む。社会がもっと風通しが良くなることで、ハラスメントがなくなる、ストレスから自殺をする人が減っていく。いろいろな想いを持ちながら、最終的にはそこへ向かっているのかもしれません。

「企業や組織にとってはどういう良さが出て来るのでしょうか?」

学校の中、組織の中いろいろあると思うんですが、例えばメンタルヘルス不調の予防になるんじゃないかと思います。

抱え込んで、抱え込んで、「ノー」が言えなくて、ついに燃え尽きてしまうとか、自殺することが少なくなるとか、誰かに早めに相談できること、自分ができることやできないことを率直に伝えられることなどです。

あるいは管理者自身がアサーティブなマインドと、人権侵害にならない伝え方を知っていれば、組織の一人一人が機械の歯車ではなくて、「人間として」働ける組織になっていく。

一人一人の権利が尊重されること、女性がいきいき仕事が出来るとか、若い世代も率直に会議で意見が出来ることで組織の活性化になるとか。コミュニケーションが良くなる事のメリットっていろいろあると思います。

企業でもアクティブリスニング(傾聴)やコーチングなどのコミュニケーションのスキルを取り入れているようです。アサーティブはどちらかというと、聴く技術よりも伝える技術なので、聴くことも伝えることも出来るようになるっていう感じですね。

「自己主張ばかりする人が増えると収拾がつかなくなると、危惧する方もいらっしゃるのでは?」

はい。いらっしゃると思います。自分の主張をとにかく全て言う人というのは、アサーティブではなくて、ドッカン(攻撃的)の方ですね。アサーティブであるというのは、決して「全て言う」事ではないのです。

言いたい事を全て言う人ばかりが世の中に増えたら困りますよね。アサーティブは、単に、「言いたい事を言う」のではなくて、「本当に伝えたい事を相手を尊重しながら話す」、あるいは「言うべき時でない場合は、言わないことを選択する」ということなのです。

アサーティブな関係は、勝ち負けという立場には立ちません。どちらかが勝って相手を黙らせて自分の正当性を証明するようなことは、決してアサーティブな対話ではないのです。

問題解決のためにどちらも責任を持って関わるっていうスタンスですよね。どちらもがアサーティブになる事によって、問題解決にフォーカスするっていう感じでしょうね。

「相手を尊重する姿勢というのが、前提として必要という事ですね?」


相手も自分も尊重し、今言うべき事はなんだろうかと考え、本当に言うべき時になったら、具体的に明確にわかりやすく伝えて、そして対話をしながら問題解決をすること。

だから言いたい事を言うだけのわがままと、アサーティブは全然違います。わがままというのは自分しか見ていないですが、アサーティブは解決するべき問題を見ているからです。 インタビュー写真


「心の仕事に就きたい方に、メッセージがありましたらお願いします」

支援者つまりカウンセラーや、福祉関係者、医療関係者、心理職などの人たちにとっては、自分自身がアサーティブになる事によって、まずは自分を大切にすることを知り、燃え尽きを防止することができると思います。

何でもかんでもやってあげよう、ではなくて、本当に自分を大事にしながら関われるという事が大事ではないかと思います。心の仕事に就く人は、クライアントさんがアサーティブになれるように、自信を持ってハッピーに主体的に生きていけるような支援をされていますよね。

だから私は心の仕事に就く人自身が、自信を持って、人と自分を大事に出来る人であるという事がとても大切な気がするんです。支援者自身がアサーティブである事で、初めて人にも「それでいいよ」って言えるんじゃないでしょうか。

「まず自分自身がアサーティブである事ですね?」

以前福祉の現場にいた時に、薬物依存やアルコール依存症の人たちのサポートをしていました。「飲みたくない時は断りなさい」とか、その場では恰好良い事は言えるんですけれど、振り返ってみると自分は仕事や誘いを断れていなかったんですよね。

自分は断れないのにクライアントさんには「断りなさい」と言っているというのでは、ものすごい自己矛盾だと反省しました。クライアントさんと人間として対等になるという意味においても、自分自身がアサーティブかどうかを検証することは大事であると思います。

心の仕事に就きたい人の陥りやすい落とし穴が、「私助ける人、あなた助けを求める人」っていう、ものすごい上から目線になってしまう事で、それはとても危険な事だと思います。

アサーティブというのは、私が支援をする側であったとしても、同じ人間として対等に向き合うという事が問われるんですね。私はそういう謙虚さが土台としてあって、初めて支援の仕事に繋がるんじゃないかと思います。

「対等に向き合う謙虚さですか」

助けてあげる側だけになってしまうと、相手の生きる力を奪ってしまうことがあります。クライアントさんが自分で立ちあがる力を奪ってしまわないように、私自身が謙虚にある事とか、私自身がいきいき生きているということで、最終的には良い形の支援に繋がるような気もします。

また最近は、チーム医療が基本になってきましたね。チーム医療だと、様々な立場の人と連携をとっていく必要があります。ドクター、ケースワーカー、看護師、心理士、いろいろな支援機関があるところで横の連携もとっていく時代です。

ケース会議で、心理職として誇りを持ちつつドクターとも対等に話し、看護師とも話し、ご家族の人とも話すっていう、一人のクライアントをめぐるチームの力を発揮するには、それぞれの専門職がアサーティブになることが必要ですね。

最後に、心の仕事に就きたい人は、ついつい個人の問題に行きがちですが、「ソーシャル」な視点に立って、社会に対して物を申していく力をつけていってもらいたいなと思います。

例えばメンタルな問題でも、個人の相談だけじゃなくて、人が燃え尽きるまで働かせるような状況に対して、物を言える力というのをつけてもらいたいですね。

個人だけの問題に帰結しないで、個人の問題と社会の問題と常に両方見ていられる力をつけて入っていただけたらと切に願います。

「ご自身も日々アサーティブにという風に思っていらっしゃるのですか?」

いつでもものすごく葛藤してますよ。一つの問題をめぐって、けんかをする事も出来るし、黙って我慢する事も出来る。いろいろ選択肢がある中で、今は何を選ぼうかな、やっぱりアサーティブな選択をしようという決断をいつもしているというか。

私も組織の中で、いろいろなスタッフがおりますので、日々「どうしようかな」「この人になんて言おうかな」とか、本当に毎日悩んでいます。

「その都度選択をしていく?」

そうですね。ベターな選択を。ベストな選択は分からないので、常にベターな選択をして、自分が選んだ事には責任を持つという事を心がけるという事しか出来ないんですよね。

「コミュニケーションが苦手という方にメッセージがありましたら、お願いします」

自分を責める必要はないし、自分が変わる方法はあるよ、という感じでしょうか。変えられるし、変わるし、ゆっくり変わればいい。すぐに変わらなくても、自分を責めなくてもいいよという感じでしょうか。

「アサーティブとメンタルヘルスとの関係はいかがでしょうか?」


一つは、打たれ強くなることです。少々な事でへこたれなくなります。

ひどい事を言われた時に、相手の言葉がグサッと刺さったまま何も言えないで恨みを溜めるのではなくて、何か言われた時に正しい批判は「その通り!」とちゃんと受け止めて、間違った批判は「それは違います」っていう事を言う練習をするんですね。

そうする事によって、職場や家族の中できつい事を言われた時でも、この人の言いたい事はこういう事だなと理解出来て、自分を守ることができるようになる。不必要に傷つく事がなくなって、打たれ強くなる。少々の事で挫折しなくなるというのはよく聞きます。

もう一つは、相談の仕方や伝え方が分かることで、早めに相談出来るようになる。つまり、問題の早期発見、早期相談に繋がる。

多くの方は、上司が忙しくて声をかけるタイミングが見つからないとか、何て言って相談すればいいのか分からなくて、結局それが続いてしまう。

そういう時に何て声をかけたらいいか、忙しい上司をどういう風に捕まえたらいいかを身につける事によって、早いうちに「これに困ってます」「これで悩んでいます」「教えてください」と率直に言えるようになる事で、問題の早期発見になります。

「それは組織にとってもありがたい事ですよね?」


そうですよ。抱え込んで、早期離職になるのではなくて、分からない事があったらその時にちゃんと「分からないので教えてほしい」と言う事で、それが解決する。

アサーティブでは、「私には『よくわかりません』と言う権利がある」という事を学びます。その上で、わからないという事をどのように上司に伝えるかというスキルも学びます。その2つを持って上司に教えてもらえる訳ですよね。

「今後なさりたいことや夢は?」

この震災があったので余計に、自分の人生をどう生きたいかとか、誰を大事にして生きていこうかとか、そういう個人的な変化は大きくありますね。

個人としては、日々丁寧に生きいていこうという事と、明日死んでも後悔しないように今日1日精一杯生きようかなと。本当にいたい人といて、笑って泣いて後悔しないように生きようっていうのが、今、自分自身がやりたい事ですよね。

アサーティブジャパンでは、ちょうど変化の時代にいるなと思います。

つまり、どこかで誰かが何かをしてくれるというような受け身の姿勢で今まで生きてきたのが、これから一人一人が自分が社会を作る主体として発言をしていくことが、求められていくのじゃないかと思うんです。

その時にちゃんと発言する力をつける。この社会をどうしたいか、一人一人しっかりと考えて、けんかや攻撃や暴力ではなくて、しっかりと話し合いをすることの中から、社会を作っていくことができたらと思います。今その時期に来ているなと、つくづく思います。

「このお仕事をされていて、嬉しかった事は何でしょう?」

嬉しい事はたくさんありますよ。本当にいいなと思うのは、一人一人が講座を受けられた後に変わっていくのを見るっていう事じゃないでしょうかね。

自信がつく方もいるし、長い時間をかけて夫婦の関係が変わっていった方もいるし、職場の中の自分のポジションが変わっていった方もいるし、そういうお話を聞くと嬉しいですね。

アサーティブに生きる事によって、自分が何かが出来るというところに立って、良い方向に変わっていったという報告をいただくと、とても嬉しいです。

<編集後記>

「できる」ことで初めて「わかる」と、
実践をとても大切になさる森田汐生先生。
インタビュー中に、わざわざロールプレイを指導してくださいました。

実際にやってみることで、意外な難しさと練習の必要性を
「実感として分かる」ことができました。

「自信を持つことは大事ですが、自信を持った結果何をしたいのか」
「ソーシャルな視点に立って、社会に対して物を申す」
「個人の問題と社会の問題と常に両方見ていられる力を」

アサーティブネストレーナーであり、社会福祉士でもある森田先生の、
常に「ソーシャル」な視点を大切になさっているご姿勢と、
社会に対する強い使命感に深い共感を覚えました。

森田 汐生(もりた しおむ)  特定非営利活動法人アサーティブジャパン代表理事

一橋大学社会学部卒業。大学在学中にデンマークに留学、その後、イギリス滞在中にアサーティブネスに出会う。大学卒業後、日本社会事業大学研究科で社会福祉士の資格を取得し、1991〜93年、イギリスの地域精神医療団体でソーシャルワーカーとして勤務。その間、ヨーロッパにおけるアサーティブネスの第一人者、アン・ディクソンのもとでトレーナー養成講座を受け、アサーティブネス・トレーナーの資格を取得。帰国後、1999年に国立市に事務所を設立。2004年にNPO法人化。現在、アサーティブネス・トレーナーとして、全国各地で講演・研修を行っている。
◆アサーティブジャパン主催の講座
 ・ 基礎講座
 ・ 応用講座
 ・ ステップアップ講座
 ・ アドバンス講座
 ・ トレーナー養成講座
 ・ ロールプレイ講座

<森田汐生先生のHP>
【アサーティブジャパン】
<森田汐生先生の著書>

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気持ちが伝わる話しかた―自分も相手も心地いいアサーティブな表現術
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「NO」を上手に伝える技術
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言いづらいことが「サラリ」と言える本
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あたらしい自分を生きるために―アサーティブなコミュニケーションがあなたを変える

インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:広江俊介(ひろえしゅんすけ)

広江俊介

心のボイスレッスン 代表
都内で声と言葉をテーマにしたメンタルセラピー、
ゴスペル音楽による発音・発声のレッスン、自己表現力の磨き方を
指導しております。

現在、一般のビジネスマン、OL、カウンセラー、セラピスト、教師、
コンサルタント、俳優、声優の方まで多岐に渡り、教えております。
プロボイストレーナー、プロギタリスト講師
ブログ:『毎日1分!伝説の質問。』


インタビュアー:村上友望(むらかみともみ)

村上友望

今は普通のOLをしながら、セラピストとして活躍できるよう勉強中です。
出会った方々の幸せな笑顔をサポート出来たらと思っています。

ヨーガセラピスト ソース公認ベーシックトレーナー
パステル和アートインストラクター ジュニア野菜ソムリエ
アロマテラピーアドバイザー キャンドルアーティスト
ブログ:http://ameblo.jp/ohisamakokoro/


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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