第57回目(1/4) 森田 汐生 先生 アサーティブジャパン

アサーティブネスとは、相手も自分も尊重する自己表現

今回のインタビューは、アサーティブトレーニングの第一人者として
ご活躍の、アサーティブジャパン代表理事の森田汐生先生です。

自分も相手も尊重するコミュニケーションの力「アサーティブネス」。
メンタルヘルスの向上にも有効と、今、非常に注目されています。

「誠実」「率直」「対等」「自己責任」を四つの柱とする
アサーティブネスに、意欲的に取り組んでこられた森田汐生先生に
「アサーティブに生きる」ことの素晴らしさや効果、
そして今後の展望についてお話を伺いました。

インタビュー写真

「アサーティブネスに出会うまでの経緯を教えてください」

私がアサーティブに興味を持ったのは、もともと自己表現が得意でなかった子ども時代からの悩みがあると思います。大学時代にデンマークに留学した時にアサーティブの1冊の本に出会い、その後の人生の方向性が決まったように思います。

「大学では何を専攻されていたのですか?」

大学では社会学を専攻していました。社会の様々な問題、特に福祉の分野に興味があったので、いずれは福祉の現場で働こうと考えておりました。

大学を出た後に、一年間、社会事業大学の研究科に入り、卒業後社会福祉士の資格を取りました。資格取得後、イギリスに3年間滞在して、メンタルヘルスのグループホームでソーシャルワーカーとして仕事をしていた時に、本格的にアサーティブネスを学ぶチャンスがありました。

というのも、イギリスでは対人コミュニケーションスキルとして、「アサーティブネス」が支援職のコミュニケーションスキルの研修として使われていたからです。

大学時代に出会ったアサーティブネスの本の著者がイギリス人だったので、滞在中にアサーティブの講師養成コースを受けようと思い、アサーティブネストレーナーの資格を取りました。

メンタルヘルスの現場で働く時に、クライアントの感情表現のスキルの一つとしてアサーティブトレーニングを行いましたが、同時に支援者にとってもこのスキルは非常に重要であると痛感しました。

「日本に戻られてから、どんな風にお仕事を始められたのでしょうか?」

1994年に帰国してから10年ほど、アサーティブトレーニングをフリーランスで教えておりました。

徐々にニーズが高くなってきたので、1999年から任意団体のアサーティブジャパンを設立してアサーティブネストレーナーの養成講座を行うようになりました。一緒に活動するトレーナーが増えてきたので、2004年に改めてNPO法人の取得をしたということです。

「アサーティブネスについて、分かりやすく教えていただきたいのですが?」

アサーティブネスとは、相手も自分も尊重しながら、自分の気持ちや意見を表現するという自己表現の考え方とスキルのことです。

具体的には、自分の感情を適切に言葉にできる、率直に頼める、きちんと断ることができる、ほめ言葉を伝えられる、ほめ言葉を受け入れられる、正当な批判も不当な批判もきちんと対処できる、自分の怒りの感情を人を傷つけない形で表現できる、相手と向き合って建設的な批判ができる、などができることを言います。

同時に、相手と向き合う心の姿勢も大切にしています。自分に正直であり、上から目線で相手をバカにしたり、反対に必要以上に自分を卑下して下になることもありません。

自分のことも相手のことも尊重して、言うべきことは必要なタイミングで分かりやすく伝える。同時に、「雰囲気のせいで言えなかった」「あの人は聞く耳がないから自分は言えない」と、自分が黙っていることを誰かのせいにすることもしません。

黙っていたのは自分が黙ることを選択したため。自分の行動の結果は、自分で引き受けるということなのです。

「言いたいことが言えないという方が多いかと思いますが、どんな風にしたら良いのでしょうか?」

会社での人間関係でしょうか、それとも友人や家族の関係で、ということでしょうか。

「よく聞くのは友人関係、ママ友などでしょうか」

なるほど、ママ友ですね。「言いたいことがなかなか言えない」ということですが、例えば、どんなことでしょうか。

「誘われた会に参加したくないけれど、なかなか断れないとか?

お友達からのお誘いを断りたいけど、上手に断れないというケースですね。
誘いをうまく断れない理由としては、大きく2つあります。

一つは、「断ってはいけない」「相手が気を悪くしてしまう」「断るのはわがまま」「次から誘われなくなってしまうのでは」という思い込みや不安です。

もう一つは、断ることははっきりしているのだけれど、「断り方が分からない」あるいは「はっきり言いすぎて関係が壊れてしまう」という「伝え方」の問題です。

したがって、断ってはいけないという思い込みをお持ちの方には、「Noとはっきり伝えることの方が、実はいい関係を作ることができる」「あなたには、Noと言う権利がある」ということを学んでいただきます。

また、「伝え方」に問題がある場合は、自分も相手も尊重したアサーティブな断り方を身につけることで、関係が切れない断り方を磨いていただきます。

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「上手に伝えるポイントというのは?」

ママ友からの誘いをどのように断ったら良いかという事例でよろしいでしょうか。お茶の誘いとかそんな感じですね。

断り方にもいろいろなパターンがあります。

アサーティブでない断り方の例として、一つは言い方がきつくて「ムリよ」「なんでそんなこと言うの」「ダメに決まっているじゃない」など、相手の要求をばっさり切ってしまい、その結果人間関係がまずくなるという攻撃的なパターンです。

もう一つは、そもそも断ることができなくて、誘われたら何でも「はい」と言ってしまう受身的なパターン。

三つ目は断っているんだけれど、態度で示したり回りくどくなったりして、その後の人間関係がまずくなってしまうケース。「こっちが忙しいのが分からないのかしら」「夫が嫌な顔をするのよ」などと言って断るという作為的なパターンです。

自分がどんな場面で、誰に対して、どんな断り方をしているのかに気づくこと。自分の断り方のパターンを理解すると、アサーティブに断るにはどうしたらいいだろうかという変化のプロセスに入っていくことができます。

自分はこういう人間関係になっているなあ、こういう時にこんな振る舞いになっているかも、と、自分の伝え方のくせを理解することで、初めて次の一歩を踏み出すことができるのです。

あの人のせいで自分は言えないんだとか、あの人がこう言うから断れないんだと、自分の「言えないこと」を人のせいにすることはしません。その意味でアサーティブネスは、相手が誰であっても、自分自身の行動は自分で決めるという非常に主体的なものなのです。

「主体的とは?」

自分は何をしたいのか、この人間関係をどうしたいのか、よりよいものにしていきたいのか、それとも止めたいのか。自分の気持ちを正直に見つめた上で、「行こう」と思えば行けばいいし、「断ろう」と思った時は、誠心誠意、相手を尊重しつつ、でも自分の気持ちに嘘をつかないで断るという姿勢です。

今回は断った方がお互いにプラスになると思った時に、「今回についてはお断りします」というように、よく考えた結果を言葉にするのです。

気分が悪いから断りたいとか、この人が気に入らないから止めようとかとなると、決してアサーティブな人間関係は醸成されていきません。

自分の在り方や自分の生き方を含めて、人間関係をどのように作っていきたいのかということを自分で考えて、その上で「イエス」であれば「イエス」、「ノー」であるなら「ノー」と言うということなのですね。

「断る時のポイントを教えていただけますか?」

断る時のポイントというは、ロールプレイすると一番分かりやすいので、ここで実際にやってみましょう。頭で理解するだけでは、人ってなかなか変わらないんですね。頭でわかることと自分でできることとは大きな違いがあって、「できる」ことで初めて「わかる」のです。

コミュニケーションの取り方は自分が持っている「くせ」です。自分が生まれてから身につけてきたくせを、様々な人間関係の中で駆使しているのです。自分のコミュケーションのくせを認識した上で、これからは違う伝え方を身につけていく、という感じです。

先ほど、断りづらい事例として、強引なママ友Aさんのお茶のお誘いを、ちょっと気弱なBさんが断るという事例でやってみましょう。

断る時に最初に考えるのは、「なぜ自分は断りたいのか」という自分にとっての理由を明確にすることです。アサーティブに断る場合、単に気分で断るという訳にはいかないので、ここでは自分なりの理由を考えてみることにしましょう。

B「沢山の人の中が自分は苦手、というのではどうでしょうか?」

わかりました。沢山の人というのは何人くらいでしょうか? 例えば「5人なんて少ないうちよ」って言われたらどうしましょうか?

B「自分にとっては5人も沢山。一対一でなければ沢山という感じなんですね」

それでは3人以上になるとなぜ苦手なのか、その理由は何だろうと、もう少し具体的に絞ってみましょう。相手のママ友とは価値観が違います。どっちかが正しくて、どっちかが間違っているのではなくて、お互いの人づきあいの価値観が違うので、どのようにすれば違うもの同士でも対等なおつき合いができるかを考えてみましょう。

Aさんにとっては「大勢の方がわいわい話せて絶対楽しいわ」と思っているけど、Bさんにとっては「一対一の方がじっくり話せて好きだ」と思っている訳です。「たかが人数」とはいえ「されど人数」。

自分にとっては大事なものだということで、お互いの価値観や考え方を尊重しながら、話し合うスタンスを持ちます。小さな違いを「大したことない」と片付けてしまうと、長いお付き合いをすることが疲れてくるようになります。

                 

(次回につづく・・)

森田 汐生(もりた しおむ)  特定非営利活動法人アサーティブジャパン代表理事

一橋大学社会学部卒業。大学在学中にデンマークに留学、その後、イギリス滞在中にアサーティブネスに出会う。大学卒業後、日本社会事業大学研究科で社会福祉士の資格を取得し、1991〜93年、イギリスの地域精神医療団体でソーシャルワーカーとして勤務。その間、ヨーロッパにおけるアサーティブネスの第一人者、アン・ディクソンのもとでトレーナー養成講座を受け、アサーティブネス・トレーナーの資格を取得。帰国後、1999年に国立市に事務所を設立。2004年にNPO法人化。現在、アサーティブネス・トレーナーとして、全国各地で講演・研修を行っている。
◆アサーティブジャパン主催の講座
 ・ 基礎講座
 ・ 応用講座
 ・ ステップアップ講座
 ・ アドバンス講座
 ・ トレーナー養成講座
 ・ ロールプレイ講座

<森田汐生先生のHP>
【アサーティブジャパン】
<森田汐生先生の著書>

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気持ちが伝わる話しかた―自分も相手も心地いいアサーティブな表現術
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「NO」を上手に伝える技術
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言いづらいことが「サラリ」と言える本
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あたらしい自分を生きるために―アサーティブなコミュニケーションがあなたを変える

インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren


インタビュアー:広江俊介(ひろえしゅんすけ)

広江俊介

心のボイスレッスン 代表
都内で声と言葉をテーマにしたメンタルセラピー、
ゴスペル音楽による発音・発声のレッスン、自己表現力の磨き方を
指導しております。

現在、一般のビジネスマン、OL、カウンセラー、セラピスト、教師、
コンサルタント、俳優、声優の方まで多岐に渡り、教えております。
プロボイストレーナー、プロギタリスト講師
ブログ:『毎日1分!伝説の質問。』


インタビュアー:村上友望(むらかみともみ)

村上友望

今は普通のOLをしながら、セラピストとして活躍できるよう勉強中です。
出会った方々の幸せな笑顔をサポート出来たらと思っています。

ヨーガセラピスト ソース公認ベーシックトレーナー
パステル和アートインストラクター ジュニア野菜ソムリエ
アロマテラピーアドバイザー キャンドルアーティスト
ブログ:http://ameblo.jp/ohisamakokoro/


インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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