第52回目(2/4) 百武 正嗣 さん ゲシュタルトネットワークジャパン

言葉よりも、体で表現していることの方に真実がある

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「ゲシュタルトの3つの“領域”とはなんでしょうか?」

フリッツ・パールズはゲシュタルト療法の気づきを、3つの領域に分けたんですね。

3つの領域というのは、1つは思考領域。脳の機能です。脳の機能は物事を解釈したり、論理的に分析したり、これが良いとか悪いとかを判断したり、あるいは過去のことを思い出したり、将来のことを分析、予測できます。

脳の機能は大事ですが、脳の機能に頼りすぎていることに問題があります。脳で気がついたことは、実はその人自身のものでないことが多いのです。

頭はこれが正しいという情報を得る機能で、良い悪いを分析しますが、それは自分の考えというよりは、社会の価値観でもあるわけです。

「思考は社会の価値観に影響されるということですか?」

ダイエットで、自分は望んでないけれど、その社会が痩せている方が女性はきれいだという価値観があれば、「望んでないけれど、痩せなきゃいけない」と思うのですね。自分は食べたいかもしれない。そうすると頭で考えた理想像と、実際の体とは分離してるでしょう?

そこでフリッツ・パールズは脳の機能としての思考の気づきと、実際に今自分が持っている体を分けた。

脳でこれが良いとか解釈している世界と、実際に自分達が今この瞬間生きている体の世界と、2つに分けたわけです。

「体の領域とはどういうものですか?」

実際に自分の体で何が起きているのか、自分の体に意識を向けてもらう。体というのは、脳の機能より、もっと知恵があるわけです。

例えば、ノドが乾いたら、ノドが乾いてるか考えなくても水飲みにいきますよね。おなかがすいてる時も、おなかがすいてるかどうか考えなくても何か食べにいきますよね。

実は脳で考えているのではなく、好きだとか嫌いだとか、今自分が必要なことは、体の機能でわかります。

「体の方が重要なのでしょうか?」

実は、体で感じていることの方が、ずっと進化の歴史の中でも大事なんです。自分が感じていることとか感情とか、心も体にあって体で感じる。あたかも全て脳の機能だという風に思っていますが、実際は体で感じることが大事なんです。

人を愛さなきゃいけないって、誰かから脳で教わる。小さい時から家族から、女性だったら「女の子だから優しくしなさい」とか、男性だったら、「男の子が泣いちゃいけません」「人前でそんな女々しいことしちゃいけません」と教わる。

でも悲しいとか嬉しいというのは、そういう社会の価値観とは関係なしに起きるんです。その時に、嬉しい、悲しい、さみしい、そういう感覚を頭で逆に止めてしまう。そういうことを脳の機能はするのです。

ゲシュタルトはその時に「本当は体で何を感じているの?」って、そこを見ていく。現代人は体の声を大切にしていない。そこに意識を向けるのです。

「気づきの領域というのはどんなものですか?」

3つ目の気づきの領域というのは、自分の皮膚の外の世界。この皮膚の外の世界が現実です。現実の世界は、基本的にただあり続ける世界なんです。

例えば、テーブルというのは、僕がいなくてもテーブルだし、天気は僕がいようといまいと晴れたり曇ったりする。同じように人も僕がいようといまいと、その人はその人で生きていく。

ですから基本的に、僕っていう生き物が生きていくためには、関係ない世界に意図的に関わりを持たないと生きていけないのです。

例えば、おなかがすいたと体で感じて、おいしい蕎麦屋に行こうと決めても、現実にコンタクトしないとおなかはいっぱいにならない。

「現実にコンタクトすることで気づくということですか?」

目の機能で見る、耳の機能を使って音で聴く、皮膚で何かに触れて気がつく、食べる場合は味覚で気がつく、匂いで気がつく、この五感を使っている時だけ現実にコンタクトしている。

現実にコンタクトしている時は、自分が何をしたらいいのかという事は迷わない。答えはそこからいつも出てくるわけです。この五感を使って現実にコンタクトしている時は問題が起きないんです。

問題が起きるのは、頭で作り出した現実について何かを想像している時なんです。

「3つの領域を意識することの意味は?」

ゲシュタルトでは、瞬間瞬間、3つの領域のどこに自分の意識が行っているか分けていきます。普段は早く切り替えているので、あたかも同時に、考えて感じて、現実に触れていると思っていますが、1回に1つの領域しか行かない。

意識が3つの領域に、必要な時に自動的に切り替わったり、自分で意図的に自由に切り替えられる状態が健康な状態なんです。

でもほとんどの場合、現代人は人生が長くなると、あるパターンを持ってしまう。思考タイプの人はいつも頭で考えて、これは正しいかどうかと考えます。

日本人は真面目だから、「信号は青か見てから渡りなさい」と、車が通ってなくても待っているじゃないですか。世界中でもあまりないですね。逆に言えば、「車が来ていないのだから渡ってもいい」という現実を、無視している生き方なんです。

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「したいことをしないとどうなるのですか?」

日本人は正しい行ないをしないといけないと、強迫観念のように考えていますね。自分の判断を大事にするなら、渡りたいのなら、渡ればいいじゃないですか? 自分の目を使えば車が来ているかどうか見えるんだから、渡れますよね。

でも人間というのは、教わったことの方が自分より大事だと思って、信号が変わるのを待って立っているんです。それが人間の生き方の象徴ですね。

信号だけを待っているのではありません。人生の中でいろんなことが起きる。頭で教わった「こういうことが正しい」ということ以外のことがいっぱい起きます。本当は、その時に自分がしたいことをすれば、問題は解決していくんです。

でも、その時にしたいことをしないことの方が多い。そうすると、どんどん現実から遊離していくのです。現実から遊離すればするほど、また頭で現実を理解しようとするので、さらに遊離してしまう。

「ゲシュタルトはそこを繋げていこうとするのですか?」

ゲシュタルトでやろうとしているのは、「じゃあ、あなたは本当は何を感じているの?」「何をしたいの?」「あなたの心の中に何が起きてるの?」、そういうことに向き合っていくことです。それを感じたとしたら、それを現実で行動することで解消していきます。

感じるだけでも駄目です。感じたものを、現実の中で表現するなり、現実で何か行動するんです。

気づきというのは別の表現で言うと、必要なことに焦点を当てるか、焦点が当たって自分が何をしたいか明確になったことを現実との関係で起こした時に、完結していきます。そういう意味では、ひとつに統合されたという言い方もします。

「ゲシュタルト療法とは、こういうものだというものを教えていただけますか?」

今、流行っているカウンセリングはリスニングが中心。相手の言った言葉を聴いて、「あなたはこう言ったんですよね?」って聴いてあげる。

そういうことはゲシュタルトではあまりしない。その人が言葉だけじゃなくて、その時に何を本当は表現していたかという非言語的な身体表現にも価値を置きます。

人間は、言葉というのを社会的な関係を維持するために使うことが多い。本当のことを言わないことが多い。でも、体というのはいつも必要なことを表現します。ですから、言葉よりも体で表現していることの方に真実があるという風に取るわけです。

「非言語的な身体表現に価値を置くのですね?」

「私は怒っていません!」って、こう手を動かした時に、言葉は取り上げない。「この手は何をしているの?」って聞きます。そうしたら「もしかしたら、怒ってるかもしれない」と、初めてその人は気がつく。

「私は何も辛くありません!」と言ったとしても、顔が歪んでたいたり、唇がへの字をしていたとしたら、「唇のそのへの字はなんて言ってるの?」って聞きます。体はいつも正直に、その瞬間瞬間必要な事を表現しています。

おなかがすいたら、人がいっぱいいて静かなところであろうと、グーッておなかが鳴るようにできている。いつも体は、自分が本当に必要なことを表現したがっているし、しているわけです。

「“統合”というのは、どういうことですか?」

例えばすごく悲しい時に、悲しみと同時に涙が溢れてくるわけですよね。涙が溢れて泣いた時に、初めて人間っていうのは悲しみを癒していくことができるわけです。

でも、「私は悲しくありません」「男だから泣いてはいけません」と、それを体の中にしまいこんでしまうと、それはエネルギーですから消えないのです。

それを閉じ込めてしまえばしまうほど、現実の人間関係の中で、それに触れてしまう人間が現れる。怒りを抑えているとしたら、怒りを引き出す人間が必ず現れるのです。そうすると過剰に怒る、あるいは過剰に抑えるんですね。

そうする代わりに、心も体も同じものと見ていれば、体で表現していく。それで、体で表現している本音に言葉が一致していれば、その人は本当に自分自身が統合されていると見ます。

また、我々が思考で作り出してしまった「自分自身」は、実はあなた自身ではなくて、社会の価値観か、家族や親の価値観の鵜呑みになっていると見ます。それは咀嚼できていないから、もう一度、本当に「あなた自身は何をしたいの?」って聞いていきます。

「ゲシュタルトの特徴は何でしょうか?」

多くの人は頭で理解したがるんです。あるいは答えを先に知りたがる。そういうことをしないということです。

そういう意味で、ゲシュタルトはわかりにくいところがあるんですね。理論的にあまり説明しない。理論的なものはあるんだけれども、そういうものに優先的な価値を見出さない。

ゲシュタルトの特徴は、もう1つ、心や感情と言われているものに関して、あるいは人間行動に関して、良い悪いという立場を取らないということです。

例えば、我々は「憎たらしい。あいつ殺してやりたい」とか思ったりするじゃないですか。そう感じるとすぐに、「そう感じている自分はダメなんだ」と思ってしまう。

でも、ゲシュタルトでは、そういうものを悪い感情やネガティブな感情として捉えない。むしろ必要な感情、必要な感覚として見ます。

「感じていることには意味がある?」

我々が感じていることは、全て必要があって獲得してきた感覚なんです。水が足りない時に、ノドが渇いたという感覚がなければ、人類は生きてこられなかった。

同じように、心も、イライラしたり、不安になったり、あるいは怒りだったり、人を蹴飛ばしたくなるような衝動であったり、というのはネガティブなものではない。むしろ、自分が今、どういう関係にその人とあるのかというのを教えてくれるのです。

ある特定の人間に対して、苛立ちを持ったり、憎しみを持ったとしたら、それは悪い感情ではなくて、その人との関係がそういう関係なんだっていうことを教えてくれている。

そのことを認めれば、近づかなければ良いわけだよね。あるいは、蹴飛ばして答えが出るなら、蹴飛ばしても良いわけだ。

そういう感情が湧いてきた時に、我々は何をしてしまうかというと、「その感情を持っている自分が悪い」、あるいは、「湧いてきた気持ちを見なかったことにする」ことにエネルギーを注いでしまう。

そこに問題が起きてしまうわけです。感情や感覚というのは、いつも関連しています。ある特定のものを抑え込んだとしたら、嬉しいっていう感情も同じように抑え込んでしまう。別のものだと思っているかもしれませんが、ただ1つのものなんです。

悲しみが対極にあったら、喜びが反対側の対極にあるかもしれない。でも、それはある側面から見ている。違う角度から見たら1つのものかもしれないですよね。

「そのまま抑え続けるとどうなりますか?」

ある感覚を抑えてしまうと、他の自分がポジティブだと思っている感覚も抑えられてしまう。ですから、どんどんどんどん抑え込んでいって、自分の世界が小さくなってしまう。自分を抑えることにエネルギーを使ってしまうんです。

例えば、仮に「男だから人前で泣いてはいけない」という気持ちがあるとします。

悲しい場面で涙がこみ上げてきたのをこらえて、感じないようにしようとするけれど、そこに意識が行ってしまうから、20%抑えたとします。そうすると残りの80%で現実に触れるわけだから、現実に対して満足感が起きない。

あるいは、完全なコンタクトができていないから、十分な自信が持てないわけです。多くの場合はそれが起きていますね。

「現実に100%触れていくということですか?」

悲しいんだったら十分に泣いてみる。悲しいということを十分に表現して受け入れれば、そこで抑えるエネルギーが終わるので、100%現実に触れることができます。これが、ゲシュタルトがやろうとしている1つの特徴だと思います。

感じていること、考えていることを含めて、全て「今、ここ」で自分がしていることに、良い悪いはない。それはOKということです。

                 

(次回につづく・・)

百武 正嗣(ももたけ まさつぐ)  NPO法人ゲシュタルトネットワークジャパン理事長
                     日本フェルデンクライス協会理事
                     日本ゲシュタルト療法学会理事長

ゲシュタルト療法をパールズの弟子であるポーラ・バトム博士(Paula Bottome Ph.D) に学ぶ。
ポーラは1985年に来日し、ゲシュタルト療法を広めるためにGNPRを設立する。その事務局を引き受ける。2001年にポーラが亡くなった後を引き継ぎ、現在のNPO法人GNJをポーラの弟子である人たちと設立し普及に努める。
また、2003年から全国のゲシュタルトセラピストの連絡協議会を開催し、より広く一般へのゲシュタルト療法の普及を願い、日本ゲシュタルト療法学会を設立する。
中央大学理工学部卒。カリフォルニア州立大学大学院心理学科卒。


<NPO法人ゲシュタルトネットワークジャパン(GNJ)のHP>
【NPO法人ゲシュタルトネットワークジャパン(GNJ)】

<日本フェルデンクライス協会のHP>
【日本フェルデンクライス協会】
<日本ゲシュタルト療法学会のHP>
【日本ゲシュタルト療法学会】
<百武正嗣先生の著書>
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気づきのセラピー はじめてのゲシュタルト療法



cover
エンプティチェア・テクニック入門―空椅子の技法

インタビュアー:奥原 菜月

奥原菜月

フリーライター、占い&カウンセラー(奥原朱麗)として活動中。
夫と子供2人、犬1匹で横浜に生息中。

占い・カウンセリング・開運などをメインにしたブログ
『占いカウンセラー朱麗のまったり開運日記』

HP:アストロ・ハーティ「朱麗の占いカウンセリングルーム」

インタビュアー:鈴木明美

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren

インタビュアー:村上友望(ともみ)

村上友望

今は普通のOLをしながら、セラピストとして活躍できるよう勉強中です。
出会った方々の幸せな笑顔をサポート出来たらと思っています。

ヨーガセラピスト ソース公認ベーシックトレーナー
パステル和アートインストラクター ジュニア野菜ソムリエ
アロマテラピーアドバイザー キャンドルアーティスト
ブログ:http://ameblo.jp/ohisamakokoro/

インタビュアー:広江俊介(ひろえしゅんすけ)

広江俊介

心のボイスレッスン 代表
都内で声と言葉をテーマにしたメンタルセラピー、
ゴスペル音楽による発音・発声のレッスン、自己表現力の磨き方を
指導しております。

現在、一般のビジネスマン、OL、カウンセラー、セラピスト、教師、
コンサルタント、俳優、声優の方まで多岐に渡り、教えております。
プロボイストレーナー、プロギタリスト講師
ブログ:『心のエバーグリーン。』

インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント
 

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