第52回目(4/4) 百武 正嗣 さん ゲシュタルトネットワークジャパン

「未完了」な問題が、自分を縛りつけている

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「百武さんは長くこのセラピーをされてきて、ご苦労はありましたか?」

ないです。というのはね、ゲシュタルトというのは、自分に気づくことだから、苦労してやるとしたら、それはやる必要のないことです。やれば自分の課題がクリアしていくから楽になる。やってる人はみんな楽になる。

何かを覚える必要もないし、何かを勉強する必要もない。もともと自分に気づく能力は持っているから、それをどういう方法で止めてしまっているのか、ということの方が問題なわけだね。

「ゲシュタルトをしていると楽になるのですか?」

最初に僕がポーラのワークをした時に、父親のワークをやって楽になった。ゲシュタルトをやってる人は、だいたいそういう体験があります。

人間っていうのは、ほとんどの人が自分で自分を縛りつけている。その縛りつけている原理がわからないから苦しむんですよね。その縛りつけているのが何かというと、多くの場合は未完了な問題なわけです。

もしかしたら父親が生きていたら、ゲシュタルトでなくても楽になったのかもしれない。でも、僕の父親は20歳の時に死んでしまったから、ずっとそこで止まっていた。父親みたいな人生は嫌だと思っていて、でもゲシュタルトでそれが取れた。

そういうことがゲシュタルトでいっぱい起きるので、楽になる。無理して頑張るというのは、どこか自分がしたくないことをしているわけで、それはしない。それで楽になっています。

「今の活動は、ワークとファシリテーターの育成と両方をやっていらっしゃる?」

日本ゲシュタルト療法学会というのを7月に立ち上げました。そこの理事長をやっています。

もう少し前に、ポーラのお弟子さんが6人位いて、ポーラが亡くなった後に自分達でゲシュタルトを広げようとNPO法人 ゲシュタルトネットワークジャパン(GNJ)を作っています。

そっちはワークショップ中心です。そこの仲間と一緒にもっとゲシュタルトを広めたいと思っています。

「学会を作られた理由は?」

フリッツ・パールズがアメリカでゲシュタルト療法を作ったから、アメリカでゲシュタルトが広まるのは当たり前ですよね。

ドイツは元々彼が幼少期に住んでいましたし、ゲシュタルトはドイツ語だから、ドイツ人は我々の心理療法だと思っていて広まっている。オーストラリア、フランスなどでも広まっています。

ですが、ゲシュタルトは日本ではまだ全然広まっていないんです。それはどうしてかというと、教えるための基準が無い。どういうステップで学んで行くか、そういう制度が無いのです。

もう1つは教えることができるファシリテーターがいない。それを作る為には、個人的にというよりは、学会というレベルで作った方が、ゲシュタルトを知らない人も興味を持ってくれるでしょう。

もう1つは学会を作ることで、世界のトップレベルの人が来てくれる。

学会を作りたいから協力をしてくれと言ったら、エサレン研究所のゴードン所長が来てくれたんです。エサレンというのは、もともとフリッツ・パールズが関係しています。

他にもエサレンマッサージの人達や、アンスルというケント大の名誉教授も来てくれました。そういう人達も、学会だからというクレジットで協力してくれた。そういう意味では良かったです。

「学会ではどのようなことをしていらっしゃいますか?」

今、どういう風に制度を作ったらよいか、どういうことをどういう基準で、ステップで、学んでいったらよいか、というのを話し合っています。

ゲシュタルトはプログラムというか、基本的にはワークを学んでいきます。理論を先に学ばない。理論は所詮理論でしかない。

自分で自分のことを学んで行くために、自分が自分のことをちゃんと見つめる。そういう人しか教えることができないというのが、我々のゲシュタルトの立場です。

本を読んで、頭がいい人がノウハウだけでアプローチしても、それはそれでできるかもしれないけれど、あまりいいことではないと思っています。

「先生の今後の夢や展望はありますか?」

夢は、学会が学会として成り立ってほしいですね。ゲシュタルトは学術的ではなくて、体験的なタイプが多いので、もっとアカデミックな層の人達と一緒にできるような場になってほしい。これは、5年10年かけてそうなっていくと思います。

それから、大きい学会は二年に一度なんです。日本の大きい学会は東京か関西で、2年くらい一度にして、後は島でやろうと思っているんですよ。来年は石垣島を企画しています。学会は学問的なところでやりたいです。

個人的には年に1回か2回は海外に遊びに行きたいと思っています。今、海外でワークショップをしているので、そういうのが広がってほしいと思っています。

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「日本の心理セラピーの現状を海外と比べて、感じられることはありますか?」

アメリカとかオーストラリアとかヨーロッパとか、それぞれ国の事情が違うのですが、1つは大学の単位として、大学以外の講座も使えるということです。大学院の単位としても使える。

外国はそういうシステムができているからでしょうが、どこそこに行ったら何単位というのがあるので、そういう意味では1つの大学という枠だけでこじんまりとしない。融通が利く。

ところが、日本では、例えば大学の心理学科なり心理セミナーがあったとして、大学以外のところで学びに行ったとしても、学校の先生は認めないでしょう。

それからもう1つは、ゲシュタルトに限らず、いくつかのセラピーが保険点数として認められているようです。

僕がオーストラリアのトレーニングコースに先々週行った時、ポパイみたいな男性がいて、彼はドラッグのリハビリで来ていた。多分、個人で無料か安い金額で来られるような制度があります。

オープンでもあるし、広がりが違います。日本は、正式に国がセラピストとして認めるというものがほとんど無い。

「海外の方が心理セラピーを正式に認めているということですか?」

日本は、国が正式に認めているものが少ないから、カウンセラーとかセラピストというのは自称の“なんちゃってセラピスト”なわけです。

そこでちゃんとやりたいというところは、学会を作ったり、専門の大学を作ったり、いろんなものを作って、質を上げていこうと思っているみたいなんですが、社会的なサポートが違います。

ただ、外国の方がその分厳しい条件があります。アメリカの場合は大学院を出ないとセラピストと言えないかもしれないし、州によってテストがある。それを受けない私は、カウンセラーとして開業できないですよね。

「そのあたりは日本も変わっていくのでしょうか?」

変わっていってほしいような、ほしくないような感じです。というのは、僕は、カウンセラーとか心理療法の人が、頭のいい人ばっかりになってほしいと思わないのですよ。ある特定の大学院でないとカウンセラーと呼ばないとかいうのは、変な話でね。

悩みがあって、その時に頭で解決できないから行き詰る。人生って挫折するわけじゃないですか。そういう時に頭のいい人たちが、頭がいいだけでセラピーするというのに反対なんです。

今、小学校で不登校が多いと言われています。ほとんどの学校の先生が有名な大学しか出ていない。教える側の先生達はクラスのエリートでしかなかったわけですよね。

小学校にはピンからキリまでいるので、そういうレベルから見れば、クラスの半分以下は落ちこぼれじゃないですか。落ちこぼれ側から教える人間が出た方が、より救えますよね。

「子どもは嫌いだけど、職業として安定している」とか、「給料体系が崩れない」とかいう理由で、頭のいい人が先生になっても、そういう人が本当に子どもの気持ちがわかるのかなという気がします。

だから、「とにかく子どもが好きで、教えたい」という人が先生になったら、もしかしたら、今の子ども達の問題を半分解決できるんじゃないかと思います。

心理カウンセラーも同じで、頭のいい人たちばかりがセラピーをするのには疑問がある。セラピストになるんだったら、むしろ心理学と関係ない人生を十年送ってからなるという方がよっぽど役に立つと思います。

ただそういう時に、クレジットをどうするんだとか、質はどうするんだとか、問題はもちろんありますよね。

「先生のワークに来てほしい方というのはどんな人ですか?」

中年のおじさんに来てほしいですね。中年のおじさんはかわいそう。

女の人は、カウンセリングなんかしなくたって、「これが美味しい」とか、自分の感性をはっきり言う訓練を初めからしているじゃないですか。しかも小さい時から、こっちのグループ、あっちのグループにくっついて、人間関係も渡り合っている。

男はそういうことができない。がちっとしか生きていけない人が結構多い。がむしゃらにやることはできる。頑張ってやることには慣れているけれど、楽しむことができない人が多い。

中年の男は頑張って、我慢してやっと課長になれそうと思ったら、会社が潰れたりリストラになったり。今ものすごく多いですからね。そういう意味では、あまり1つの組織に依存しすぎないでほしいと思うし、もっと自由になってほしいなという気がします。

あとはね、何か個性的なことをしている人に来てほしい。問題を抱えているのではなくて、何か個性的なことをやってる人が来てくれると、もっと先が見えるというか、自分のやりたいことがもっと明確になりますよ。

「心の仕事に就こうと思ってらっしゃる方へ、先生からメッセージをお願いします」

まず、心の仕事以外のことで社会生活をちゃんとしてから戻ってきてほしい。そこが一番だね。いろんな経験、人生というのを経験してから興味を持ってほしい。

若い時からカウンセラーになりたいとかいうよりは、子育てが終わったからとか、芸術に興味があるとか、いろんな経験をした人が来てほしいし、そういう人になってほしいです。

「この仕事をするにあたって、大事にしてほしいことはありますか?」

大事にしていることは、やっぱり基本的には自分の感覚、自分自身を信じられるようになってほしいです。

ゲシュタルトが目指すところとしては、どんなに人と違ってもいいし、人と違う感覚でもいいし、人と違う考えでもいいし、そういうことを貫いてきた人、あるいはそういうことを大事だと思う人になってほしい。社会の中に当てはめるのではなくてね。

カウンセラーというと、優しくて、包容的で、困っている人を手伝う人っていうイメージがあるけれど、できればそういうジャンルでくくってほしくないです。


「悩みを抱えてらっしゃる方へのメッセージがありましたら、お願いします」

悩みを抱えているというのは、たぶん新しい出発点のエッジにいる。そこをクリアできたら、新しい世界が広がるから悪いことではない。むしろ、悩みがないといって安全な世界にいるよりはいい。それは変化が無いわけですよね。

悩みがあるというのは、そこは何か自分にとってのサイン。無理矢理無視したり、無理矢理こじ開ける必要はないけれど、きっと、その先に何かがあると思います。

「辛さを抱えている方は、まず何をしたら良いでしょう?」

三つの領域のどこに、自分の意識が、一瞬一瞬行っているかということを意識してほしい。

悩みというのは、悩みという世界に振り回されている。でも、自分がどうしてそこに意識が行っているのかということに気がつけば、違うところにも意識が行くわけです。そこに意識が行っていることに気がつかないから、そこに居続けてしまう。

意識がどこに行くか選択できるように人間はできています。選択できる自分を取り戻せる能力は、みんな持っているのです。

<編集後記>

「今、ここ」を生きるとはどういうことなのか!
善い悪いはなく、起きていることが自分を映し出している。
そして、それは誰もが自分の中に持っている「未完了」の思いを
気づかせてくれるサインでもある。

言葉だけではなく、非言語のメッセージ、体の声に意識を向けて
いくことが、奥深くにある自分の感情に気づいていくことに繫がって
いるんだということを、インタビューを通して感じました。

自分の「未完了」の感情と向き合うというのは、勇気がいることです。

セラピストの在り方は、クライアントが自分自身の感情と向き合う
勇気をサポートしていくのではないでしょうか。
百武さん在り方が、それを物語っているようでした。

百武 正嗣(ももたけ まさつぐ)  NPO法人ゲシュタルトネットワークジャパン理事長
                     日本フェルデンクライス協会理事
                     日本ゲシュタルト療法学会理事長

ゲシュタルト療法をパールズの弟子であるポーラ・バトム博士(Paula Bottome Ph.D) に学ぶ。
ポーラは1985年に来日し、ゲシュタルト療法を広めるためにGNPRを設立する。その事務局を引き受ける。2001年にポーラが亡くなった後を引き継ぎ、現在のNPO法人GNJをポーラの弟子である人たちと設立し普及に努める。
また、2003年から全国のゲシュタルトセラピストの連絡協議会を開催し、より広く一般へのゲシュタルト療法の普及を願い、日本ゲシュタルト療法学会を設立する。
中央大学理工学部卒。カリフォルニア州立大学大学院心理学科卒。


<NPO法人ゲシュタルトネットワークジャパン(GNJ)のHP>
【NPO法人ゲシュタルトネットワークジャパン(GNJ)】

<日本フェルデンクライス協会のHP>
【日本フェルデンクライス協会】
<日本ゲシュタルト療法学会のHP>
【日本ゲシュタルト療法学会】
<百武正嗣先生の著書>
cover
気づきのセラピー はじめてのゲシュタルト療法



cover
エンプティチェア・テクニック入門―空椅子の技法

インタビュアー:奥原 菜月

奥原菜月

フリーライター、占い&カウンセラー(奥原朱麗)として活動中。
夫と子供2人、犬1匹で横浜に生息中。

占い・カウンセリング・開運などをメインにしたブログ
『占いカウンセラー朱麗のまったり開運日記』

HP:アストロ・ハーティ「朱麗の占いカウンセリングルーム」

インタビュアー:鈴木明美

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren

インタビュアー:村上友望(ともみ)

村上友望

今は普通のOLをしながら、セラピストとして活躍できるよう勉強中です。
出会った方々の幸せな笑顔をサポート出来たらと思っています。

ヨーガセラピスト ソース公認ベーシックトレーナー
パステル和アートインストラクター ジュニア野菜ソムリエ
アロマテラピーアドバイザー キャンドルアーティスト
ブログ:http://ameblo.jp/ohisamakokoro/

インタビュアー:広江俊介(ひろえしゅんすけ)

広江俊介

心のボイスレッスン 代表
都内で声と言葉をテーマにしたメンタルセラピー、
ゴスペル音楽による発音・発声のレッスン、自己表現力の磨き方を
指導しております。

現在、一般のビジネスマン、OL、カウンセラー、セラピスト、教師、
コンサルタント、俳優、声優の方まで多岐に渡り、教えております。
プロボイストレーナー、プロギタリスト講師
ブログ:『心のエバーグリーン。』

インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント
 

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