第52回目(1/4) 百武 正嗣 さん ゲシュタルトネットワークジャパン

ゲシュタルト療法は「気づき」に焦点を合わせていく

今回のインタビューは、日本ゲシュタルト療法学会理事長、
ゲシュタルトネットワークジャパン(GNJ)理事長の
百武 正嗣(ももたけ まさつぐ)さんです。(「先生」はNGだそうです)

百武さんは、ゲシュタルト、フェルデンクライス・メソッド、ヨーガを
取り入れた「気づきのセミナー」を全国各地で開催されています。

GNJは、精神分析医 フリッツ・パールズの直弟子の
故ポーラ・バトム女史が日本で広めたゲシュタルト療法のアプローチを
引き継いで、「今ここでの気づきの流れを体験すること」を基本に、
ゲシュタルト療法を深め、ネットワークを広げる活動を行っています。

自分の身体感覚や感情、気になることや未解決の問題などに焦点を当て、
自分自身に気づきを向け、「今ここ」での体験を通じて完結し、統合していく
ゲシュタルト療法について、百武正嗣さんにお話をお伺いしました。

インタビュー写真

「百武先生・・・」

「百武さん」と呼んでくれる? 上下関係を作る言葉は使わないようにしたいので。(笑)

「では、百武さん、大学時代のご専門は理系だと伺っていますが?」

大学の時は間違って理工学部に入ったんです。僕らの時代は、大学に入れば好き勝手できるという大学紛争の時代だったので、入れる所に入っただけなんです。

入ってみたら、理工学部は合わないというのがわかって、いろいろ本を読んでいたら、心理学の本が面白かったんですね。

「心理学の方へはどのように移行していかれたのですか?」

大学を卒業してサラリーマンを一年やったのですが、やっぱり合わなくて辞めました。理科系の事でなくてやりたい事というのが心理学の勉強でした。

日本の大学の社会心理の夜学に一度入りましたが、大学紛争がまだ続いていてあまり勉強する場所ではなかった。僕もちょっと学生運動はやったんだけど、学生運動も自分の性に合わなかったんですね。集団で何かしようっていうのが嫌いで、すぐ辞めました。

「アメリカに行こうと思われたのはなぜですか?」

ずっと心理学には興味があって、勉強しようと思っていました。
最初は、『自由からの逃走』とか、『孤独な群衆』とか、社会心理の本ですね。集団の中の人間の生き方というのを心理学的な視点から観察した本、そういう本を読んで面白いと思いました。

それまで読んで面白かった本は全部アメリカ人が書いていました。だから、アメリカに行って勉強しようと思って行ったのです。

僕が26歳くらいの時に行ったんですが、英語が大学の時、全部「不可」だったので、大学に入れない事に気がつきました。

その当時アメリカは豊かだったので、アメリカという土地に入ったら、アメリカ人として扱っている。英語をしゃべれない人にはアダルトスクールという無料で勉強できるところがあったんですね。それで、そこに入って英語を勉強しました。

日本人も何人かいたけれど、みんな英語が好きで来ているから、3カ月くらいでTOEFLの英語のテストがあって、大学に入っていきました。僕は英語をしゃべれなかったので、2年くらいかかったんです。大学に入ってから、心理学の勉強を始めました。

「なぜカリフォルニアを選んだのでしょう?」

心理学の勉強のために選んだわけではなくて、たまたまフリーのスクールがあるという事で、カリフォルニアに行ったんです。

そこの土地が自分に合ってましたね。気温はだいたい40度くらいが普通。Gパンを一つ持っていれば、洗っても5分くらいで乾くから1年中過ごせる。

大学も日本の大学と違って、学生の半分くらいは一度勤めてて、自分の仕事のキャリアを上げていくために大学に入る人とか、充分に働いてお金が貯まったので大学に戻って勉強したい人とかが多かった。高校から大学に行くのは半分くらいで、いろんな人間がいました。

「アメリカの大学に入ってみて、いかがでしたか?」

面白かった。生まれて初めて一生懸命勉強しました。

何が面白いかっていうと、10人位のクラスがあって、グループのエンカウンターがあるんです。そこで先生が最初に自分のことを言った時のことです。彼は60歳位だったんですが、メキシコの国境に18歳の彼女ができたと。

「俺は結婚するかどうか迷っているんだ。どうして迷っているかというと、既に1回離婚していて、離婚する時に財産が半分になった。18歳の子と結婚してもまた別れるかもしれない。その時にまた財産が半分になるのが嫌だ」って、言ったんですね。すごくびっくりしました。

その話を聞いて、初めて本当のことを言う授業があるとわかった。みんなもいろんな、自分の本当のことを言っていて面白かった。

「最初はエンカウンターグループから始めたのですか?」

クラスとしてあるものや、クラスの単位ではない講座などで、ゲシュタルトや、交流分析の授業を受けました。面白かったのですが、あまりインパクトがありませんでした。

この男の先生のクラスは、半分が女性で、半分が男性だったんです。半年続きましたが、結婚していた人もその間に別れたり、クラスの中でくっついたりしててね、非常に面白い。日本ではあまりない。

グループの中でやること自体は好きだったので、こういうことをやりたいなと思っていました。心理学でそうしたものを探していたんですが、あまり自分でやりたいと思う心理学がなかったのです。

インタビュー写真


「その後、日本に帰っていらしてからはどうなさいましたか?」

大学院を卒業して、32歳から34歳位の時に日本に帰ってきて、ある企業の心理相談室に勤めました。そうしたら、雰囲気が暗くて合わないんですね。そこには1年しかいませんでした。

その心理相談室にいた医者が、「お前みたいのは中小企業の方が合っているから」と言って、「新しくできた予防医学協会というところに勤めたらどうだ」と、紹介してくれました。今では人間ドッグなどもやっていますが、当時は学童の健康診断をやっているところでした。

日本には各県にひとつずつ予防医学協会があり、僕がいた神奈川県のところは、独立採算であまり天下りもいなくて、自由にできました。そこで健康教育、栄養指導とか保健指導があって、体やメンタルを扱うのが僕の仕事でした。

「ゲシュタルト療法をやろうと思われたきっかけは?」

予防医学協会にいた時に、ゲシュタルト療法を作ったフリッツ・パールズの直接の弟子のポーラ・バトムという先生が日本に住んでいたんです。

たまたま、ポーラ・バトムさんのワークショップがあるのを知って、行ってみました。彼女のやり方を見て、これならやりたいと思いました。それでゲシュタルトを始めたのがきっかけなんです。

「最初にやったワークを覚えていますか?」

ポーラが最初にやったワークが、父親とのワークだったんですね。

僕の父親は大きい企業にいて、日本を転々としていた。僕はどこにいってもすぐ友達ができるので、あまり気にならなかった。ただ親父はアル中に近い酒飲みだった。毎日酒を飲んで、暴力を振るうのではなく、寝てしまう。交番から電話がきて、母が僕を連れて引き取りに行くことも何回かあった。

高校の時に秋田に転勤になり、冬は門から玄関までの間で寝てしまったら凍死しちゃう。だから、起きていて、父親を布団まで持っていくのが僕の役目だったんです。父親は酒を飲み過ぎて、僕が20歳の時にガンで死んでしまいました。

そういうのを見ていて、酒は飲むまいと思っていたし、大企業で働くのは嫌だ、父親みたいになりたくない、あんな組織の為に一生懸命にやったり、その不満を酒でごまかす人生は送りたくない、と。

その気持ちは20代後半まで、ゲシュタルトをやるまでずっとあって、サラリーマンは嫌だと思っていました。

「ポーラ・バトムさんのワークで、それが楽になった?」

その時に、ワークをして父親の墓と対話しました。人が周りに一杯いたけれども、その前で泣いて、自分の人生の報告をしたんですね。「小さい娘ができました。今度お父さんの墓に連れて行きます」そういうワークをしてから父親との葛藤がなくなった。

父親みたいになるまいっていう意識がなくなってきました。「お父さんにはお父さんの人生があった。だから僕はとらわれなくていい」。

おかげで毎日お酒が飲めるようになって。それ以前から飲んではいたんだけれども(笑)。そういう意味では楽になりました。

「ゲシュタルトに深く入っていかれたのは、そこからですか?」

ポーラのやり方からです。すごく気に入りました。ゲシュタルトは、かなりストレートな関係で、「あなたは何を本当はしたいの?」みたいな問いかけが強いのですが、彼女はとてもソフトだったんですね。

その人がやりたいことに気がつくのをずっと待っていて、すごく受容的だったんです。そういうやり方ならいいかなぁと思いました。

ゲシュタルト療法というのは、特にマニュアルがない。理論を優先しないので、やる人のスタイルというのは全部違うんですよ。その人のスタイルがあって、その人のやり方ならいいなっていう感じもある。

「ゲシュタルト療法には、いろいろなやり方があるのですね?」

基本的にゲシュタルト療法っていうのは、気づきということに焦点を合わせていきます。気づきというのは無数な出来事があって気がつくのであって、1つの方法で気づく必要はない。

例えば、絵を描いて、自分でその絵を見て、自分でどう感じるかを表現していくアートセラピーも、実はゲシュタルトのやり方から生まれているんです。

ダンスで音を聞きながら体を動かしていき、自分の体に意識を向けながら、何に気がついているかということをみるのも、ゲシュタルトの1つの方法として生まれています。

「エンカウンターとゲシュタルトとの違いは何でしょう?」

エンカウンターというのは、指導者は自然にその中から生まれたり、反発したり、グループ全体でやっていきます。一方、ゲシュタルト療法は、気づきということに焦点を当てるファシリテーターという人が1人いて、その人とのやり取りを中心に進めていくのが違うんです。

ファシリテーターが僕の役目です。そういう意味で、心の問題であろうと体のことであろうと、その人が何に気がついて、どういう風にしたいかということをサポートするのがゲシュタルト療法なんです。

「他の心理療法とはどういう違いを感じられましたか?」

他の心理療法はあまり勉強していませんが、例えば、今、ロジャーズのカウンセリングが流行っていますね。基本的には言葉を使ったやり取りです。その人が考えていること、気がついたこともすべて言語を通して、思考でお互い関係性を作っていく。

ところが人間というのは、言葉や思考で論理的なことをいくら言ったって、そう簡単に変わらないわけじゃないですか? だからみんな困るんです。

いくら論理的なことを考えるアプローチをしても難しいことが多い。本当に自分が何をしたいのか、どうしたらいいのかというところは、体の感覚の方が大事です。ゲシュタルトは、体の感覚を大切にするんです。

                 

(次回につづく・・)

百武 正嗣(ももたけ まさつぐ)  NPO法人ゲシュタルトネットワークジャパン理事長
                     日本フェルデンクライス協会理事
                     日本ゲシュタルト療法学会理事長

ゲシュタルト療法をパールズの弟子であるポーラ・バトム博士(Paula Bottome Ph.D) に学ぶ。
ポーラは1985年に来日し、ゲシュタルト療法を広めるためにGNPRを設立する。その事務局を引き受ける。2001年にポーラが亡くなった後を引き継ぎ、現在のNPO法人GNJをポーラの弟子である人たちと設立し普及に努める。
また、2003年から全国のゲシュタルトセラピストの連絡協議会を開催し、より広く一般へのゲシュタルト療法の普及を願い、日本ゲシュタルト療法学会を設立する。
中央大学理工学部卒。カリフォルニア州立大学大学院心理学科卒。


<NPO法人ゲシュタルトネットワークジャパン(GNJ)のHP>
【NPO法人ゲシュタルトネットワークジャパン(GNJ)】

<日本フェルデンクライス協会のHP>
【日本フェルデンクライス協会】
<日本ゲシュタルト療法学会のHP>
【日本ゲシュタルト療法学会】
<百武正嗣先生の著書>
cover
気づきのセラピー はじめてのゲシュタルト療法



cover
エンプティチェア・テクニック入門―空椅子の技法

インタビュアー:奥原 菜月

奥原菜月

フリーライター、占い&カウンセラー(奥原朱麗)として活動中。
夫と子供2人、犬1匹で横浜に生息中。

占い・カウンセリング・開運などをメインにしたブログ
『占いカウンセラー朱麗のまったり開運日記』

HP:アストロ・ハーティ「朱麗の占いカウンセリングルーム」

インタビュアー:鈴木明美

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren

インタビュアー:村上友望(ともみ)

村上友望

今は普通のOLをしながら、セラピストとして活躍できるよう勉強中です。
出会った方々の幸せな笑顔をサポート出来たらと思っています。

ヨーガセラピスト ソース公認ベーシックトレーナー
パステル和アートインストラクター ジュニア野菜ソムリエ
アロマテラピーアドバイザー キャンドルアーティスト
ブログ:http://ameblo.jp/ohisamakokoro/

インタビュアー:広江俊介(ひろえしゅんすけ)

広江俊介

心のボイスレッスン 代表
都内で声と言葉をテーマにしたメンタルセラピー、
ゴスペル音楽による発音・発声のレッスン、自己表現力の磨き方を
指導しております。

現在、一般のビジネスマン、OL、カウンセラー、セラピスト、教師、
コンサルタント、俳優、声優の方まで多岐に渡り、教えております。
プロボイストレーナー、プロギタリスト講師
ブログ:『心のエバーグリーン。』

インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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