第51回目(3/4) 手塚 郁恵 さん くじらのしっぽ

否定的な感情や感覚は、いのちに気づく扉

インタビュー写真

「手塚さんがワークをされる時に一番大事にされていることは『実感』でしょうか?」

そうですね・・・実感といっても、何に対する実感か、ということですけれど、ワークをする時に一番大事なのは、今目の前におられるワーカーさんなのです。ですから大切なのは、この人に注意を集中して感じられてくる実感ですね。

今目の前におられるこの人は、注意を集中して感じようとすると、どんな感じでしょうか? 疲れているでしょうか? 緊張しているでしょうか? 戸惑っているでしょうか?今のこの人の姿が感じられてきます。

私は、今この人の中に二人の人がいるのを感じようとします。一人は、今見えているこの人です。その人をAさんとします。Aさんとは、今、表面的に、目に見え、聞こえ、感じられる、この人です。

もう一人は、Aさんの中にいて、ご本人も気づかない、全く知らない、もう一人の人です。このもう一人の人を“Bさん”と呼びます。そのもう一人の人も、ちゃんと、今ここにいるのです。

Aさんが、何も悩みなどないように、明るく笑いながら話していても、Aさんの中に、もう一人のBさんがいます。Bさんは、弱さを出してはいけない、嫌われるかもしれない、と怖くなって、何もないようなふりをしているのかもしれません。

Aさんが話していて、ふと涙がこぼれます。Aさんは何もなかったように、涙を無視して話し続けます。この涙は、もう一人のBさんの反応なのです。Bさんが何かを感じて、それが涙となって表現されているのです。

そのような表面から見えるAさんと、表面からは直接には見えないもう一人のBさんの存在に気づいていくのです。

「一人のAさんの中に、もう一人のBさんがいるのですね?」

そうです。いつでも、ひとりの人を全体的に見て、その二人の人、AさんとBさんを感じるようにします。

Aさんの中に、Bさんがいます。Bさんは、限りなく深い愛と賢さ、そして強さを持った不思議な“いのち”とつながっているのですが、本当はBさんは、その環境で生きるために姿を変えた“いのち”そのものなのです。

ここで“いのち”と呼んでいるのは、普通にいう生命ではなく、「生命の奥深くに働いている根源的な力」をさしています。

「すべての人は、身体、心、知性などだけでなく、大自然や宇宙とのつながりを持っています。人間の最も価値ある部分は、一人ひとりの生命の奥深くに働いている根源的な力です。私達は、これを〈いのち〉と呼びます。」
   「ホリスティックな教育理念の提唱」(日本ホリスティック教育協会 2002 年)

「Bさんに気づくということは、Aさんのいのちを感じるということですか?」

そうです。Bさんは、Aさんの無意識の中にある“いのちそのもの”の現れなのです。ですから、Bさんを感じる、ということは、Aさんの中にあるいのちを感じる、ということなのです。

いのちは次のようなはたらきを持っています。

いのちは、ひとつの方向性を持っていて、そこに向かって生きようとしている。
いのちは、深い愛と大きな知恵をもっている。
いのちは、どんな時でも、なんとかして生きようとしている。

いのちは、Aさんがとても大切な存在で、欠けたところなど何もないし、本来愛される価値がある、ということを知っている。
いのちは、傷つけられ、見えなくなっても、決してなくなることはない。(Bさんに姿を変えてAさんの中に生きている)

いのちは、自分がまわりの世界と深くつながっていて、自分がその大きないのちの一部分だ、ということを知っている。
いのちは、Aさんがユニークな、特別の存在であることを知っている。

ですから、たとえばAさんの中のいのちは、Aさんが人から軽蔑され、バカにされる、という体験をすると、何かが間違っている、と感じます。そこから出てくる“怒り”や、分かってもらえない“悔しさ”も、いのちから出てくる感情です。

その感情が、その人自身、その人のいのちの現れなのです。いのちは、自分がそう言われるような存在ではない、ということを知っているのです。

しかしその人は、自分の中にそのようないのちがあることには、全く気づいていません。それは無意識の中にあるものなので、一度も出会ったことがありません。そのようなものは自分の中にはない、と思っているのです。そんなことを考えたこともないのです。

自分はダメだ、と信じ切っているかもしれません。しかし、他の人から軽蔑されると、怒りや悔しさがどうしようもなく出てくるのです。

意識的レベル・言葉レベルで考えている限り、怒りや悔しさが出てきても、そこに気づくことはできません。

怒りや悔しさはたいてい、「あの人からひどいことを言われたからだ」というような表面的な理由だけで片づけられてしまいます。そして、その怒りや悔しさを誰かにしゃべって、同情してもらうことですっきりしてしまい、発散されてしまうのです。

インタビュー写真


「手塚さんがその人の中のいのちを実感されるのは、ワークからですか?」

そうですね。ワークではいのちの現れのような感覚や感情が出てきます。普段の日常生活の中でも、怒りや悔しさは出てきますが、その奥には何があるか、という発想がないのです。

否定的な感覚や感情は、重たい、いやな感じですから、早く吐き出して流してしまった方がいい、と考えるのです。それが世間一般の常識ではないでしょうか?

ですから私達のワークでは、世間一般の常識とは全く違った、逆の考え方をするのです。それが、いのちに気づく扉なのです。

「では、手塚さんのワークでは、否定的な感覚や感情を大事にするのですね?」

その通りです。
否定的な感覚・感情の出てくる根っこには、その人を生かしている“いのちそのもの”があるのです。

ですから、自分の問題――つまり、自分の困った行動や思いや感情――を、ワーカーさんが自分でなんとかしようとか、自分で変えようとか、あるいは、サポーターが、自分の力で解決しよう、なくそう、としていくと、いのちとの出会いの道がふさがれてしまうのです。

「否定的な感覚・感情はサインなのですね。それが本当の自分と出会うチャンスなのに、それを見逃すとそのチャンスを失うのですね?」

そうです。それこそが、私達、全ての人の“根源的な問題”なのです。

頭の思考や知識だけで、ネガティブなものを解決してしまうので、自分の身体の感覚の意味にも気づけず、無意識から出てくる直感やインスピレーションにも気づけず、自分の中にあるいのちにも気づけないのです。

そして、頭の思考や知識だけで生きていくことになり、人間としての全体性を喪失し、自分というものをなくしてしまうのです。そして、他人の言葉を生きる手がかりにして、自分の人生を生きていくことになるでしょう。そこには自分を生きるという感覚がなくなるのではないでしょうか?

「ワークの中で、その人のいのちがはっきりと出てくることがありますか?」

ええ、それはもう、毎回のセッションで出てきます。例えば簡単な例をあげますと、次のようなことが起こるのです。

ある日のワークショップの中でのことです。みんなで話している時に、「本当に人の魂がゆさぶられ、深い感動から人が変わるのは、その人のいのちを本気で大事に思っているこちらの気持ちが伝わる時だよね」という話になりました。

その時、Uさんが涙ぐんでおられたのです。みんなの言葉から、Uさんの中に何かがこみあげてきたのでしょう。それは、悲しみかもしれません。

「今、何か悲しみが出てきているのかなぁ・・・その悲しみは、何を感じているのだろうか?・・・何かコトバになる?」Uさんに声をかけると、Uさんは言います。

「私には、その人のいのちを、ほんとに大事と思う気持ちがないの。自分にはそれがないなぁと思ったら悲しみが出てきて・・・」Uさんはそう思っているのです。多分、ずっとそう思ってきたのでしょう。そう思うと涙が出てきます。

普通の関係なら、「そんなことはないよ」とか、「あなたは人のいのちを本当に大事に思っているよ」などと慰めたりするでしょう。しかし、いくら慰められてもその思い方は変わりません。それどころか、誰にも分かってもらえない、やっぱり自分はダメなんだと思ってしまうかもしれません。

私達のワークでは、Uさんがそう思いこんでいるには、きっとワケがある筈だと仮定します。そして、アタマで思い込んでいることと、体の感覚を手がかりにして無意識の中から出てくることは、きっと違う筈だと推測します。そこで、この仮説を確かめるために、実験をしてみるのです。

「実験をするのですか?」

そこでアタマで考えるのはちょっとお休みして、感覚に注意を向けていただくのですが、そのために私達はマインドフルネスという方法を使います。

これは、リラックスして座り、目を閉じて、自分の内部の体の感覚に注意を集中するのです。そうすると、自分の中に起こるかすかな感覚にもちゃんと気づけるようになります。

ここでも、Uさんにちょっとマインドフルネスになっていただいて、今、Uさんが言ったコトバを、他の人が声にして言ってみます。そのコトバを自分で言うのと、マインドフルネスの状態になって誰かに言ってもらうのとでは、まったく違った反応が起こるのです。

Uさんの体の中ではどんな反応が起こるでしょうか?
「あなたには、その人のいのちを、ほんとに大事と思う気持ちがない」
すると突然、Uさんのアタマの右側がものすごく痛くなりました。

このコトバに対して、アタマはすぐに反応したのです。不思議なことですが、コトバによって体にこんな変化が起こります。

普通は、痛みが出てきたら、その痛みをなくそう、和らげようとするでしょう。しかし、私達のワークでは、そのコトバで出てきた痛みには、きっととても重要な意味がある、と推測します。

普段はそういう痛みは感じないように、あるいはすぐに流すようにしているでしょう。でも、私達は、その痛みがもっと強くなるようにサポートするのです。

今のUさんのコトバを、みんなで何回か言ってみます。
「あなたには、その人のいのちを、ほんとに大事と思う気持ちがない!」強く、冷たく、はっきりと、断定するように言ってみます。その感覚をとことん、感じていただくのです。

「とことん感じていただくのですね?」

この声は、Uさん自身の中で、自分に言ってきたコトバでしょう。おそらく何十年もの間。そこで何が起こってもOKです。のた打ち回るような痛みや苦しみが出てきてもOKです。それは、これまでUさんの無意識の中で起こっていた痛みなのです。ただ、感じないようになっていただけなのです。

その言葉を聞いていたUさんの中から、突然、全く違った言葉が出てきます。しかも、はっきりした口調です。

「くやしい! あたしほどそう思ってる人はいない! だって、いちばんだいじなものだもん! わたしはいつもそうだった! わたしの基本中の基本だよ!」

「え? 誰が言ったの?」そんなコトバが出てきて、一番びっくりしたのは、当の本人のUさんでした。「え? こんなコトバが自分の中から出てきた! これ何?」

今まで思っていたこととは、あまりにも違うのです。これは、今まで一度も思ったこともないコトバだったのです。

「自分は人間が嫌いだと思っていた。他人はどうなってもいいと思っていた。他人に関わるのは面倒くさいと思っていた。やりたくない、やれない、と思っていた。自分にはそれがないと思っていた。ものすごいビックリ!! ビックリ仰天!」

Uさんの中に、ふと過去の記憶が浮上します。そういえば、小さい頃から母親に、「あなたは人の気持がちっともわからない。いつも自分勝手で、自分中心で、自分のことしか考えていない」と言われてきたのです。

そのコトバが自分の中にしっかりインプットされて、無意識のうちに信じ込みになっていたのでしょう。そうすると、Uさんの人生は、その信じ込みを手がかりにして生きるようになっていきます。ここでふと出てくる過去の記憶は、信じ込みの生まれた象徴的な出来事で、とても大切な意味を持っています。

この声が自分の中にあること、そしてずっと前からあったことに気づくと、Uさんの表情も姿勢も、全く違って、とっても嬉しそうです。嬉しそうな笑いもいっぱい出てきます。周りのみんなの祝福をいっぱい受けて、このセッションは終わりました。

本当にシンプルな短いセッションですが、そこで起こったことはUさんを全く変えてしまうような出来事だったのです。「このコトバによって、自分の人生がここまでつぶされてきたのだ!」気づけば、そんなシンプルなことだったのです。とても感動的でした。

「手塚さんのパワーの源はそのあたりでしょうか?」

そうですね。誰も思ってもいなかったことが突然出てくるのです。いのちはこのことを知っていて、これを伝えたかったのでしょう。これが、ワークの中で現れる「いのちの不思議」です。

このような体験は、喜びと感動、至福の体験です。私はこれに出会うために生きているのです。ですから、命のある限り、このワークをもっと深め、広めていきたいのです。

                

(次回につづく・・)

手塚 郁恵(てづか いくえ)  くじらのしっぽ いのちのサポーター
                セラピスト、ワークショップ・トレーナー、翻訳業、著述業、講師
                米国ハコミ研究所認定ハコミセラピスト
                AP(アクティブ・ペアレンティング)トレーナー
                日本ホリスティック教育協会顧問、東海ホリスティック医学振興会顧問

1936年生まれ。現在、神奈川県大和市の「ぽこぽこ」というごく普通の家を、セラピールームとして個人セッション、ワークショップなどを開いている。

 ★ 「ぽこぽこ」での講座 (大和市民活動推進補助金事業)

従来は、さまざまな子どもの困った行動は、お母さんが甘やかすなど、子育てのしかたの問題だと考えられてきました。
しかし最近では、それは“愛着障害”といわれ、親子の絆が十分に持てなかったところから来ているということがわかり、そのような子どもへの対応も、これまでとはまったく違ってきたのです。
愛着の絆(アタッチメント)とは、親子の間に生まれるいのちの喜びの感覚であり、存在の全肯定です。そこから、安心感、一体感、信頼感が生まれてきます。

    1.マインドフルネスと体の感覚に気づく。
    2. 感覚に目覚め、得られなかった体験を満たしていく。
    3. どこに注意を向けるかで見えるものが変わる。
    4.相手の体の感覚に寄り添う。
    5.自分の今の実感に気づき、表現してみる。
    6.いのちの声を聞く。

日時:10/2、11/6、12/4、1/8、2/5、3/5 全6回 土曜日 9:00〜15:00
会場:中央林間「ぽこぽこ」(大和市中央林間1−19−21)
対象:子育て中のお母さん、妊娠中の方、子育てに関心のある方、自分を理解したい方。
定員:14名 参加費:無料(テキスト代、資料代は実費)
 これは、まったく初めての方でもおいでくださって大丈夫な会です。

<手塚郁恵さんのHP>
【手塚郁恵さんのプロフィール】
<手塚郁恵さんの著書・訳書>
『ハコミセラピー―タオイズムと心理療法』ロン・クルツ他著 手塚郁恵訳 1800円 春秋社
『ハコミ・メソッド―からだを手がかりに無意識とつながる』ロン・クルツ著 手塚郁恵訳・編
     1800円 春秋社
『ハコミを学ぶ―科学・魂の成長・サイコセラピー』ロン・クルツ著 手塚郁恵訳・編
     1800円 春秋社
『詩集 こころ ことば いのち』手塚郁恵著 1300円 (自費出版)
『CD  いのちのこえ』 詩・朗読 手塚郁恵 ハープ演奏 岩月悦子 2500円 (自費出版)
『会誌 くじらのしっぽ』隔月発行 60ページぐらいの冊子 年間購読料3000円

いずれも手塚までご注文ください。送料サービス。
Tel 046-276-0137,  Mail ikue_t@nifty.com
郵便払込口座 00240−7−20893 手塚郁恵

インタビュアー:下平沙千代

下平沙千代

ワクワクセラピー☆ソースで、一緒にワクワクしましょう!
日本一やさしい介護タクシー開業準備中です。賛助会員募集中!

ワクワクセラピー ソーストレーナー、NLPセラピスト
レイキヒーラー、導引養生功指導員、成年後見人講座受講中
トラベルヘルパー、ホームヘルパー2級、女性タクシードライバー
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』

インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren

インタビュアー:志田祐子

志田祐子

志田祐子です。
臨床心理士の方との出会いをきっかけに、心理学を学び始め、
色々なご縁があって今は心理カウンセラーを目指しています。

心に悩みをもった人の少しでもお役にたてるよう、
五感を使って癒せる心理カウンセラーになれるよう、
日々試行錯誤です・・・。
ブログ:発達支援教室ホーミーズ

インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント
 

  • 呼吸法の日本マイブレス協会
  • 毎朝1分 天才のヒント

インタビュー集

  • 毎朝1分天才のヒント メールマガジンで30日間の無料レッスン
  • さぱりメント あなたのお悩みをさっぱり解決