第49回目(1/4) 岩井 俊憲 先生 ヒューマン・ギルド

アドラー心理学とは、目的論の心理学・勇気づけの心理学

今回のインタビューは、アドラー心理学実践の第一人者で、
「ヒューマン・ギルド」代表取締役の岩井 俊憲(いわい としのり)先生です。

先生は、『勇気づけの心理学』や『心の雨の日の過ごし方』などの多くの著書で
おなじみかと思います。
カウンセリングのほか、アドラー心理学に基づく各種講座を開催され、
企業・自治体・教育委員会・学校での研修・講演でも大活躍されています。

「自殺者3万人」「引きこもり70万人」の今の日本の現状を、
「勇気欠乏症」に陥っていると、憂慮なさる岩井先生。

「勇気の伝道師」岩井先生に、「誉める」と「勇気づける」の違い、
自分も他者も「勇気づける」アドラー心理学の神髄、
そして、今後のご活動や展望についてお話を伺いました。

インタビュー写真

「先生は、元々は心理学がご専門ではなかったと伺っていますが?」

そうですね。大学は商学部ですからね。うちの父親が中堅企業の経営者だったんですよ。私は末っ子なんですが、自分がなんとかしなくちゃいけないなって、商学部に行ったんですよ。だからビジネスをやろうとしていました。

ところが、大学の1年生の2月に父親の会社が倒産しちゃったんですよ。これは無理だってことで、コンサルタントになろうとしたんです。

商学部だから経営学を一生懸命勉強して、一旦企業に入って3年位で辞めて、コンサルタントに転向しようと思っていました。それで、23歳の時に中小企業診断士の試験を受けたら、一発で受かっちゃったんですね。

それで、コンサルタントにもなれるぞと思っていたのですが、会社の仕事が面白かったんですよ。それで、その会社に13年いました。

ですから、最初は、心理学で身を立てようという気持ちはなかったんです。心理学は好きでしたが、全く意図せざる世界でしたね。だから、子どもの頃から心理学に憧れていたとかではなかったんですよ。

「では、何がきっかけで方向を変えられたのですか?」

それが、35歳の時に、偶然3つの絆を失ったんですよ。

一つは、外資系の企業でサラリーマンをやっていて、GE(ゼネラル・エレクトリック)という会社の合弁会社でしたが、GEが資本を日本から撤収するということで、この会社を存続させる為には従業員を半分にしなくちゃいけない。そういう事業計画の立案部署だったんですよ。

それで、社長を説き伏せてリストラをやった。そして自分も辞めざるを得なくなってしまったんですよ。

そして、同じ時期に離婚したんです。30代から夫婦関係がおかしくなって、半年間『クレイマー・クレイマー』をやりました。二人子どもがいましたが、父子家庭ですよ。サラリーマンで、リストラをやりながら・・・。最後は母親のところへ子どもは渡して、財産も全部あげて。

だから1983年の3月末、仕事と家族と財産の3つの絆を一度に失ったんです。

「その後、どうなさったのですか?」

不登校の塾をお手伝いしたんです。なぜかっていうと、今までの経歴が全く通じない世界で生きようと思ったんです。色々な所から声が掛かったので、サラリーマンはいくらでも行けたけれど、35歳、そんなことをやってもつまらないと感じたのです。

それで、不登校の塾をお手伝いして、そこからなんですよ。35歳からの転身。全く計画外でしたね。

「その塾を手伝われて、どんな感じだったのですか?」

塾を手伝いながら、私一人でマンション住まいを始めました。たまたま岩手県から出て来た子がいて、その塾に収容しようとしたけれどスペースがない。それで、私の家で預かったんです。

17歳の家庭内暴力児。父親に対するもの凄い家庭内暴力で、腕にはリストカットの痕。その子を預かって、3年間生活を共にしました。そんないきさつで、不登校の塾に通い、そして家に帰ってくるとその子がいて、勉強を教えたり、そういうことをやっていましたね。

やがて、その子は定時制高校に編入して、大学に行きました。3年間預かっていたんですが、私の重大な師匠はその子だったって気がするんですよ。

「その少年には、どんな対応をなさったのですか?」

ごちゃごちゃ言わなかったんですよ。私が勤めに出る時、家にいました。することがないから大掃除するんですよ。家に帰ってみたらシンクも照明もピカピカになってるんですよ。「どうしたの?」と言ったら、「やることないから掃除してましたって」。

関わり過ぎると人間いじけるんですよ。放っておく。そうしたら、彼は貢献できることをやりだしたんです。洗濯までしてくれて、本当に助かりましたよ。

それがきっかけとなって、彼は「定時制高校に行きたいんだ」と。「あ、そう。そんな気持ちになったの。じゃ調べてみたら」って言ったら調べて、日比谷高校の定時制の三年に一発で編入できたんです。家に帰ると「これ教えて下さい」と言うんですよ。私も一生懸命教えました。

ニーズなきところサプライなしです。それが私のカウンセリングね。彼が頂戴と言った時に初めて提供するから有効だと思うんですよ。枯渇状態というか、そうなった訳です。私達は概して、お節介し過ぎると思うんですよ。

「それは先生が信頼して待っていたから?」

そうですね。だって策がなかったんですよ。彼は過去のトラウマ話を何回も何回もするんですよ。最初は聴いていました。途中から「それ聴いたような気がするんだけど」って。過去のネタを語り尽くすと、未来のネタを用意し始めるんです。

誘導した訳ではなく、彼のニーズから出て来ました。こうしたい、こんなところに行きたい、大学まで行きましたからね。今でも、彼からは時々連絡があるんですよ。

インタビュー写真


「アドラー心理学へと進んでいかれた経緯は?

だけど全然子ども達が良くならないんですよ。そして、お母さんを悪者にするんですよ。当時『母原病』という言葉が流行っていた時期。でも、全然良くならないんですよ。

ところが、たまたま研修で出会った「アドラー心理学」。これが非常に効果的だった。過去は問わない、原因探ししてもどうにもならない、という考え方です。

だって、例えばスキンシップが足りなかったからといって、私が預かった17歳の子どもに、母親がやってきてスキンシップ始めたら治るかっていうと、「止せ、気持ち悪い」って言いますよね。

そして、父親の虐待が原因だった。虐待を止めて、その子が仲良くできるかって、できない。消しがたい過去ですよ。

では、今から将来に向けて、できることは何か。こういう着目をするアドラー心理学が、ピタッとはまって、そこから、「よし、これで行こう!」ってことで勉強を始めたんです。

「アドラー心理学を本格的に学ばれて、いかがでしたか?」

最初は、大阪の野田俊作先生という方がいて、その先生が東京へ月に1回やってくる。先生のカウンセラー養成講座と勉強会に出ていました。そして、原因論について聞いたら、非常に面白い事を言っていたのです。

「何々が原因だって言うけれど、こんなの聞いてどうするの! 原因を正そうとしている間に何年も経ってしまう。だから、原因を探してもしょうがないんだ」って。そして、「不登校にも目的があるんだ」。その頃は登校拒否って言ってましたけれど、「目的があるんだ」って言うんです。

その目的を知りさえすれば、本人がこれからどうしていくかの援助ができる。何よりも、母親を悪者にしちゃならない。母親は協力者である。

それを「あなたが悪いんです。あなたがこうしたからです」って言われれば、勇気をくじかれて、「ああ、こんな私だから」ってことで、自分を責め続ける。そして子どもは、「母親が悪いんだ」ってことをやると思うんです。

これはナンセンスだということを、アドラー心理学で教えられました。

アドラー心理学は面白いもので、大きく言っちゃうと、原因論ではない、目的論の心理学。勇気くじきではない、勇気づけの心理学。徹底的に勇気づけをするんですよ。

ですから、17歳の子どもであっても、日々成長していることが分かる。そこで、「君は○○だね」って勇気づけていくと、明らかに眼が開かれ、私の手伝っていた不登校の塾にやってきては、困っている子ども達の援助者になるんですよ。自分も不登校で、元家庭内暴力でも。

いつまでも、自分をどうしてもらいたい、自分の心をどうして欲しいっていうのは、被害者でしかないと思うんです。そうではなく、貢献者にさせること。これが、アドラー心理学なんですよ。

だから、私は不登校の子ども達を見ていて、彼、彼女達が立ち直ったなって思うのは、学校へ行くことではないのです。他者の援助をする存在になることです。

そしてね、「何かしら自分という存在は必要な存在である。自分は役立つんだ」そういう思いに立った時に、「あっ、自立したな。一段、伸びたな」と、こういう風に思う訳です。

原因論のカウンセリングは、害悪だけだと思う。それが立ち直れるきっかけになる「いい原因」ならいいけれども、「誰かを責める、誰かを犯人・悪者にする原因論」というのは、私は撲滅すべきだと思うんです。

「先生がアドラー心理学を広めていこうと決意されたきっかけは?」

きっかけは、不登校の子ども達がみるみる良くなった。単に子どもが学校に行くだけじゃなく、家族が変わった。不登校の塾をやっていた時に、親の勉強会をやっていたんですよ。子どもを預かっていてもね、家に戻すとまた同じになっちゃうんですよ。家族が変わらなきゃいけない。

家族の勇気くじきのメカニズムをそのままにしておいて、子どもだけ変えようったって無理です。家族そのものが変わろうと決心し、夫婦関係を再構築し、子ども自身が居場所のある家庭を作る。大体、子どもが不登校になると、親の夫婦関係は悪くなるからね。

だから、子どもが不登校しようがしまいが、夫婦関係を仲良くさせよう、そういうことを心がけたんです。

「ヒューマン・ギルドを設立されて、最初はどんな展開をされましたか?」

最初は、子どもの社会性訓練プログラムを立ち上げたんですよ。子どもをいかに、社会性を身につけ、上手に頼む、上手に断る、権利と責任をしっかり学ぶ、そういうプログラムを1985年に作った。

続いて、SMILEという、親子関係を作る講座を作りました。これはもう3万人以上の人が受けています。これによって、親子関係を変えていく。

それプラス、アドラー心理学。色々な講座の中で、対人関係をしっかり守るような、メカニズムを作る。その講座を展開してきました。

「日本でアドラー心理学を広めていく上で、色々ご苦労もおありでしたか?」

どうしても日本は、最初は精神分析、フロイト派が強かった。フロイト派から、アドラーは裏切った弟子とされているんです。アドラーは一時期、ウィーン精神分析学会の会長をやっていたけれど、フロイトと対立して出たのです。

伝記には、アドラーって言うと「フロイトを裏切った弟子」とこう書いてあるんですよ。その悪宣伝で、アドラーって言うと、「あぁ、あの権力への意志のアドラーね」とか、そんなことばかり言われて、正しく伝わっていなかった。

それと、アドラー自身の文献が少なかった。今、段々、揃ってきましたから、これからアドラー心理学の時代はやってくると、確信を持っています。

「最初は、お仕事として、ご苦労がなかったですか?」

ありましたね。これは、資金繰りを含めて。アドラー心理学といっても、マイナーですから知る人が少ない。ですから、最初は受講生さんもなかなか集まらなかったですね。

もう一つは、我々のカウンセリングは、一人のクライアントに対してそう何回もやらない。一般的なカウンセリングは10数回ですが、我々は短期勝負なんですよ。3〜4回位しかやらないんですよ。そうなると儲からないんですよ。

私は、企業の研修はお手のものだったので、そのキャリアを生かして、企業研修を取り込んできて、企業研修を財務的な柱にしました。企業研修というベースを作り、そして、プラス・アルファで、アドラー心理学の普及やカウンセリングをやって来たのです。

                

(次回につづく・・)

岩井 俊憲(いわい としのり)  ヒューマン・ギルド 代表取締役 「勇気の伝道師」
                    アドラー心理学カウンセリング指導者、上級教育カウンセラー
                    中小企業診断士

カウンセリング&セラピーを行うほか、アドラー心理学に基づく各種講座、カウンセラー・トレーニングに従事。また、企業・自治体・教育委員会・学校などから招かれ、研修・講演を行っている。

  有限会社 ヒューマン・ギルド 〒162-0808 東京都新宿区天神町6番地 Mビル3階
  電話:03-3235-6741、FAX:03-3235-6625 メール:info@hgld.co.jp

● アドラー心理学ベーシックコース
アドラー心理学は、現代のさまざまの問題に具体的な解決法を与える実践的な心理学として、臨床現場はもちろんのこと、学校や家庭や企業でも、すでにさまざまに活用されています。
● SMILE(愛と勇気づけの親子関係セミナー)
親と子のコミュニケーションのみならず、先生と生徒、同僚とのつき合い方、すべての対人関係をより良くするのに役立ちます。
● アドラー・カウンセラー養成講座
ベーシックコースとSMILEを修了された方を対象に、カウンセラーを目指す方のためのコースです。
● ELM(エルム)勇気づけリーダー・トレーナー養成講座
「勇気づけ勉強会(ELM :Encouraging Leaders’ Manual)」のリーダー・トレーナー養成講座です。


<岩井俊憲先生のHP>
【ヒューマン・ギルド】


<岩井俊憲先生のブログ>
【岩井俊憲の公式ブログ】


<岩井俊憲先生の著書>

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勇気づけの心理学



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心の雨の日の過ごし方



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アドラー心理学によるカウンセリング・マインドの育て方



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勇気づけのリーダーシップ心理学

インタビュアー:下平沙千代

下平沙千代

ワクワクセラピー☆ソースで、一緒にワクワクしましょう!
日本一やさしい介護タクシー開業準備中です。賛助会員募集中!

ワクワクセラピー ソーストレーナー、NLPセラピスト
レイキヒーラー、導引養生功指導員、成年後見人講座受講中
トラベルヘルパー、ホームヘルパー2級、女性タクシードライバー
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』

インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren

インタビュアー:Rico Bonafede(リコ ボナフェデ)

リコ ボナフェデ

セラピスト
『五感が喜ぶカラフルマインドな毎日』をテーマに活動中。

以心伝心の文化を離れて暮らしたことから、
コミュニケーションのあり方と、
言葉そのものが持つ不思議なエネルギーに魅せられ、
そこに潜在意識と色を絡めたセッションを行なっています。
おしゃべりブログ:「やっと逢えたね♪」

インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント
 

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