第49回目(4/4) 岩井 俊憲 先生 ヒューマン・ギルド

悩みは、良き援助者になるためのリソースです

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「先生が、一番大切にしていることは何でしょうか?」

言行一致することです。自分が言っていることを自分が裏切っていたらダメだと思うんですよ。勇気づけなんて言いながら、感謝しましょうと言いながら、他人をけなしていたり、うらやんでいたり、それはやるべきことじゃないと思うんですよ。

私は、自ら言っていることは、実践する、そうありたいと思う。

もう一つは、相互尊敬・相互信頼です。単なるスローガンじゃなくてね、カウンセリングの場でも、相互尊敬・相互信頼に満ちて。例えば、私がやっていることはエレベーターの所まで、クライアントを見送ります。見送って、ドアが閉まった時、合掌しているんです。

そして毎晩、その時出会った方々ね、神棚、仏壇に祈るんです。お会いできたことを感謝して、神様、仏様、よろしくお願いしますって頼むんですよ。だから、翌日に持ち越さない。

非常にヘビーなクライアントさんが来ると、持ち越しませんか? あの人どうしてるかなって、あるでしょう? 私は神様、仏様に頼んじゃうから、私の責任は終わりなんです。

こんなこと言うとおかしいけれど、祈りみたいな形で、私の力が及ばない時に、他の人が、神様が、仏様がきっとその人に力を貸してくれるに違いないと信じているんです。だから、自分がいつまでも抱える必要ないと思うんですよ。

「相互尊敬・相互信頼を大切になさっているのですね?」

17歳の少年のクライアントなんですが、彼は色々な所に電話して、インテーク面接無料の所を受けまくっていたんです。私の所に電話して来て「無料のインテーク面接やっていますか?」と言うので、「やっていません。必ずお金は頂いています」と答えると、「高校生でお金がない」と。

色々話してみたら、何々先生の所も行って何々先生の所も行ってと言うので面白い子だなと思って、「一万円を五千円にするからそれでどうか」と言ったんです。無料にしてあげることは簡単なんですが、これは彼を尊敬してあげることなんですね。

彼は五千円を握りしめて来たんです。そしてカウンセリングを受けて帰って行った。その時に、私はエレベーターまで見送って、握手して「ありがとうございました」と頭を下げて合掌したら、バッとエレベーターが開くんですよ!

「カウンセリングに色々行ったけど、ここまで丁寧にしてくれたカウンセラーはいません」って言うんですよ。多くは椅子に座ったままじゃあねとか、ドアの所でまたねとかで終わり。ところがエレベーターまでついて行って、しかも見たら合掌してるじゃないかと。

私はカウンセラーの態度として「送り七分」と言っているんです。「迎え」と「送り」があると、迎える時だけ熱心な人が多いんですよ。いかにして来てもらうかとかね。ですが、送る時ほど迎え以上の精力を注ぐべきなんです。これが送り七分の発想だと思うんですよ。

彼は今、ヒューマン・ギルドの会員になって来ていますが、私は彼から学びましたね。やはり送り七分の精神で、それは相互尊敬・相互信頼の表れなんです。こちらが七分、あちらは三分で良いんです。

「勇気づけるという活動自体にも、エネルギーが湧いてくる効果がありますか?」

勇気づけには、ブーメラン効果があって、勇気づけただけ勇気は返ってくるんです。だから、勇気づけすればするほど、自己充電につながるんです。

助言したり、相手に対して観察をしたりすること自体が、我々は勇気づけそのものだから、関わりが全て充電効果なんです。

人を観ていると楽しいですものね。カウンセリングは、我々が普段調べたり読んだりしたら、えらく金額が掛かるものを、全部相手が示してくれるんですよ。こんな良い仕事はないですよ。

「勇気づけの充電効果は、学んでいる途中でもあるのですか?」

私は誰にもそうだと思う。他人を勇気づければ、勇気が足りない状態の人でも満ちて来ると思う。自分に勇気がないから勇気づけできないじゃなく、すればいいんです。カスカスでも、減るものじゃないです。

自己勇気づけすることが他者勇気づけになるし、他者を勇気づけすることで自己勇気づけにつながると思うんです。これはセットでやると良いと思います。他者を勇気づけばかりして、自分をないがしろにするのはやはり良くないですからね。

できた自分を勇気づけ、「ああ、今日は喜んでもらえたな」「こんなことできたな」とやると、他者を勇気づけすると共に、ますます自己勇気づけになってくると思います。自己勇気づけと他者勇気づけの両方を並行してやっていって欲しいですね。

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「ご本の中で、共同体感覚、つながり感覚が出てきましたが、分かり易く教えていただけますか?」

分かり易くとおっしゃいましたけれど、まずは、共同体感覚を分かりにくく言いますね(笑)。共同体、家族、地域、社会そういったものの所属感、共感、信頼感、貢献感、これを総称して言うものであって、精神的な健康のバロメーターです。

共同体感覚って言うと伝わりにくいので、つながり感覚、結びつきの感覚と、色々な言い方をしていますけれど、これはこの場だけじゃなく、過去からの伝承だと思うんですよ。そして、未来につなげるものだと思うんです。

自分は他者ともつながっている。この地球、宇宙ともつながっている。それだけでなく、過去のご先祖様とか、血のつながりは無いけれど、この文明を築いてくれた人達とも明らかにつながりの中に生きているんですよ。

そしてこれを将来、バトンタッチするんだと思うんです。空間軸でのつながり、時間軸でのつながり、これを意味するものが共同体感覚です。

ところが、どうでしょうか。30年間自分の父親が家にいて、部屋で白骨化していてそれを放っておいたという事件、考えられますか? そしてまた、自分の産んだ愛しい子どもを虐待死させる、考えられないでしょう?

こういうことが現実に起きているんですよ。これは共同体感覚の欠如。人間としての仲間、そして自分の命を育んでくれた親であり、ご先祖様なのに異常な世の中だと思う。

「何故、共同体感覚がこれほど希薄になったのでしょうか?」

壊す様な施策を色々取ったからです。歴史を否定したり、家族、地域、国家という共同体を崩壊させたでしょう。あまりにも自分の居場所についての結びつきを裂く様なことをやってきた。

具体的に言うと簡単ですよ。都市化、少子化、核家族化が、私はいわゆる共同体そのものの崩壊につながったと思うんですよ。

今、人間関係がおかしくなってしまっている。家族が家族として機能していない。一緒には暮らしているけれども、全然コミュニケーションが取れていない。

先日も、ある方がカウンセリングにやって来て、「子どもが三年間引きこもっている」と。「食事はどうしているんですか?」と聞いたら、「私達が寝ている時に勝手に食べている」と言うんです。

だったら「○○ちゃんへ、こういうの作ってあるから食べて」と一言、メモすれば良いだろうし、電子レンジすればもっと温かくなる。やれば良いじゃないですか。それもせずに「勝手に食べてる様よ。だけどあの引きこもり、なんとかしたい」これはないでしょう。

「まず、つながりを作る働きかけが欲しいですよね?」

両親二人とも学校の先生なんですが、「夫と話しなさい」と。子どもの部屋にはエアコンもないし、テレビもろくに見えないって言うんですよ。だから「家庭を憩いの場にしようよ!」と。

父親が協力的でなかったら、娘がいるんだから一緒になってテレビ観てワハハワハハやっていれば、引きこもりの子も来たくなりますよ。そこには空調も効いている、居たくなりますよ。

そして「食事どう?」とかね、そんな風にして居場所を作り、ちょっとした貢献の場を作っていくと段々変わっていくんだけれど、「引きこもりだからしょうがない。父親とは口をきかない」それはないだろうと思うんです。

会話し、しみじみとした手紙を書きなさいと、私は言ったんですよ。過去は問わずに、「あなたとはこんな風な関係を築きたい。お父さん、お母さんはこんなことを願っているの。こういう家庭にしたいの」と、こういう方向付けしましょうよと。

中三で挫折して三年間引きこもっていると言うんですが、大検がどうとかそういう問題ではないと思うんです。ホップ・ステップ・ジャンプであって、まずは家庭の居場所作りからです。

「できることから家族の絆を作りましょうよ。参加しないでいることが勿体ない位の家族の絆を作りましょうよ」と、そういう話をしたんです。

「心の仕事に就きたい方に、メッセージをお願いします」

一言で言うと「学問バカになりなさんな」ということですね。カウンセリングにとって、自分のリソースは書物の中にはない。

アドラーが「人間知」と言っている様に、人と出会い、自ら苦しみ、そうした中に自分のリソースが宿るのであって、何冊の文献読みましたとか、何々学会に所属してどうのこうのとか、そんなことばかりやっていてもカウンセリングの知恵はつかないと思う。

やはり人間観察、自分もボロボロになったり、人に対して援助しようと思ったけれどもうまくいかなかったとか、そういった多くの失敗がある人こそが、良いカウンセラーになれると思うんですよ。だから大いに体験しようじゃないか、失敗重ねようじゃないか、という事です。

「今、悩みを抱えていらっしゃる方へのメッセージをお願いできますか?」

悩みもリソースなんですよ。

例えば、今、統合失調症のクライアントを抱えています。入院させたり退院させたりして関わっているんですが、彼に対して「あなたは、あなたを待ってる人達の援助者になる素養を持っている。あなたが統合失調症だった過去そのものがリソースになる」と言っています。

こういう例もあります。ヒューマン・ギルドに来たある男性です。自分をアダルトチルドレンだと言って文献も読んでいるし詳しいんです。

「言えば言うほど過去が自分のしがらみになるだろう。過去はいい。それはあなたにとって重要な体験である。それを今後どう活かしますか?」と。あなたが苦しんだことは、そのまま大きなリソースとなって、あなたが援助者となって人と関わると活きて来るんだ。

その援助者というのは色々あって、カウンセラーだけではないと思うんですが、私はそういう発想なんですよ。自分が体験したこと、それは書物で読んだこと以上の大きな価値を持つのであって、それそのものを活かそうじゃないか。

私はかつて不登校の塾にいましたが、そのお母さん方をカウンセラーにしました。だって体験しているんだから、良い援助者になりましたよ。

「悩み自体がリソースだということを大事にする?」

そう。悩み、それはリソースであり、あなただからこそ担えたんですよ。他の誰もが担えないことを、あなただから、神様かどうか分からないけれど、あなたに提供し、あなたがそれを克服し今日あるのだから、それをそのまま今度は他人様の為に役立てる大きな力になるじゃないですか。

「今感じていらっしゃる辛さを、どうしたら良いのでしょうか?

辛いと言ったって死んでないでしょうと。あなたはずっと耐えているんだ、辛さは一種の鍛練なんだと。鍛練は活かす気になれば明日が見えるでしょう。いつもこうだと言うんじゃなくて、これだけ鍛えたんだから、次はこうだとなるでしょう。

お一人では難しい、ということでしたら、我々のところに是非来て欲しいですね。そして、ご自分のリソースを活かす方向に変えて、楽になっていただきたいと思います。

それから、読んで欲しい本があります。去年11月に出した『心の雨の日の過ごし方』(PHP研究所)です。心の晴れじゃなくて雨の日、どう生きたら良いのか、私の困った体験も書いてあります。雨の日も勇気を持つことができると思うんですよ。

心が辛い時、この本はお勧めしたいですね。勇気をくじかれちゃってる人、絶望だな、万策尽きたな、真っ暗だな、という人に特に読んでいただきたいですね。

読み終わると、自分はこれで良いんだな、素敵だなと思えると思います。年齢や性別、体験関係なく、自分は自分でこれからも生きられるんだなと、自己決定性が非常にうまくなると思うんです。

「これだけは伝えたいというような事があれば、お願いしたいのですが」

あなたはあなたであり、あなた以外の誰でもないあなたなの、他ならぬあなたなのです。ちょっと分かりにくいことを言っているけれども、あなただからあなたでいられるし、あなただからあなたを活かせるし、あなただからあなたの道があると思うんですよ。

自分の持っているものを、他と取り換えようとする必要はないのであって、歩んだ道そのものがあなたを作っているんだし、それが将来を決めるんです。他の誰かみたいにならなくちゃとか、そうではなくてね、あなたはあなたでいいんですよ。

そしてあなたは必要ならば、あなたを変えることもできるんですよ。総取り換えする必要もないんです。あなたの個性を活かしながら、本来のあなたたり得るんですよ。


「先生のこれからの展望や夢は?」

私は「勇気の伝道師」です。勇気の伝道者をいち早く1000人作る。そして日本の各地で勇気づけの種が撒かれ、花が咲き、そして日本が変わっていくのを見たいですね。

日本というものが本当にイキイキと活力ある国となって、日本に生まれて良かった、日本人として誇りを持つ、そういう人達を作りたいと思う。だってこんなに伝統のある国ないんですから。1日も早く、勇気に満ちたこの国を見たいと心から願っています。

<編集後記>

実は、このインタビュー公開とタイミングを一にして
岩井俊憲先生のご専門「アドラー心理学」が、
人気ドラマ『美丘』で、大学の講義シーンとして登場しました。

その講義を聞いたヒロインが、まさに「勇気づけ」られていく
という、実に感動的なシーンでした。

「家庭でも勇気づけ、学校でも勇気づけ、職場でも勇気づけ。
 そして勇気づけの伝染効果でどんどん広がっていく訳ですよ」

『勇気の伝道師』岩井俊憲先生は、とろけそうな癒しの笑顔で
そう語ってくださいました。

「アドラー心理学」と「勇気づけ」。
これからきっと、日本でもブームになっていくことでしょう。

「勇気づけの心理学」、あなたも早速、学んでみませんか?

岩井 俊憲(いわい としのり)  ヒューマン・ギルド 代表取締役 「勇気の伝道師」
                    アドラー心理学カウンセリング指導者、上級教育カウンセラー
                    中小企業診断士

カウンセリング&セラピーを行うほか、アドラー心理学に基づく各種講座、カウンセラー・トレーニングに従事。また、企業・自治体・教育委員会・学校などから招かれ、研修・講演を行っている。

  有限会社 ヒューマン・ギルド 〒162-0808 東京都新宿区天神町6番地 Mビル3階
  電話:03-3235-6741、FAX:03-3235-6625 メール:info@hgld.co.jp

● アドラー心理学ベーシックコース
アドラー心理学は、現代のさまざまの問題に具体的な解決法を与える実践的な心理学として、臨床現場はもちろんのこと、学校や家庭や企業でも、すでにさまざまに活用されています。
● SMILE(愛と勇気づけの親子関係セミナー)
親と子のコミュニケーションのみならず、先生と生徒、同僚とのつき合い方、すべての対人関係をより良くするのに役立ちます。
● アドラー・カウンセラー養成講座
ベーシックコースとSMILEを修了された方を対象に、カウンセラーを目指す方のためのコースです。
● ELM(エルム)勇気づけリーダー・トレーナー養成講座
「勇気づけ勉強会(ELM :Encouraging Leaders’ Manual)」のリーダー・トレーナー養成講座です。


<岩井俊憲先生のHP>
【ヒューマン・ギルド】


<岩井俊憲先生のブログ>
【岩井俊憲の公式ブログ】


<岩井俊憲先生の著書>

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勇気づけの心理学



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心の雨の日の過ごし方



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アドラー心理学によるカウンセリング・マインドの育て方



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勇気づけのリーダーシップ心理学

インタビュアー:下平沙千代

下平沙千代

ワクワクセラピー☆ソースで、一緒にワクワクしましょう!
日本一やさしい介護タクシー開業準備中です。賛助会員募集中!

ワクワクセラピー ソーストレーナー、NLPセラピスト
レイキヒーラー、導引養生功指導員、成年後見人講座受講中
トラベルヘルパー、ホームヘルパー2級、女性タクシードライバー
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』

インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren

インタビュアー:Rico Bonafede(リコ ボナフェデ)

リコ ボナフェデ

セラピスト
『五感が喜ぶカラフルマインドな毎日』をテーマに活動中。

以心伝心の文化を離れて暮らしたことから、
コミュニケーションのあり方と、
言葉そのものが持つ不思議なエネルギーに魅せられ、
そこに潜在意識と色を絡めたセッションを行なっています。
おしゃべりブログ:「やっと逢えたね♪」

インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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