第49回目(2/4) 岩井 俊憲 先生 ヒューマン・ギルド

評価的な「誉める」でなく、共感的な「勇気づけ」を!

インタビュー写真

「アドラー心理学の特長を教えていただけますか?」

いくつか言いますね。

一つ目は「自己決定性」と言って、一言で言うと、「あなたを作ったのは、あなたですよ。あなたを変えるのもあなたですよ」、こういう理論なんですよ。

この反対が、「生育環境、環境支配説」です。「環境が人を作って、人は環境の副産物、場合によっては被害者である。だから環境が変わらない限り人間は変わらない」こういう理論。

我々は、環境は影響はあるだろう。だが、その環境をどうするかは、自分にかかっている訳であって、環境がガンジガラメに自分を縛っている訳ではない。そんな風に、自己決定性と言いますけれど、「自分の人生は自分で変えることができる」これが非常に大きな特長なんです。

二つ目は「目的論」と言って、「人間の行動には目的がある」。自分でははっきりと気づいていないけれど、ある方向性、こうありたいっていうのがあると思うんですよ。「その目的に向かって、より近づけようと努力する。これが人間の行動だ」と。

この反対が「原因論」。「人間の行動には原因がある。この原因が除去されない限りは問題が解決しない」。原因論は、説明にはなるけれど、解決にはならないんですよ。

私が師事していた不登校がご専門の先生は、不登校の原因は6つだと言うんです。今でもはっきりと覚えているんです。

一つ目、妊娠したとき喜びがなかったお母さん。こういう子どもは不登校になりやすい。
二つ目、つわりが激しかった。不登校になりやすい。
三つ目、難産だった。帝王切開なんかしたら、不登校になりやすい。
四つ目、母乳で育てなかった。ミルクに頼った。不登校になりやすい。
五つ目、スキンシップが足りなかった。子どもを産んですぐに働きに出た。不登校になりやすい。
六つ目、父親が育児に協力的でなかった。不登校になりやすい。

これが、六大原因説です。確かに、お母さん方が不登校だと言ってやって来て、聴いてみると100%どれかに該当するんです。この六つが関係ありませんっていう人は一人もいませんでした。

ところが、これは非常におかしな論法で、不登校の子ども達にある仮説を立てて、こうじゃないかと作った理論なんです。

不登校の子どもと、不登校でない子どもを多数抽出して、5年、10年かけてやった研究ならいいんですが、これは全く科学的ではないと思うんです。だって、健常な子どもだって六大原因説のどれかに該当します。

説明としては、うまいんですよ。聴いてみたら100%当たるんですから「なるほど」となります。だけど、解決にはならない。だから、原因論っていうのは、もう一回言うと、「説明はうまくできるけれども、解明、解決はできない心理学」なんです。

「解決につながらないのですね?」

我々はもっと目的、「どうなりないのか、どうありたいのか」、そして、不登校をやっていたこともどういう目的があるのかを、考えるんです。

例えば、私が預かっていた17歳の子の家庭内暴力。この目的は父親に対する復讐だったんです。父親からひどい虐待を受けていた。ですから、子どもの頃から、あいつをいつか自分はやっつけてやろうと思っていた。高校生になったらやれますよね。家庭内暴力は復讐だったんです。

ところが、父親を殴ると、無理解な母親は無理やり精神病院に入れた。3ヶ所くらい転々として、脱出してきた子なんですよ。そうすると彼は、もう家族に対して憎悪が凄くて、私の所に来て、やっと心を開いた時に、「初めて、世の中で信頼できる人がいました」と言ったんですよ。

こういうのを見ると、信頼というものを学んでいない。家族が家族として機能していない。それに手を貸しているのが原因論であり、そしてまた、希薄になっている家族の絆だと思うんですよ。

この二つを言っただけでも、もうアドラー心理学の特長は分かると思うんですよ。「過去は問わない。他人のせいにしない。自分が未来に向けて、今から何ができるか」こういう心理学なんですよ。それを援助したいんです。これをやるツールが「勇気づけ」なんです。

「先生は、勇気とは何だとお考えでしょうか?」

勇気とは、困難を克服する活力です。『勇気づけの心理学』を書いてみて、しみじみcourageという英語を辞書で調べてみたんですが、元々はラテン語のcor=ハートなんだそうです。つまり活力を司る臓器であるハートがcourageの源だと。

それを学んだ時、やはりそうかと思いました。活力なんですよ。生きるエネルギーそのものなのです。

インタビュー写真


「先生の『勇気の伝道師』というネーミングは、どこから生まれたのですか?」

『勇気の伝道師』の命名者は、実は、船井幸雄さん(船井総研創業者)なのです。私のことを彼の本の中で、「ヒューマン・ギルドの岩井俊憲さんは勇気づけの本物の伝道師」と書いてくれたんですよ。

“本物”が付いているんですよ。自分で“本物”って言うのも怪しげなので、といって偽者とするわけにもいかないし(笑)、勇気づけの伝道師より「勇気の伝道師」が良かろうということで、彼が使ったのを自分でも使い始めたんです。

『勇気づけの心理学』は2002年に出版しています。そしてその頃から本当に日本の「勇気欠乏症」がより顕著になってきている。「これはダメだ!」と思って、ブログも立ち上げ、そして、研修・講演も必ず「勇気づけ」を必ず入れさせてもらうようにしたのです。

「そうじゃないと受けませんよ」と言うんです。それくらい、「勇気づけ」を伝える必要を強く感じているのです。

「勇気づけの普及は、先生にとってミッションですか?」

ミッションです。まさにミッション、使命ですね。

「現代の日本の『勇気欠乏症』についてお話しいただけますか?」

いくつかありますけれども、一つは、自殺者数が12年連続3万人を超えているというのは異常な国です。日本で、一年間に亡くなる人の数は100万人ですよ。これを分母にして、3万人を分子にしてみると、3%ですよ。ということは、30人に一人が自殺するんです。

県庁所在地の前橋、青森、盛岡、これがね30万都市なんですよ。10年間で、県庁所在地の人口がなくなるくらい自殺で失う国とはいかがなものかと。これが一つ。

二つ目は、日本は実質的に20年間経済成長をしていないんです。そして、日本は本当に「勇気欠乏症」だっていう一つの根拠は、中国でこの『勇気づけの心理学』が出版されるんです。それで、これを出版したいっていう人が日本に来て、私のセミナーを受けて最後に言ったんです。

「私は日本が好きで、17年間日本にいました。今、来るたびに日本の人達が、勇気欠乏症になっている。昔来た時は活き活きしていた。活き活きとしている日本から中国の人達は沢山のことを学んだ。ところが、来るたびに日本の人達は実力以上に勇気をくじかれていて、特に男性諸君の勇気欠乏症は見るに耐えない。日本は10人もノーベル賞を取っている国ですよ」と。

ノーベル賞受賞者は中国はほんの数人いるのかどうか。韓国は平和賞だけですよね。アジアでそんなに突出した日本が、本当にここまで、勇気をくじかれるような事態なんだろうか?

つまり、家庭で起きている問題、今、引きこもりは70万人と言われる、そんなことも含めて、日本は明らかにどうかしている。そして、私の言っていることは、勇気欠乏症。勇気を本当にくじかれているのです。

私は研修の講師もやりますが、「あなたは自分のことをいい点があると思っても否定しますか? ダメな点があるけれども自分を肯定しますか?」否定や肯定で聴くと、ある大企業の男性の研修をやったら7割が自己否定なんです。30代男性の極めて多くが自己否定です。

「それはどうしてなのでしょうか?」

家庭で学校で企業で、勇気をくじくような教育をされてきたからです。つまり、「勇気くじき」の教育が蔓延しているからですよ。

例えば、私が研修で、「あなたの身近な誰かを想像してください。その人のダメな所を数えてください。良い点を数えてください」と1分半で両方やります。そうすると圧倒的にダメな所を沢山探し出します。

研修ではそうです。凄まじいほどダメな所を見つけるのこそが人間としての観察であり、システム化した教育だと思うんですよ。ダメ出し教育。良い所を探す教育なんかしていないんですよ。学んでないんですよ。

「家庭でも、やはり『ダメ出し』でしょうか?」

今日の新聞に出ていましたけれども、小学校3年生〜5年生は「勉強やった?」って、月間20回言われているんですよ。「勉強した? 勉強した?」って。

私は20回よりもっと言ってると思うんです。つまり、親がやることは、チェックと批判ですよ。子どもに対して「何々したの? 何々終わったの?」というチェック。

もう一つは、「ダメね、あなたは。あれ程言ったじゃない。なんで宿題今頃やってるの!」。つまり、チェックと批判が、家庭教育でも蔓延しているし、学校教育でもそうだと思うんです。

だからこそ、今「勇気づけ」が必要だと切実に思っています。もうこれ以上の「勇気くじき」は要らない。

「勇気づけるには、具体的にはどういうポイントがあるのでしょうか?」

「勇気づけ」の定義から先にいくと「困難を克服する活力を与えること」。誉めるのとは違うんですよ。「誉める」のと「勇気づける」というのは似ているけれども、誉めるというのは違う。

今、「誉めブーム」ですよ。テレビなどでも「誉める」というのはよくやるんですよ。私は、薄気味悪くなるんですね。あれは人間に対する操作なんですよ。いいように操りたい、ということなのです。これは、全然「勇気づける」とは違うんです。

例えば子どもがゴミを拾った時「偉いわね、○○ちゃん」。これは評価なんです。誉めるとは評価的態度です。「勇気づけ」は共感的態度。「○○ちゃん拾ってくれたのね。気持ちいいわね」っていうような行為に対する感謝なんです。

つまり、評価じゃないんです。共感的態度から始まるんですね。これが「勇気づけ」であると。評価として、偉いとか縦関係じゃなくて、本当に相手に共感しながら信頼した態度で、言葉を発することが「勇気づけ」になるんです。

つまり、「こう言うと喜ぶな〜」とか、そういうのは誉めるなんです。本当に感動に一杯になって発する。これが勇気づけなんですよ。

「『誉める』と『勇気づけ』とは違うのですね?」

原則違う。ただ共通している部分もあるんです。重なっている部分もあると思うんです。特に私は、発達段階で0〜3歳位までは「誉める」があってもいいと思うんです。0〜3歳はね「偉いわね」これOKです。

何を言いたいかというと、自己勇気づけ能力が備わった子には、誉める必要はないのです。つまり3歳位になって、自分で自分は「すごいな」と。これに対して誉める必要はないと思うんです。だけど、勇気づけるメカニズムがまだ確立されていない子には誉めていいと思うんです。

「自己勇気づけ能力ができるまでは、誉めてよいのですね?」

はい。なので、私は誉めるを100%否定しているんではない。私が否定しているのは、自己勇気づけ能力がありながらも、その人に対して、いかにも取って付けたような、操作的なそういう「誉める」はいかがなものかと思うんです。

なぜならば、誉め続けると誉められることを期待します。誉めなきゃやらなくなります。誉められてなんぼ。誉められなきゃやらない。例えば、ゴミを拾って「偉いわね」って言うと、見ている所で拾うと思うんです。誉められる場面で。

「気持ちがいいわね」って言われると、自分も気持ちがいいし、相手も喜んでもらえるんだって子は、誰かが見てなくてもやると思うんです。これが「誉める」と「勇気づける」の決定的な違いだと思います。

             

(次回につづく・・)

岩井 俊憲(いわい としのり)  ヒューマン・ギルド 代表取締役 「勇気の伝道師」
                    アドラー心理学カウンセリング指導者、上級教育カウンセラー
                    中小企業診断士

カウンセリング&セラピーを行うほか、アドラー心理学に基づく各種講座、カウンセラー・トレーニングに従事。また、企業・自治体・教育委員会・学校などから招かれ、研修・講演を行っている。

  有限会社 ヒューマン・ギルド 〒162-0808 東京都新宿区天神町6番地 Mビル3階
  電話:03-3235-6741、FAX:03-3235-6625 メール:info@hgld.co.jp

● アドラー心理学ベーシックコース
アドラー心理学は、現代のさまざまの問題に具体的な解決法を与える実践的な心理学として、臨床現場はもちろんのこと、学校や家庭や企業でも、すでにさまざまに活用されています。
● SMILE(愛と勇気づけの親子関係セミナー)
親と子のコミュニケーションのみならず、先生と生徒、同僚とのつき合い方、すべての対人関係をより良くするのに役立ちます。
● アドラー・カウンセラー養成講座
ベーシックコースとSMILEを修了された方を対象に、カウンセラーを目指す方のためのコースです。
● ELM(エルム)勇気づけリーダー・トレーナー養成講座
「勇気づけ勉強会(ELM :Encouraging Leaders’ Manual)」のリーダー・トレーナー養成講座です。


<岩井俊憲先生のHP>
【ヒューマン・ギルド】


<岩井俊憲先生のブログ>
【岩井俊憲の公式ブログ】


<岩井俊憲先生の著書>

cover
勇気づけの心理学



cover
心の雨の日の過ごし方



cover
アドラー心理学によるカウンセリング・マインドの育て方



cover
勇気づけのリーダーシップ心理学

インタビュアー:下平沙千代

下平沙千代

ワクワクセラピー☆ソースで、一緒にワクワクしましょう!
日本一やさしい介護タクシー開業準備中です。賛助会員募集中!

ワクワクセラピー ソーストレーナー、NLPセラピスト
レイキヒーラー、導引養生功指導員、成年後見人講座受講中
トラベルヘルパー、ホームヘルパー2級、女性タクシードライバー
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』

インタビュアー:鈴木明美(すずきあけみ)

鈴木明美

セラピールームChildren主催、NPO Oasis 代表
いろんな環境に自分を合わせて生きてきて、自分がなんだか分からない。
そんな、うつ病や心の悩みを抱えた方のお手伝いをしています。

心理カウンセラー、NLPセラピスト(ゲシュタルト、エリクソン催眠療法、
家族療法)、交流分析士1級、トランスパーソナル学会会員、レイキヒーラー
HP:江戸川区西葛西、セラピールームChildren
ブログ:セラピールームChildren

インタビュアー:Rico Bonafede(リコ ボナフェデ)

リコ ボナフェデ

セラピスト
『五感が喜ぶカラフルマインドな毎日』をテーマに活動中。

以心伝心の文化を離れて暮らしたことから、
コミュニケーションのあり方と、
言葉そのものが持つ不思議なエネルギーに魅せられ、
そこに潜在意識と色を絡めたセッションを行なっています。
おしゃべりブログ:「やっと逢えたね♪」

インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント
 

  • 呼吸法の日本マイブレス協会
  • 毎朝1分 天才のヒント

インタビュー集

  • 毎朝1分天才のヒント メールマガジンで30日間の無料レッスン
  • さぱりメント あなたのお悩みをさっぱり解決