第48回目(3/4) 中井 喜美子 先生 親業訓練協会

何がなぜ困るかの、三部構成で伝える

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「親業の講座は、どんな方に受けてほしいと思われますか?」

全ての人に受けてほしいですね。男性も女性も。

特にお伝えしたいのは、これから出産される方に、赤ちゃんが生まれてくる時に、出産後30分間が、母子の絆を作るのにとても大事な時期なんです。母性本能なんてないんですね。

ホルモンが分泌されて子どもと関わりながら、母子の絆ができてくるんですけれど、30分は感受期といって、それを構成するのに大事な時期だと言われています。

出産の時、へその緒がつながっているところで、まずおなかに乗せて、いわゆるカンガルーだっこですが、乗せるだけでなく、お母さんに声掛けさせてあげてほしいのです。

赤ちゃんは頭の骨を重ね合わせて、狭い産道を回転して出てくる訳ですよね。今まで、へその緒がつながって酸素も栄養も送られてきたのが、肺呼吸に切り替えなきゃいけない。

実はその時、白血球は普通の大人で5〜6千なんですが、1万2〜3千になるんです。癌の人に多い好中球・顆粒球で一杯になるので、すごい酸素ストレスにさらされて「苦しいよ〜」って出てくるんです。

その時、「赤ちゃんが問題を抱えてる」ということです。それで「泣く」というサインを出しているので、お母さんは苦しいでしょうががんばって能動的な聞き方で、気持ちを汲んで聞いてあげるとよいのです。

「苦しかったのね。辛かったのね。寒いのね。怖いのね。よく頑張ったね」と5〜10秒でいいんです。へその緒がつながっている時だと10秒位で赤ちゃんは一瞬泣き止み、お母さんの顔を見ようと目を開けようとするのです。本当に何例も見てきました。うちの孫もそうです。

帝王切開の場合は、不安そうに目がキョトキョトしていますが、20分くらい声を掛けてあげると、安らかな顔になります。

「赤ちゃんが安定するのですね?」

赤ちゃんって生まれる5週間前くらいから、お母さんの声や音楽さえ聞き分けられますから、お母さんに「辛いよ。苦しいよ」というのを、聞いてもらえると心がほっとするのです。

そこで「お母さんは、自分をケアしてくれる大事な存在なんだ」って分かる。そうすると後は落ち着いて、キーキー言わない。子育てが楽になりますので、是非、皆に知って欲しいなと思います。

その時に、お父さんが、お母さんを「辛かったね。苦しかったね」「よく頑張ったね」って聞いてあげたら、マタニティー・ブルーって出産と同時にホルモンのバランスが崩れてブルーになりますよね、あれがなくなる。「産後うつ」というのが今すごく増えていますが、それが緩和されます。

「出産前のご夫婦で受けられると良いですね?」

そうですね。それで、葛飾区の保健所でお話していた時に、「母子手帳と同じ形で、皆に配布できる物を作ってくれませんか」と言われたので、「親子手帖」というのが世に出ました。それが大変好評で、教師学手帖、保育手帖、看護手帖や介護手帖も作られました。

また、人が人にあげられる一番大きな贈り物のひとつに、「肯定のわたしメッセージ」というのがあります。相手の行ったり、言ったりしたことで、私が助かった。私が嬉しかった。私が安心したと伝えるのです。

それは「あなたは偉い」という評価ではなく、喜び、楽しみ、温かさ、嬉しさなどをその人と共に分かち合うこと、肯定のわたしメッセージです。

特に、マタニティー講座で話す時はこれをお伝えしました。そうやってお互いに嬉しい気持ちを伝え合って、心を穏やかに赤ちゃんが誕生できるようになるといいなと思います。

「逆に、“あなたメッセージ”は良くないそうですが?」

それは主語が「あなた」のメッセージで、「お母さんの叱る言葉でいやな言葉は何ですか?」って、小学生にアンケートを取ったら、一番多いのは、「(あなたは)さっさとしなさい」。

次は、「あなたは家の子じゃありません。出て行きなさい」「お母さんは言いたくて言っているんじゃありません」「誰ちゃんを見習いなさい」「ばか」っていうのが、ベスト5だったんです。

「(あなたは)何回言ったら分かるのよ」皆こうやって、主語が「あなた」で叱っているんですね。非難や、やっつけるメッセージで叱られ続けていると、子ども達が自尊心を傷つけられてしまう危険性があるのです。

そのアンケートでも、子ども達は「悔しくて、仕返しがしたくなる」というのが一番多かったんです。「悪かったと思って、反省する」が次でしたけれど。

そして「寂しく、悲しく思う」「もう何とも思わない」って、子どももいました。5番目に、「何で叱られているのか分からない」っていうのがあるんですね。

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「“わたしメッセージ”のポイントはありますか?」

子どもの行動が受け入れられない時のわたしメッセージは、三部構成で伝えることが大事で、例えば「汚れた靴下のまま家の中に入ると、泥が落ちて掃除しなくちゃならないから、いやなの」と、こういう風に「何がなぜ困るか」を伝えます。

教育委員会が主催してくださった講座を受講された、2歳1ヶ月の坊やのお父さんの話で、面白いのがあるんです。

お子さんが水を口に含んでピュッと吹き出すことができるようになって、何度もお父さんに水を吹き掛ける。お父さんは最初は「止めなさい」って言っていたけれどやめない。もうちょっとで、その子の頭を叩いて「そんな分からない子はこうだぞ」って言うところだったんです。

お父さんもお母さんも親業を勉強していて、お母さんがすっ飛んできて、「『止めなさい』は、あなたメッセージでしょ。わたしメッセージで言ってみたら!」って言ったんです。「あ、そうだ」と思って、「冷たい水をお父さんに掛けると、お父さんは裸だから冷たくていやだよ」と。

「何がなぜ困るか」を伝えたのです。でも、子どもは「いや」って言ったんですね。そこで、子どもの言い分を能動的な聞き方で切り替えて聞くって言うのが大事なんです。「水掛遊びが楽しいんだね」と聞いたそうです。

「止める」というやり方で、「私を助けなさい」というのは「いやだ」ということですよね。お父さんが困るといっても、すぐにはうんといえない。「水掛が楽しいんだね」と気持ちを理解したことを伝えて、もう一回「お父さん、水が掛かると冷たいから、風邪引きそうでいやなんだよ」と。

わたしメッセージの大切なところは、指示をしないんですね。「困る」「いやだ」ってことだけ相手に伝えて、相手に任せるんです。すると、子どもはどうしたかというと、お父さんに掛ける水の量を減らしたんです。

お父さんがもう一回「でも、ちょっとでも掛かると、やっぱり冷たいからいやだよ」と言うと、子どもは、ちゃんとお父さんに掛からないようにピュッとやったんです。

お父さんは「2歳でも言えば分かるんだ。この子はこんな小さな頭で、どうすればやりたいことをやりながら、お父さんを困らせないようにするかを考えられたんだと思ったら、可愛くなりました。3歳までは叩いて育てていいなんて大間違いだ」と言っていました。

「子どもが自分で考えるのですね?」

1歳くらいでも「何がなぜ困るか」を言って、言い分をしっかり聞いてあげると、ちゃんと分かってくれます。わたしメッセージで伝えると虐待の予防にもなりますね。小さな子どもにも分かり易いので、大好きなお父さん、お母さんを困らせないようにがんばります。

本当に小さなところから、毎日毎日の関わりで、親が何を大事にしているか、こうしていきたいんだということもちゃんと言っておくと、子どももそれが分かり、自分も言えるようになっていくんですね。

それで、親が模範になりながら、子どもが自己表現も、相手の言い分を聞くことも、そして対立が起きれば、怖がらずに問題解決することも日常的にできることなんだなと覚えていくのです。

「能動的な聞き方についてはいかがですか?」

能動的な聞き方というのは、子どものありのままを理解したことを伝える対応ですが、困った時に誰かに言って分かってくれた、理解してくれた、そういう事があって、何か困った時に人に援助を求めていこうという能力が育ちます。そして人に話す事が嬉しくなっていくというのが一番基本なんですよね。

小児科医の内藤寿七郎先生が、「優しいまなざしや言葉をかけてもらってないと、子ども達は他人への信頼感を抱いたり、自分のあらぶる心や否定的な感情をコントロールする力が育たない。このままでは、子ども達の犯罪が起きますよ」と以前からおっしゃっていました。

先日のお友達を刺した事件でも、子どものサインに気付き、ちゃんと能動的な聞き方で「友達を殺すかもしれない」って思っている子どもを、しっかり理解してあげる人がいたら、どうしたらいいか分からない想いを解消したり、乗り越えていくことができたのではないかと思うのです。

そういう意味で全ての人に対応を知ってもらって、お母さんじゃなくても誰でもいい、その子どもに関わって理解をしてあげる。と同時に、大人も困ったり、いやだということはしっかり言っていく。それが大事だと思います。

子どもは他者という鏡に映して、自分が何をしてはいけないかというのを学んでいくんです。今そこの所できちんと大人が自己表現をしていないから、かんしゃくもちや大騒ぎが小学校まで続いてしまっている。子どもを責めたり、しょうがないというのではなく、親の自己表現が必要です。

日本子育て学会会長の藤永保先生も、『気になる子にどう向き合うか』という本を昨年出されて、きちんと困るっていうことを伝えられていないために、否定にあった時にかんしゃくを起こして、それを小学校まで引きずっている子どもさんの事を書かれています。

そこに幼児教育がしっかり向き合う必要があるとおっしゃっているのですね。

「子どもさんに関わる大人がしっかり自己表現をしていくことで、お子さんの側の自己表現力がついていくという、そういう効果がある訳ですね?」

そうなんです。その時に、自己表現というので間違いやすいのが、何でも語ればいいというのではなくて、他の人の事は裁いたり、評価したりしない。自分の事だけ語ることなんです。また、自分の事を語ったら、後は相手の言葉をよく聞くっていう、両方向のコミュニケーションにする必要があるのです。

語ったら、能動的な聞き方に切り替えて聞くっていう、これですね。わたしメッセージを言うと、相手は感情が高ぶりますから、それに抵抗したり言い訳したりします。

そこで「言い訳するんじゃありません」って言いつのるんじゃなくて、能動的な聞き方で相手の言い分を必ず聞いて、また語る。そうすると、建設的で効果的な自己表現になります。

そして、おっしゃる通り、自己表現を親がやってみせて初めて、子どもも言えるようになるんです。 幼稚園の時にお母さんが親業の勉強をされて、中学生になって、体の大きい子に「お前は真面目人間だから遅刻しろ」って、はがいじめにされたりして、遅刻させられていた。

最初その子は、「お母さん、中学って勉強する所だよね」って言ってきたんだそうです。子どもさんが2回くらい聞きにきたことがあって、でもそれ以上何にも言わなかったんですって。それが、お母さんが学校に面談に行った時に、「お宅のお子さん素晴らしいですね」と先生に言われたと。

その子は「僕は勉強したいんだ。君と一緒に遅刻すると、勉強が分からなくなるから嫌なんだ」と伝えて、それで相手の言い分を聞いて、「だけどあんなのつまらないもの」「授業はつまらないから嫌なんだね。じゃあどうしようか」って。それで先生にちゃんと話したそうです。

「完璧な対応ですね?」

そうそう。先生がびっくりして、「遅刻しないで一緒に授業受けられるようにそこまで出来て、感動しました」って。 お母さんもびっくりして「先生からそう聞いて本当にお母さん嬉しかったわ。だけど、ちょっとお母さんに聞いてきたけど、なんでそのあと何も言わなかったの?」って言った時のセリフがすごいんですよ。「僕の友達との関係は、僕の問題だからね」と。

その子は親業を何も勉強していないんですよ。親が受講して実践しているだけで、誰が解決することか、誰が自分で責任取ることかって、そこまで子どもの中に入るんです。だから私は本物だと思ったんです。

小さな子どもと託児つきの講座を一杯やってきましたが、お母さんが安心して楽だと、子どもさんは静かに待っているんですよ。でもお母さんがドキドキするだけで、子どもさんはすっ飛んで来ます。

それでお母さんの横に立って、中には、おままごとの包丁まで持って「うちの母ちゃんいじめるな」って(笑)。お母さんが適切に対応できて、にこっとすると、子どもさんは嬉しそうにパッと遊びに戻ります。

そういうのを見てきて、問題を起こしている子どもさんの親を責めても何にもならないということがよく分かりました。それでカウンセラーでもあったゴードン博士は親を助ける活動を始めたんですね。親が安心できたら、子ども達も安心して自立できる。それをやっていかないと、いくら子ども達を立ち直らせようとか、親にこうしなさいと言ってもだめなんです。

援助の手が入るように、一番心の優しい子に症状って出るんだと思います。ですから、そういう症状を出した子の親の方が勉強されるのも、予防的に幼児期から子どもが本当に自分と相手を大切にしながらコミュニケーションを取っていけるよう学習されるのも良いと思います。

(次回につづく・・)

中井 喜美子(なかい きみこ) 親業訓練シニアインストラクター
                    教師学上級インストラクター
                    看護ふれあい学研究会会長

「親業訓練」は、米国の臨床心理学者トマス・ゴードン博士が
開発したコミュニケーションプログラムです。
カウンセリング、学習・発達心理学、教育学など、
いわゆる行動科学の研究成果を基礎にしています。

ゴードン博士は、親としての役割、つまり<親業>を果たすことは、
「一人の人間を生み、養い、社会的に一人前になるまで育てる」仕事に
たずさわることであると述べています。

多くの親は「親の役割」をはたすために、自分の親から伝えられた経験と、
さまざまな情報・知識に揺れながら試行錯誤を繰り返しているのではないでしょうか。
この暗闇に手さぐりしている親達に、ひとつの方向が示されるようになりました。
−それがコミュニケーション訓練−親業訓練講座です。

1979年に日本ではじめて親業訓練講座が開かれてから、
親業訓練の理念は親子間だけではなく、すべての人間関係に共通する
ということに基づき、現在では「自己実現のための人間関係講座」
「教師学講座」「看護ふれあい学講座」「ユース・コミュニケーション講座」が開かれています。

★ 親業訓練講座 ★
子どもの心を理解し、話の通じ合うあたたかい親子関係を
きずくことを、目的とした訓練です。
★ 自己実現のための人間関係講座 ★
まわりの人と、率直で、あたたかい、人間関係をつくりながら
生き生きと自分らしく生きるための体験学習をします。
★ 教師学講座 ★
教師と生徒の心の絆をつくる教育『教師学マインド』の確立を目指した
講座です。教師の意見を押しつけず、生徒の考えに流されることなく、
お互いを尊重し合える関係をつくります。
★ 看護ふれあい学講座 ★
看護・介護の現場で、あたたかい意志の通い合った人間関係に必要な
コミュニケーションは『ふれあいマインド』です。
★ ユース・コミュニケーション講座 ★
学校での対立解消のためのワークショップ
★ インストラクター養成講座 ★
親業訓練インストラクター養成講座
★ 中井喜美子先生の無料説明会 ★
お問合せは 090−8088−7922 まで
<親業訓練協会のHP>
「親業訓練協会」
<中井 喜美子先生の著書>
cover
看護ふれあい学講座―具体例で学ぶコミュニケーション訓練
<中井 喜美子先生の訳書>
cover
ゴードン博士の親に何ができるか「親業」

インタビュアー:下平沙千代

下平沙千代

ワクワクセラピー☆ソースで、一緒にワクワクしましょう!
日本一やさしい介護タクシー開業準備中です。賛助会員募集中!

ワクワクセラピー ソーストレーナー、NLPセラピスト
レイキヒーラー、導引養生功指導員、成年後見人講座受講中
トラベルヘルパー、ホームヘルパー2級、女性タクシードライバー
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』

インタビュアー:Rico Bonafede(リコ ボナフェデ)

リコ ボナフェデ

セラピスト
『五感が喜ぶカラフルマインドな毎日』をテーマに活動中。

以心伝心の文化を離れて暮らしたことから、
コミュニケーションのあり方と、
言葉そのものが持つ不思議なエネルギーに魅せられ、
そこに潜在意識と色を絡めたセッションを行なっています。
おしゃべりブログ:「やっと逢えたね♪」

インタビュアー:志田祐子

志田祐子

志田祐子です。
臨床心理士の方との出会いをきっかけに、心理学を学び始め、
色々なご縁があって今は心理カウンセラーを目指しています。

心に悩みをもった人の少しでもお役にたてるよう、
五感を使って癒せる心理カウンセラーになれるよう、
日々試行錯誤です・・・。

インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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