第48回目(2/4) 中井 喜美子 先生 親業訓練協会

自分で解決する力を、信じられるようになる

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「親業を学ぶことで、お子さんにとってどんな良い点がありますか?」

自分で問題解決していくという力が伸びて行きます。自分に良い意味での自信ができる。人と関わることが怖くなくなるようです。また親に愛されていると確信できるようになります。あるお嬢さんが「だから自殺はできないなって思えた」と言っていましたね。

「では、親側にとってのメリットは?」

親業訓練講座はグループダイナミクスを大事にしているので、何人かの人と一緒に勉強するんです。 そこで色々な方が色々な思いを持っているんだということに気がつくと、自分の子どもが自分と違う考えを持っていることが認められるようになってきます。

そういう意味で「自分だけが」と思い込まないで、色々な考え方にも柔軟に対応できるようになります。

それからゴードンメソッドで一番大きいのは、誰が困っているのか、誰が解決する問題なのかを明確にするということです。

子どもがいじめられたなんていうと、親が全部代わって解決してあげようとしてしまう。勉強ができない、何かがうまくいかない、なんて時に「こうすれば、ああすれば」という提案型が多いですよね。

でもそれは本人が解決すべき問題なのです。親業を学ぶことで、本人が自分で解決するという力を信じられるようになる。子ども達がこんな素晴らしい力を持っているんだというのが、アメリカでも日本でも、明らかになっていったのですね。

子ども達を導くのではなくて、本人が育つのに適切に関われる親のリーダーシップを訓練するために始めた活動なんです。リーダーシップを発揮しながら自分も相手も生かすというコミュニケーションの学習会です。

効果を測定した研究調査があるんですが、子どもに対して前より受容的態度で接することができる、イライラせず落ち着いた気分でいられるようになる、子どもとよく話し合うようになった、子どもの成長に合わせて自分も成長していきたいという気持ちが強くなった等の結果が出ています。

そして親子関係は全ての人間関係の基本なので、勉強してみると、夫と自分との関係や周りの人との関係をもっとこんな風に大切にしていったらいいんだなと分かるので、お母さんが本当にイキイキしてきます。

この自己表現の仕方も「少しはお父さんらしいことして頂戴よ!」って責めていたのが「一人で辛いのよ」って言いますから、一緒に勉強された学校長の先生が「親業を勉強されると女性が可愛くなりますね」っておっしゃっていました。

自己表現の形で伝えると、責めることなく自分の事が語れる、というのが一番大きいでしょうかね。

「親子関係だけでなく、全ての人間関係が良くなるのですね?」

そうです。人間関係の基本なので。

親業訓練講座で、インストラクターの指導のもとにロールプレイを行ったり、練習しながら学ぶと、心を通い合わせるコミュニケーションの仕方と同時に、自分も相手も大切にする心持ちがつくのです。気持ちがつかないと、やり方を学んだからといって今日から子どもの話が聞けるかっていうと、そうではないんですね。

それで私はインストラクターになろうと思ったんです。24時間学ぶことで、こんなに気持ちが変わることってあるんだって思ったのは初めてでしたね。びっくりしました。

講座ではワークブックを使うのですが、最初に心の窓の整理から始めて、子どもが言ったり行ったりしていることが、自分だったら受け入れられるかどうかを考える。すると受け入れる人や受け入れない人、子ども自身や自分の状態や、その行動がいつどこで行われているかによって感じ方が違うんだなってことが分かってきます。

ここから始めて、しかも「お母さんが子どもをいつも受容してニコニコしてなくてもいいんですよ。嫌だな、困ったなってことがあって当然なんです」ってお話しますとね、皆さんスッと肩の荷が下りるんですね。

「ありのままでいいんだ。いつも良いお母さんを演じてニコニコしていなくていいんだ」っていうのが一番大きいんですね。

誰が困っているのか、子どもに任せていいのか、親が出るところなのか。その区別がつくようになると楽になるんですね。その分、子どもを受け入れたり、自分も成長しようと思うようになる。子どももすごく自由になるし、自分らしく生きられる。

そういう両方向のコミュニケーションが子どもも親も楽にしていき、びっくりするくらい子どもの能力や自主性が育っていきますね。親業を勉強された方のお子さんが驚くほど友達とちゃんと問題解決していく。能動的な聞き方は2歳からできるようになりますし、話し合いも4歳くらいからできるようになりますからね。

中学高校くらいになったら自分も困らず、お友達も助けられる、しっかり対応していきます。親が勉強しているだけなんですが、子どもさんは実践している親を見習って、自然にできるようになっていくのです。

「子どもさんが大きくなってからでも間に合いますか?」

全然間に合います。いくつからでも大丈夫です。今日からできるんです。

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「先生がその後、看護ふれあい学の方向に進まれたのは?

自分も病気をしてみて、ゴードンメソッドの対応が医療看護の現場に絶対に必要なことを実感しました。これを知らないことで努力しているのに患者さんと心が通い合わなかったり、白衣の天使になろうと無理してがんばりすぎてバーン・アウトする(燃えつきる)人たちが多いことを、とても残念に思ったんです。

もう一つは親業を日本看護協会でもお話してくれと言われて話していくうちに、どの研修も患者さんのことばかりで、看護する側がいかに自分を大切に生きるかということを見落としているなって思ったんです。親業は子育て業じゃなくて親業なんですね。

丁度、慈恵医大に奉職していた父から、日本の看護教育の先駆けだった「慈恵看護教育百年史」という本と、東京慈恵医院看護婦教育所7回生の平野鐙さんの「看病の心得」という文語体の本をもらったんですね。そこにも専ら病者の辛さを取ることに留意し、自分の思いは出さないようにと書いてありました。

何とか医療・看護・介護・福祉の世界にゴードンメソッドを役立てて、自分が楽になったように皆を楽にさせてあげたいと思ったのです。それが自分の使命のような気がして・・・。

「看護ふれあい講座は先生のオリジナルですか?」

そうですね。私はゴードンメソッドに惚れ込んで、親業訓練協会で提供されていた親業、教師学、自己実現のための人間関係講座を順番に勉強して、上級講座やインストラクター養成講座まで受講し、すべての指導資格を取って講座を行ってきました。一つずつ勉強すればするほど理論は深まるし、意味も分かって来る。

日本医大の看護学校でも教えていたのですが、戴帽式の時にナイチンゲールの灯を一人ずつ自分のロウソクに灯す。その灯は一番最初に彼女達の顔を照らし、輝かせていることに気付いたのです。看護する自分が輝いて初めて、周りの人たちを輝かせることができる。それがなくて自己犠牲だけだったら、むしろ相手に負担を掛けるだけなんだと、すごく実感しました。

しかもゴードン博士の言う自己表現は、何を何故困っているのか、自分はどうしたいのか、本音の自分の思いだけを語って、後は相手の言い分を聞いて、それから先はお願いや指示をせず、相手に任せるのですから。それだったら看護にも通用するなと思ったんです。

そこで近藤先生に是非私に看護の講座を開発させてくださいと頼んだのです。そして各講座のすべての対応を集大成して、誕生からこの世を去るまでのケアのコミュニケーション、看護ふれあい学講座を日本で独自に作ったのです。

世界で初めての看護ふれあい学一般講座を都内の歯科医院にご協力いただいて、1997年に行い、教科書も書きました。

「看護ふれあい学講座の特徴は何でしょうか?」

この講座は世界に先駆けてケアをする人とケアを受ける人、両者の人間的なふれあいを実現するために開発されました。あらゆる人間関係に通じる対応を身につけ、自己成長を促すプログラムなんです。

患者理解のみが強調されてきた看護の世界に、患者を信頼して率直に自己表現する姿勢を可能にし、ケアする側に自信と実力の向上をもたらしています。

「人の役に立たなくなったら生きていたくない」って義理の母もよく言っていましたが、お世話されるばかりで生きていたい人はいないんですよ。だからケアする側が困った事や、こちらはこういう方針でいきたいんだということを、わたしメッセージでちゃんと伝えて分かってもらう。

当然起こる対立は、知恵を合わせて話し合いで解決する。 その時に相手の抵抗や思いを受け止めて、聞きながら語る両方できますから、ケアを受ける人たちも誰かの役に立ったり自分が存在することを喜ばれて、生きていられるという、そこがゴードンメソッドでできる。

5年目の看護師の方から嬉しい言葉をもらいました。「私が困っていることを伝えるのは、患者相手だとタブーという暗黙の了解がありました。でもわたしメッセージを用いてコミュニケーションをとることで自分の気持ちに嘘をつくこともなくなり、前より相手の気持ちを尊重できる感じです」

看護ふれあい学の各講座受講終了後、ふれあいコミュニケーションリーダー5級〜1級の資格が認定されます。コミュニケーション能力が高く、患者さんや周りの人への対応が適切にできることを証明するものです。

「介護で悩んでいらっしゃる方も、学ぶことで楽になりますか?」

もう、それは完全にそうですね。 自分も相手も大切にする。患者さんやお年寄りだからと言っていつも弱くて困っている状況ではない。

ナイチンゲールが看護の法則も健康の法則も同一であると言っているんですが、それを当り前の人間関係の中で、相手が辛い時はもちろん受けとめて聞いてあげ、問題のない時は普通に接することができます。こちらが困った時は、ちゃんとそれを伝えて、相手が誰かの役に立って生きたいという思いを尊重します。

施設に入所されていた方が、「家に帰りたい」と言って聞かない時。それを「帰りたいんですね」ってよく聞いていくと、家に帰って何かしたいというよりも、「ここにいて皆さんに迷惑をかけてるのが嫌だ。家に帰れば私は何でもできるんだから」と言うんです。

認知症が入ってくると段々そうなりますよね。「家に帰れば何でもできるのに、ここにいて皆さんに迷惑かけてるのが辛いんですね」って能動的に聞くと、「そうなの」と。口から出ると、もうそれでモヤモヤは消えていくので暫く静かになる。そういうことが沢山ありますね。

実際、「この病院には何も食べるものがないの」と言った時に、「何も食べるものがなくて辛いのね」って言うと、「何もない訳じゃないけど、固いお肉が嫌なの」って言ったりね。聞いていくと自分で「こうなんだ」って言ってくる。そうしたら何をどうしてあげたら良いか分かる、ということを目のあたりにしました。

「先生ご自身も闘病体験がおありとか?」

>私もガンの手術をした時に思いましたけれど、「しっかりして下さい。頑張って」というのは辛い時には確かに嬉しいものではないんです。「頑張って下さい」って声が聞こえるんですけれど、もう本当に「うるさい!」って思うんだなって実感しましたね。

そういう状況では、「痛いのね。苦しいのね」って聞いてもらいながら「もうじき麻酔が足されます」という声が聞こえた時、「もう少しだ。頑張ろう」って本当に思えることを実感しました。

三回手術をしましたから、こんなことを一杯体験したんですね。だからそういう意味では正直に当り前の人間関係を持ちながら、その方を生かし自分も生きるという、特に看護、介護はそうありたいですね。

昔、「寝たきりの母より白髪多き妻」なんて川柳があったくらい、犠牲と奉仕で行なっちゃうと皆そうなっちゃう。そこを何とかしたいなっていうので、本当の優しさをお伝えしたくてね。

「看護ふれあい学講座はどのように広がっていったのですか?」

乳ガンで入院していた時に、ちょうどこの『看護ふれあい学講座』の本ができて、照林社の方が三冊持ってお見舞いに来て下さったんですよ。担当の看護師さんから「この本、何ですか」って聞かれたので、「私が書いた本よ」って言って一冊あげました。

その時、その看護師さんから、定期的に点滴してもらっている患者さんが「今日は点滴してもらってない」って言っていて、若い看護師さんが空の容器を持って来て「ちゃんとしました」って言っても、「私はこれがなかったから死ぬのよ。ちゃんとやってちょうだい」と言われて困っていると。

「過剰投与は危険ですし、どうしたら良いものだろうと思っていたんです」って言うので、これを使って説明したのです。

「誰が困っているかと言うと、患者さんは死んじゃったらどうしようって不安な訳だから、その不安をとってあげる必要がある。「とても不安なんですね」って気持ちを汲んで、その後で落ち着いて来たら、「もう一度すると過剰投与になってしまうのが心配なんです」って話して、それでも抵抗されたらまた聞いてあげてと言ったんです。

看護師さんがその通りにしたら、患者さんが自ら「私の記録ミスかもしれない」っておっしゃって下さったと。

それを病棟の会議で発表したので、師長さんが飛んで来られて、治ったら「みんなに話に来てください」ということになったんです。それで入院していた慈恵医大付属病院に話しに行くことになったのです。

看護部会で話をしたら、全体に話を聞かせたいと言われて、各付属病院から来られてもう一回話をしました。是非勉強したいと青戸病院の看護部長さんや研修部長さんが計画して、師長さん主任さん全員が看護ふれあい学一般講座を受講したのです。

たまたま前後して、青戸病院で医療ミスの事件が起きたんです。クレームの電話が殺到して。講座の中で、電話対応のやり取りを一緒に勉強しました。きちんと対応できるようになったので、あっという間にクレーム電話が掛かって来なくなり、退職者が激減して院長から感謝されました。

その影響で、柏病院でも病院ぐるみで行ってくださり、両病院での受講前と後の効果測定を行ったところ、対人関係全般に効果があることが実証されました。更に講座を学ばれて、インストラクター資格を取った看護師さん達も誕生しています。

                

(次回につづく・・)

中井 喜美子(なかい きみこ) 親業訓練シニアインストラクター
                    教師学上級インストラクター
                    看護ふれあい学研究会会長

「親業訓練」は、米国の臨床心理学者トマス・ゴードン博士が
開発したコミュニケーションプログラムです。
カウンセリング、学習・発達心理学、教育学など、
いわゆる行動科学の研究成果を基礎にしています。

ゴードン博士は、親としての役割、つまり<親業>を果たすことは、
「一人の人間を生み、養い、社会的に一人前になるまで育てる」仕事に
たずさわることであると述べています。

多くの親は「親の役割」をはたすために、自分の親から伝えられた経験と、
さまざまな情報・知識に揺れながら試行錯誤を繰り返しているのではないでしょうか。
この暗闇に手さぐりしている親達に、ひとつの方向が示されるようになりました。
−それがコミュニケーション訓練−親業訓練講座です。

1979年に日本ではじめて親業訓練講座が開かれてから、
親業訓練の理念は親子間だけではなく、すべての人間関係に共通する
ということに基づき、現在では「自己実現のための人間関係講座」
「教師学講座」「看護ふれあい学講座」「ユース・コミュニケーション講座」が開かれています。

★ 親業訓練講座 ★
子どもの心を理解し、話の通じ合うあたたかい親子関係を
きずくことを、目的とした訓練です。
★ 自己実現のための人間関係講座 ★
まわりの人と、率直で、あたたかい、人間関係をつくりながら
生き生きと自分らしく生きるための体験学習をします。
★ 教師学講座 ★
教師と生徒の心の絆をつくる教育『教師学マインド』の確立を目指した
講座です。教師の意見を押しつけず、生徒の考えに流されることなく、
お互いを尊重し合える関係をつくります。
★ 看護ふれあい学講座 ★
看護・介護の現場で、あたたかい意志の通い合った人間関係に必要な
コミュニケーションは『ふれあいマインド』です。
★ ユース・コミュニケーション講座 ★
学校での対立解消のためのワークショップ
★ インストラクター養成講座 ★
親業訓練インストラクター養成講座
★ 中井喜美子先生の無料説明会 ★
お問合せは 090−8088−7922 まで
<親業訓練協会のHP>
「親業訓練協会」
<中井 喜美子先生の著書>
cover
看護ふれあい学講座―具体例で学ぶコミュニケーション訓練
<中井 喜美子先生の訳書>
cover
ゴードン博士の親に何ができるか「親業」

インタビュアー:下平沙千代

下平沙千代

ワクワクセラピー☆ソースで、一緒にワクワクしましょう!
日本一やさしい介護タクシー開業準備中です。賛助会員募集中!

ワクワクセラピー ソーストレーナー、NLPセラピスト
レイキヒーラー、導引養生功指導員、成年後見人講座受講中
トラベルヘルパー、ホームヘルパー2級、女性タクシードライバー
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』

インタビュアー:Rico Bonafede(リコ ボナフェデ)

リコ ボナフェデ

セラピスト
『五感が喜ぶカラフルマインドな毎日』をテーマに活動中。

以心伝心の文化を離れて暮らしたことから、
コミュニケーションのあり方と、
言葉そのものが持つ不思議なエネルギーに魅せられ、
そこに潜在意識と色を絡めたセッションを行なっています。
おしゃべりブログ:「やっと逢えたね♪」

インタビュアー:志田祐子

志田祐子

志田祐子です。
臨床心理士の方との出会いをきっかけに、心理学を学び始め、
色々なご縁があって今は心理カウンセラーを目指しています。

心に悩みをもった人の少しでもお役にたてるよう、
五感を使って癒せる心理カウンセラーになれるよう、
日々試行錯誤です・・・。

インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)

脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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