第48回目(1/4) 中井 喜美子 先生 親業訓練協会
親業の三つの柱は、「聞く」「話す」「対立を解く」
今回のインタビューは、「親業訓練協会」の中井 喜美子(なかい きみこ)先生です。
先生は、親業訓練シニアインストラクター、教師学上級インストラクター、看護ふれあい学上級
インストラクターとして、全国の地方自治体・大学などで講演・講座にひっぱりだこで
いらっしゃいます。
看護ふれあい学研究会会長も務められ、「親も子も輝くコミュニケーション」
「看護・介護で互いを活かすコミュニケーション」を伝える活動に注力されています。
育児・介護にすぐに役立つ「自立心を育てる接し方」と「ふれあいマインド」について、
深いお話を伺いました。
「先生が心理学という分野を目指されたきっかけをお聞かせいただけますか?」
大学では、最初は特殊教育がやりたかったんです。東大の梅津八三先生が、盲聾唖、目も見えない耳も聞こえない子ども達に指文字を使いながら代数ができるまで教育されたんですよ。本当に素晴らしくて、そのビデオを見せていただいた時に、これをやりたいって思ったんです。
目の見えない子どもさん達が、知覚して映像を自分の中でどのくらい表象できるかという事に興味を持ちました。盲学校で子どもさん達に、磁石や透明フィルムを使って指で触れる知覚学習でいかに自分の中でイメージを作るか、点と点でも結べば像ができるという研究をしました。
「大学院時代もその研究をされていたのですね?」
梅津先生の弟子で指導教官の先生が東大に移られたので、触覚の知覚学習として提供できる可能性をもっと極めたいなと思ったんです。ハンデを負った方に、そういうことが可能であると伝えたくて。
「大学院を出られてからは?」
それはうちの親が「結婚してお嫁に行かないといかん」って言うのでね(笑)。一年だけ研究生になることを許してもらって、その後は家庭に入りました。
「親業と出会ったきっかけは?」
うちは娘二人なんですが、長女は私のセーターを編んでくれたりいつも何か作っているのが好きだったんです。中学三年の受験生の時に、私は「そんなことしている間に英語の単語を一つでも覚えなさい!」と叱っている親でしたから、娘が胃が痛いと言うようになるまで私の対応が悪いとは気付かずにいました。
娘が「勉強するのが辛いよ」って言っている時に、「ああしたら、こうしたら」と言ったり、「体に良いものを作ったから、これで元気出しなさい」って言ったり。結局、娘は美術大学に進んだのですが、あのとき親業に出会っていなかったらと思うと・・・。
ロジャーズのカウンセリングを日本に導入された第一人者の佐治守夫先生が、恩師だったのですが、その先生にお話したら、「親業を勉強してごらんなさい」っておっしゃったんです。
「そんなこと勉強する人なんているんですか」と半信半疑でしたが、他の先生からも「僕は親業を勉強していて、あの怒りの考え方というのは素晴らしいよ」とお聞きしていたものですから、佐治先生が勉強してみなさいとおっしゃることなら・・・と学び始めたんです。
ですから、娘を何とか元気に受験させたいと思ったのがきっかけだったんです。
知識として心理学は勉強しましたし、カール・ロジャーズの理論ももちろん勉強しましたが、目の前の子どもにそれを応用できるかって言ったら、そうじゃないんだなっていうのを実感して、本当に愕然としましたね。
「受講されていかがでしたか?」
3時間×8回のたった24時間で、子どもに対する自分の気持ちがこんなに変わって楽になることに驚きました。 これをもっと子どもが小さい頃に知っていたら良かったなというのと、自分はこういう対応をされていなかったので、忘れないようにインストラクターになろうと思ったんです。
親業の三つの柱を講座で学んで、家に帰ってから「勉強するのが辛くなっちゃったのね」と長女に聞くと「うん」とホッとした顔をしたんです。分かってもらえるとモヤモヤが取れて、自分の力で考えて、問題を解決していくことができる。それが自主性を育てるということだったんです。
親が受容の気持ちを伝える術を身につけると、子どもが自分を好きになって、自分の価値に目覚める過程に影響を与えられるようになる。そして一番大きいのは、子どもが自分は愛されていると感じることができ、少年期・青年期に味わう失望と苦悩に建設的に臨む力を与えることができる、そう親業の本には書かれています。
本当にそうだな、とすごく実感しました。
「親業の三つの柱というのは?」
「聞く」「話す」「対立を解く」です。 「聞く」ことは、子どもが心を開いて本当の気持ちを親に話すように接し、子どもが何か問題を持って悩んでいる時に、自分で解決できるように手助けします。
子どもは自分を理解しようとする親の姿勢に気付くと、自分で乗り越えようとするエネルギーが湧いてくるんです。自主性を育てることができるのが第一の柱(能動的な聞き方)です。
「話す」ことは、親が困った時に相手を叱ったり責めたりするのではありません。何が何故困るのかを率直に伝えて、自分がやった行動が人にどんな影響を与え、どんな風に感じさせたか、気付くように親がちゃんと向き合って語り、思いやりを育てるのが第二の柱(わたしメッセージ)です。
第三の柱は、二人の人がいれば当然対立が起こるでしょう。この時一方的に言うことを聞かせるのでも、子どもの言いなりになるのでもなく、それぞれの欲求を出しあって解決策を一緒に考える。
これはジョン・デューイの6段階の問題解決課程にあてはめて、この順番で問題解決をしていくと、話し合いが非常に楽になるとゴードン博士が勧めています(勝負なし法)。
国際社会でも活躍できる対立を解く力を、家庭の中でも育てていくことができるんです。 特に第二、第三の柱である自己表現の対応と話し合いの対応が目から鱗でした。
私は小学校から高校までミッションスクールで、東京女子大もそうですが、サービス&サクリファイスなんですよ。奉仕と犠牲が優しさだと思っていたんです。
そうではなくて、自分の気持ちに正直になって「あなたなら分かってくれますね」と自分の思いをちゃんと伝えること、自分の責任で相手を信頼して自己表現することが優しさだと、本当に180度考え方が変わったのです。
「相手を信頼して自己表現することが大切と思われたのですね?」
その通りです。ゴードン博士の言う自己表現は、一方的にこちらの要求や不満をぶつけるのではなくて、何を何故困っているのか、自分はどうしたいのか、本音の自分の思いだけを語って、後は相手の言い分を聞いて、それから先は相手に任せるのです。
自分が相手を大切にするというのは、相手を受け入れることだけに終始するのではない。ゴードンメソッドの根幹はそこだなと感じました。
「ゴードン博士の親業は、どんな風に広がっていったのでしょうか?」
1960年代のアメリカで子どもの問題が色々起きた時に、最初はその子を育てた親が悪いと責められた。でも、子ども達とどういう風に接すれば社会に有用な子ども達に育てられるか、効果的な親への援助がなされて来なかったということです。
最初は問題を起こした子どもの親たちを集めてカリフォルニア州のパサディナで講座が行われました。それが全世界47ヶ国に広がって、問題を起こした子どもの親のための講座というよりは、予防医学的にもっと小さい時からという考えが広がっていきました。
日本は、世界で11番目に、近藤千恵先生が本を訳され、向こうに渡って資格を取られて、導入されたんです。アメリカでは親業の本をスーパーマーケットで購入でき、渡米した受講生の誰もが知っていたと驚いていました。
フィンランドでは国興しのために、「悪い子どもは一人もいない。親業を知らない親がいるだけだ」とか、「ハッピーな父親になろう!」とか色々なスローガンを立てて取り組んでいるそうです。
日本では30年の間に、全国、北海道から沖縄までで、もう15万人以上の方が親業を学ばれて、インストラクター資格を取った人達が1,200人以上、実働している人が600人以上います。
「最初、親業は日本ではどんな反応だったのでしょうか?」
永井道雄先生という文部大臣(当時)の方が前向きに評価されて、『親について考え直すとき』という記事を、朝日新聞・朝日家庭便利帳に書かれ、冒頭にそれを掲載して、サイマル出版からゴードン博士の『親業』が出たのですが、問い合わせの電話が鳴り止まなかったそうです。
その後、三鷹市の青年会議所の方の援助を得て、近藤千恵先生が全国に向けての仕事を始められたんです。 親業訓練協会が1980年に設立されて、私はその三年後に出会いました。私の恩師のある先生は「アメリカのものを入れても」なんて最初はおっしゃっていたんですが、しばらくして「それは杞憂であった」と。
日本でも「言い分を聞こう。本音を語ろう。話し合いましょう」と同じ意味合いで「和を持って尊しとなす」って聖徳太子の時代から言われていますよね。
だから日本人だとか何人だとか、アメリカのものを取り入れたということでは全然なくて、当たり前のことなのです。聞くのは、質問でもなく同意でもなく、言い分を聞く。
また、本音を語るというのは、江戸時代の学者、貝原益軒の『和俗童子訓』という本の中に「口腹へだてなく」と書かれたものがありまして、「本音で語り合って、しかも子どもを厳しく叱りつけてはいけない。大人に語るようにちゃんと言い聞かせることが必要である」と書かれているのです。
江戸時代から言われて来ている事と全く一緒なんです。それから「能動的な聞き方」の「聞く」という字が、私が東洋医学の先生にお聞きして本に書きましたけれど、「聞く」は信じてきく、一方カウンセラーの「聴く」耳偏に十四の心と書く方は、許されて聴くという意味があるそうです。
古典的な診療に四つの診療というのがあって、西洋医学での「聴診」が東洋医学では「聞診」なんですね。資格を持った方が許されて聴く、聞く方は素人の親でも、子どもは自分の問題は自分で解決できるんだと信じて聞く。そういう意味で素人の親でも今日からできるということなんですね。
「親の対応として、どのあたりが問題なのでしょう?」
親が代わってやってあげられないこと、例えば勉強やお稽古、友達との関係などで悩んでいる時、子どもに自分で問題解決をさせないで、親が良かれと思って、親の意見、考え、判断をあげちゃうんです。
具体的に言うと、「ああしなさい。そうするとこうなっちゃうよ。こうしたら。しょうがない子ね。いつもそうなんだから。どうしてそうするの? あなたならできるわよ。まあいいじゃない」など。
困っている時にこの対応をされると、子どもはもう話したくなくなってしまいます。本当の手助けは、その子が自分で考えられるようにモヤモヤを取ってあげることなのです。
「具体的にはどういう接し方をすれば良いのでしょう?
親の意見、判断、考えをあげないで、子どもの話を聞く。それは、「どうしたの、何があったの」と質問するのでもなく、「いいよ。やらなくても」という同意でもないんです。親は鏡になって子どもの言ったことを繰り返したり、気持ちをくんだりします。
例えば、子ども達が戦いごっこをやって「やめて」って言ってもやめてもらえない、そういう時に親は一生懸命アドバイスしがちなんですけれど、それを「やめてって言ってもやめてくれなくて困ったのね」「叩かれて辛かったのね」って、こんな風に聞いてあげる。
これが能動的な聞き方です。 レストランで「ご注文を繰り返します」というのは間違いを無くす為の確認なんです。コミュニケーションって言葉と判断のズレが起きますから、そこで繰り返して「言っていることをちゃんと理解しましたよ」ということを確かめる対応です。
(次回につづく・・)
中井 喜美子(なかい きみこ) 親業訓練シニアインストラクター
教師学上級インストラクター
看護ふれあい学研究会会長
「親業訓練」は、米国の臨床心理学者トマス・ゴードン博士が
開発したコミュニケーションプログラムです。
カウンセリング、学習・発達心理学、教育学など、
いわゆる行動科学の研究成果を基礎にしています。
ゴードン博士は、親としての役割、つまり<親業>を果たすことは、
「一人の人間を生み、養い、社会的に一人前になるまで育てる」仕事に
たずさわることであると述べています。
多くの親は「親の役割」をはたすために、自分の親から伝えられた経験と、
さまざまな情報・知識に揺れながら試行錯誤を繰り返しているのではないでしょうか。
この暗闇に手さぐりしている親達に、ひとつの方向が示されるようになりました。
−それがコミュニケーション訓練−親業訓練講座です。
1979年に日本ではじめて親業訓練講座が開かれてから、
親業訓練の理念は親子間だけではなく、すべての人間関係に共通する
ということに基づき、現在では「自己実現のための人間関係講座」
「教師学講座」「看護ふれあい学講座」「ユース・コミュニケーション講座」が開かれています。
- ★ 親業訓練講座 ★
- 子どもの心を理解し、話の通じ合うあたたかい親子関係を
きずくことを、目的とした訓練です。 - ★ 自己実現のための人間関係講座 ★
- まわりの人と、率直で、あたたかい、人間関係をつくりながら
生き生きと自分らしく生きるための体験学習をします。 - ★ 教師学講座 ★
- 教師と生徒の心の絆をつくる教育『教師学マインド』の確立を目指した
講座です。教師の意見を押しつけず、生徒の考えに流されることなく、
お互いを尊重し合える関係をつくります。 - ★ 看護ふれあい学講座 ★
- 看護・介護の現場で、あたたかい意志の通い合った人間関係に必要な
コミュニケーションは『ふれあいマインド』です。 - ★ ユース・コミュニケーション講座 ★
- 学校での対立解消のためのワークショップ
- ★ インストラクター養成講座 ★
- 親業訓練インストラクター養成講座
- ★ 中井喜美子先生の無料説明会 ★
- お問合せは 090−8088−7922 まで
- <親業訓練協会のHP>
- 「親業訓練協会」
- <中井 喜美子先生の著書>
看護ふれあい学講座―具体例で学ぶコミュニケーション訓練- <中井 喜美子先生の訳書>
ゴードン博士の親に何ができるか「親業」
インタビュアー:下平沙千代
ワクワクセラピー☆ソースで、一緒にワクワクしましょう!
日本一やさしい介護タクシー開業準備中です。賛助会員募集中!
ワクワクセラピー ソーストレーナー、NLPセラピスト
レイキヒーラー、導引養生功指導員、成年後見人講座受講中
トラベルヘルパー、ホームヘルパー2級、女性タクシードライバー
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』
インタビュアー:Rico Bonafede(リコ ボナフェデ)

セラピスト
『五感が喜ぶカラフルマインドな毎日』をテーマに活動中。
以心伝心の文化を離れて暮らしたことから、
コミュニケーションのあり方と、
言葉そのものが持つ不思議なエネルギーに魅せられ、
そこに潜在意識と色を絡めたセッションを行なっています。
おしゃべりブログ:「やっと逢えたね♪」
インタビュアー:志田祐子
志田祐子です。
臨床心理士の方との出会いをきっかけに、心理学を学び始め、
色々なご縁があって今は心理カウンセラーを目指しています。
心に悩みをもった人の少しでもお役にたてるよう、
五感を使って癒せる心理カウンセラーになれるよう、
日々試行錯誤です・・・。
インタビュアー:脇坂奈央子(わきさかなおこ 日本メンタルサービス研究所 所長)
『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。
心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
発行メルマガ:こころの栄養@さぱりメント












