第41回目(2/4) 尾上 明代 先生 ドラマセラピー教育・研究センター

「役」があると、思う存分その感情が出せるから解放に向かう

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「最初はどんなところからドラマセラピーを日本で展開されましたか?」

カルチャーセンターが一番多かったですね。

「病院や学校は?」

学校、特に小学校では多く行いましたよ。病院では、少なくとも最初のうちは、やるつもりはありませんでした。なぜかと言うと、まず多くの一般の人に知ってもらい、ある程度広まってから、医療などの治療現場へという流れにしたかったんです。

心の病気の人と心が健康な人って、どこからって分けられるものじゃないですけど、数からしたら健康な人が多い。健康な人でも、例えばうつ病予備軍のような人がいっぱいいます。

病院に入院している人は医者に任せて、そうじゃない一般の人の予防的な意味で行えるセラピーをしたかった。それに100%幸せな人は誰もいないし、何も悩みのない人もいないので、十分一般の人に役立つものですから。しかも、コミュニケーション力や人間関係を向上させる、そういう効用もあります。

どんなものか知られていないだけで、体験してもらったら絶対に一般の人が恩恵を受けられるものだと分かっていたので、逆に、医療現場だけに留めておくのはもったいないと思ったのです。

一般の人が、「ドラマセラピーって面白い。効果があるみたい」となったら、そこから広がっていくようになるんじゃないかと思ったので、まずこちらをターゲットにしようと思いました。そして、本当に思ったとおりの流れになってきています。

最近は、精神科医や臨床心理士など、医療・臨床の場からも私の所にトレーニングを受けにいらしています。例えば、アルコールなどの依存症の治療は、どうしても認知行動療法が主流になります。主にことばによるカウンセリングや頭で考えるだけでは限界があるんです。

そこにアクションが入る、つまり実際に自分の身体や感情を動かして体感してもらうということが、すごく大事だということが分かってきて、次はドラマセラピーだろうと考える方々が増え始め、今、医療の現場の方々と一緒に連携してやって行こうとしています。

「日本でのRDT第1号としてのご苦労は?」

やはり、まず資格を取るため、多くの時間数をこなすために、ドラマセラピーを「売り込んで」行う現場を作り出すことが大変でしたね。そのうち「これは良い!」と、分かってくれる人がサポーターとなったり、色々お仕事を依頼してくれたり、一緒にセミナーやろう、という展開にもなりました。

つまり、ドラマセラピーだけでなく、その周辺領域や教育の専門家と一緒にセミナーをするとか、そういう形で少しずつ広がっていきました。うちのドラマセラピー教育・研究センターのトレーニングでも、私だけではなくて、他のアプローチの学びも必要という時に、そういう方に講師になって来てもらったりしています。

「ドラマセラピーを、分かりやすく説明していただけますか?」

ドラマセラピーを簡潔に説明したいとき、私が良く引用するのは、オスカー・ワイルドの言葉です。「人は自分自身として語るとき最もその人自身から遠ざかっている。仮面を与えよ。そうすれば人は真実を語るであろう」。

つまり素のままの自分でいる時は、本当の自分を出しにくい。仮面、つまりドラマで別の人の「役」を演じると、かえって本当の自分が出せる、ということなんです。

もちろん、オスカー・ワイルドは、ドラマセラピー分野にとって重要な言葉になると思って言ったわけじゃないんです。だけど後に、私達ドラマセラピストにとって、すごく意味のある言葉になったのです。

特にあまりよく知らない人とか、自分の内面をすぐに出せないという状況では、やはり、仮面というか、何か自分を隠せるものがあると、安心して自分を出せる訳ですよ。仮面と言っても、本当に仮面をかぶるわけではなくて、基本的にはそれは「役」のことなんですね。

例えばですけれど、人のことをいじめたいって感情を持っている人がいても、普通はそんな感情は出せないし、常識的に考えると、実際いじめるという行為もしないで我慢しますよね。

だけど、その人にシンデレラの継母の役が来たとして、これは役なんだから自由に演じてくださいと言われて、そしてそれがバチッとはまれば、そこでその人にとっては思う存分いじめられるから、セラピー的なカタルシスが出るというそういう意味なんですよね。

閉じ込めておくと様々な心の病になる可能性のあるものを、架空の中で表現し、実体験することで解放し、そして実はドラマという枠内に包みこみ、現実では表現しなくて済むようなことも可能となります。

他人に一番隠さなくちゃいけないものは、自分の感情だったりしますよね。しかも良くない感情ね。悲しみとか、怒りとか、いじめたい気持ちとか。仮面をかぶる、何かの後ろに隠れるっていうことは、それを抑圧するんじゃなくて、解放に向かわせる。これは、アメリカのルネ・エムナーというドラマセラピストも言っています。

素の自分だったら抑圧してしまう。だけど、継母の役をやると、隠れる物、つまり「役」があると、思う存分その感情が出せるから解放に向かうんです。

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「演じることによって、心の奥底にあるものを解放することができる?」

そうですね。それを、ドラマを使わずに引き出そうとすると時間かかることが多い。やはり、色々な鎧があって。

だから、素の○子さん・○男さんとカウンセラーの○○さんが話をするだけだと、時間がかかることもあるし、分かりにくいこともあるけれども、ドラマならば直接的また象徴的に出てくるので、誰かに何かストーリーを作ってもらって演じてもらったら、こちらにもすぐ分かることが多い。

その人がどういう感情を持っているか分かる。子どもは特に分かり易いですよ。

それから、ドラマを使うと視点を変えて物事を見ることができます。例えば悩んでいる人が、自分の中だけで今の自分の役をやっていたら、もう自分の中しか見られないから、はまっちゃって出られないんだけれども、そこから物理的に外に出て視点を変えて見ることで、自分をリフレッシュすることができる。

例えば、「あなたの役を私がやります」ということで、私が演じている所をその人が見て「あぁ、自分ってこうなんだ」と、客観的に分かる。

頭の中だけで、自分はこういう風に見られているだろうなと考えていたのが、私が演じたのを見たらよく理解できて、悩んでいる自分を時には笑ってしまえたり、そこから抜け出せたりする。

いろいろな他者の役をやるっていうことで、理解できない人の気持ちも分かります。例えば、若い女性が、性別も年齢も違うプレーボーイの役をやってみたら、その人の気持ちが何となく分かるということがあります。視点が変わる。物理的に自分の体を使って、自分の感情を使うから、頭だけの理解ではないんです。

また、視点は、現在も未来も一瞬のうちに変えられますから、過去に戻って起きたことを検証することもできるし、未来にも行けます。例えば今から、5年後のあなたになってもらって、5年後のあなたから5年前のあなた、つまり、現在のあなたを見ると、今の自分を大きな違った視点で捉えて今の問題に対処できたりするんです。

それがドラマの良い所ですね。それと、ルネ・エムナーも言っているんですけど、ドラマって、色々な芸術の中で、一番日常生活に近い芸術じゃないですか。

だから、ドラマで演じたことは、それがそのまま現実生活のリハーサルになる訳です。新しい自分、なりたい自分に変わることが、比較的簡単にできる。

本当にそこの場面を演じる時、現実との壁が一番薄いんじゃないですか。 紙一重なので、非常にリアルな体験ができる芸術ということが言えるので、新しい自己を作り出せる。

「演じることで自己拡大できるのですね?」

役のレパートリーを広げることができる。そのリハーサルも、言ってみれば本番なんですよ。既にドラマの中でやっているんだから、1回、その行動ができたのと同じことなのです。

例えば「今まで苦手だと思っていた人を受け入れられるような人間になりたい」という人に、それができている場面を演じてもらう。今演じたんだから、リハーサルと言いながらも、もうそれはできたんです。体験になるんですよね。

それから、「何で架空の設定で、架空のドラマを演じて、癒されるんですか?」と、聞かれることがあるんですが、それは、枠組みは架空でも、その時使っている感情はその人の本物の感情だから、癒されるんですよ。いじめたい人が、いじめたい感情を出せば、シンデレラの継母になったって、癒される訳です。

出したくない感情とか、フィットしない役をやったら、全然、セラピューティックじゃないので、そういうことはしません。でも普通の演劇ではやりたくない役でもやらなければならないことがあるから、そこは大きな違いの一つです。

表現するのはその時の本当の感情、またはその人の表面下にある本当の気持ちなんですね。だから、癒される。

今自分が見ている夢が、夢だと分かって見ている夢を明晰夢って言うんですけれども、その夢の中でやったことが、リアルな現実でやったことと同じ効果を心身や脳にもたらすというスタンフォード大学の研究結果があります。ということは、意識的に行うドラマは、夢よりもっと効果があるのは簡単に分かるでしょう。

ドラマセラピストは、その人・そのグループに最適のワークを創ったり選択して、気づきや効果を促す導きや介入をしていく訳です。さらにグループダイナミクスを使って、お互いの一体感、楽しいインターアクションを創っていきます。ドラマセラピーの良さを、簡単に言うとその辺ですね。

「他の芸術療法と比べて、ドラマセラピーの良さは、現実との距離が近いこと?」

現実との距離が選べる。いかようにも近くできるし、遠くにもできる。現実に近い役をやってもらえば、距離が近くなります。それが効果的な時はそれをやってもらいます。

距離が近過ぎてしまっては、苦しくなったり、回避してしまったり、題材やクライエントさんの状態によっては危険にもなりうるので、そういう場合は、なるべく距離を遠く、つまり架空にして、より安全な場を創ります。

私のスーパーバイザーの一人のサリー・ベイリーというアメリカのドラマセラピストが、ドラマセラピーは、他のセラピーに比べて、safer、quicker, deeperって言っているんです。より安全に、より早く、でもより深く到達できるという事です。

比喩や象徴的なものを使ったりするので、全く個人的な体験を話してもらうことなくして、全員が深く癒されることも可能です。場合によっては個人セッションもしますが、基本的にグループでやっていくものです。

集団療法でもあるので、たとえば参加者それぞれの苦しい体験が個別であっても、根にある痛みの部分は同じなので、そこで共有体験をしてもらえたら、一緒にグループとして成長していけるので、お互いが癒される。そこのパワーがすごいですね。

グループのパワーを使うんです。だから、1対1よりももっと良い効果が現れる。

「グループの方が良いのですか?」

そうですね。グループで行なうということ、そこでドラマを演じ合うこと、この組み合わせが絶妙な効果を発揮するんです。

ドラマセラピーって、効果をより強力にするためには、家で一人で演じてというのではなくて、観客の存在が大きいんです。普通の演劇のように演じる人・観る人と別れてではなく、皆が演じ合う。初期は遊びの要素がいっぱいで、どんどん遊んでいくので、それで心を解放していくんです。

それに、今の社会には、精神的な病気の人や引きこもりの人、社会に出られない人がいっぱいいて、例えばデイケアに行ってリハビリをしたりします。そこはある意味、病院の一環で、そこに行かれるようになった人が、そのまますぐ社会に出られるかって言ったら、そうじゃないんですよね。そこから、本当の社会まで、まだかなり心理的距離が遠い。

だから、その橋渡しというか、しっかりした信頼が基礎にあるグループ内で受け容れ合えた体験が非常に重要です。

10人なら10人のドラマセラピーグループでやっていくとミニ社会なので、自分が受け容れられてちゃんと行動できるっていう自信も付いて良いですよね。このミニ社会体験が、まさにリハーサルとして本番に備えることになります。

そしてこの強力なグループの力や、お互い結束を強めながら、最終的にはそこから巣立っていけるように、セラピストも色々工夫をして、グループを卒業できるようにしていきます。

(次回につづく・・)

尾上 明代  ドラマセラピー教育・研究センター 代表
        立命館大学大学院教授
        米国ドラマセラピー学会公認ドラマセラピスト
        (Registered Drama Therapist, RDT) 日本国内第一号

★ ドラマセラピーとは ★

ドラマを演じることが「癒し」につながるのは、声や感情を出したり、
心の中を表現することで心身の浄化的作用が起こるからであると考えられます。

現実の自分を直接、表出・表現できない場合でも「役」というものの後ろに隠れると
(あるいは役を手段として使うと)、それが可能になる。
パラドックスのようですが、これがドラマセラピーの基本的で重要なセオリーであり、
魅力です。

またドラマには、その体験を通して現実を味わうことができ、
また希望を叶えた満足感などが、現実の体験と変わらない効果を持たせる力があります。

このような、「ドラマ(劇)」というものが本来持つ、いわば「癒しの力」を意図的に
用いて、心を癒したり、あるいは内面的な成長を促したりしようというのが、
ドラマセラピーです。


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 詳しくは: ドラマセラピー教育・研究センター

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「ドラマセラピー」という言葉は耳慣れないかもしれませんね。
簡単に言うと「自分ではない役を演じる」ことによって、創造力を活性化し、
自己表現力やコミュニケーション力を高め、人間関係の向上を図るというものです。
何より、楽しみながら、自分自身が癒されていき、思いがけない気付きが
たくさん得られるのが魅力です。
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<尾上明代先生の訳書>
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ドラマセラピーのプロセス・技法・上演 演じることから現実へ

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下平沙千代

ワクワクセラピーで、好きなことを話しているうちに、希望が湧き上がり、
レイキでもっと元気になって、ショッピングや旅行にも行きたくなっちゃうような、
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ワクワクセラピー ソーストレーナー、レイキヒーラー、導引養生功指導員、
ホームヘルパー2級、普通二種&大型一種免許取得
斉藤一人さんの全日本バンザイ連盟正会員
ブログ:『幸せを運ぶワクワクセラピー ソース』

インタビュアー:笹木美子

笹木美子

「元気サプリ日本語コーチ」

外国人ビジネスパーソンに日本語を教えています。
敬語・丁寧語 面接指導、試験対策、ビジネス会話がメイン。
他に、企業向けマナー研修等セミナー講師。

コーチングやカラーセラピーで人をハッピーにしていきたいです。よろしく。
ブログ:愛☆光☆情熱 Marilynn♪

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脇坂奈央子

『道開きの心理士』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。
ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・催眠療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士、認定THP心理相談員、統合心理セラピスト、心理カウンセラー、
米国NGH認定ヒプノセラピスト、認定キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:ワイス博士直伝の前世療法・催眠療法・心理療法★ラポール
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