今、自己実現という言葉は、どちらかといえば、世間に出て、バリバリ活躍するというようなイメージに変容されて使われていることが多い気がします。
もともと心理学でいう自己実現の意味合いとは、大分違います。
例えば、仙人のような生き方も自己実現です。女性で、社会にバリバリ出た方が自己実現になる人と、専業主婦でひたすらやっていく方が自己実現になる人と、その意味は人によって違います。
本来の自己実現ということをもう1回よく考えてみたら、面白いことが分かってくるのではないでしょうか。
「心理学でいう自己実現とはどういう意味ですか?」
ユングが「自己の実現」と言っています。
人間が子供から大人になって、活躍していきます。ここまでは昇り調子でいい。
しかし40半ば過ぎると、だんだん体力が落ちてきますね。社会的なものからも退却して、やがて死に至ります。
ユングが強調したかったのは、この人生の後半の部分から、本当の自己実現が始まるということなのです。
これまで太陽が昇る方ばかり着目されてきたけれど、太陽が沈んでいく、人生の後半部分が重要なのだと。
中年期の危機から始まって、高齢期の危機から死を迎えるまで、ここが人生の完成にとってとても重要なのだということに焦点を当てたのが、ユングなのです。
自己実現というのは、自分らしい人生の完成というイメージが強いわけです。
本当に自分らしい人生とは何でしょう?バリバリ活躍するのももちろんいいけれども、それだけではない。
例えば、売れない画家で一生生きていくというのはどうでしょう?
ものすごく平和で、「俺は、売れる売れないということには関心がない。ひたすら自分が納得いく絵を描いていたいんだ」と言って、それで死んでいく場合があります。
その50年後に、その人の絵が急に売れたとしますね。その人は自分の絵が売れていることなど知らないわけです。
その人の絵が、50年後になったら、ものすごく評価されるような、自分にしか描けないような絵を描き続けたということです。これだって自己実現ですね。社会的評価とは、別のものなのです。
「<自己実現ができていない、満足感がない>という人が最近多いのですが?」
今、自己実現しなきゃという、「自己実現症候群」みたいなものがあるのではないでしょうか。
いわゆる成功というイメージがあって、そのイメージを生きられないと、自分はダメなんだと思い込む。
100人中5人しか実現できないような生き方を自己実現と呼んで、それができていないと、何か自分が欠けているような、損をしているような感じになってしまう所があるのではないでしょうか。
特に女性に対してはそういう印象を持っています。30代の女性などは、キャリアウーマン、専業主婦、どちらを選んでも負け犬っぽい雰囲気がありますよね。
そしてその両方を選択した人は、援助の体制がないと超多忙となり、自分の為に生きている実感が感じられなくなる。
彼女達が、満たされていないという思いに陥りやすいのは、一方では、いわゆる社会的な自己実現を、また一方ではいい奥さん、いいお母さんになることを求められ、これらを全部やらないと何か欠けてしまっているよう感覚を持ってしまうから。
ひたすら、ただ楽しく仕事をする。ひたすら、ただ楽しく子供と遊びながら、子育てにいそしんでいる。
そのどちらかだけでは、なんとなく満たされない気持ちが出てくる。本当の自分がどこかにおきざりにされていくような不安に襲われる。
時代の端境期だからですね。今は価値観がシフトする時で、古い価値観も残っていて、新しい価値観もあるから、どっちも満たさなければいけないと思ってしまうと、どっちもやらないとパーフェクトではないみたいな、辛い時代です。
男性も、終身雇用があったらいいのにと思うけれども、今はもう能力主義みたいになってしまって、自由に働く人が出てきた半面、恐々としながらやっている人も多いです。
だから鬱の人がこんなに多くなるのでしょうね。







