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メンタルビジネスへのご招待(インタビュー)

メンタルビジネスの最前線で活躍されている各分野の第一人者の生の声を皆様にお届けします。




第20回目(2/4)  諸富 祥彦 先生 トランスパーソナル学会

2007年 12月 22日

求めれば求めるほど逃げていく「幸福のパラドックス」



←前回号「悩みについて考えることで生きて行こう、と決めた」



インタビュー写真


「今、成功願望とか、自己実現というのも、2極化しているようにも感じますが?」

今、自己実現という言葉は、どちらかといえば、世間に出て、バリバリ活躍するというようなイメージに変容されて使われていることが多い気がします。

もともと心理学でいう自己実現の意味合いとは、大分違います。

例えば、仙人のような生き方も自己実現です。女性で、社会にバリバリ出た方が自己実現になる人と、専業主婦でひたすらやっていく方が自己実現になる人と、その意味は人によって違います。

本来の自己実現ということをもう1回よく考えてみたら、面白いことが分かってくるのではないでしょうか。


「心理学でいう自己実現とはどういう意味ですか?」

ユングが「自己の実現」と言っています。

人間が子供から大人になって、活躍していきます。ここまでは昇り調子でいい。

しかし40半ば過ぎると、だんだん体力が落ちてきますね。社会的なものからも退却して、やがて死に至ります。

ユングが強調したかったのは、この人生の後半の部分から、本当の自己実現が始まるということなのです。

これまで太陽が昇る方ばかり着目されてきたけれど、太陽が沈んでいく、人生の後半部分が重要なのだと。

中年期の危機から始まって、高齢期の危機から死を迎えるまで、ここが人生の完成にとってとても重要なのだということに焦点を当てたのが、ユングなのです。

自己実現というのは、自分らしい人生の完成というイメージが強いわけです。

本当に自分らしい人生とは何でしょう?バリバリ活躍するのももちろんいいけれども、それだけではない。

例えば、売れない画家で一生生きていくというのはどうでしょう?

ものすごく平和で、「俺は、売れる売れないということには関心がない。ひたすら自分が納得いく絵を描いていたいんだ」と言って、それで死んでいく場合があります。

その50年後に、その人の絵が急に売れたとしますね。その人は自分の絵が売れていることなど知らないわけです。

その人の絵が、50年後になったら、ものすごく評価されるような、自分にしか描けないような絵を描き続けたということです。これだって自己実現ですね。社会的評価とは、別のものなのです。


「<自己実現ができていない、満足感がない>という人が最近多いのですが?」

今、自己実現しなきゃという、「自己実現症候群」みたいなものがあるのではないでしょうか。

いわゆる成功というイメージがあって、そのイメージを生きられないと、自分はダメなんだと思い込む。

100人中5人しか実現できないような生き方を自己実現と呼んで、それができていないと、何か自分が欠けているような、損をしているような感じになってしまう所があるのではないでしょうか。

特に女性に対してはそういう印象を持っています。30代の女性などは、キャリアウーマン、専業主婦、どちらを選んでも負け犬っぽい雰囲気がありますよね。

そしてその両方を選択した人は、援助の体制がないと超多忙となり、自分の為に生きている実感が感じられなくなる。

彼女達が、満たされていないという思いに陥りやすいのは、一方では、いわゆる社会的な自己実現を、また一方ではいい奥さん、いいお母さんになることを求められ、これらを全部やらないと何か欠けてしまっているよう感覚を持ってしまうから。

ひたすら、ただ楽しく仕事をする。ひたすら、ただ楽しく子供と遊びながら、子育てにいそしんでいる。

そのどちらかだけでは、なんとなく満たされない気持ちが出てくる。本当の自分がどこかにおきざりにされていくような不安に襲われる。

時代の端境期だからですね。今は価値観がシフトする時で、古い価値観も残っていて、新しい価値観もあるから、どっちも満たさなければいけないと思ってしまうと、どっちもやらないとパーフェクトではないみたいな、辛い時代です。

男性も、終身雇用があったらいいのにと思うけれども、今はもう能力主義みたいになってしまって、自由に働く人が出てきた半面、恐々としながらやっている人も多いです。

だから鬱の人がこんなに多くなるのでしょうね。



インタビュー写真





「先生の著書 『孤独であるためのレッスン』 の中で、ロンリネス(寂しさ)とソリチュード(孤独)について書かれていましたが、その違いについて教えてください。」

ロンリネスというのは、簡単に言うと寂しさです。人と一緒にいないから寂しい。俺は一人ぼっちだという感覚。

ソリチュードというのは、もう少しそれを深めていったものです。

ロンリネスの方は、他者から切り離されている自分を感じるわけです。ソリチュードは、そこから降りていって、自分との対話で自分を感じるわけです。

自分の心の声を聞くというのが、カウンセリングの大切なエッセンスだと思います。そのエッセンスが、ソリチュード(孤独)にあるのではないでしょうか。

特にカウンセラーは、他人から離れて、自分と向き合う力というものを育んでいくことが必要なので、孤独を享受できないといけないと思います。


「それならばソリチュードは孤独という言葉のイメージと離れているように感じますが?」

孤独という言葉を、そういう意味合いに使いましょうという提案です。孤独であるということを肯定的な意味合いで使おうということです。

つまりロンリネスを深化させていくと、ソリチュードになるということです。

なんか最近うまくいかないな、ということもありますよね。でも、それは自分の成長の手がかりになります。
そのちょっとした不全感というのが、人間の成長の原動力になるのです。

寂しいなと思っても、それだけだと否定的になりがちだけれども、そのことを大切にしながら、「なんだろうこの寂しさは」という風に自分を深めていったら、ソリチュードの世界、自分と向き合う世界に飛躍できます。


「先生にとって幸福とはどういうことですか?」

幸福というのは、求めたら逃げていきます。幸せになろうと思って求めていったら、まだ足りない。

むしろ本当の幸せというのは、幸せになろうとして手に入るものではなくて、自分というものを忘れて、自己忘却している時の事ではないでしょうか。

幸福と自己忘却は、セットだと僕は思うのです。本当に幸せな時というのは、幸せになろうなんて思っていない。幸せではないから幸せになろうと思うのです。

「本当に満たされているなあ」「幸せだなぁ」、としみじみ感じる時は、そんなに幸せになろうとしていませんよね。「幸せとは何か?」を考えません。我を忘れて、それを楽しんでいるのです。

だから逆に、幸せのためにこれが必要だと、ガツガツし始めたら、足りない所ばかりが見えてきて、不幸になってしまう。

「幸福のパラドックス」というのは、幸せは求めれば求めるほど逃げていく、というからくりです。


「先生は孤独の大切さを訴えると同時に、支え合いのネットワーク作りにも力を注いでおられますね。」

トランスパーソナル学会もそうですが、その他に「気づきと学びの心理学研究会<アウエアネス>」という研究会を作っています。

これは宗教ではない所で、アウエア(気づき、覚醒)を目指す人達の、ゆるやかなネットワークができたらいいなという思いで作りました。

気づきと学び、深い自己成長のための、たのしく勉強できるワークショップを年に数回、開催しています。
カウンセラーの方、カウンセラー志望の方の他、教師の方、医療関係の方、そして、自分を、より深く、より自分らしく生きようとしている一般の方々もたくさん参加しています。

参加希望の方は、私のHP「諸富祥彦のホームページ」 をご覧いただくか、
「アウエアネスへのメール」 にてご連絡ください。

宗教でもいいのですけど、今はそこに入れない人達もたくさんいるでしょう。

ここでは特定の教義を信じなくてもいいし、お布施もしなくていい。勉強会に参加してもらって、お互いが自分の心に耳を傾けあえるような、つながりを目指しています。

アウエアネスへの旅を自分一人で頑張るというのは、なかなか難しい。

それが、ここに参加したご縁で、二人で時々会いながら、お互いが自分の内面をみつめる体験をする関係を築いていったり、小さな小さなネットワークがあちらこちらと広がっていき、ひいては日本社会全体が、個として自立しながら覚醒していく、真実の生き方に目覚めていく、という風になっていったら、すごく理想的ですね。

今の日本人の場合、まだ誰かに頼って、すがって生きていこうとする所があります。

そうではなく、自立しつつも、自らの魂の覚醒を目指していくという学びを、普通の人が、お互いに支え合っていく、そのきっかけとなるようなネットワークをこれからも作っていきたいと思っています。

<アウエアネス>はあくまでもネットワークなので、登録等もありませんし、「私覚醒しました」「いや認めない」とかいうのもありません。どなたでも参加できます。

そして僕はもう一つ、「教師を支える会」というネットワークも作っています。

学校の現場では、学級崩壊、いじめ、不登校生徒の増大、学力低下など問題は山積みで、まさに「教師受難の時代」です。

体調不良や、鬱病で、休職あるいは退職に追い込まれる先生も少なくありません。

現在は1ヶ月に一度、教師のためのグループカウンセリングとコンサルテーションを行っています 。




                 (次回につづく・・)


次回号「シングルマザーが幸せになれない限り、いい国ではない」→

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諸富 祥彦(もろとみ・よしひこ) 明治大学教授、日本トランスパーソナル学会会長

日本トランスパーソナル学会は、「トランスパーソナル」(個を超える)という考えに関心を抱く人 々が集い、 研究活動や情報の交換、一般社会への普及活動、海外をも含めた研究成果の発表や紹介などを行います。
この学会は、特定の学問領域に限定された学会ではなく、様々な学問の境界を越えた学際的な学会です。   
また、学者のための閉ざされた学会ではなく、「トランスパーソナル」という考えに共鳴し、オルタナティヴな個人の 生き方や社会の在り方に関心を抱く一般の方々が自由に参加し、お互いの実践や思いを交換し合える場作りも目指していきます。


諸富祥彦のホームページ

http://morotomi.net/


日本トランスパーソナル学会 公式サイト

http://www.ne.jp/asahi/jta/akss/


教師を支える会

http://sasaeru.my.land.to/


<諸富 祥彦先生の著書>

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カール・ロジャーズ入門−自分が"自分"になるということ


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ロジャーズが語る自己実現の道(ロジャース主要著作集)


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孤独であるためのレッスン

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ケッコン構造改革のススメ!






インタビュアー:奥原菜月

奥原菜月    フリーライター、占い&カウンセラー(奥原朱麗)として活動中。
夫と子供2人、犬1匹で横浜に生息中。

占い・カウンセリング・開運などをメインにしたブログ
『占いカウンセラー朱麗のまったり開運日記』

HP:アストロ・ハーティ「朱麗の占いカウンセリングルーム」
  
インタビュアー:中澤敬子
 
中澤敬子    仕事に挫折し、離婚の危機、子育ての悩みからカウンセリングに興味を持つ。

様々な手法を学び、現在は千葉県市川市にてカウンセリングルーム
「イマージュ」を開設。
2児の母親。

HP:「イマージュ」


インタビュアー:脇坂奈央子

 
脇坂奈央子
『道開きの心理士ト』 ……本来のあなたの道を開く、お手伝いをします。

ブライアン・ワイス博士直伝の、プロフェッショナル・ヒプノセラピスト。
前世療法・年齢退行療法を中心に、ニーズに応じた各種心理セラピーを施療。

心理士(BA)、統合心理セラピスト、NGH認定ヒプノセラピスト、
心理カウンセラー、キャリアコンサルタント、
代替療法セラピスト(レイキティーチャー)
HP:セラピールーム ラポール 
  

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